SSブログ

FMR-CARD,PC-396BOOK,X68000(月刊ASCII 1991年5月号4) [月刊アスキー廃棄(スクラップ)]

新製品紹介のコーナーが「NEW MODEL IMPRESSION」に変わった。

単三乾電池2本で動くという信じらないノートパソコンのFMR-CARD(FMR-NBC1)
ASCII1991(05)c01FMR-CARD_W519.jpg
ASCII1991(05)c02FMR-CARD写真1_W520.jpg
ASCII1991(05)c02FMR-CARD写真2_W520.jpg
ASCII1991(05)c03FMR-CARD画面_W520.jpg
ASCII1991(05)c03FMR-CARD図_W520.jpg
ASCII1991(05)c04FMR-CARD画面3_W520.jpg
ASCII1991(05)c04FMR-CARD写真3_W520.jpg
ASCII1991(05)c04FMR-CARD図2_W520.jpg
まとめ部分をスクラップする。
 1kgを切る筐体は,鞄の中に入れても存在を意識させないほどで、従来のノート型マシンとはまったく違う.乾電池駆動で,世界中どこに持っていっても電源の心配はない。フルキーボードを持ったMS-DOSマシンとしては,初めて気軽に持ち歩ける製品で,ノート型マシンでは現在のところ好感度No.1といったところだろう.  (竹田)
 「好感度No.1」がどれだけ売れたのか。繰り返しになるが単三乾電池で動くノートパソコンがあったなんて信じられないほどだ。

性能重視のノート型パソコンのPC-386BOOK L。デスクトップの性能をノートにしましたというところ。
ASCII1991(05)c05PC-386BOOKL_W520.jpg
ASCII1991(05)c06PC-386BOOKL写真_W520.jpg
ASCII1991(05)c06PC-386BOOKL写真2_W387.jpg
ASCII1991(05)c06PC-386BOOKL写真3_W520.jpg
ASCII1991(05)c07PC-386BOOKL写真4_W520.jpg
ASCII1991(05)c07PC-386BOOKL写真5A_W520.jpg
ASCII1991(05)c07PC-386BOOKL写真5B_W388.jpg
まとめ部分をスクラップする。
 386BOOKLはデスクトップマシンと同等の処理速度を持ち,8Mbytesまで拡張可能なメモリ,内蔵HDD,拡張スロットを備えるなど高い機能を持つ。セカンドマシンとしてだけではなくデスクトップとして利用することも考えられるマシンだ。30分という短いバッテリ駆動時間も、省スペース型デスクトップ機としての使い方を前提とすれば頷ける.
 価格は37万8000円で,HDDを付けると50万8000円になる.286BOOKより12万円,NOTEAより11万円高い(いずれもSTDモデル)ことになる.ノート型マシンと比較するとFDD1台+Lスロットがあるとはいえ,ユーザーから見ると割高感は否めない。
 ホビーユースというよりも,省スペース性を考えるオフィスに導入するのに向いている.286BOOKがホビーユースを含めた個人ユーザー向けのローエンドマシンだったのに対し,386BOOKLはビジネスユース向けの高機能小型ラップトップ機といった色合いの強いマシンだ。  (行正)

 まさにまとめの通りだと思う。職場の机上で使うことができるマシンで個人が趣味で使うのとは違う。

「AV STRASSE」というコーナーにX68000XVI/XVI-HDの記事があった。
ASCII1991(05)f01X68000写真1_W520.jpg
ASCII1991(05)f01X68000写真2_W343.jpg
ASCII1991(05)f01X68000写真3_W514.jpg
ASCII1991(05)f02X68000写真4_W330.jpg
ASCII1991(05)f02X68000写真5_W343.jpg
ASCII1991(05)f02X68000写真6-7_W445.jpg
まとめ部分をスクラップする。
 X68000XVIは,ハード・ソフトの両面でスピードアップした結果,かなり速くなった印象を受ける。従来のX68000シリリーズのACE→EXPERT→SUPERという縦型の後継機種としては,当然ともいえるアーキテクチャのマシンだ。
 今回,期待されていた32bitMPUは搭載されなかった。確かに従来のユーザーのサポートに重点を置くことは当然のことといえるが,それと同時に,MC68030などの32bitMPUを搭載した最上位機種がほしいと思っているユーザーも多いのではないだろうか。それが自分で買うには高価で手が届かないモデルだったとししても、32bitバスのマシンがラインナップにあるというだけでもさらに大きな夢が見られるのではないだろうか。

 まさにそのとおり。NECみたいにもっと小刻みに性能アップの新機種を出したら良かったと思う。旧機種のユーザは下取りに出して新機種を買うという選択肢があったはずだ。安ければ中古でもX68000を使いたいという層もあったと思う。

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:パソコン・インターネット

AX協議会、IBMインタビュー、他(月刊ASCII 1991年5月号3) [月刊アスキー廃棄(スクラップ)]

AX協議会が「AX-VGAシステム」仕様を発表
ASCII1991(05)b15AX協議会_W520.jpg
AXからDOS/Vマシンへと変わっていく。しかし、この時点ではWin3は使えないと思っていたので98の天下は続くと思っていた。TEXT VRAMを使っての漢字表示の速さに慣れているとGRAMにフォントを展開しての表示する機械は遅くて使う気にというか金を払う気にならなかった。

連載インタビュー 第6回
日本アイ・ビー・エム(株)
パーソナル・システム営業本部長 堀田一芙氏

 日本アイ・ビー・エムが開発した「DOS/V」は,VGAボードを搭載したIBM PCがソフトウェア処理だけで日本語対応になる,画期的なシステムソフトである。同社はこの仕様に準じるハードウェア/ソフトウェアメーカーのサポートなどを目的として,「OADG(オープン・アーキテクチャデベロッパーズ・グループ)」を設立し,仕様などを積極的に公開するという.また,PS/55シリーズの日本語モード(1024×768ドット)上で動作する日本語Windows 3.0やPS/55 noteを発表するなど,新製品発表のテンポも速い。同社の今後の戦略についてお話を伺った.

――ここでDOS/Vを出してきた意義などを.
堀田――今まで日本のパソコンは,各社ごとにバラバラであるうえに,IBM PCとも別のものでした。ですから,外国のソフトウェアを日本語化するには,プログラム自体に手を加える,移植作業が必要だったわけです。これではどうしても時間的な差が出てきますし、相当な労力もかかります。英語と日本語の差は,「翻訳」すればすむ,という環境が望ましい。ポーティングからトランスレーションですね。それが,DOS/Vを使うことで非常に容易に実現できるし、ユーザーは機種を変えてもソフト互換が保てます。
 DOS/Vの公表,OADGの結成というのをこのタイミングで行なった理由は,Windows 3.0が発売された今がちょうど,CUI(キャラクタ・ユーザー・インターフェイス)からGUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェイス)へと移行するという,マシンを切り替えるにもちょうどいいチャンスだと考えているからです.ソフトウェアがハードウェアから独立できる最後のチャンスと言っていいかもしれません。
――OADGについてはいろいろ噂や憶測が飛び交っていますが、IBMがあえて仕様公開に出た理由はなんでしょうか?
堀田――オフィス向けはともかく,コンピュータが個人や家庭に普及するには,あらゆる面でのダウンサイジングが必須であると考えています。特に価格は重要ですね。価格を下げるには,規格化されたものを大量に作る必要がある,つまり,オープンな環境が必要なのです。コンピュータが家電製品のように普及するためには,標準化は避けられません.遅かれ早かれ,オープンな環境で戦わなくてはならないのは目に見えています。
 日本のメーカーさんはすでにPC互換機のノウハウを持っていますから,IBMのような大きな組織だと,日本やNIESなどのメーカーとの価格競争はあまり得意ではないのではとご心配される方もいらっしゃるようですが,勝負は結局そういうマーケットの上で行なわれるものです。うちも必死でやらなければなりませんが,我々はそこで勝ち抜こうと思っています.
――これまでOS/2一本槍のように見えたIBMさんが,DOS/Vのすぐあとに,DOS/V対応版Windows 3.0を出してきたのはどういうことでしょうか?
堀田――ご存じのようにPS/55のラインナップにはPS/55とPS/55Zがあります。このうち,PS/55のほうはオフィス向けでOS/2ベース,PS/55Zのほうはパーソナルマーケット狙いでもともとWindowsベースの環境を想定していたのです。ただ,PS/55Z発売当初は現在のWindowsがなかったので,今までは単なる最下位機種としての扱いだったわけです。
 しかしようやくWindows 3.0が出てきて,DOS/Vが使えるという環境になった.日本語を使うのに必ずしも高価な日本語モードを設ける必要がなくなった。今まで最下位機種だった55Zのモデル5530ZSXは,こちらのラインナップでは最上位機になるわけで、今後この下に続々と新製品を発売していく予定です。
――いわゆる漢字VRAMが載った国産マシンに比べると,DOS/Vの表示速度はいささか遅いようにも見えるのですが.
堀田――DOS/Vはビットイメージで文字を書いていますから,そういうマシンに比べれば確かに遅いかもしれません。今回のPS/55 noteは新しいチップの採用で速度を改善しています。現在のものでも、決して問題になるほど遅くはないはずです.グラフィックチップの革新で,速度的な問題は競争によってどんどん改善されるでしょう.
――今後の製品展開などについて.
堀田――当社もDOS/Vが動く初めてのノートパソコンを先日リリースしました。ただ,私としてはこのあと必ず「デスクトップの復権」もくると思っています。というのは,マシンを持ち運ぶというのは贅沢なことなんですね。個人の環境,私はPSE(Personal System Environment)と呼んでいるのですが,これを持ち運ぶには,パソコンそのものを持ち運ばなくても,MO1枚ですむと思うのです.昨年末にうちでは3.5インチMOを発売しました。これはディスケットとたいして変わらない大きさで,128Mbytesの容量を持っていて,これだけあれば,各個人の環境がすっぽり入ります.OS/2でもWindowsでもそれで,マシンのある場所に行って,ディスクを差し込めば,世界のどこでも自分の仕事場、遊び場になる.そういう環境になるといいですね。
――宣伝があるそうですが.
堀田――5月10日から12日まで,北青山のTEPIAでDOS/VPOWERFORUMを開催します。ぜひおいでください.


ASCII1991(05)b17IBMインタビュー写真_W271.jpg
DOS/Vが売れるようになるためには「グラフィックチップの革新で,速度的な問題は競争によってどんどん改善されるでしょう」が必要だった。それは時間の問題だった。98でなくても良くなる時代はもうすぐだった。


「米国ハイテク産業の動向」から一部抜粋スクラップする。
Multimedia and CD-ROM inSanJose
MPCの登場
 舞台裏はさておき、今年もオープニングはMicrosoft社のBill Gatesからだ.まだまだ儲からないマルチメディア業界でもっとも着実に進んでいるのがこのMicrosoft社.今年,Microsoft社はMPC(Multimedia PC)という新しいアプローチを発表した.
 現在,PCは全世界で6000万台が使用されている。そして昨年以来のWindows3.0の売り上げはすでに300万セット.Microsoft社のMPCはこうしたしっかりした土台の上にマルチメディアのプラットフォームを構築しようとするものだ.Microsoft社が考えMPCの最小構成は,
●286(10MHz以上)あるいは386のCPU
●2MbytesのRAMと30Mbytesのハードディスク
●VGAのディスプレイ
●DigitalaudioとCD-ROM
 このハードの上にDOSとWindows3.0とMultimedia Extensionを走らせてMPCとする.「なんだ何も新しいものがないじゃないか」と言われるかもしれないが,そこがミソなのである。
 すなわち新しくプラットフォームを開発するのではなくて,どこにでもある構成で,あるいはいくつかの要素を加えるだけで,マルチメディアのプラットフォームにしてしまおうというのがBill Gatesが考えるマルチメディアマシンなのだ。かつてSONY社とPhilips社が中心になってCDIなる新しいマルチメディアマシンを構築しようと企んだことがあった(今でもやっていますが)。68000を使ったシステムにOS9の改造版のOSを載せたものをプラットフォームとして定義し,サードパーティにはこうしたマシン用に新たにマルチメディアアプリケーションを開発してもらいましょう,というやつだ。これは,その後,製品が出てこないが,当然と言えばしごく当然の話だった。理由は簡単。何もかも新規開発だからだ。もちろんこうしたやり方でもうまくいくときもあるが,普通は大変な金と膨大な労力,そしてそれなりの時間が必要とされる.
 そうした点で見れば,Microsoft社のMPCはCDIの事実上の失敗の上になりたっていると言えるかもしれないMultimedia Extensionは昨年11月にやはりSan Joseで開かれた「Multimedia Developers Conferense」でサードパーティに対して公開されたもの。現在はβ版だがMicrosoft社は今年の夏にはファイナルバージョンに漕ぎ付けたいとしている.
 Microsoft社はWarner New Media社が開発したMPCの上で動作する「Desert Storm」などをデモして好評を博した.Desert Stormとは、もちろん湾岸戦争をテーマにしたもの。400以上の写真,公式文書,大統領声明や実況音声(これらはオーディオデータとして)などからなる迫真のドキュメントである.MPCとしての可能性もさることながら,1カ月に渡った戦争をやはり1カ月で開発したというWarner社のチームワーク力には驚かされる.

フルモーションの本命はMPEGか?
 コンファレンスでのもう一つの話題はフルモーション圧縮技法の動向。そして今回のコンファレンスで特に注目を集めたのは,やはりMPEG(エムペグと読む)だろう.MPEGはISO/CCITTのMotion Pictures Expert Groupが提案するデジタルフルモーションイメージの圧縮方式.
 この方式をめぐって早くも主導権争いが激化してきているが,JVC社(日本ビクター)はC-Cube社とともにMPEGに対する拡張処理を開発.C-Cube社が新たに開発したMPEGチップ上での動画像デモを行なった.
 C-Cube社は元Weitek社の設立者であるEdmond Sunが率いる新興のチップ開発会社CL550と呼ばれるスチル画像の圧縮に威力を発揮するJPEGチップの開発販売をすでに開始しており、そのチップはNeXT,SuperMacなどでも利用されている(JPEGはやはりISO/CCITTが提案した国際規格).
 MPEG方式の標準化案がまだ確定していない段階での両社によるMPEGチップ発表はMPEG市場でもリーダーシップをとりたいためだ。デモはごく短いフルカラーイメージのデコードだけだったが,それでも早くもチップにまで落としたC-Cube社の開発力は並み大抵のものではない.Edmond Sunは筆者に対して「どうだ,すごいだろう.しかも1チップだよ」といかにも技術者らしく話しかけてきた.
 JVC社の発表を行なったRichard Youngはもとは日立アメリカにいた人間.CD-ROMの立ち上げ期に日立製ドライブをいち早く米国市場にばらまいた人間だ。その彼が今回JVCに移籍したわけだが,MPEGでも同様の手腕を発揮するものと期待されている.JVC/C-Cubeの発表に対してSONYもやはりMPEGのデモを行なって注目を集めた.SONYのデモはチップではなく基板上にMPEGロジックを構築したプロトタイプボードを使用して行なわれたもの。実際の圧縮比がどのくらい出ているかはっきりしなかったが,AX機で行なったデモはレゾリューションも高く,かなりの水準に達している。先にCDIは事実上失敗したと言ったが,それでもSONYはこのプロジェクトをまだ進めている。SONYだからできる話で,普通ならとっくの昔につぶれてしまったはずのプロジェクトだ(実際,片方の当事者であるPhilipsはそろそろ苦しくなってきていると聞く).
 SONYとしては将来的にCDIの動画像にもMPEGを採用するつもりだという.コンファレンスではSONYがこのMPEG技術を将来どのように製品に展開していくか具体的な話は聞かれなかったが,とにかくSONYはMPEGを簡単に実現できる技術力は持っているわけで,今後の動きが気になるところだ。
 フルモーションが「MPEGシフト」を開始している中でIntel社のDVIはやはり気になる存在Intel社としては従来,PCを中心にDVIアプリケーションの開発を推進してきた(最近AMD社から386クローンチップが発売されて話題を集めているが,IBM PCのCPUである386を単独で開発販売するIntel社にとっては当然のなりゆきには違いない)。開発装置であるPro750にしても,サードパーティの開発するアプリケーションにしても,ほとんどはPCを基本にしたシステムだ。
 そのDVIにMac用ボードが新しくラインナップされた.開発したのはSan JoseにあるNew Video社.社長のPeter Foremanによると,このボードを使用することでMacでもPCでも同じソースからフルモーション画像の再生が可能になるという.5月からβ版を限定販売するが,今年夏以降には正式版を2495ドルで売り出すという.Mac用DVIボードの発売で、さらにDVIプラットフォーム選択の幅が広くなったが,Intel社としては今のうちにできるだけDVIマーケットを広げてMPEG軍団に差を付けておきたいところだろう.
 DVIには、最初に発売されてからすでに4年以上の歴史がある.そのぶんアプリケーション開発ツールなどは新興のMPEGに比べてもより完備されているし,実際に開発を行なっているサードパーティによるアプリケーション数もはるかに多い。
 Intel社は会場でもこうしたサードパーティによるDVIアプリケーションを中心に展示して,DVIが実用段階にあることを印象づけようとしていた(そしてその点は確かに事実には違いない).ただ,将来的にはDVIもJPEG/MPEG方式を取り入れる方向で進むのではないかと思われているのも事実だ。DVIチップのマイクロコードを書き換えてJPEGチップとして動かすことはすでに可能だし,Intelとしても実際にデモを行なっている
 このへんはDVIチップの柔軟性を示しているわけだが,JPEGとして動かした場合,CL550などに比べたらやはり処理速度の低下は免れない。今後DVIチップの処理速度をいかにして確保していくかがIntel社としての当面の課題で,これが達成できれば単一チップでDVI,JPEG,MPEGの3種類のモードが選べるようになるのも夢ではないかもしれない.
(ザイロンコーポレーション代表 脇山弘敏)

 もうこのころMPEGが登場していたとは。パソコンでもゲームではアニメーションもどきがあったが、CPU、Graphicチップがまだまだ低速だったのでMPEGによる本格的な動画など見たことがなかった。しかし日本ビクター技術力があったのに名前が消えたのは残念。

Miscellaneous :behindthenews
Appleの噂とMac大幅値下げ
 Appleは最上位機種となるサーバ用システムを準備中という.25MHzの68040を搭載したタワー型で,本体はRAMを64Mbytes,HDDを160Mbytes搭載して1万500ドルという.EthernetとAppleTalk,5基のNuBusスロット,SCSIインターフェイスを内蔵する.
 この最上位機種に向けてかどうか不明だが,Macの中上位機種を,最高でなんと31%も値下げする(こちらは噂でなく正式発表)。これによって,IIfx,IIci,SE/30のすべての機種で価格が下がる(表1)。同時に,IIxとIIcxがラインナップから外れた。なぜSE/30まで下げるのかという疑問がもちあがり,「030搭載のClassic」という噂もささやかれているという.
 さて,ノート型はどうなったのかと思っていたら,John Sculleyが,同社のR&D(研究開発)部の組織を変更。現行製品ラインの研究はMicheal Spindler(chief operating officer)に明け渡し,Sculleyは,将来に向けた画期的プロジェクトに集中するという.彼が現在興味を持っているのは,手書き文字を認識できるノートサイズのパソコンや,携帯電話とポケコンを組み合わせたパーソナルコミュニケータ,また,AVソースとしてCDプレーヤを内蔵したマシンなど.
 地道なところでは,MacをIBMマシンと接続できるよう,System Network Architecture(SNA)をサポートすると発表.Macのユーザーインターフェイスで,直接IBMのコンピュータとデータの交換ができるのが売りという.これまではDECやUNIX系マシンとの接続に傾いていたが,花より実を取るということか.

ラップトップ型機密情報
 湾岸戦争が終わって落ち着くかと思ったが,いろいろな事件が暴露されてきた.コンピュータねたでは,昨年12月に英国の陸軍将校のもとから盗まれたラップトップパソコンに,多国籍軍の「重要極秘事項」が入っていたという.
 この極秘事項には,米国司令官Schwarzkopfによるクウェート上陸時の陽動作戦も入っていた(水陸両用艇で上陸すると見せかけて,陸上攻撃をかける作戦だった)。1月にこの盗難の事実が報道されると,すぐに軍は報道管制をしき,軍部はコメントを控え,データの詳細についても一切明かさなかった。
イラク側によって盗まれたのではないらしいが,ある政府関係者は「これはスパイ活動というよりはただの盗難に過ぎない。何も被害はなかった。おそらく盗んだ人物も,手に入れたものが何だったのか知らなかったのだと思う」と述べた。コンピュータは数週間後、普通に包装されて郵便で戻ってきたという.とにかく.携帯型は盗難にあいやすいので,みんな注意しよう.
 中東のアラブ首長国連邦やサウジアラビアでは海賊版ソフトが横行しているそうで,Lotus社がついに怒りを爆発させたそうだが,米国内でも違法コピーの事件があった。1つはMicrosoftが「偽造MS-DOS」を販売していたディーラーを訴えたもの。ユーザーレベルでの被害は180万ドルに上ると見られ,Microsoftの副社長Bill Neukomは「我々はあらゆる面でOEM供給者およびエンドユーザーを保護してゆく。偽造MS-DOSは増えつつあり,ディーラエンドユーザーともに,自分自身で海賊版から身を守るべきである」と語っている。
 もう1つは,ワシントン州のコンサルタント会社Parametrixがソフトの違法コピー使用の容疑でFBIの捜査を受けた。訴えたのはSPA(Software Publishers Association)と関連ソフトメーカーで,原告側はFBIとともにP社のオフィスに踏み込んでパソコンの調査を行なったという。どうやら,米国での違法コピー追放キャンペーンの一環らしい。SPAは現在,毎週十数件の違法行為に関する報告を受けており,数日に一件の割合で訴訟を起こしている.Neukomは「許可のないコピーは違法であり,ソフト会社だけでなく,ユーザー自身をも傷つけている。というのは,違法ソフトのユーザーは、多くの場合マニュアルがないためにソフトを100%活用できないし,またきちんとしたユーザーのように,サポートもアップグレードも受けられない。さらに,ソフト会社の利益が落ちるということは,研究改良の滞りにもつながる.つまり,みんなが損をすることになる」と主張。SPAは現在,著作権に関する訴訟を全米で行なっており,原告の会社にもその調査に協力してもらっているようだ。

Aldusのソフトはポップコーンの中
PaloAltoで行われたSoftware Manufacturers Associationの会合には60社が集まったが,その焦点の1つは環境保護に当てられた.ソフトウェアが環境を破壊するのかと思いきや,マクドナルドと同様,その包装にあるらしい。会長のDave Kinser(Claris社副社長)は「我々の製造する数百万個のパッケージを環境にやさしいものに改善する必要がある。これは金のかかることでもないし,難しいことでもない」と述べた.
 案としては,まず,再生紙などリサイクル製品のメーカーリストを作り,他の業界がパッケージングでどんな環境保護を行なっているか調査する。中でも関心が集まったのは、パッケージに使っているプラスチック系の素材と,出荷時にパッケージを傷付けないように詰める「ピーナッツ型発泡スチロール」に代わるものを見つけることであった.Aldusなどはすでにこの発泡スチロールを「ポップコーン」に切り替えたという。発泡スチロールは腐らないが,ポップコーンは腐るからいいのだろうか.業界大手のパッケージ業者は国の言うとおりにプログラムを進めているというが,これほどお盛んな米国でも、最大の難点は消費者にリサイクル教育をすることだという.

WindowsがMacを抜いても半導体がヤバイ
 米国では昨年度の各種統計と,今後の予測が発表されている.まず、前述のSPAによると,'90年度の国内パソコン用アプリケーションの売り上げ高は前年比26.2%増の46億ドル(約6300億円)になった。中でも昨年の話題を反映しているのが分野別アプリケーションの伸びで,第4四半期ではMS-DOS用が18.1%,Mac用が12.5%の伸びなのに対して,Windows用アプリケーションはなんと198%伸びたという.Windows用アプリは,同時期の売り上げ全体の中に占める割合も、国内で10%,世界的には13%増加し,初めてMacを蹴落として,世界で2番目に大きな規格になった(1番はMS-DOS).
 対するハードウェアやチップ屋さんは景気が悪い。米国の国家半導体諮問委員会の調査によると,世界の半導体市場の60%が米国以外の企業によって占められている中で,米国のチップメーカーの競争力は落ち続けているという.
 これを明示するのは,電子業界の雇用数。昨年12月は250万で,これは'89年12月の259万より9万ほど少ない.American Electronics Associationの試算によるものだが,コンピュータや半導体メーカーでは5~6%の人減らしが行なわれたが,逆にソフトメーカーの雇用者数は10%増えている.
 ロイターが550名以上の社長に対して行なった調査によると,米国の電子工業界で米国が有利な点は技術革新だが,その力も落ちてきており,52%が「技術革新が外国と競争してゆくうえで力になる」と分かっているのだが,たった32%しか「この競争力も1995年までは続かない」と見ている.そして,他社と合併したいと考えている社長が45%,併合されてもよいと思っている社長が30%もいた.
 こうした,「半導体に関する競争力のなさ」を自ら認めながら,米国は日本に「3割は外国チップを使え」とおっしゃっているようだ.社長さんたちの圧力だろうが,いざ3割を達成してみたらみんなアジア製だったというのではジョークではすまない.
 ちなみに,ソフトウェアのほうでも,我々に身近なメーカーに合併の噂.なんとBroderbund社がSierraOn-Lineに吸収合併されるという.名称は「Sierra-Broderbund Inc.」とまで決まっているらしいが,SimCityの儲けはどこへいった.

 「昨年12月に英国の陸軍将校のもとから盗まれたラップトップパソコン」はパソコン自体が盗まれてはいかんでしょう。
 MS-DOS等のパソコンソフトの違法コピーは全世界的に蔓延していたということだ。個人間のコピーではなく販売されていた。「多くの場合マニュアルがないためにソフトを100%活用できないし」解説本が販売されいたから違法コピーユーザは問題はなかったろう。
なぜ皆PenPointを次世代の入力法として支持したのだろうか。タブレットにしか使いようがないのに。ノートパソコンならタッチパッドやトラックボールがマウスの代わりになったがパソコンにペン入力は合わない。
ASCII1991(05)b20MIscellaneous写真_W520.jpg

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:パソコン・インターネット

パソコン、ソフト、その他ハード(月刊ASCII 1991年5月号2) [月刊アスキー廃棄(スクラップ)]

ASCII EXPRESSをスクラップする。

IBMがVGA搭載のノート型マシンを発売
PS/55note
PS/55モデル5530-V
ASCII1991(05)b03IBMVGAノート_W520.jpg
ASCII1991(05)b01IBMノート_W501.jpg
ASCII1991(05)b03IBMVGAノート写真_W449.jpg
DOS/Vのノートが出た。もちろん640×480dotでWindows 3.0の動作でガラパゴス化していた日本のパソコン市場を切り開こうとしていた。

日電がPC-9801NVにカラーバリエーションを追加
ASCII1991(05)b05日電PC-9801NVカラーバリエーション_W520.jpg
色を変えただけで女性をターゲットとは安直すぎる。そもそもMS-DOSのコマンド投入が女性向ではなかった。

日電がテレターミナル通信サービスを利用するノート型の無線パソコン「RC-9801」を発売
ASCII1991(05)b05日電RC-9801_W520.jpg
最初はノートパソコンで無線ネットを使うにはこんな機械が必要だった。

キヤノンがAXマシン「AXiシリーズ」の最上位機種を発売
ASCII1991(05)b05キヤノンAXi_W520.jpg
25MHzの80386DXを使うと116万円もした。

ソード,80486を搭載したラップトップマシンを発売
ASCII1991(05)b04ソード80486ラップトップマシン_W520.jpg
33MHzの80486を搭載すると215万円となる。

日本語 MS Windows V3.0
ASCII1991(05)b03日本語Win3_W520.jpg
DOS/V用のWindows。複数のMS-DOSアプリを開けるとは当たり前ではないかと思うが、他社製品はそうではなかったのだろう。

エプソンが日本語MS-Windows3.0を発売
ASCII1991(05)b13エプソンWin3_W520.jpg

松下,日本語MS-Windows V3.0とOS/2 V1.21を発売
ASCII1991(05)b12松下Win3発売_W518.jpg
日本の各社はこうして自社のパソコンにOSを移植する必要があった。

Windows3.0上でATOKを使用可能にするソフトを発売
ASCII1991(05)b04Win3でATOK_W520.jpg
いやいやジャストシステムが対応するべきだったろう。

ジャストシステム,小学校学年別ATOK7辞書を発売
ASCII1991(05)b08ジャストシステム小学校ATOK7_W518.jpg
ジャストシステムはこんなことをしていた。

アンテナハウス,文書ファイル用コンバートソフトを発売
ASCII1991(05)b14アンテナハウス文書ファイルコンバータ_W518.jpg
まだこうして新製品が出るということは需要があったということだろう。しかし、この時点で買うというのは今更感がある。必要ならもっと早く購入するべきだったろうに。

'91電子ディスプレイ展開催
 1991年3月18日から20日まで,「'91電子ディスプレイ展(主催:日本電子機械工業会)」が,東京北の丸公園の科学技術館で開かれた。会場ではディスプレイメーカー,材料メーカーなど24社が出展し,日進月歩の勢いで発展するカラー液晶ディスプレイやプラズマディスプレイなどの開発状況を競っていた.
 なかでも、(1)ビデオ画像のような自然動画を表示しても遜色のない大型(15インチ)のカラー液晶ディスプレイ,(2)バックライトの必要がなく低消費電力を実現できる4096色表示のプラズマディスプレイ,(3)マウスをすばやく動かしてもマウスカーソルが追従する高速表示型の液晶ディスプレイ,(4)表示デバイスの厚みを薄くできるTAB技術などが来場者の目を集めていた。
 カラー液晶ディスプレイは,カラーの多色化や表示切り替えの高速化を実現することで,将来の壁掛けテレビやハイビジョン対応受像機などへの応用が期待されている.今回のショウで,実用レベルの品質を持つ液晶ディスプレイ製品を,ようやく目にすることができた。


ASCII1991(05)b02ディスプレイ展写真1_W247.jpg
ASCII1991(05)b02ディスプレイ展写真2_W335.jpg
CRTが液晶ディスプレイに置き換わるまではまだまだ先のことだった。液晶ディスプレイは最先端技術だった。この分野でトップを走っている日本が負けるなんて想像できなかった。

サピエンスがWin3対応のハイレゾ化ボードを発売
ASCII1991(05)b07サピエンスWin3ハイレゾ化ボード_W520.jpg
23万8000円とは高い。

富士通がカラー静止画像を符号化するLSIを発売
ASCII1991(05)b09富士通カラー静止画像圧縮_W520.jpg
CPUの能力が低かったので画像処理をCPUだけですることはできなかった。

富士通,1280×1024ドットのプラズマディスプレイを発売
ASCII1991(05)b08富士通1280x1024プラズマディスプレイ_W520.jpg
60万円もした。

日本AMDがクロック周波数40MHzの386互換チップを発売
ASCII1991(05)b09AMD386互換チップ_W520.jpg
AMDを目にすることが多くなった。

日立が現状の20倍の記録密度を実現した磁気ディスクを開発
ASCII1991(05)b16日立磁気ディスク_W520.jpg
あらかじめピットを作ってという発想は特に目新しさを感じなかった。結局製品化されなかった。

三菱化成,3.5インチ光ディスクを発表
ASCII1991(05)b08三菱化成3インチ光ディスク_W520.jpg
1枚1万円前後もするメディアだった。初期のころはみんなバカ高い。

東京電気と米WestinghouseElectoric社がELを利用したページプリンタのヘッドを開発
ASCII1991(05)b16東京電気WEページプリンタヘッド_W520.jpg

富士通がポケットサイズのワープロ専用機を発売
ASCII1991(05)b02富士通ワープロ_W520.jpg
従来製品ではなくまだワープロの新製品を出す市場があったのか。

シャープ,重量99gの小型電子システム手帳を発売
ASCII1991(05)b08シャープ電子手帳_W518.jpg
2万9800円は安く思える。

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:パソコン・インターネット

パソコン広告(月刊ASCII 1991年5月号1) [月刊アスキー廃棄(スクラップ)]

ASCII1991(05)表裏_W520.jpg
裏表紙は前号の使いまわし。

表紙見返し
ASCII1991(05)見開_W520.jpg
Windowsを無視できなかったのだろう。NECの98で640×400dotでは、こんな画面にはならない。

ASCII1991(05)a01PC-9801DA_W520.jpg
NEC PC-9801DA, PC-9801DS, PC-9801DX。PC-9801DAは職場で使っていた。

ASCII1991(05)a02モデム川越美和_W520.jpg
NECのモデム川越美和の広告は前号の使いまわし。

ASCII1991(05)a03Refalo_W520.jpg
京セラのRffalo。ペン入力できる電子手帳に毛の生えたような機械。128,000円は高価だった。MS-DOSが付いているだけではアドバンテージとは言えない。

ASCII1991(05)a04IBM_W520.jpg
IBMのPS/55note。DOS/Vで640×480dotでWindows 3.0が走る。

ASCII1991(05)a05X68000_W520.jpg
X68000の新機種。CPUを16MHzの68000にした。X68000は新機種を出さずに失敗したと思う。もっと小刻みにCPUのクロックを上げた新機種をだしても良かったのではないかと思う。

ASCII1991(05)a06FMR-CARD_W520.jpg
FM R-CARDの価格は238,8000円。単三乾電池2本で動くノートパソコンだった。信じられなかった。単三乾電池2本なんておもちゃを動かすのかとびっくりした。

ASCII1991(05)a07TOWNS_W520.jpg
ASCII1991(05)a08TOWNS_W520.jpg
TOWNSの広告。おとなしくなった。

ASCII1991(05)a09EPSON_W520.jpg
EPSONのノートパソコン
PC-386NOTE A
PC-386BOOK L
PC-286BOOK

ASCII1991(05)a10LSERSHOT_W520.jpg
キヤノンのレーザーショット

ASCII1991(05)a11BJプリンタ_W520.jpg
キヤノンのBJ-プリンタ

ASCII1991(05)a12AXiMacOffice_W520.jpg
左頁はキヤノンのAXi
右頁はキヤノン販売のMacOffice

ASCII1991(05)a13J-3100ZS_W520.jpg
東芝のJ-3100ZS

ASCII1991(05)a14QuterL_W520.jpg
SonyのQuaterLノートQL/Note

ASCII1991(05)a15NeXT_W520.jpg
NeXTがカラーになった。

ASCII1991(05)a16Intel_W520.jpg
インテルの数値演算コプロセッサの広告。昔のCPUには浮動小数点演算機能が無かった。

ASCII1991(05)a17WorksExcel_W520.jpg
WorksとExcelの広告。
MicrosoftはOSは黙っていても売れたが、アプリケーションソフトはそうもいかなかった。

ASCII1991(05)a18マイクロデータ_W520.jpg
ASCII1991(05)a18エコロジー_W520.jpg
ASCII1991(05)a18オーシャノグラフィ_W520.jpg
ASCII1991(05)a18ノストラダムス_W511.jpg
マイクロデータのソフト群の広告。

ASCII1991(05)a19マイクロデータ_W520.jpg
コロボックル98なんてものも出していたとは、すっかり忘れてた。
気になるのはアストロノミー。これは一体何だったか。

ASCII1991(05)a20ツクモ_W520.jpg
ASCII1991(05)a21ツクモ_W520.jpg
パソコンショップでカラーページに広告をだしているのはツクモだけだった。

裏表紙裏はFUJI FILMのフロッピーの広告。
ASCII1991(05)裏裏_W260.jpg
前号の使いまわし。

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:パソコン・インターネット

電子で書いた文字,HDDトラブル(月刊ASCII 1991年4月号4) [月刊アスキー廃棄(スクラップ)]

ASCII1991(04)h01原子で描いた文字TTL_W520.jpg
アスキーはたまにこういう科学雑誌の記事的なものを載せる。
 昨年から今年にかけて「原子で文字を描いた」というニュースが新聞などに発表されていたのを目にした方も多いことだろう。米IBM社,NTT,電子顕微鏡の大手メーカー日本電子,日立製作所が発表したこれらの文字の写真は,いずれも物質の極小単位である原子を使って表現されている(写真1~4).

ASCII1991(04)h01原子で描いた文字写真1_W496.jpg
ASCII1991(04)h01原子で描いた文字写真2_W350.jpg
ASCII1991(04)h02原子で描いた文字写真3_W501.jpg
ASCII1991(04)h02原子で描いた文字写真4_W341.jpg
 文字を描いた「筆」に相当するのは,「走査型トンネル顕微鏡(Scanning Tunneling Microscope:STM)」と呼ばれるものだ(注1)顕微鏡であるからには、通常は物質表面の微細な構造を観察するために使われている.

注1
走査型トンネル顕微鏡
(Scanning Tunneling Microscope)

 普通の電子顕微鏡は光の代わりに電子を照射,観察対象の試料で透過、反射したものを電気的なレンズ(電磁コイル)で拡大し,ブラウン管上に像を写す.
 STMの原理はこれと大きく異なり,電圧をかけた金属の針(探針)を,試料表面に接近させ,このとき発生するトンネル電流で像を作る.トンネル電流とは,距離がある電極間では流れない電流が,その距離がミクロン以下になったとき洩れ出る電流のこと.探針と試料間の距離をナノm単位に保ったまま表面を走査し,流れる超微小な電流の変化をコンピュータで解析,最終的には原子レベルの凹凸が画像として得られるわけだ。
 STMは,1981年にIBMチューリッヒ研究所の2人の科学者が発明した.STMでは,試料表面を原子レベルで調べられるほか,探針を利用して原子レベルの加工できる可能性があると発明当時から分かっていたという.


ASCII1991(04)h02原子で描いた文字注1_W355.jpg
 ところが1989年,米IBMアマルデン研究所のD.M.Eigler博士とE.K.Schweizer博士(客員研究員)は,この顕微鏡の探針に高電圧をかけることで,キセノン原子をズルズルと引っ張ることに成功した。こうして原子を思いどおりに並べ替えて作られたのが「IBM」の点文字である。一見,パチンコ玉のように見えるボール状の物質は,直径約1ナノm(10-×1m)のキセノンの原子だ。 今のところ,STMの応用技術としては物質の表面に原子スケールの文字を書くぐらいだ。しかし,この技術がさらに洗練されれば,原子を配列して新しい分子を組み立てたり,原子1個が記憶単位となる超高密度メモリが作れるようになるらしい。
たかが文字,されど文字
 見た目には「並んだビー玉」や「釘で引っかいた落書き」のようだが,文字のサイズはナノ単位である。それぞれの文字の大きさは,今,あなたが目にしている“この文字”の約50万分の1の大きさしかない.4枚の写真を見れば,国内のメーカーが発表したものは,いずれも表面を引っかいたような文字.そしてIBMの写真はツブツブ状に写っている。これらには何か違いがあるのだろうか?STMを使って,原子レベルの加工を行なうには(具体的には文字の描画),現在4種類の方法があるとされている。
 (1)探針の先を試料に直接当てて,表面を引っかく「物理的加工法」試料先端が摩耗するため長時間安定した加工はできない。加工精度は数十ナノmになる.
 (2)探針試料間に10~100Vの高電圧をかけ,そのとき発生する熱で試料表面を溶かす「熱的加工法」。加工範囲が小さくできないのが欠点。精度は10~100ナノmが限界.
 (3)探針にかける電圧を微妙に調節して,探針・試料間に電界を生成,この電界で電子1個1個をつまみ上げて移動させる「電界的加工法」。加工に時間がかかるが,精度は原子サイズ(0.1~1ナノm).
 (4)電流によって化学反応を起こす試料を対象に行なわれる「化学的加工法」レジスト,エッチングなど従来のLSI生成と同等の過程が将来展開できる.精度は数十ナノm
 各メーカーが原子文字の描画に採用したのは,IBMが(3)の電界的加工法,NTTが(4)の化学的加工法,日本電子は(3)に近いが加工時間の短い方法を,日立は(1)に近いが原子レベルで加工ができる方法を取っている。ここで各社の方法を紹介してみよう.

★ IBM ★
 重く、不活性のキセノン原子をニッケル基板の上で1つずつ並べ「IBM」の点文字を作った。原子間の距離は1.3ナノm,文字の高さは原子が5個縦に並んでいるので約5ナノmとなる. STM装置と試料は,原子の熱運動を最小限にするため液体ヘリウムで摂氏マイナス269度まで冷却された.さらに,空気中の他の原子が混入しないよう装置は高真空の中に置かれ,人間の音声レベルの震動や,体温などの弱い熱源からも遮断.電界でじわじわと原子を配置した.「IBM」の文字(35個の原子)を並べ替えるのに,22時間もかかったという.
★ 日本電子 ★
 IBM同様に,試料は高真空の中に置かれた。探針のコントロールはすべてコンピュータの画面上でマウスを用いて行なわれるという.マウスをグリグリと動かすと探針にもそのまま動きが伝わり,観察時よりも高い電圧を加えられた探針がマウスの軌跡に沿って原子を剥ぐ.
 描画速度は10ナノm/秒で、数秒で文字が描かれる。文字の感じはIBMのものと異なるが,原子を動かすのはおそらく同じ電界の力ということだ。

★ 日立製作所 ★
 通常と同じように試料表面を走査してゆき,剥離したい原子の真上にきたときに,探針と試料間を約0.3ナノmまで近付け,観察時より高い電圧を0.07秒という短時間でパルス状に加えている。高い電圧といっても5.5V,しかし0.3ナノmの距離で5.5Vの電位差は,1cmの距離での約1.8億Vに相当するという(ちなみに雷でも1cmで1万V).原子が剥ぎ取られる原理はまだ解明されていないが,おそらく「熱で原子間の結合エネルギーが切れて原子が外に飛び出しているのでは?」と考えられている。
 IBMは絶対零度付近で実験を行なっているのだが,日本電子と日立の方法は室温で加工ができ,操作の容易性において優れている。

★ NTT ★
 トンネル電流を使って試料を化学的にエッチングしている.銀とセレンの化合物の膜にセレン原子10個ずつ程度の溝が掘れるという.従来の半導体加工プロセスで展開できるため,応用面での期待が高い。

電子回路はどこまで小さく…
 最近になって64MbitDRAMの試作に成功したと聞く。電子回路の集積度はどこまでも上昇しそうだ。しかし,回路マスクをシリコンウェハーに直接焼き付ける現在の方法では,いくら波長の短い光(電磁波)を使っても,加工スケールは数ナノm程度が限界といわれている.先が見えてしまっているのだ。
 そこで,原子レベルで加工できるSTM技術が注目されはじめた.原子スケールの文字を描いた技術が素子製造に直接影響するものではないが,これらの技術を研究基盤とすることで……,

アトミック素子の開発
 必要最小限の原子数個で素子をデザインする技術
アトミックメモリの実現
 原子そのものの存在配置をメモリとして利用し,現在なみの記憶容量を100万倍以上の高密度に詰め込むなども可能だ。身の回りのコンピュータに,原子レベルの加工技術で製造された電子回路が搭載されるのも,そう遠い日ではないだろう.  (福島 修市)
資料提供
●日本アイ・ビー・エム株式会社
●日本電子株式会社
●株式会社日立製作所
●日本電信電話株式会社 LSI研究所


この号の特集はHDDだった。昔はHDDの取り扱いは手間がかかった。
以下抜粋引用する。
ASCII1991(04)c02HDD写真1_W339.jpg
ただただ懐かしい。DSUBはアップルなので使ったことはないが、残りは皆使った。

まずはフォーマットについて。
 PC-9801シリーズのMS-DOS(Ver.3.3BまたはVer.3.3C)を例にとり,FORMAT.EXEの機能について見直してみよう。
 まず最初に行なうのが「初期化(画面1)」である.これは,接続されたHDDに,セクタやトラックなどを作るための作業だ。容量40MbytesのHDDならば,40Mbytesすべてに単一のデータを書き込む(画面2).
 次に,HDDの中身をいくつかの部分に分ける「領域確保」を行なう.領域確保は,「MS-DOS」,「OS/2」,「BASIC」などOSごとのHDDの使用範囲を確保し、外部記憶ドライブとして使えるように番地割りをすることだ(FATの書き込み).それぞれのOSで1Mbytes以上の任意の容量を確保できるほか,同OSでも複数の領域が利用できる.
 たとえば,1台のHDDにMS-DOSとOS/2の領域を作っておけば、HDDからOSを立ち上げる際,必要に応じてどちらかのOSを起動させることができる.また,容量40MbytesのHDDを30Mbytesと10Mbytesのように2つの部分(パーティション)に分け,それぞれにMS-DOSをインストールすることもできる。このような場合,パーティションは仮想的に1つのドライブとして扱うことができる.
 1台のHDDに設定できるパーティションの最大数は決まっている.しかし,運用しだいでは、各々のパーティションの環境を変えておき,目的に応じて起動ドライブを変更することもできる。極端な例を挙げれば,アプリケーション別のパーティションを作り,HDD起動メニューを「アプリケーションメニュー」として使うこともできるのだ(画面3).


ASCII1991(04)c03HDD画面1-3_W520.jpg
40~100M程度のHDDなのにフォーマットは時間がかかった。
私はDiskBasicなど使わなかったのでMS-DOSだけの領域で良かった。
パーティションはシステムとデータに分かるのが通常だった。システム側のパーティションがエラーのときデータが助かるからだ。OSの再インストールは何回もやったものだ。

部屋(パーティション)を作ろう
 HDDのパーティションとはどういうものなのかは,前のページで理解いただけたと思う。では,実際にどのようなパーティションを設定すれば,最も効率の良い使い方ができるのだろうか。ここで,鍵になるのが,クラスタサイズとパーティションサイズの関係だ。
 クラスタサイズ(またはアロケーションユニット容量)とは,MS-DOSが各ファイルに割り当てるディスクスペースの最小単位のことだ。たとえば,1byteの容量しかないファイルでも,ディスクの中では1クラスタ(たとえば4Kbytes)の大きさの領域が割り当てられる.
 このクラスタサイズは,パーティションの大きさによって変化する特性もある。たとえば,日本電気のMS-DOS Ver.3.3で拡張フォーマットした場合,クラスタサイズの変化はグラフ1のようになる。クラスタサイズが大きいと,小さなファイルも余計なディスクスペースを消費するので効率が悪い。たとえば,2Kbytesの文書ファイルを保存する場合,SASIタイプのHDDを10Mbytesでフォーマットした場合は4Kbytesのスペース消費ですむが,40Mbytesでフォーマットすると,4倍の16Kbytesも消費してしまう.また,ファイルアクセス速度もクラスタサイズが大きいと若干遅くなるという結果が出ている(グラフ2).SCSIタイプのHDDの場合はそれほど神経質になる必要はないが,SASIの40Mbytesクラスのドライブを使っている場合には,適当にパーティションを切り分けたほうが効率が良くなるわけだ。

パーティションの正しい活用法
 さらに実用的な面でパーティションを作る効用としては,データとプログラムを別々のドライブで管理できる点がある.アプリケーション,データ,MS-DOSなどの専用パーティションを作るわけだ。たとえば,MS-DOSのシステムを入れる専用のパーティションを作っておけば,MS-DOSがバージョンアップされても,そのパーティションだけを再度作りなおせばすみ,アプリケーションなどを再インストールする必要はない.また,不幸にもあるパーティションがクラッシュした場合でも,他のパーティションのデータは無事な場合が多く,アプリケーションとデータが一度に失われる危険は少なくなる。セキュリティの面からもデータのパーティションを別に作ることが望ましいのだ。

ASCII1991(04)c04HDDグラフ1_W520.jpg
ASCII1991(04)c05HDDグラフ2_W520.jpg
メインの用途が作成した文書ファイル等の保存だからファイルサイズは小さい。1ファイルで何Mbytesのデータを入力なんてしない。ファイル数は多くなるのでクラスタサイズは気にしていた。

ディスク高速化ユーティリティとはなんぞや
 HDDの中身はファイルの作成や削除が頻繁に行なわれ,はげしく変化している。MS-DOSは,新しいファイルを作る場合,ディスクスペースを無駄にしないために,以前に削除されたファイルが使っていた領域(クラスタ)も再利用する.このため,ファイルの削除と作成を繰り返すと、新しく作られるファイルのディスク内での状態は,図1-aに示すように飛び飛びの状態になってしまう.このような状態のファイルをアクセスすると,HDDの磁気ヘッドの動きが大きくなり,アクセススピードが落ちてしまう。
 そこで登場するのが,HDDの中身を整理して,アクセス速度を改善する、いわゆる「ディスク高速化プログラム」や「ファイル再配置プログラム」と呼ばれるものだ。これらのプログラムは,ばらばらになったファイルの配置を整理して,図1-bのようなきれいな状態にするものだ。最近の製品では,めったに削除や更新をしないアプリケーションプログラムなどのファイルを,ディスクの記憶領域の先頭に集めて,ファイルの断片化を起こしにくくする機能を持つものもある。
 HDDをどのように使っているかで効果は変わってくるが,特に大容量HDDでファイルの書き換えを頻繁に行なっている場合などには有効だ。ファイルがどのくらい断片化しているのかを調べて,数値で表示する機能を持つものがほとんどなので,ときどき使ってみて断片化がひどいようであれば,再整理をすれればよい。このようなディスク高速化プログラムは,専用ソフトの「ノストラダムス」のほか,「Norton Utilities」,「Newton-98」,「MS-DOS SOFTWARE TOOLS」などのディスクユーティリティにも付属している(画面1).


ASCII1991(04)c05HDD図1_W520.jpg
ASCII1991(04)c05HDD画面1_W520.jpg
ノストラダムスは良く使っていた。HDDは使い込むとコココ、コココと音が続きいかにもディスクヘッドがあちこち動いているなと感じた。そうなるとノストラダムスの出番だ。

昔のHDDのデータはよく飛んだ。今から思えばどうしてなんだろうと思う。
ドライブは見える,が……
 chkdskコマンドを使ったらエラーが出た──これは,「FAT」や「ディレクトリ」の異常が原因だ。
 chkdskコマンドで報告されるエラーは,主に「破損クラスタ」と「重複リンク」である.破損クラスタというと聞こえが悪いが,中身が壊れているわけではない。どのファイルも使っていないはずなのに,FATの上では「使用中」になっているクラスタをこう呼ぶ(図2).MS-DOSではクラスタは,ファイルによって専有されているか,未使用であるかのどちらかだから、そうでない領域があるのはおかしい.それをchkdskコマンドが報告してくれるわけである。
 一方,重複リンクのほうは,ディスク上の同じ領域を,複数のファイルが持っているという状態を指す。MS-DOSでは,ある領域を複数のファイルが同時に持つということはありえないので,これも異常である,というわけだ.
 ワープロで文書を読むと途中で切れるといった事態では,FATのエラーの可能性が高い(図3)。途中で勝手に終わりになっていたり、本来読み出すべきところとは違うところを読むように書き換わってしまっているのだ.
 dirをとると変な文字が出たり,ファイルがとんでもないサイズになっていたりするのは,ディレクトリが不正に書き換えられていると考えられる.

悪いのは機械ばかりではない
 間違って「del *.*」してしまった,それどころか「format」してしまった.*.*とはいわないまでも、必要なファイルを削除するというのはよくやるミスだ。
 delするとどうしてファイルがなくなってしまうのか.それは,ファイル名の頭文字が16進数の「E5H」という数値に書き換えられているからである.E5Hというのは「このファイルは削除されたので存在しません」というマーク,dirコマンドなどはこれを見て,「あ、ここにはファイルはないんだな」ということで,表示してくれなくなる.
 逆にいうと,delコマンドによって永久に葬り去られるのは、1ファイル名の最初の1文字と2ファイルがディスク内のどこを専有していたかという情報だけだ。削除した直後なら,ファイルの内容はまだディスクの中に残っている.b  これに対して,formatをしてしまった場合は救いようがない。ディスクの中を特定の数値で埋め尽くしてしまうからだ


ASCII1991(04)c06HDD図1_W520.jpg
ASCII1991(04)c07HDD図2_W520.jpg
ASCII1991(04)c07HDD図3_W520.jpg
間違えてファイルを消すのは良くある話でマーフィーの法則ではないが、普段はコマンドやファイル名をタイプミスして「コマンドまたはファイルが見つかりません」とMS-DOSが返すのに間違えて削除するときに限って正しくコマンド、ファイル名を投入し、消してしまう。修復は何度もやった。

chkdskでエラーが出るんですけど
破損クラスタがある場合
 破損クラスタが報告される場合,それはたいてい、ほかのファイルの後ろの部分がちぎれて浮かんでいるものである.この場合は迷わず「chkdsk /f」と入力し,「破損クラスタを修復しますか?」に対して「Y」を応える。そうすると,FILE0000.CHKといった名前のファイルが(場合によっては複数)作られる。これが,破損クラスタを無理やりファイルにしたものである.
 さて,もしこれが他のファイルのちぎれた部分であるとすると,逆にどこかのファイルがしり切れとんぼになっているはずだ(図1)。この場合,ディレクトリに書いてあるファイルサイズに比べて,実際にディスク上を専有している大きさが小さくなってしまうため,chkdsk /f時に「サイズを調整しました」と報告される.ファイル名も表示されるので,こいつの後ろに先程の「CHK」ファイルを追加してやればうまく戻る可能性がある.ただ,テキストファイルならエディ夕か何かでくっつけたほうが安心だ.

重複リンクしている場合
 重複リンクはchkdsk /fでも解消されないが,これは放置すると危険である.同じディスク領域を2つのファイルが利用しているということは,片方を消去した場合に,もう片方のファイルについても、重複リンクしている部分以降が消えてしまうことになるからだ(図2).
 妥当な解決策は,重複リンクしているファイルをすべて別ファイルにコピーしてから,オリジナルを全部削除してしまうことだ。こうすることで重複リンク状態は解消され,2つのファイルの内容も残る.


ASCII1991(04)c08HDD図1_W520.jpg
ASCII1991(04)c08HDD図2_W416.jpg
間違ってファイルを消してしまった
 事故としては最も多いのが、うっかり「del *.*」してしまうケースだ。これに対しては,上記3本のソフトがいずれも解決策を用意している。一般にundeleteと呼ばれる機能で,フリーウェアやMS-DOS SOFTWARE TOOLSなどにも類似のソフトがある.
 手軽さという点ではエコロジーIIとNewton-98(以下ニュートンと略す)が出色。これらはツリー表示やアプリケーションの実行もできるシェル的な存在だが,エコロジーならUキーを、ニュートンならメニューからファイル復活を選ぶだけで,まるでファイルがあるかのように,削除されたファイルを表示してくれる(写真1).復活させたいファイルを指定し,失われた最初の1文字を入力すれば復活完了だ.
 Norton Utilities(以下ノートンと略す)では,簡易版のQU(Quick Unerase)と,重症のときのためのNU(Norton Utility)を用意している。機能的にはQUが,ほかの2本の「自動復活モード」にほぼ相当する.

undeleteの仕組みと限界
 undelete機能はしばしば「直後なら大丈夫」といわれるが,実際はそんなに簡単なものではない.削除されたファイルがディスクの「どこから入っていたか」は分かるのだが,「どことどこに散らばっていたか」という情報は残されていないのだ。そこで,undeleteプログラムは,開始位置から後ろへ空きエリアを順番に確保していく.ファイルの作成/削除を繰り返したディスクでは,削除した直後でも失敗する可能性がある(図3).
 失敗した場合に備えて,各ソフトとも「マニュアル」モードも備えている.間違ったセクタを人力で振り分けさせるというものだ。人間が判断するのだから,目で見て読めるようなデータに限られる.実行ファイル,データベースのファイル,表計算のファイルは読めないし,ワープロだって一太郎Ver.4や新松は独自フォーマットの文書ファイルを出力する.undeleteを過信するのは避けるべきだ。

undeleteを完璧にする
 ところが敵(?)もさるもの,ノートンとニュートンでは,FATとルートディレクトリの内容をファイル化する機能を持っている。このデータを連動させれば,消されたファイルの名前が何で,ディスク内のどの位置にあったかまですべてお見通しだ。ノートンではfr/save,ニュートンではdiskopt/saveとすることで情報ファイルが作れる.AUTOEXEC.BAT内に記述しておくと,手間も省けるし忘れずにすむので便利だ。ただ,情報を保存した後で作ったファイルに関しては効果がない.
 また,速度向上の意味も込めて,こまめにディスクの並べ替えを行なうのもよい.ノートンのSD(SpeedDisk),ニュートンのDISKOPTなどを利用すると,こまぎれになっているファイルをきちんと並べ替えてくれる(写真2).順番にさえ並んでいれば,たとえ情報ファイルがなくても,undelete機能が正確に動作する.

ディレクトリ整理のもうひとつのメリット
 undeleteの際に,事をやっかいにするのが「汚いディレクトリ」である.ファイルを作ったり消したりを繰り返していると,「復活させると同じ名前になってしまうファイル」がディレクトリに2つも3つもあったりする。もちろん正解はひとつだけだから,間違うと変なところを復活させてしまったりしかねない.
 そのために、日ごろからディレクトリはソートしておいたほうがいい。ノートンのDS,ニュートンやエコロジーのソート機能のほか,シェルの機能としてディレクトリソートができるものもある.ソートしてあれば,ファイルのエントリは上から詰めて並べられるから,同名ファイルがあっても正解は常に一番上に来る。


ASCII1991(04)c09HDD写真1-2_W520.jpg
ASCII1991(04)c09HDD図3_W520.jpg
ディレクトリのソートは習慣化していた。

FATが飛んだ,ディレクトリが壊れた
 プログラムのバグなどで,FATやディレクトリが壊れることがある。ここにでたらめなデータが書き込まれると,HDDのファイルアクセスはほとんど不可能になってしまう.
 まだいくぶんなりともファイルが見えるようなら,必要なものだけをとりあえずバックアップする.chkdsk /fも行ない,作られた「CHK」ファイルを片っ端からダンプして素性を確認し,正しい名前にして,これも保存する.
 重要なものがまだディスクのどこかに残っているはずなのにファイルとして残っていない,という状況では,ソフトウェアで探すしかない。ここで便利なのが,MS-DOS SOFTWARE TOOLSにある「NOMORE」というプログラムだ。これは,ディスク上の未使用領域をすべてまとめてひとつのファイルにする,という機能を持っている。そのファイルをエディタ(バイナリモード)でオープンすれば、必要な部分がファイルに書き出せるというわけだ(写真3)。
 NUも強力だ.FATやディレクトリが完全に破壊されていても大丈夫.データサーチ機能を併用してファイルの断片を探し,それを別のディスクにファイルとして書き出すことができる(写真4).

FATのバックアップは常識だ
 上のような手段は,大容量のHDDが相手ではかかる手間も時間もばかにならない.ところが,前述したようにFATとディレクトリが保存してあれば話は早い.どんな壊れ方をしていようと,保存データが生きていれば、ほぼ完璧な復活が期待できる.目ではまず復活できないバイナリファイルも大丈夫だ。その意味でも,FATとディレクトリはぜひ保存しておきたい.

ASCII1991(04)c10HDD写真3-4_W520.jpg
「FATのバックアップは常識だ」と書かれているが、バックアップしたことがない。知人でバックアップしてる人もいない。常識は筆者周辺のことだろう。
間違えてフォーマットしてしまった
 ハードディスクをうっかりフォーマットすることはそうそうないにしても,フロッピーでは可能性もなくはない.あるいは,いらないと思ってフォーマットしたディスクに大事なデータが入っていた,というのもたまにあることだ。
 本来ディスクというのは,物理的なフォーマットが終わっていれば,あとはFATとディレクトリをクリアするだけで見かけ上まっさらになるのに,DOSのformatコマンドはごていねいにもディスク全域を塗りつぶしてくれる.これでは復活のしようがない.
 そこで,ノートンとニュートンは,セーフフォーマットというフォーマットプログラムを用意している.これは,データ領域には手を付けず,FATとディレクトリ領域だけをクリアし,そのオリジナルはディスクの後ろのほうの空き領域にとっておくというものだ(図4).前述したFATをファイル化する処理(fr/saveなど)とほぼ同じだが,フォーマットの場合,ディスク上にファイルを残すわけにはいかないので,ファイルとしてではなく,こっそりデータを書き込んでおく点が異なっている.
 DOSのformatコマンドはformat.oldに,セーフフォーマッタをformat.exeにそれぞれリネームしておけば,事故はさらに減るだろう.もちろんセーフフォーマットはHDDに対しても有効だ。


ASCII1991(04)c10HDD図4_W520.jpg
これは使ったことがない。FDDを間違えてフォーマットしたことはない。

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:パソコン・インターネット

PC-9801DA,TERA DRIVE,J3100ZX他(月刊ASCII 1991年4月号3) [月刊アスキー廃棄(スクラップ)]

PRODUCTS SHOWCASEをスクラップする。

PC-9801DA
ASCII1991(04)e01PC-9801DA_W520.jpg
ASCII1991(04)e02PC-9801DA写真1-2_W411.jpg
ASCII1991(04)e02PC-9801DA写真3_W363.jpg
ASCII1991(04)e02PC-9801DA写真4_W189.jpg
ASCII1991(04)e02PC-9801DA図2_W446.jpg
ASCII1991(04)e04PC-9801DA写真5-6_W409.jpg

一部抜粋スクラップする。
PC-9801DAは前機種のPC-9801RA21とほぼ同じで評価に困っていた。
■FM音源を買わなくてもいい
 DA/DSではFM音源が標準搭載されている(写真4)。これは日本電気の80386マシンでは初の快挙である.スピーカとLINEOUT端子も付いている。追加の出費やスロットを専有されることもなく,ゲームや簡単なコンピュータミュージックが楽しめる.
 80386マシンでは,HDDやEMSメモリの利用は必然といえるが,この2つとFM音源を同時に使うことは一般にできない。従来のマシンでは,FM音源ボードを抜くか,内蔵マシンではジャンパの差し替えといった作業が必要だった。
 これがDA/DSでは,前述のシステムメニューでFM音源を(正確にはサウンドBIOSを)切り離すことができる(画面2).システムメニューにはこうした,ディップスイッチとは関係のないメニューもいくつか入っている.
 もっとも,最近のゲームなどではFM音源チップをI/Oポートから直接制御するものも多く,切り離さずに動作する可能性も高い。

 快挙?FM音源を積んだことが。なんともはや。情けない快挙だ。これは8bit機でできたことが32bit機のPC-9801DAでもできるようになったということだ。

■お買い得感は大きく上がった
 今回の機能上昇は,FM音源ボードの搭載のほかは,HDDとグラフィックの機能向上という,比較的分かりにくい形で行なわれた.一番目につくのはやはり低価格化であろう.
 RS21と比べると,DSはFDDモデルで4万円,HDDモデルでは6万円,価格が下げられている.DAのほうは,RA21比でFDDが5万円,HDDが7万円下がった。価格2万5000円のFM音源ボードのことも加味すれば,かなり大幅な値下げといえる.
 価格のリストを見ると,DSの割安感が目立つ。386SX(16MHz)マシンが,286(12MHz)のDXより4万円しか高くないわけだから,386CPUの数々のメリット(高速,Windows 3でのマルチタスク,プロテクトメモリを多彩に利用できるなど)を考えればDSを選びたくなる.ただこれでも,ほぼ同スペックのPC-386Mよりはまだ2万円高い。
 DAはDSよりクロック周波数が4MHz高く,1Mbytesのプロテクトメモリを標準実装しているわけだが,9万円高いとなると判断は難しい。ただ,Windows 3のようなグラフィックベースの環境では16MHzで十分ということはなく,クロックは1MHzでも速いほうがいい。しかし,ハイエンドの余裕あるCPUパワーが欲しいのなら,25MHzマシンに目が行く.エプソンのPC-386S(386/25MHz)は,メインメモリも同じでEGCも搭載し,違いはFM音源がない点だけだ.速度差は1.25倍あって,価格は5万円高いだけということになる.

 価格をまとめておく。
DA2(80386,20MHz/RAM 1.6M) 44万8000円
DA5(80386,20MHz/40M-HDD/RAM 1.6M) 59万8000円
DA7(80386,20MHz/100M-HDD/RAM 1.6M) 69万8000円
DS2(80386/SX,16MHz/RAM 640K) 35万8000円
DS5(80386/SX,16MHz/40M-HDD/RAM 640K) 50万8000円
UR(V30HL,16MHz/RAM 640K) 21万8000円
UR/20(V30HL,16MHz/ 20M-HDD/RAM 640K) 34万8000円
UF(V30HL,16MHz/RAM 640K) 21万8000円

よくもまあ私たちはこんな高いものを買って遊びに使っていたものだ。本体だけでこの値段でモニタは別売だ。5年経ったら1996年でもうWindows95では苦しいマシンだ。それを考えれば今のスマホの安いこと。ここでもWindows 3を使うには速度だという趣旨のことが書かれているがそれは違う。グラフィックの解像度だ。しつこいけど640×400ドットでマルチウィンドウって使い物になると思っていたのか。

■速さをとるか,便利さをとるか
 UFとURはともに21万8000円.今さらUV11と比べるのもなんだが,クロックが6MHz速くなって,4万7000円安くなったことになる。機能的にはNV(24万8000円)相当なので,液晶ディスプレイ代をまけてくれたというところだ。ベンチマークテストの結果は,予想どおりほぼNVと同じである(図5)UV11との比較では,クロック比の1.6倍以上になっている.DXとの比較は難しいが,足し算と画面関係は劣勢,かけ算はほぼ互角,NOPはUF/URのほうが速いDXのクロックが12MHzだから,UR/UFは80286換算で10MHzくらいにはなりそうだ。
 そのDXは10万円高い。動作速度は多少速いという程度であるから,UR/UFは割安といえよう。ただ,CPUがV30ということで,Windows3などプロテクトメモリを利用する環境は利用できなくなる.一方,この程度の速度があれば,たいていの用途には十分なパフォーマンスが得られる.ワープロに,表計算に,お絵描きに,音楽に,通信に,ゲームに,ソフトにもよるがまず問題はあるまい。スロットも2つ装備し,メモリはカードで増やせるから,拡張性もまずまずだ。用途がはっきりしている人には安さがとりわけ魅力的に映るだろう.
 NVと比較すると,拡張性とカラーモニタを接続できることがメリット,携帯利用できない点,モニタが別に必要である点がデメリットだ。ただ、長時間使うには,液晶ディスプレイと小さなキーボードはつらい。安価なファーストマシンとしてNVを選ぶつもりなら,UF/URのほうがお勧めできる.
 最後の選択はUFかURか,である.価格は同じなのであるから,動作速度の点から考えれば,FDDより断然高速なRAMドライブを内蔵したURのほうがいいように思う。特に起動時のRAMディスクの速さは爽快ですらある(図6).ただ2枚以上のプロテクトディスクを持つようなプログラム(ゲームなど)は,URでは動作が期待できないから,安全性をとるなら2FDDのUFということになる.  (野口)

 当時このような記事を参考にマシンを買った人は可哀そうだ。いやいや、記事云々ではなくパソコンを買うこと自体可哀そうなことだった。パソコンを触っている時間を何十万もの金をつぎ込んで買っていたのだが、無駄な時間だったと思うが、他のことに時間を費やしても無駄だったと思う。ビール飲みながらTVを見たり、夜な夜な飲みに行ったりするのと大して違いはない。パソコンを触っていると夜遊びができなかった。

ASCII1991(04)e06TERADRIVE写真1-2_W447.jpg
TERA DRIVEはセガと日本アイ・ビエムの共同開発によるマシンで,IBM PC/AT用ソフトが走り,かつメガドライブのゲームが楽しめる家庭用低価格パソコンという位置付けがなされている(写真1,2).ソフトウェアで日本語処理を実現したと話題のIBM DOS Ver.J4.0/Vがバンドルされ,DOS/V対応の日本語アプリケーションが利用可能だ。
 こんな機械があったとは覚えていない。今読み返すと良い機械のように思う。
ASCII1991(04)e06TERADRIVE写真3_W380.jpg
ASCII1991(04)e07TERADRIVE仕様_W485.jpg
ASCII1991(04)e07TERADRIVE図1_W520.jpg
日本語ソフトは何が使えるか
 現在,DOS/V対応の日本語アプリケーションソフトとして,一太郎dash,Lotus1-2-3,MIFESなどが予定されている.セガからは,パーソナルユース向けのワープロやスプレッドシート,名刺管理ソフト,ゲームのコンストラクションツールなどが発売されるという.PC側とメガドライブ側をパラレルに走らせることも可能だから,“パパが専用ディスプレイで1-2-3を使っている反対側で、僕はテレビでメガドライブのゲームをプレイ”といった,ホームパソコンを絵に描いたような図も,あながちあり得ないとも言えない.
 家庭用パソコンの皮を被ってはいるものの、実力と拡張性のあるハイ・コストパフォーマンス機と言えそうだ。  (河村)

 覚えていないということは売れなかったのだろう。

J-3100ZX
ASCII1991(04)e08J-3100ZX_W520.jpg
ASCII1991(04)e08J-3100ZX画面1-2_W520.jpg
ASCII1991(04)e09J-3100ZX写真1_W327.jpg
ASCII1991(04)e10J-3100ZX1写真2_W352.jpg
ASCII1991(04)e10J-3100ZX写真3_W299.jpg
486ハイエンドマシンと386SX普及型マシン
 ZXはJ-3100シリーズで初めてCPUに486を搭載する。クロック周波数は33MHzで,486には数値演算コプロセッサとキャッシュメモリ(8Kbytes)が内蔵されている.ZSは20MHzの386SX,数値演算コプロセッサには387SXを搭載可能だ。従来のJ-3100シリーズではクロック周波数20MHzの386を搭載したSGX,20MHzの386SXを搭載したGXSが上位機種であった。
 メインメモリはZXは標準で4Mbytesが搭載されており,メモリ拡張スロットに最大36Mbytesまで拡張可能だ。ZSは標準で2Mbytes,最大10Mbytesまでだ.J-3100SGXが標準で2Mbytes,最大12Mbytesまで拡張可能だったのに対しZSでは3倍の容量のメモリを使用できることになる.
 ZXの表示機能はVGAを標準搭載し,解像度640×480ドット,26万色中256色同時発色の高い表現力を持つ(画面1)ただし,VGAをサポートしているのは別売の英語DOSのみで,付属の日本語MS-DOSVer.3.1使用時には従来どおりの640×400ドット,16色表示となる.ZSは英語DOSで使用してもEGA表示だ(画面2).VGAカードも利用できる.オプションのマルチモードカラーディスプレイ(14万8000円)はVGAとEGAの両方のモードで使用可能だ。
 VGAモードで日本語を使用できるDOSに日本アイ・ビー・エムのDOS J4.0/Vがある.東芝ではDOS J4.0/Vのサポートを予定しているといわれる.


 486マシンの価格を比べてみると,PC-H98model100は100MbytesHDD内蔵で215万円,PCX-700は250MbytesHDDモデルで245万円,J-3100ZXは170MbytesHDD内蔵で215万円となっている。200万円を超える価格はパーソナルユース向けとは言い難く,ビジネスや開発環境といったプロユースでの製品だ。
 ZSは041モデルで48万8000円であり,PC-9801DSよりも2万円安く,PC-386VRとは同一価格だ。従来のJ-3100シリーズと比較すると,20MHz386を搭載し100MbytesHDDを内蔵するSGXは128万円,20MHz386SXで40MbytesHDDを内蔵するGXSは79万8000円となっている.モニタの価格(14万8000円)を加えても,ZSのほうがGSXより16万2000円安価で,SGXに比べると半額以下の価格だ。コストパフォーマンスが高くカラー表示も可能なので,J-3100シリーズを導入しているオフィスやパーソナルユーザーにとって手頃なマシンだ。
 J-3100シリーズはビジネス指向のマシンというイメージが強いものの,DynaBookシリーズによって個人ユースでの市場が広がった.DOSJ4.0/Vの市販やTERAの登場により,日本国内でのIBMPC(および互換機)の話題が盛り上がりつつある.ハイエンドのZX,普及型のZSという2機種のデスクトップJ-3100の登場は,そういった動きにいっそう拍車をかけそうだ。  (行正)

 値段から一般ユーザには関係のない機械だった。

Palm Top PTC-550
ASCII1991(04)e11PalmTop_W501.jpg
ASCII1991(04)e11PalmTop写真1_W368.jpg
ASCII1991(04)e11PalmTop写真2-3_W520.jpg
 ASCII1991(04)e12PalmTop画面1_W513.jpg
ASCII1991(04)e12PalmTop画面2-3_W397.jpg
Palm Top PTC-550
成熟期に入った?手書き入力
 昨年4月に前機種が発売されたときには「手書き入力」というだけで話題になったものだ。認識率の改善のほか,かな漢字変換操作が,変換範囲を指定するだけで一発で行なわれるようになった。また,スケジュール入力や用件入力プレートも改善されている(画面1).
 PalmTopに対するすべての文字入力は,「道具」のひとつである「活字プレート」を使用して行なう。活字プレートでは手書き入力以外にもあらかじめ登録した短文を選択して入力するモードや、覧表やコードによって文字を直接指定するモードなどが選べる.
 手書き入力では,ひらがな、カタカナ,アルファベット,漢字等の文字種をあらかじめ指定することなく,すべて自動的に認識させることが可能である.漢字を書くのが面倒なときや字を忘れたときは,かなで入力して漢字変換すればよい。このときは,すでに入力した文字枠の下にあるバーを,ペンで下線を描くようになぞるだけで,変換の範囲指定と変換操作が同時にできる.また,「や」と「や」,「-(ハイフン)」と「一(音引きのように,見ただけでは区別できないような文字については,文字枠の下に,文字種が小さな文字で表示される.
 活字プレートに一度に入力できるのが8文字に制限されているせいかもしれないが,キーボードに慣れきっている人間にとっては手書き入力はやはり少々かったるい.単なるメモをとりたい場合などは,活字プレートを使うより,「図形」ツールの自由曲線(鉛筆)を使ったほうがはるかに楽だ.
 しかし,住所録など,入力する文字数が少ない場合,キーボードが苦手な人にとっては,手書き入力はありがたいものだろう.活字プレートは今でも十分実用に耐えるが,文字認識をより高速にする,認識率を上げるなど,さらなる改善も期待したい。
 安くなったとはいえ,16万8000円というお金は,おいそれと出せるものではない.3~4万円台の電子手帳と比較した場合,はたしてこの価格差に見合うだけの機能があるかどうかは疑問だが,先進的なハード,ソフトを備えているだけに,魅力的な商品であることは確かだ。今はApple社にいるアラン・ケイ氏がまだXerox社のパロアルト研究所にいたころ,非常に高度なノートブック型のパーソナルコンピュータのコンセプトを発表した。これは「ダイナブック」と呼ばれ,いまだに実現されていないにもかかわらず,決して忘れ去られることのない不思議なコンセプトなのである。このPalmTopがこのダイナブックに今一番近いマシンなのかも知れない。  (多橋)

 「成熟期に入った?」これはない。このような端末は入力用ではなく表示用端末だから入力が貧弱でも良いのかもしれない。

編集室からに関連記事があったのでスクラップする。
GUI,CUI……PUI?
▲TrendLetterfromUSAの脇山氏のレポートにもあったように,ペン入力のユーザーインターフェイスが注目を集めている。海外に目をやるまでもなく,SONYのParm Topや京セラのRefaloが,すでにタッチペンによる操作で商品化されている.ただ,Go社のPen PointやMS-Windows 3.0にエクステンションで付けられるというPen Windowsは,単独の商品ではなく,OSというより普遍的なマーケットをねらったものだ。
▲Pen PointやPen Windowsで面白いと思ったのは,「ジェスチャ」という言葉が出てきたという点である。往年のNHKのテレビ番組ではないが,具体的なコマンドの入力やアイコンのクリックではなく,ペンの「動き」でこちらの意志をマシンに伝えようというものだ.本当にちょっとしたことなら、慎重にマウスを操作してアイコンを目で確認してクリックするといった操作はしたくないという主張だろう.
▲マウスとアイコンを主体にしたインターフフェイスは,総合的には快適な操作環境を提供するはずだが,それがすべてではもちろんない.1988年にApple社が示したナレッジナビゲータでは,声がコンピュータとのインターフェイスになっているし,ビバリウムプロジェクトもある.ペンの「動き」によるインターフェイスは,それまでの間を埋めるものになるのではないかと思う.
▲実は,「ジェスチャ」のようなインターフェイスは,かなり前からCADのシステムなどでは登場していた.まだマウスも普及していなかった時代に,タブレットでグリグリとペンを回すと画面がスクロールしたり,ペケをくれると特定の機能を提供するといったシステムがあった.
 問題があるとすれば,マウス以上にキーボードとの親和性に乏しいということだろう.ペンによるユーザーインターフェイス(PUI?)は,今後どのように受け入れられていくのだろう.
(遠藤 諭)


 パソコンとの親和性はなかった。タブレット端末になって客と対面で作業するときに便利な機能だが。お絵かきソフトでは液晶タブレットでペンは優れた入力デバイスとなった。

Macintosh LCの記事があった。Macは美しいので機体と画面の写真をスクラップする。
ASCII1991(04)k02MacLC写真1_W473.jpg
ASCII1991(04)k02MacLC写真2_W520.jpg
ASCII1991(04)k02MacLC写真3_W327.jpg
ASCII1991(04)k03MacLC写真4_W513.jpg
ASCII1991(04)k03MacLC写真5_W310.jpg
ASCII1991(04)k03MacLC写真6_W373.jpg
ASCII1991(04)k05MacLC図1_W520.jpg
ASCII1991(04)k07MacLC図2_W520.jpg
ASCII1991(04)k07MacLC図3_W520.jpg
ASCII1991(04)k08MacLC図4_W520.jpg
ASCII1991(04)k08MacLC図5_W520.jpg
筐体のデザインが優れているのはもちろんソフトもWindowsのソフトと比べセンスの良いものとなっている。

「ノート道」にJ-3100SXの記事があった。
ASCII1991(04)f04J-3100SX写真1_W520.jpg
ASCII1991(04)f05J-3100SX写真2_W520.jpg
ASCII1991(04)f05J-3100SX表2_W520.jpg
高い処理能力に不釣り合いの液晶ディスプレイ
 SXの処理能力の高さはノート型マシンとしては最高クラスに位置する.ベンチマークテストの結果を見ても,80286搭のJ-3100GSの平均1.7倍のパフォーマンスを持ち,他の386SX搭載ノート型マシンと比較しても最高の結果が出ている.
 画面表示の速度もCPUパワーの向上につれて速くなっているのだが,肝心の液晶モジュールは従来の製品と変わっていないようだ。テキスト画面をスクロールさせると,表示が流れてしまって判読できなくなる。特に寒い部屋などでパネルが冷え切っていると,使いものにならない。コントラストや明るさは,FLサイドライトの威力もあって十分なのだが、この反応速度だけはなんとかしてほしい。SXの記者発表会ではWindows 3のプロトバージョンのデモを行なっていたそうだが、マウスカーソルの動きにこの液晶が追従できるかは、はなはだ疑問だ。せめて、PC-386NOTE A並みの白黒液晶をおごってほしかった.
 コストパフォーマンスではノート型マシン最高のSX32bitCPU搭載のノート型マシンの中で,SXは最も安い製品だ。FDD1台モデルの比較で,PC-386NOTE Aの3万円安,PC-9801NSの8万円安になる. 対応アプリケーションの都合などでPC-9801アーキテクチャでなければならないユーザーは別として、性能拡張性,価格のいずれを考慮しても、現在最もお買い得なマシンといえるだろう。セカンドマシンとしてはもちろん,こなれたアーキテクチャで動作が安定している点を考えれば, 1台目のマシンとして購入するユーザーにもお勧めできる.  (竹田)

 お勧めしないで欲しいと思った。

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:パソコン・インターネット

パソコン、ハードソフト、その他(月刊ASCII 1991年4月号2) [月刊アスキー廃棄(スクラップ)]

ASCII EXPRESSをスクラップする。

エプソンが80386/SXマシン2機種を発売
ASCII1991(04)b05エプソン80386SXマシン_W520.jpg
PC-386BOOK Lの価格は37万8000円

日電,32bitラップトップマシン2機種を発売
ASCII1991(04)b12日電32bitラップトップマシン_W520.jpg
N5200モデル03LCの価格は135万円
一般ユーザが買うパソコンのレベルではない。

I・OデータがPC-9800シリーズ拡張スロットを応用した「98セカンドバス」規格を発表
ASCII1991(04)b17アイ・オー・データ98セカンドバス_W520.jpg
親亀の上に子亀を乗せてという感じのもの。使ったことはないが、良いと思う。

エプソンが200MbytesのSCSIハードディスクを発売
ASCII1991(04)b07エプソン200MHDD_W520.jpg
価格は34万8000円

テクノジャパンがPC-9800用の低価格ハードディスクを発売
ASCII1991(04)b07テクノジャパンPC-9800用HDD.jpg
130MbytesのPD130GSXの価格は16万8000円

アイシーエムが容量40Mbytesの2.5インチHDD製品群を発売
ASCII1991(04)b17アイシーエム40MbytesHDD_W520.jpg

日本電気が200M}FLOPS達成のベクトルプロセッサを開発
ASCII1991(04)b10日電200MFLOPSのベクトルプロセッサ_W520.jpg
ベクトルプロセッサという用語には憧れていた。大型コンピューターでFORTRANのDOループでしか使えない機構だということでいつかは使えるといいなと思っていた。今では当たり前の技術になった。

米NS社が100MIPSの64bitRISCプロセッサを発表
ASCII1991(04)b11米NS社100MIPSの64bitRISC_W520.jpg

富士通研がジョセフソン素子用の24bit加算器を試作
ASCII1991(04)b10富士通ジョセフソン素子_W520.jpg
まだジョセフソン素子という用語が出てきている。いつになったら消えるのか。この記事あたりが最後かもしれない。

日立が世界最小のDRAMメモリセル構造と開発
ASCII1991(04)b10日立世界最小DRAM_W520.jpg

東芝がチップサイズ世界最小の64MbitDRAMを開発
ASCII1991(04)b11東芝世界最小64MbitDRAM_W520.jpg
この時期も日本の半導体技術は世界初というレベルの製品を開発することができた。

メルコが98NOTE用の1.5MbytesSRAMカードを発売
ASCII1991(04)b11メルコ98NOTE用SRAMカード_W520.jpg
不揮発性のメモリカードが発売されるようになった。
1.5Mbytesで9万8000円

三菱が大容量メモリカード2品種を開発
ASCII1991(04)b11三菱メモリカード_W520.jpg

富士通が日本語MS-Windows3.0とNetWare386を発売
ASCII1991(04)b13富士通Win3_W520.jpg
どの位売れたのだろうか。

NKK,OA機器を装備した小型ブースシステムを発表
ASCII1991(04)b04NKK-OA機器を装備した小型ブースシステム_W520.jpg
この後このタイプのものは駅などに設置されたような記憶がある。そのたびにTVで新しいものだと紹介されていた。全然新しくないって。知らないのはお前だ。

ソニー,米Apple社と提携で携帯型コンピュータを開発
ASCII1991(04)b16ソニーApple提携携帯型コンピュータ_W520.jpg

米国ハイテク産業の動向をスクラップする。
Pen Point from Go
 2月に入ってGo社が異常な注目を集めている.1月末に,同社の新しいOS,「PenPoint」が発表されたからだ.PenPointはその名が示しているようにペンを入力デバイスとした新しいタイプのOS.このOSでは今までのキーボードやマウスにかわって,11種類の「基本ジェスチャー」を組み合わせてコンピュータに動作を指示する.

ASCII1991(04)b18表1PenPointジェスチャー_W520.jpg
 ネットワークに関してはApple社のAppleTalkをライセンスして標準でサポートする。またGo社は同時に2種類の開発プログラムを発表。1つは,2000ドル出せばPenPointとプログラミングツール,開発用資料一式が入手でき,5日間の開発コースにも参加できるというもの。さらに本格的に開発をしたければ,7870ドルの企業向けプログラムがあり,Go社が開発したサンプルハードウェアがついてくる.
 今回発表されたのは286で動作するプロトタイプバージョンだが,最終製品は386以上のみで,特に386SXを用いた低価格のノートブックタイプのマシンをターゲットにしている。最終版の出荷は今年の終わり頃か来年早々を予定.同社は当初計画されていたノートブック型のプラットフォームの販売はあきらめ,OSのOEMに徹することでMS-DOSのように業界の標準OSとなることを目指しているようだ。
 Go社のセンセーションには,同時に発表されたWilliam Campbellの同社社長就任も一役買っている。CampbellはApple社のソフト子会社,Claris社の社長を約3年間つとめた人間で,Microsoft社に次ぐソフトの大手に育て上げた業績は高く評価されている.この大物移籍がGo社のクレディビリティ向上に大きく寄与している点は見逃せない(この移籍には,Claris社のApple傘下再編入事件が影響しているとみるアナリストも多い)。やはりIBMやNCRなど大企業とわたりあうならばそれなりの看板が必要ということで,今のところはGo社の思惑通りにことが運んでいるようだ。
 PenPointに対しては,IBM,NCR,GRiDなど大手PCメーカーも含めてすでに30社以上が導入を考えている.IBM社のJim Cannavinoなどは「これはまったく新しいマーケットであり,まったく新しい方式だ」と,大変な熱の入れようだ。IBM社はPenPoint搭載のノート型マシンを今年後半には一部の限定ユーザーを対象に出荷を開始したいとしている。一部のアナリストは,PenPointの出荷予測を'91年度中に4万5000台,'95年までには125万台とするものもいる。いずれもペンOSが新しいパラダイムとして単独でMS-DOSのようなマーケットを生成することを期待しているわけだが,もちろん期待通りすべてがうまくいくという保証はない.バーティカルなマーケットではある程度の売り上げは期待できるが,汎用OSとして一般に普及するにはアイデア不足という声も根強い。「PenPointはマウスをペンに置き換えただけ。しかもペン入力は何も今始まった話ではない」とか「デスクトップでの利用ではどうしてもキーボードは必須となる」というのが主な意見だ.また競合の動きも気になる.Microsoft社はMS-Windows3.0にペン入力ができる拡張版「PenWindow」をすでに開発中であるしApple社もMacOSにペン入力拡張を考えている.ノートブック型のMacはペン入力ができるようになるという噂もある。こうなると,バーティカルなマーケットでさえこうした既存OSに侵食されてしまう可能性もあるわけだ。


ASCII1991(04)b19図1PenPoint _W378.jpg
 Pen入力の方式は電子手帳の他、ゲーム機のニンテンドーDSで採用されたのが記憶に残る。MS-DOSのようなパソコンのOSに取って代わるものでは無かった。
M&A話2件
 Lotus社が電子メールソフト(俗にいうE-mail)を開発,販売している「cc:Mail社」を買い取ることになった.cc:Mail社はE-mailに関する最大手で,パソコンのE-mail分野では約35%のマーケットシェアを持つ(といっても社員50名程度の中堅企業だが)。今までに80万セット以上を販売しており、昨年度の売り上げ高はおよそ1200万ドル(約15億円)買い取り価格は公表されていないが,大体3000万ドル前後(約40億円)になるという.米国ではLANのインストールがこのところかなり急ピッチで進んでおり,これに伴ってE-mailの需要も急上昇している.
 ちなみに,'90年度でE-mailシステムの総売り上げ高は9400万ドル,'94年までには約4倍の3億5000万ドルもの市場規模の拡大が予想されている.また,Lotus社としてはcc:Mailから,ワークグループソフト「Notes」にアクセスできるようにすることでNotesの機能を拡充したい考え。今年の秋から冬にかけて,cc:Mail-Notesゲートウェイバージョンのリリースを開始する予定だ.
 Lotus社としては2カ月前にWindows3.0対応ワードプロセッサAmiのSamna社を買い取ったばかり(このときの買取価格が大体6500万ドルだったといわれている)。このところ中堅企業を積極的に買い取る動きに出ている.今でも同社の約6割の売り上げを占める1-2-3から,徐々に他のソフトに重点をシフトさせていきたい点が一連の買い取りの主な動機だ.最近正式なリリースが開始されImprov(今のところNeXT版しか出ていないが)もまた同社の重点シフトの一環。Windows3.0の登場で,Excelなど強力な競合が次々と出てきているなかで,スプレッドシートの専業メーカーに終わりたくないというJim Manziの戦略を反映した結果だ.特にネットワークは同社の最大の関心事で,失敗に終わった昨年度のNovellとの合併話もこうした背景を持っている。まあ、Novellを買い取るのに比べれば,一連の中堅企業吸収劇はまだまだ安い買物なのかもしれないが,ネットワークを中心にしたLotus社の戦略展開は今後注目に値する.
 もう1つのM&Aは,Compaq社がSilicon Graphics社と合併するという話.Compaq社はもちろんPCクローンメーカーの最大手.同社がグラフィックスに特化したGWSメーカーであるSiliconGraphics社と合併すれば,業界に与える影響はかなり大きい。両社が一緒になれば,PCからUNIXまで幅広い製品ラインが1社で供給可能になるからだ。
 今のところ両社の製品は競合する部分が少ないので,合併にはかなりいい材料が揃っている.Compaq社はこのところRISCベースのマシンの開発を匂わせるなど,WS分野に進出したい意向だしSilicon Graphics社としてもPC用グラフィックスアクセラレータを開発するなど,PC分野への進出を行なっている.販売網の面からも両社は補完しあえる関係にある.Compaq社の主力は店頭販売だが,Silicon Graphics社はメーカー直売を主力にしているからだ。
 「この話は案外うまくいくかもしれないな」と気楽なことを考えていたら,実はこの合併話は単にPCメーカーとUNIXメーカーの2社間の話に留まらないことに気がついた。PC界の今後10年を占ううえで最大規模の影響を与えるかもしれない,もっと大きな動きの一環として出てきた話なのだ。
 ご存じのようにPCの世界では旧IBMのアーキテクチャが業界の標準として確立している.CPUにIntel社の86系を用いたDOSマシンがそれだ。Microsoft社ではこれにWindows3.0を投入するすることで延命に一役買ってはいるが,IBM PCアーキテクチャ自身はすでに10年以上前のもの.将来的にこのままでいられるとは誰も思っていない。すでにPCよりも性能が要求されるWSの世界では,RISC系の主導のもとで乱戦状態になっている.Intel社は最近,100MHzの486を発表して86系CPUの将来も明るいなどと盛んに騒いではいるが,この点に疑問を持っているのはMicrosoft社にしても同様に違いない。そこで次期PC,とくにハイエンドPCからWS分野のマシンが,どのようなハードウェアアーキテクチャになるのかというと,まだ誰も断言できるものはいないが,少なくともRISCを搭載した現在のいずれかのUNIXマシンがそれに「近い」のではないか、というのが業界の一致した見方だ.
 こうした点をとらえ,現在着々と布石をうっているのがSunMicrosystems社で,SPARCアーキテクチャの拡大路線はこの欄でもたびたび報告している.現在すでに10社以上がSPARCクローンの製造に入っており,Sun自身もSunOSを提供することや,SPARCチップのライセンスをSPARCインターナショナルに渡して第三者がライセンスを受けやすくするなど,積極的。またLSILogic社はこうしたSPARCクローンを製造するためのチップセットを販売している(ちょうどPCクローンの場合のChips&Technology社のチップセットと同様).現在このチップセットは,7個の20MHz版コントロールチップ,SunOSライセンス料,SPARCクローンを製造するためのマスク(マザーボードを設計する必要もない!)を含んで1台あたり1000ドル。まだまだ高いが,多少の初期投資のお金があって,マザーボードを製造する設備を持っていたり,そうした所とつながりがある会社ならすぐにでもSPARCクローンの製造を始めることができるような仕組みができ上がっている.
 このままSPARCが将来のPC/WSのアーキテクチャとして事実上採用されてしまうと困る会社が多数出てくる.DEC,Silicon Graphics,SCO,Microsoft,Compaq社の面々がそれで,将来のハイエンドPC-WSの標準開発に向けて話し合いがもたれているのはもはや公然の秘密。そしてこのグループがターゲットにしているのがMIPS社のRシリーズである.DEC社やSilicon Graphics社にしてみればMIPS社のCPUを採用したWSを出しているので当然と言えば当然の動き.Microsoft社やSCO社などOSメーカーにしてみてもSunOSがWSの標準OSとして確立されてしまっては、彼らの存在そのものも危うくなってくる.このへんの動きがUI(Unix International),OSF(Open Software Foundation)の動きともリンクしてさらに複雑怪奇な様相を示していたが,UI-OSFの決裂によって一挙にMIPS社のCPUを採用した標準ハードウェアの開発を加速したようなのだ。
 こうした業界の大きな流れのなかで今回のCompaq,Silicon Graphics社の合併の噂を見てみると,これが単なるPC-UNIXメーカーの合併話でないことは明らか。合併がうまくいくにせよ,単なる噂に終わるにせよ,対するSPARC陣営にとっては大きな脅威であることには間違いない.
(ザイロンコーポレーション代表 脇山弘敏)

 「IBM PCアーキテクチャ自身はすでに10年以上前のもの.将来的にこのままでいられるとは誰も思っていない」でも互換性の呪縛に囚われ徐々にしか進歩できなかった。互換性は進歩を妨げる悪だと思っていた。とっとと古い機械は捨てればいいのだ。PC-9801VX2を買ってしまった私はみんな不幸になれと呪っていた。

Miscellaneous :behindthenewsをスクラップする。

トランジスタの父,82歳で死去
 ComputerworldとSmithsonian Institutionが主催した「テクノロジーを社会のために役立てたことを讃える賞(Computerworld Award for Innovative Use of Information Technology)が発表された.10項目に分かれているが,中でも「政府関連」の2つの受賞がおもしろい。1つは,行方不明となった子供を探すための,イリノイ州立大の「Missing Children Project」.単なるデータベースなのかなと思ったらさにあらずで,行方不明になった当時の子供の顔写真を元に,3,5,10年後の顔を生成するイメージ処理システムという.どんなアルゴリズムで処理するのかは分からないが,受賞したというのだから,結構当たっていたのだろう.
 もう1つは,BIという会社が作った「Home Escort System」.これは,「非暴力的犯罪者」が自宅で刑期を過ごす間,足首に巻いた無線機からその行動を電話回線を通して刑の施行機関が監視するというもの。ハイテクが社会に悪い影響を与えるというイメージを覆すために賞を設立したというが,このBI社のシステムはハイテク管理社会の不気味な感じを受けるのだが.
 暗い話では,トランジスタを発明した3人組みの最後の生き残りだったJohn Bardeen氏が,ボストンの病院で心臓麻痺のため82歳で亡くなった.Walter Brattain,William ShockleyとともにBell研究所で固体物理学を研究,1947年にトランジスタを発明し1956年ノーベル物理学賞を受賞した.その後,同氏は低温超電導の道に進み,世界で初めて同じ分野で2度のノーベル賞を受けた.1908年,ウィスコンシン州Madisonに生まれ,ウィスコンシン大学とプリンストン大学で学位を取得,1951年からイリノイ州立大学で教鞭を取り,現在は同大学の名誉教授となっていた.Brattain氏は'87年に,Shockley氏は昨年他界しており,これでトランジスタ発明の生き証人はいなくなったわけである。
 3人の伝記でも読みたくなるが,こちらはまだ生きている人の伝記。ハーバードを中退してMicrosoft社を起こし,世界最大のソフト会社にしたBill Gatesの伝記が,1992年にDoubleday社から出版される.『Billion Dollar Bill: Gates and Microsoft and How They Grew』と題されたこの本は,PC/ComputingのコラムニストStephen Manesらによって書かれる.同氏によると,第一に分かりやすく,どのようにGatesとMicrosoftがコンピュータ業界と社会に革新的な衝撃を与えたか著すという.「これはまさにエキサイティングなプロジェクトだ。この本に記されるのは,GatesとMicrosoftを通して見たマイクロコンピュータの全歴史である.Gatesはコンピュータ業界のHenryFordであり,現代のアメリカンドリームがいかにして現実のものとなったかを描く」そうだ。

伝記がトランジスタの父とビルゲイツの両方同時期にあった。

ソフトは効率よく作りましょう
 日本のソフト開発力が米国を超えたというレポートが入っている。これによると,日本のソフト会社は米国の会社よりもより生産的でよりバグの少ないソフトを書くのだという。「日本は品質管理において最良の実践を行なっている」と,「日本のソフトウェア工場』の著者であるMITのマイケル・クスマノ助教授は語った.彼によれば,プログラマの不足と客の要求に応えるために,日本の管理者はソフト開発時のプロセスを能率化する必要があったという。同氏は「日本の会社がソフトを書くという行為を芸術から「技術に変えた」と説明する.
 たとえば,日立,富士通,日本電気,東芝などは,標準化されたトレーニング,開発ツール,労働力の重複やエラーを減らす努力を行ない,何千ものプログラマをともに働かせるソフトウェア工場を作り上げている.米国でも同様の方法を採っている企業はあるが,日本の企業はもっと進んでいるという。また,どこでどう調べた数字か分からないが,「日本でもっとも優れたソフト会社は,米国の会社と比較した場合,プログラマ1人当たりの生産性において30~40%高く,ソフトにおいては25~50%もバグが少ない」というのだが,私は信じないぞ。
 ただし,単に経験と自由度という点からすれば,疑うべくもな<米国のほうが才能に恵まれ創造的なプログラマが多く,創造性はパソコンソフトの開発において重要なのだが,多くの場合,それが障害なのだという。「もし以前あったのと似たようなものを作ろうとする場合,創造性は必要ない」とクスマノ氏は述べる.日本企業の報告によるとプログラムの70~90%は以前からあるものが使えると説明する。「別に極端に創造的な人間である必要はない。標準的なツールと方法,以前からあるコンポーネントが使いこなせるエンジニアならばよい」わけだ。自動車と家電製品では,日本のやり方に気付かずに手遅れになったが,どうなるのか.
 この話と関係ないが,Borland社は,プログラムを書く技術がなくてもWindows3.0用のビジネスアプリケーションが作れるといVisualProgrammingTool「ObjectVision」を発売した。Borland初のWindows3.0用ソフト.プログラムの段階は3つあり,まず最初に,画面のデザインやボタンの配置を決める。次に,データの表示枠やボタンに「DecisionTrees」というビジュアルプログラミングツールで機能を定義すればいい。また,手持ちのデータとリンクすることも可能という.プログラムの部分がなんとなく難しそうだが,表計算ソフトの計算式を書く要領で記述できるという.ParadoxやdBASE,ASCIIファイルを直接アクセスできるほか,DDEで他のWindowsアプリケーションとデータのリンクができるというのは魅力だ。柔軟性の高いカード型データベースとして使えそうである。価格は,495ドルだが,5月末までは発売記念価格として99.95ドルで販売される(日本でも英語版で発売となる予定).

「日本の会社がソフトを書くという行為を芸術から「技術に変えた」そうかもしれない。昔プログラミングは科学であった。ダイクストラ先生とかの良書が科学の雰囲気を醸し出していた。素人が趣味のプログラミングをするようになると芸術的なコードを書く天才といっても良い人たちが出てきた。コードを見てほれぼれとした。私にはそんなコードが思いつかない。プログラミングを技術として分かりやすく書いてくれたのが林晴比古氏だった。氏の意見は同意する点が多々あった。

2001年と湾岸危機
 これは新聞にも載ったので知っている人もいると思うが,フランスがイラクに売ったエグゾセミサイルには,「Backdoors」というソフトが積まれており,遠隔操作で自爆させられるという噂が飛んだ。ドイツの専門家は,「このような故意のコードがプログラムの中にあるのも無理はない。テスト段階では,自爆装置を遠隔操作して破壊できなければならない.そして,正常に動作しているソフトはなかなか変更しにくい。だから,ソフトの中にそのような部分が残っていてもおかしくはない」というが,そんなことがあるのだろうか.フランスがイラクに売るときにこのことを秘密にしてあれば可能だが.
 この湾岸戦争を,作家のArthurC.Clarke氏が「世界初の衛星戦争」と呼んだという。「コミュニケーションは力である.残酷な光景を見ることで米国民は戦争に対して反感を抱くだろうし,逆に、捕虜が鞭打たれる姿で戦いを決意する」ということで,湾岸危機で発揮されているような衛星通信の威力は世界をもっと平和にすることもできると述べている。同氏は50年前,すでに衛星通信を想像していたが,現在,個人的な通信史を書いている最中という。この本は1945年に科学雑誌に彼が書いた記事から始まり最後の章は湾岸危機で活躍している技術までたどり着くお話だそうだ。とにかく,地球規模の衛星通信ネットが構築され,電話やファクス,テレビで情報が自由にやり取りできるようになれば,地球はひとつの大きな家族になるということらしい。

戦争をTV中継で見たというのが衝撃だった。だんだん現実がゲームの世界に寄って行った。ゲームをするように端末を操作して人を殺す時代になった。

結局みんな無線パソコンになるのか
 だからというわけではないが,NEC America社が「Portable Cellular Workstation」を発売した。同社のP300という携帯電話とセルラーインターフェイスをノート型パソコンとセットにしたもの.12MHzの286に20MbytesのHDD,VGAディスプレイを積んだUltraLite286V/Fをベースに,ファクスの送受信や電子メールなどを可能にするソフトを搭載するという.ただし,電話機能と一体というわけではなく,ジャックに接続するようである。
 米国ではすでに携帯電話にシリアルインターフェイス(RJ-11という)が搭載されており,専用のモデムがMicrocomなどから1000ドル前後で発売されている.MNPクラス10というエラー訂正・データ圧縮プログラムプロトコルを搭載し、実効19200bps出るという.昨年のComdexでも無線内蔵のノート型はすでに発表されているし,AT&Tは丸紅と共同でセルラー内蔵のノートパソコンを出そうとしている.PenPointのGo社が最初に自社で発売しようとしていたコンピュータのスペックにもセルラーモデムが入っていた.AppleもFCC(連邦通信委員会)にパソコン用の周波数をとっておいてくれと申請している.
 セルラーといえばMotorolaだが,こちらは「Wireless Inbuilding Network:WIN」を発表した。つまり,LANの代わりに無線を使おうというもので,Altairシステムと呼ばれ,携帯用無線電話と同様の概念が採用されているほか,現在のワイヤレスコンピュータネットを改善するいくつかの新技術も利用し,1.5Gbps程度の速度を実現。32台までのパソコンやプリンタを5000平方フィート内で使えるようになる.黄色いケーブルが這っているとナウいという時代は終わり,ケーブルなしの時代が来るのだろうか.
 日本でもIBMや日本電気が無線パソコンを開発中という.ともに最初は携帯電話に接続するのではなく,日本シティメディア社が都区内14カ所に設置しているデータ通信専用の中継システムを利用するようだ。春には,郵政省が法改正を予定しており,携帯電話と合体したノート型も期待できる。ハードは多少高くなってもいいから,通話料金をなんとか欧米並みに下げてほしいものだ。最後にIntelの話題を一気に紹介しよう.まず,1990年はIntelにとって売り上げで25%,純益は66%の伸びという記録的な年になったという。同社は,ユーザーが386/486マシンに動いたことを理由としている.
 2つめは,次世代のアーケードゲームとしてIntelのDVI技術を使ったマシンをDataEast社が開発中という。「初めてアーケードゲームが映画の緊張感や現実感を備える。プレイヤーはあたかもゲームの中にいるような,味わったことのない衝撃を受けるだろう」という.
 3つめはMacOSが86系マシンに移植されるのではという噂.Apple社がライセンスを供与するというが,どうなるのか.i586は複数の386を内蔵して33MHzの486より4倍速いというから,68000のエミュレートくらいできそうだ。
4つめは,386SXの品不足で,Compaqのノート型パソコン「LTE386/20」の出荷が遅れているという。まあ,悪いのはCPUだけでなく,Connerの2インチHDDや,SharpのLCDも原因という.ノート型では日本のほうが競争が進んでいるが,DOS4/Vのアプリが揃ってくれば,あちらのノート型も購入対象になるわけで,ドーンと量産して安く供給してほしいものだ。

「i586は複数の386を内蔵して33MHzの486より4倍速い」そんな話があったとは記憶にない。

この記事が面白かった。
ソフトウェアの日本語化
 現在日本で流通しているパーソナルコンピュータのソフトウェアの中には,かなりの割合で,英語用ソフトを日本語用に移植したものが含まれている.ソフトウェアの日本語化作業は,単にメニューやメッセージを日本語に翻訳するだけではすまない。実際に,どのような作業が必要になり,どのような問題点があるのだろうか.
文字コード以上に難しい「文化」の違い
 英語のソフトと日本語のソフトの違いで,まず頭に浮かぶのが,文字コードの違いだろう.英語では,アルファベット26文字と若干の記号だけで,たいていの文章表現は十分間に合う.しかし,日本語の場合は、数千もの漢字が必要になる.このため,英語圏では文字は1byteのコードで表現できるが,日本語の場合は2bytesのコードが必要になる.
 英語圏で作られたソフトウェアは,文字コードが1byteであることを前提に作られているので,まったく手を加えずに日本語が使えることはまれである。ソフトを日本語化するためには,まず,2bytesの文字コードに対応させる作業が必要になる.
 それでも,文字コードの違いについては,OSが提供する文字入出力ルーチンだけを使用していれば,比較的簡単に移植を行なえる.文字コード以上に難しい問題は,各言語における,さまざまなマナ一の違いだ。たとえば,日本語には,句読点を行頭に置かないなどの「禁則」というマナーがあり,ワープロソフトなどの移植をする場合には,禁則処理のルーチンを新たに追加しなければならない.
 禁則の場合,さまざまな流儀があって,これが正しいという決定的な方法が存在しないのも問題だ。このほかにも,金額や日付の表記など,マナーの違いは多岐にわたるため、マナーに関する変更部分は,文字コードに関する変更部分よりはるかに多いという。また、将来OSの機能などが強化されたとしても,言語のマナーに関する移植部分がなくなることはないだろう.

FPのインターフェイス整備が最重要課題
 日本固有ともいえる,日本語入力FPの存在も,アプリケーションの移植作業に多大な影響を与えている。日本語入力FPは,OSとハードウェア,OSとアプリケーションの間に,言葉は悪いが強引に割り込む形で存在している.アプリケーションを日本語化する場合には,文字コードや禁則処理などに対応するだけでなく,日本語入力FPとのインターフェイス部分も新たに付け加えなければならない.
 現在、日本語入力FPは,多種多様のものがあり,アプリケーションとのインターフェイスもまちまちだ。日本語対応ソフトでも,使えるFPと使えないFPが存在するのは,これが原因になっている.
 FPとアプリケーション間のインターフェイスを統一するという動きもある。たとえば,MS-DOSでは「MS漢字インターフェイス」という共通規格が提唱されている.しかし,現在存在しているFPのうち,MS漢字インターフェイスをサポートしているものは,それほど多くはないMacintoshの場合も、アップルジャパンを中心に,統一に向けての動きがないわけではないが,具体的な作業はまったく行なわれていない.
 したがって,現状では,各アプリケーションが、個別に各FPに対応する場合が多い。複数のFPに対して,矛盾が生じないようにインターフェイスを設計することは非常に難しく,日本語化作業のボトルネックになっているという。共通のFPインターフェイスの制定と普及が、速やかに行なわれることを期待したい。(竹田)
取材協力(株)システムソフト,マイクロソフト(株)(順不同)

日本語化での問題は8bitの頃もあった。英語版ソフトは7bitで足りたので最上位ビットをフラグにとか使っていたのものもあった。英語とカタカナに対応するには8bit使うのでコメント欄にはローマ字でメッセージを書いたことがあった。英語で書けよと思われるかもしれないがそんなところにあやふやな英語メッセージを使っても信用できない。信用できるのはコードだけだ。

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:パソコン・インターネット

パソコン広告等,電子タバコ,NTT携帯電話(月刊ASCII 1991年4月号1) [月刊アスキー廃棄(スクラップ)]

ASCII1991(04)表裏_W520.jpg
裏表紙が新しくなった。

この号の広告に面白いものがあった。

まずは服部セイコーの電子タバコと思われるものTWENTY-TWO(22)。
ASCII1991(04)a35服部セイコー22_W520.jpg
ASCII1991(04)a36服部セイコー22_W520.jpg
ASCII1991(04)a35服部セイコー22_W377.jpg
当代喫煙者浮世之無情
 3Kなどという言葉がとりざたされて久しくなりましたが、タバコを吸う人種についてまわる3Kもあります。いわく、キケン・キタナイ・クサイ。
 危険なのは、もちろん火を使うから。「火事の原因は寝タバコ」などというニュースを聞くと、思わずドキッ。灰や吸殻が周囲を汚すのも困りものです。キーボードの上に落ちた灰をソーッと取った経験はありませんか?そして、一番やっかいなのが、やはり煙。周囲の人には気を使う、ディスプレイも気付かないうちにヤニだらけ。HDDやFDにも悪影響があるといわれています。
 吸わない人に言わせれば、「ほらごらんなさい、タバコなんてやめればいいのよ。」というところでしょうが、そんな簡単なものではありません。一服するときの、何とも言えない満足感。これを楽しむくらいは、人生の余裕というものでしょう。
 しかし、あらためて考えれば、火の着いたものを室内で持ち歩くことなんて、タバコ以外にはちょっと見あたらないでしょう。やはり、吸うときも、吸わないときもマナーを大切にしたいものです。

摩訶不思議無煙煙草之勧
 最近、特に若い人にはタバコを吸わない人が増えていますし、禁煙のオフィスも多いようです。タバコに対する風当りが強くなるにつれ、吸う側のマナーも向上しているような気がします。それでも、人前では吸いにくいのも事実。例えば、タバコを吸わない人との打ち合せなどには気を使うものです。
 もう一つ気を使って欲しいのがパソコン、毎日長い時間顔を突き合わせているのですから、煙や灰で汚したりしないのもマナー。だからといって、タバコを我慢していたのでは、イライラして作業の能率も低下しがち。禁煙パイプを使っても、代用品ではやはりわびしいもの、タ バコの満足感は得られません。
 そこで、吸えないとき、吸えないところでお勧めしたいのが、煙の出ないタバコ「22」。火を使わない、灰も出ない、灰皿も必要ないわけです。仕事に夢中になるとチェーンスモーキングになってしまう方、オフィスであの娘ににらまれたくない方、タバコの「味」のわかるあなたは一度お試しを。

 もしこれが今の電子タバコと同じ原理のものなら32年前からあったということ。それもパソコン雑誌の広告にあるということが面白い。広告にあるように確かにモニタ等にはヤニがついていた。

次はNTTの携帯電話。6ページの広告を打った。携帯電話の歴史が分かる資料だ。
ASCII1991(04)a20NTT_W520.jpg
ASCII1991(04)a21NTT_W520.jpg
ASCII1991(04)a22NTT_W520.jpg
ASCII1991(04)a20NTTリード_W520.jpg
text by Akihiro Ueyama
上山明博
Photo by Hiroaki Ishii


アクセス・トゥ・ザ・パーソン。
 刻々と変化する情報社会。そこで活動する私たちにとって、通信は欠くことのできないテクノロジーであり、それは同時に人と人との心をつなぐメディアでもある。いつでも、どこでも、だれとでも、話したい人と自由に会話することを可能にする通信。そんなパーソナルコミュニケーションの夢への挑戦がいまはじまろうとしている。
 その布石として、昨年末NTTは容積わずか150cc、重さ230g、世界最小の携帯電話機の開発に成功。コンパクトなボディに超小型フィルタ内蔵アンテナや電力増幅用マイクロ波モノリシックICなど、無線通信の最先端技術を凝縮し、NTTがサービスしている従来タイプと比べて約1/3の飛躍的な小型・軽量化を実現した。また、電子手帳がもっている機能と同じようなカナ・アルファベットによる電話番号呼び出しやメモリダイヤル機能など、多彩な機能を搭載。“Access to the Location"から"Access to the Person"へ、通信は一人ひとりのライフスタイルに応じて進化をとげ、いま大きなターニングポイントを迎えつつある。
 NTTにおける移動体通信技術開発の主幹研究所、無線システム研究所の山本平一所長は、NTTの移動体通信への取り組みをこう説明する。「21世紀に向けて、私どもNTTでは通信サービスのビジョンをVI&P(Visual,Intelligent & Personal Communications Service)という言葉で表現しています。いつでも、どこでも、だれもが話したい人と会話ができる。そうした将来に向け、研究に傾注しているのが自動車電話やコードレス電話、携帯電話などの移動体通信技術です。なかでも携帯電話の小型軽量化は、将来のパーソナルコミュニケーションを考えるうえで大きな課題のひとつです。また、多彩で高品質なサービスをどなたにも手軽に利用していただくために、限られた無線周波数を有効利用し、チャネル数を増やすことが当面の研究目標になっています。そのため、移動体通信のディジタル化と、それに伴う高効率伝送技術(帯域圧縮技術、多値化伝送技術、小無線ゾーン化)さらには、マイクロセル方式(無線ゾーンの極小化)など、世界に先駆けた研究開発に着手し、「いつでも、どこでも、だれとでも』が、『だれにでも』可能になる、21世紀の情報社会の実現に取り組んでいるのです」。

ネットワークの動向。
 移動体通信は、いつでも、どこでも、だれもが利用できる通信手段を目的として、研究開発が進められてきた。それは当初、海上をゆく船に対して行われていた。1959年に船舶電話が開発され、以来、新幹線や飛行機、それにポケットベルの無線呼出システムへと次々とサービス対象を広げてきた。
 そして、移動体通信の本格的な幕開けを告げたのは、なんといっても自動車電話サービスの開始である。1979年、800MHz(メガヘルツ)の周波数帯による自動車電話の運用が開始された。以来わずか10余年の間に加入者は加速度的に増大し、NTTの自動車・携帯電話は現在50万加入を超える状況に至っている。無線システム研究所の服部主席研究員(現研究企画部長)は移動体通信が本格的な幕開けを告げる自動車電話の開発に当初から携わった研究者のひとり。その服部は、当時の様子をこう語った。
 「私がNTTに入社したのは1974年。5年後の1979年12月3日にNTTは自動車電話サービスを開始しました。当時、自動車電話の実用化ではアメリカが一歩先んじていましたが、技術的には、単一ゾーンの極めて小規模なもので、一部ハローガール(交換嬢)の手動交換が残っている状態でした。私たちはベル研究所と技術を競いながら独自に小ゾーン構成の通信ネットワークを志向し、10年先、20年先の需要に対応できる高品質な通信サービスを目指したのです」と。
 NTTが現在サービス中の自動車電話方式は、ゾーン半径を1.5kmまで小ゾーン化、無線チャネル間隔6.25kHzの狭帯域FM(周波数変調)伝送、2つのアンテナと2組の受信機を用いるダイバーシチ受信、送信電力を最適に制御する適応送信電力制御、干渉妨害を軽減するための干渉検出抑圧など、さまざまな先端技術を開発し、アナログ方式では世界最高の技術が巨大なネットワークを支えている。
 自動車をはじめ新幹線や飛行機、それに歩行中の人など、あらゆる移動先を的確にとらえ、どこからでもさまざまな情報や通信相手にアクセスすることのできる無線通信技術を追究するNTT無線システム研究所。ここは、いわば動くネットワーク構築のための最前線部隊である。

 今読むと理解できるが、当時は全く分からなかった。というか読んだ記憶もない。携帯電話がアナログだったことを思い出した。デジタルはPHSがそうだったか。音声が聞き取りにくかった記憶があった。私はワイドなエリアが売りのセルラーを使った。田舎においてはアナログ携帯電話が通じやすかった。
ASCII1991(04)a21NTT世界初実用無線電話機_W264.jpg
ASCII1991(04)a21NTT自動車電話_W382.jpg
アナログの限界へ。
 服部たちが進めてきた数々の技術革新のなかでも特筆すべき成果は狭帯域伝送とダイバーシチ受信技術であろう。周波数の利用効率を向上させるために、まず取り組んだ課題がチャネル間隔を狭めることであった。サービス開始当初25kHzだったものを半分の12.5kHzに狭帯域化させ、さらに、これまでの周波数をノーマル配置する方式に対して中心周波数を半分(6.25kHz)ずらしたインタリーブ配置でも使用できるように設計した。チャネル間隔を6.25kHzにまで狭帯域化した例は世界に類を見ない。アナログ伝送ではほぼ限界値を究めたといっても過言ではない。また、無線チャネルの狭帯域化は需要が集中する東京地区から導入され、全国的にみると狭帯域化した大容量方式と導入時方式が混在するため、NTTでは両方式に対応できる受信フィルタを開発。これによって移動機のコンパチビリティと小型経済化を同時に実現した。しかも、アナログの音声チャネルの下部帯域を使って音声と同時にディジタルの制御信号を歪みなく伝送すある方式を世界に先駆けて開発。この方式は無線チャネル間隔を12.5kHzにした時点で同時に実用化され、秘話サービスの提供などを可能にした。
 高層ビルが林立するような都市空間では伝ぱん環境は劣悪な状態になる。このような厳しい環境下で移動する人に、クリアな通信サービスを提供するためのエフェクティブな技術がダイバーシチ技術である。移動機に送受信兼用の引き出し形のホイップアンテナと受信専用の内蔵アンテナによって、つねに電波の強いほうの信号を選んで受信・復調するダイバーシチ受信方式を採用。これによって、移動中に電波が急激に落ち込むフェージングと呼ばれる現象に遭遇しても、安定した通話品質の向上が図れるようになった。さらに受信復調系回路も2本のアンテナに合わせて2系統用意する方式を採用した結果、ノイズにも強くなり、実装に際しては大幅な小型化を図った。これに対して最大のライバルであるAT&Tは2本のアンテナで受けた信号を検波し、どちらか状態のよいほうを選択して、復調系は1系統にする方式を提案した。しばらく両方式の優劣を巡って活発な議論と技術検証がなされたが、AT&Tの採用した方式は効果や動作安定性が充分ではなく、NTT方式が勝ち残ったのだった。

見えない命綱。
 移動体通信の進化のうえで、見落としてはならないものに、利用者には決して意識されることのないもう一つの信号、制御信号の品質向上がある。たとえば、移動体ネットワークは常に加入者がどこにいて、どの無線基地局からアクセスすればよいかをウォッチしている。携帯電話機は通話していない場合でもスイッチをオンにしておけば必要に応じて自分の電話番号と現在位置をネットワークに知らせている。位置情報信号は中継局を介して総括局の大型コンピュータに送られ位置登録情報として記録されていく。位置登録情報はすべての加入者について24時間休むことなく最新の情報に書き換えられていく。こうした位置情報信号をはじめ、呼び出し、通話に入るまえのチャネルの割当てや、終話後の切断、通話中のチャネルの切り換えなどをコントロールする制御信号はネットワークを支えるいわば命綱の役割を果たしている。
 服部たちは、この制御信号のディジタル化の過程でも世界を驚かす画期的な方式を生み出している。
 「制御信号の伝送では、複局同時伝送方式が有効です。これは音声の伝送とはまったく異なる方式で、各ゾーンに同一の周波数を配置して同時に伝送するという方法ですが、各ゾーンに同じキャリア(搬送波)を使った場合ゾーン境界で干渉を生じ、通信の品質が低下するという問題が生じてきます。それを防ぐために、伝送速度をどれだけにすれば品質の低下を抑えることができるだろうか、いろいろな角度から実験を繰り返した結果、各基地局間のキャリアの周波数をお互いにほんの少しだけずらしたほうがむしろ品質はよくなることを実証しました。これは常識では考えられないことで、これまでは干渉を生じさせないために基地局間の周波数を同期させることを考えていたのです。しかし、基地局間のキャリアの周波数差に起因するビート性の干渉を逆に積極的に使って干渉をなくす。それを私たちは搬送波周波数オフセット配置技術と呼んでいますが、その実験と理論化に成功したのです」。
 服部たちはその論文を1980年、世界的に権威のある米国電気電子技術者協会(IEEE/The Instituteof Electrical and Electronics Engineers Inc.)に提出し、この年の論文賞を受賞した。
 ライバルAT&Tと競いながら次々と画期的な新方式を生み出してきた移動体研究開発チーム。新技術開発の原点はいったいどこにあったのだろうか。服部は彼ら流の奥義をこう語ってくれた。
 「無線技術の場合、机の上で数式をいじっているだけでは何も生まれてきません。自分で組み立てた回路を使って何度も何度も実験を繰り返しているうちに必ず予測を超える現象にぶつかります。その瞬間こそがブ・レークスルーへの第一歩なのです」と。


ASCII1991(04)a22NTT無線実験車_W456.jpg
概念を変革するマイクロセル。
 「いつでも、どこでも、だれとでも」を「だれにでも」提供するためには、超大容量化、超小型化が必要となる。超大容量化のためには限られた周波数資源を有効に活用し膨大なチャネル数を創造することが必要となる。また、端末を超小型化するためには送信電力を劇的に低域化することが必要となる。これらを実現する切り札はマイクロセル構成であると服部はいう。
 マイクロセル構成では基地局数が万のオーダーに増大するため経済的実現が必須となるが、このときディジタル伝送が重要な役割を果たす。一つの基地局送受信機で多くのチャネルを同時に処理できるTDMA(時分割多重化)技術、さらには、高能率な伝送のためのπ/4シフトQPSK(QPSK=Quadrature Phase Shift Keying/4相位相変移変調)の開発である。ディジタル伝送は経済化、高能率化だけではなく、秘話性等の通信のセキュリティー確保にも整合性がよいことが特長である。そこで、現在NTTでは全ディジタルによる自動車・携帯電話システムの構築に全力を上げている。
 マイクロセルの特長をさらに見ていくと次のようにいえる。
 セルを小さくして同じ周波数を隣あったセルでは使わないようにうまく配置していけば、同じ周波数を何度でも繰り返して使える。この繰り返し頻度は単位面積あたりのセルの数に比例して向上するため、たとえば、セルの直径を100m、10mと、どんどん小さくしていけば、周波数利用率は100倍、1000倍に向上していく。また、未来の都市空間での利用を考慮すれば、平面的なセルの配置から3次元の空間配置へ、またセルの形や大きさも住空間に合わせて多様化していく。
 こうしたマイクロセル方式は単にセルを小さくし、小型の基地局をこまめに設置していくということに留まらず、ネットワークの概念を根本的に変えてしまうような大変革をもたらすという。
 「限りなく小さなトランジスタ素子を集積したLSIの出現によってエレクトロニクス産業に大変革をもたらしたと同じようなインパクトをマイクロセル方式はもっています。そこれは,膨大な数のセルの出現によってセルの配置、結合、チャネルの配置など、いままでとはまったく質の違う技術が必要になるからです。各セルを一元的にコントロールすることは不可能ですから、自律分散形のコントロールが必要になるでしょう。セルはお互いに回りの状況を見ながら通信を管理していくようになるわけです。オペレーションもセルが自身で故障を診断するようなAI化をしなければなりませんし、サービス状況の変更に迅速に対応するためには基地局の制御機能をソフトウエア化しサービスの変更に伴って中央管理局から通信を介して瞬時にソフトウエアの入換えができるホワイトボード化も必要になるでしょう。こうした技術を総合的に検討しながら21世紀のパーソナルコミュニケーションを目指すのが現在私たちに課せられた最大の課題なのです」と。
 移動体通信技術、それはさまざまな要素技術の極限を追求し、それらを集積して形づくられる技術の総称だといえるだろう。手のひらサイズの電話機を携行して通信する加入者。この数をNTTは21世紀初頭2000万人に設定。かつてはSFだった超小型携帯電話の開発。そんな「いつでも、どこでも、だれとでも」をだれもが手軽な料金で利用できるという通信の夢を一つひとつ可能にすNTT。その飽くことのない挑戦は、一人ひとりのコミュニケーションの夢を実現していく原動力にほかならない。   (NTT)


ASCII1991(04)a22NTT基地局用アンテナ_W511.jpg
ASCII1991(04)a21NTT携帯電話_W477.jpg
ASCII1991(04)a22NTTデジタル実験システム_W520.jpg
ASCII1991(04)a22NTTオシロスコープ_W303.jpg
ASCII1991(04)a22NTT服部武_W195.jpg
これが広告か。さすがNTT。

ノートパソコンが出てくると当然車内のシガレットソケットから充電したくなる。
ASCII1991(04)a23アーベルシガライターソケット_W520.jpg
左頁がアーベルのカーバッテリアダプタのCG98SXで24,800円
ASCII1991(04)a23CB98SX_W470.jpg


表紙裏見開き広告
ASCII1991(04)見開_W520.jpg
PC-9801UR/UF。CPUはV30HL(16MHz)を搭載。安価なマシンかと思ったが、一番安いPC-9801URで218,000円。どの位売れたのだろうか。

ASCII1991(04)a01PC-98NOTE_W520.jpg
PC98 NOTE nvの左側はほぼ前々号の使いまわし。

ASCII1991(04)a02NECWIN3_W520.jpg
PC-9801でもWindows 3.0は動くよという広告。しかし、PC-9801の640×400ドットではWindows 3.0は使う気にならない。IBM PC互換機の640×480と比べると縦のドット数の少なさがひどすぎる。16ドットの漢字なら98は25行表示でIBM互換機なら30行表示だ。全然使い勝手が違う。それに98はTEXT VRAMを使って漢字表示をしているのでMS-DOSでワープロ、表計算等のビジネスソフトが使い物になった。それをWindows 3.0でGRAMを使って処理するのでは速度低下が気になる。使ってみると「なんだWindows 3.0は遅い。MS-DOSを使っていた方がましだ」になる。
この広告はWindows 3.0 のネガティブキャンペーンだ。一般ユーザは98を捨ててまでWindowsを使いたいとは思ってなかった。

ASCII1991(04)a03NECモデム川越美和_W520.jpg
ASCII1991(04)a03川越美和_W520.jpg
川越美和のNECのモデムの広告が新しくなった。

ASCII1991(04)a04AMIGA3000_W520.jpg
左頁はAMIGA 3000の広告。

ASCII1991(04)a05FMR-CARD_W520.jpg
富士通のFM R-CARD。ブックでもノートでもなくカードと言っていた。

ASCII1991(04)a06TOWNS_W520.jpg
TOWNS。

ASCII1991(04)a07TOWNS-ATARI1040STE_W520.jpg
左頁はTOWNS
右頁はATARI 1040STE

ASCII1991(04)a08PC-CLUB_W520.jpg
ASCII1991(04)a08PC-CLUBリンドバーグ_W520.jpg
左頁はEPSONのPC CLUB。NEC のPC-8001を彷彿させる機体。いいと思った。リンドバーグを起用した。

ASCII1991(04)a09EPSON-PS55ZDOSV_W520.jpg
右頁はIBMのPS/55Z。前号の使いまわし。DOS/Vを押し出していた。

ASCII1991(04)a10PRONOTE-B32LXT_W520.jpg
左頁はPanasonicのPRONOTEで前号の使いまわし
右頁は日立のB32LXTとB16NX

ASCII1991(04)a11B16NX-B32LXT_W520.jpg
日立のB16NXとB32LXT

ASCII1991(04)a12BJ-note_W520.jpg
CanonのBJ-note

ASCII1991(04)a13レーザーショット_W520.jpg
Canonのレーザーショット

ASCII1991(04)a14AXi-MacOffice_W520.jpg
左頁はCanonのAXiで前号の使いまわし。
右頁はキヤノン販売によるMacOfficeの広告。


ASCII1991(04)a15ファミリーコピア富田靖子_W520.jpg
ASCII1991(04)a15富田靖子_W511.jpg
左頁は富田靖子のファミリーコピア。

ASCII1991(04)a16J-3100ZX_W520.jpg
東芝のJ-3100ZX

ASCII1991(04)a17HPApollo9000_W520.jpg
HPのApollo 9000シリーズ

ASCII1991(04)a18NeXT_W520.jpg
NeXTは前号の使いまわし。NeXTも使いまわしをするようになった。

ASCII1991(04)a19NEWS_W520.jpg
SONYのNEWSは前々号の使いまわし。

ASCII1991(04)a24AST両互換機_W520.jpg
左頁はASTの98とIBM両互換機の広告。

ASCII1991(04)a25Works-Excel_W520.jpg
WorksとExcelの広告。

ASCII1991(04)a26マイクロデータ_W520.jpg
ASCII1991(04)a26エコロジー_W520.jpg
ASCII1991(04)a26オーシャノグラフィ1_W520.jpg
ASCII1991(04)a26オーシャノグラフィ2_W520.jpg
ASCII1991(04)a26ノストラダムス_W520.jpg

ASCII1991(04)a27マイクロデータ_W520.jpg
マイクロデータのアストロノミー。思い出せない。

ASCII1991(04)a28MAXLINK_W520.jpg
右頁はMAXLINK

ASCII1991(04)a29Refalo_W520.jpg
京セラのRefalo

ASCII1991(04)a30Lotus_W520.jpg
Lotus 1-2-3

ASCII1991(04)a31VZ倶楽部_W520.jpg
右頁はVZ倶楽部

ASCII1991(04)a32ツクモ_W520.jpg
ASCII1991(04)a33ツクモ越智_W520.jpg
ツクモのイメージキャラクターは越智静香

ASCII1991(04)a34Maxell岡部まり_W520.jpg
MaxcellのFDはスライド・ダスト対策のためプレックスシャッターを使った。
関連記事は前号の
3.5インチFDのプラスチックシャッター
ASCII1991(04)a34Maxell_W357.jpg
イメージキャラクターは岡部まり
ASCII1991(04)a34岡部まり_W256.jpg

ASCII1991(04)裏裏_W260.jpg
前号の使いまわし。

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:パソコン・インターネット

UNIXとOS/2後編(月刊ASCII 1991年3月号6) [月刊アスキー廃棄(スクラップ)]

UNIXとOS/2後編をスクラップする。素人ユーザには関係の無い話だったが、OS/2の行く末について当時どう予想していたのかを残しておきたい。
ASCII1991(03)j01UNIXとOS2タイトル_W520.jpg
 MS-Windows3.0の急浮上で,その存在意義を問われる「OS/2」.一方,RISCチップの利点を生かしてオフコン市場にまで拡大しようとする「UNIX」.ふたつのOSの争いに,ここ2~3年の業界動向は明暗を分けるように影響を及ぼした。ビジネス市場はUNIXの天下になるのか?それとも棲み分け共存になるのか?今年の両者の展開がすべてを決める。

UNIX編
動向を握るメインフレーマーは?一歩先を進んできたIBM
 非メインフレーマ外資系メーカー,ディーラーやソフト・ベンダーがいっせいにUNIXシフトを進める潮流は,独自システムで強大なシェアを持つメインフレーマでさえ無視できないものになった.
 昨年、動きが目立ったのが日本アイ・ビー・エム,富士通,日立製作所,日本電気のメインフレーマ上位4社(図1)。各社とも独自の世界を守るためにUNIXにさほど力を入れていなかったが,1989年後半から戦略を転換。その後,急速にUNIX製品の強化に向かう.


ASCII1991(03)j01UNIXとOS2図1_W520.jpg
 これを象徴するのが,各社で相次ぐUNIX専門部隊の新設と,RISCマシンを巡る提携関係の広がりだ。
 メインフレーマ各社のUNIXシフトを加速した引き金は,米IBMが1990年2月に全世界で発表したUNIX WSの「RS/6000」。独自開発の新型RISCチップを搭載し,先行する米Sunや米HewlettPackard(HP)を性能面で一気に追い越した.これに対抗して富士通はSun,日立はHP,日電は米MipsComputerSystemsと組み,それぞれ高性能RISCチップの開発を進めている.
 「RISCチップを搭載したUNIXマシンの新機種を今年半ばまでには発表したい」とする日立を筆頭に,国産3社は今年後半にはRS/6000の性能(最高40MIPS)を上回るRISCマシンを投入する構えだ。
 その動きを受けるIBMは,RS/6000発表直前の1月にUNIX専門のマーケティング・グループとしてAIXセンターを新設し,体制作りでも余念がない.また,一方ではソフト・ベンダーに働きかけ、RS/6000のパッケージソフトの品ぞろえも急ピッチで進めている。現在計画しているRS/6000用パッケージは560種類で,今年第1四半期までには全種類が出そろう予定.日立との提携もパッケージの拡充を狙ったものであり,第1弾として日立のソフト開発支援ツールSEWBをRS/6000に移植して販売するという.この提携に両社が合意したのも昨年2月のことであった.
 IBMがこれほどUNIXビジネスに力を入れ始めた背景には欧米におけるAS/400の販売不振が大きく影響している.「AS/400はコストパフォーマンスの点で他社のUNIXマシンに対抗できず,売れ行きが落ち込んでいる」と見るIBMウオッチャもいる.オフコン市場が好調な日本だけは例外的にAS/400が売れているものの,いずれ同じような状況が来ることは十分想定できる.実際,日本IBMがRS/6000用とする560種類のパッケージのうち,約4割はオフコン用に相当するビジネス向けソフトが占める。「日本でもビジネス市場にUNIXがものすごい勢いで入っていくことは確実。近い将来AS/400とRS/6000との競合を真剣に考えなければならない(日本IBM)」とも語る.
 IBMがUNIXに目を向けなければならなくなったのは,米国政府調達基準やオープン・システムに強い関心を寄せる先進ユーザーが「UNIXマシンであること」という制約条件を設けたため,という見方もある。
 しかし,単純にRS/6000ビジネスだけを考えても,今年中に目標どおりの5万台を販売できれば,1台平均200万円として1000億円の売り上げになる.日本IBMの売り上げ高は毎年1000億円程度の伸びであり,RS/6000だけでも新規の売り上げ増をカバーできる計算だ。屋台骨のメインフレーム事業が伸び悩む中にあってRS/6000に並々ならぬ力を注ぐのもうなずける。さらに,メインフレームのESシリーズやパソコンのPS/55にもUNIXを本格的に展開するとなれば,パーソナルマシンのOSの流れがUNIXに移行するのかもしれない.
 IBMのUNIX戦略で注目すべき点は,他社のUNIX製品とどう差別化を図っていくかである。現状を見る限りではIBMの差別化のポイントは3つに絞られる.
 第1はRS/6000に搭載している自社開発のRISCチップ.現時点で業界最高速の性能を発揮しており,IBMの半導体技術を駆使すれば今後も優位性を保つことは可能だ。しかもIBMはこのチップを他社に提供しないため,いち早くRS/6000用のパッケージを普及させれば独自の市場を築くことができる.
 第2はAIXによる差別化.IBMは自社で改良を加えたAIXをUNIX標準化推進団体のOSF(オープン・ソフトウェア財団)に提供した.ところが,OSFはその後AIXのカーネル(中核)部分をカーネギ・メロン大学のMachに切り替えているAIXのカーネルがマイクロチャネル(MCA)に合わせて最適化されていたため、他のメーカーがそのままの形で採用することを嫌ったとも言われる.このあたりは弱いのかもしれないのだが…….
 第3のポイントはメインフレームをはじめとするIBMの既存製品との接続性.IBMはSAAとAIXに共通性を持たせる計画を進めており,たとえばアプリケーション間通信プロトコルのLU6.2などを双方に適用する考えだ。すでに数多くのIBM製品を導入しているユーザーにはSAAとの接続性も大きなセールスポイントになる.


RISCチップが流れを変えた。日立/日電/富士通の国産3社
 着々とUNIX戦略を進めるIBMに負けじと,国産3社も体制強化を急いでいる.
 特に活発なのが日立製作所.IBMやHPとの提携に加えてUNIX製品の強化を狙った大々的な組織改革にも着手し,それまで製品系列ごとに分散していた小型メインフレーム,オフコン,そして2050の設計部隊を集結して「オフィスシステム開発センタ」を昨年8月に新設した。
 「性能面でWSとオフコン,さらに小型メインフレームとの境界がなくなりつつある。こうしたミッドレンジ領域の製品系列を再編するのが目的。現在は大型メインフレームやオフコンが好調だが,長い目で見ればコストパフォーマンスの高いミッドレンジ領域のマシンに移っていくだろう(日立)」。同社には2050,2020,B16/32という3つのマシン系統があり,相互に互換性がないという問題があった。加えて小型メインフレーム用UNIXと2050用UNIXの仕様が異なるため,同じUNIXでも簡単に移植ができないという問題もあった。この状況を打開するための手段といえるだろう.
 この計画の中,ミッドレンジの製品系列で中核になると見られるのが,HPとの提携で開発を進めているRISCチップ搭載のUNIXマシン1991年夏をメドに50MIPSクラスのマシンを発表する予定だ.現在の2050の上位に位置する製品であり,文字どおりRS/6000の対抗機になる.
 RISCチップを使ったミッドレンジのUNIXマシンは,日電も開発作業に入った。すでに昨年5月にMips社のRISCチップを搭載したUNIXWSを発表しており,これを皮切りに上位方向に製品ラインを広げていくという。このRISCチップは,最高速60MIPS近い性能を発揮し,現在のRS/6000を上回っている.
 国産3社の中では富士通だけが,ミッドレンジのUNIXマシンに搭載するRISCチップをまだ最終決定していない.しかし,現在OEM販売しているSunのRISCワークステーションとの互換性は維持する考えだ。「SunのRISCに近いアーキテクチャのチップを自社開発することも含めて検討中.いずれにしてもミッドレンジのUNIXマシンをRISCで製品化する(富士通)」
 遅くても来年には,各社のミッドレンジRISC機が出そろい,IBMを含めて激しい販売競争を繰り広げることになるだろう(表1)。ただ富士通と日電は他の2社に比べて,オフコン分野で圧倒的に高いシェアを持っているので,自社のオフコンと競合するミッドレンジ・マシンを積極的に販売できるかが大きな問題として残る。この点ではオフコンのシェアが低い日立が最も有利と言える.


ASCII1991(03)j02UNIXとOS2表1_W520.jpg
 ミッドレンジだけでなくメインフレームの領域でもUNIXに対する取り組みは活発になりつつある。この分野で先行しているのは富士通。1990年8月に世界で初めてUNIX System Vリリース4をメインフレームに搭載したUXP/Mを発表,市場開拓にかける意気込みを見せた.「UXP/Mは,当社のメインフレームの主力OSであるMSPに匹敵する機能を付加して大規模システムでも問題なく使えるようにした(富士通)」。
 富士通はUXP/Mを発表する2ヵ月前,社内のUNIX開発部隊を集結して「オープンシステム開発本部」を新設している。総勢500人を擁する同本部は「UXP/Mを皮切りにスーパーコンからパソコンまで全機種のUNIXを統一的に機能強化していく(富士通)」ことが狙いだという.
 半面,富士通はディーラ網の整備で他社よりも出遅れており、現在はメインフレームを主体にほとんどが直販である.
 この点では日電が一番進んでいる.約350社あるオフコンディーラーのうち,大塚商会をはじめ大手を中心に100社がUNIXWSの販売を始めた.日電に比べてディーラー網の弱い日立は系列の販売会社で2050を販売するほか、全国各地にあるシステムエンジニアリング会社にも2050の営業機能を持たせ始めている。富士通もいずれオフコンディーラーを通してUNIXマシンを販売することは間違いなく,オフコンと同様に各社のディーラーが競ってUNIXマシンを販売する日もそう遠くはない.
 しかし,ビジネスUNIXの行方は決して順風満帆ではない。オフィスにまで利用が広がるかどうかは,使い勝手の良いパッケージの品ぞろえに大きく依存している.
 UNIXとRDB(リレーショナルデータベース)を中心としたあるソフトハウスはこの点について「UNIXを知るSEが少ない分だけ,将来はパッケージ化が進むだろう.パソコンの会計ソフトの御三家のうち,1つでもUNIXの上に載れば,一気にオフィスで普及する可能性がある」と見る.
 情報武装に意識的なエンドユーザーは確実に増えており、「ビジネス市場でも,アプリケーションにとってUNIXがベストだと判断したら,ためらわずUNIXを使う(大手企業ユーザー)」が正しいスタンスではないだろうか.


OS/2編
OS/2展開に無視できないMS-Windows3.0の存在
 個人ユーザー向けにOS/2を販売することに関してメーカー各社はどう考えているのだろうか?
 結論から先に言えば「OS/2のユーザーは,少なくとも2~3年はホストコンピュータを前提にした大手企業,それにOS/2マシンをオフコン代わりに使う中小企業に限られる。企業内での個人や 一般ユーザーがOS/2を使うことはまずない」ということになる.
 ただ一般ユーザーでも,大きなメモリ,より優れたGUI,それにマルチタスク機能が必要になる場合がある。各社ともこれに対してはMS-Windowsで逃げる構えを見せる.個人ユーザーを中心とするスタンドアロン利用はWindows,メインフレームと接続したり,定型業務を稼動させる場合はOS/2という区分けである。
 マイクロソフトが1990年5月に販売開始したWindows3.0はこうした区分けをしてもまったく問題ない仕様になっている.たとえば,動作に必要なメインメモリはOS/2の場合8Mbytesは欲しい。しかし,Windows3.0はこれより少ないメモリでも十分に稼動する。ハード価格に大きく影響するメモリの量が少なくてすむわけだ。


ハードの高価格と少ないソフト開発者がOS/2展開のネック
 大手企業中心に急増するOS/2ユーザーと,本腰を入れ始めたベンダー.気になるのは今後どれだけ普及が加速するかだ。これを左右する2つの壁がある。ひとつはOS/2を利用するのに必要な システム価格,もうひとつはOS/2流のプログラム開発ノウハウだ.
 OS/2を主力OSにするハイエンドパーソナルマシンやWSなどの性能/機能はUNIXベースのWSに肩を並べるまで成長してきた.その一例が1989年10月に日電が発表した「PC-H98」.
 32bitNESAバス(New Extended Standard Architechture)を装備したPC-H98は,
(1)80386(約5MIPS)を搭載し,最大27.5Mbytes(標準1.5~5.6Mbytes)のメインメモリを実装できる,
(2)画面解像度はPC-9801シリーズの主力の640×400ドットに加えて1120×760ドットの高解像度表示モードを持つ,
(3)NESAによって内部データ転送速度33Mbytes/秒を実現した,
(4)マルチプロセッサ構成を容易にとれる
――などが特徴だ。OSは「UNIX互換のPC-UXも載るが,メインはMS-DOS,OS/2(日電)」という.
 マイクロチャネル装備のPS/55シリーズを1987年4月から販売中の日本IBMを加え,低価格UNIX WSを迎え打つ32bitパーソナルマシン市場は急速に充実しつつある.しかし問題はその価格にある.日本IBM,富士通,日電のパーソナルマシンの中から32bitCPUを採用し,高解像度表示モードを持ち,かつ40Mbytes以上のハードディスクを内蔵する最も低価格の機種(メインメモリ4Mbytes程度)を選んでも110万前後から130万円台.これがPM付きOS/2を快適に利用できる最低条件のシステム構成である。推奨メモリ容量はメーカーによってまちまちだが,ユーザー企業が実際に実装している容量をまとめると8Mbytesが最低ライン。そうすると1台当たりのハード価格は150万円ほどになってしまう。
 OS/2普及を妨げるもうひとつの,より深刻な問題は,アプリケーション開発である。昨年3月から一般向けにOS/2教育事業をスタートしたCSKは「大型機のテキストベースのユーザーインターフェイスに慣れているSEにとって,PMは抵抗がある.逆にパソコンソフトをやってきた人にはOS/2の大型機的な側面が馴染みにくいようだ」と述べる.
 OS/2のプログラミング作法が分かるまでに3年かかったという富士ソフトウェアも同意見だ。「大型機でCOBOLを使ってきたSEが,OS/2PM流のプログラムを書くのは,ビル主体の大手ゼネコンがお寺を建てるようなもの」と指摘する。イーストは「たとえばMS-DOS用のソフトならプログラマがデータの入出力や画面表示を思いどおりに決められるが,OS/2PMはイベント駆動型.メッセージを持つ形式のプログラムを書かなければならない」と違いを説明する.
 このため,多くのソフト・ベンダーは今後は「教育の一貫としてOS/2プログラミングツールやシステム設計技法を開発しなければならない」と考えている.焦眉の急はOS/2アプリケーションを開発できる人材の育成だ。OS/2の普及が加速するかどうかはOS/2プログラミングノウハウの蓄積にかかっている.


ASCII1991(03)j04UNIXとOS2記事1_W520.jpg
IBM独自のOS/2からよりオープンなOS/2へ
 UNIXが狙うミドルレンジ領域市場でのOS/2の将来性はどうだろうか?IBMとマイクロソフト両社が1989年11月に発表したOS/2の展開計画を見てみると,この事情が分かりそうだ.
 この発表は1991年以降にRISCチップ,マルチプロセッサ対応のOS/2を製品化するなどUNIXを強く意識したものであった。ビジネス市場に浸透し始めたUNIXの勢いを何とか食い止め、逆にOS /2を実質標準にしたいという意欲が表われている.
 その計画の内容は,
(1)2Mbytesのメモリでも稼動するようにOS/2を小型化する(記事1),
(2)32bit対応やMS-DOSアプリケーションの並行動作機能などを備えたWindowsは開発しない,
(3)OS/2の中核システムとして32bit対応のVer.2.0を1990年度後半をメドに出荷,
(4)Ver.2.0を基本にRISCチップ用OS/2,マルチプロセッサ用OS/2を開発、
1991年以降に出荷。さらにオブジェクト指向のOS/2も開発するなどであった.
 さらに両社は,IBM独自のOS/2拡張機能であるデータベースマネージャ,コミュニケーションマネージャをマイクロソフトを通じて互換機メーカーにOEM供給する,と公表,また,これまで仕様が異なっていたIBMのLANサーバーとマイクロソフトのLANマネージャを同一仕様にするなどの方針変更も発表している.
 これには「OS/2がIBMの独自OSだ」という見方を否定し,UNIX同様のオープンシステムであることを示す狙いがあった.これまでかたくなに守ってきたOS/2の対象CPUを8086系からRISCチップにまで拡大するというアナウンスもUNIXを意識してのこと.
 さらに,OS/2にはUNIXにはない下記の利点がある.
(1)互換性がない複数のバージョンが乱立する可能性がない.
(2)日本市場で重要な,日本語環境が統一されている.
(3)既存のシステムとの整合性が優れている.
 UNIXの場合では,業界がOSF対UI(UNIXインターナショナル)グループに分かれたため,UNIXシステムやGUIに複数の製品ができてしまった.運用時には,ソフト・ベンダーやユーザーは何段階もの選択をしなければならない。これがUNIXの大きな問題となり,基本的に1つしかないOS/2に比べると大きく見劣りする.
 日本市場での普及という観点から重要な日本語処理に関しても,UNIXの場合は各社まちまち。日本語コードはシフトJIS,EUC(拡張UNIXコード)の2通りがあり,かな漢字変換ルーチン(日本語入力フロントプロセッサ)もメーカーごとに違う.
 こうしたことから,ビジネス市場に限ればUNIXよりOS/2,あるいはオフコンを重視するメーカーも多い。メインフレーマはUNIX同様にOS/2にも力を入れている.
 「UNIXは現在のところエンジニアリング専用。オフコンやパソコンの市場にUNIXが入ってくるとは考えにくい(日電)」,「OS/2対UNIXという視点で考えると,現段階ではOS/2のほうが有力.MS-DOSとの互換性や,メインフレームとのネットワーク機能などでOS/2のほうが有利なのが その理由(富士通)」と,メーカーは見る.


結論編 UNIXか?それともOS/2か?
両者の比較だけでは優位性を判断できない
 結局のところ,OS/2とUNIXはどちらが主導権を握るのか?どう棲み分けるのか?これを見るためには,まずUNIX System Vリリース4.0とOS/2Ver.1.1の仕様を比較する必要がある.メモリ管理手法やディスクアクセス方法,GUIなどの部分もかなり異なるが,OS/2がシングルユーザー対象なのに対し,UNIXがマルチユーザー対象なのが大きな違いといえよう。
 個人用のWSとして見た場合にはシングルユーザー,マルチユーザーという違いはあまり問題にならないが,1台のマシン上で複数の業務アプリケーションを走らせるLANのサーバーやオフコン的な使い方をする場合はUNIXのほうが有利になる.この点についてマイクロソフトは「業務ごとにハードを増設すれば問題ない。ハードの価格は急激に下がっているし,このほうがレスポンスが早くなる。今後は1台のマシンで複数の業務を走らせるより,業務ごとにマシンを分けるようになる」と見ている.
 次世代OSにとって重要になるネットワーク機能はUNIXがNFSやRFS(リモートファイルシステム),OS/2はLANマネージャが基本。一言で言えば,いずれもネットワーク上のコンピュータ間でのファイル共有システムであり,新しい分だけLANマネージャのほうが多機能だが,それほど大差はない。
 一方,メモリに関してはOS/2が16Mbytesと少ないのは80286の制約のため.UNIXは使用メモリ容量に制限がないが,80386(486)対応のOS/2 Ver.2.0が登場すれば実メモリ空間が4Gbytes,仮想空間は64Tbytes(テラバイト)と,メインフレームを超える巨大空間を扱えるようになる.したがってこの対決は引き分けとなる.
 ディスク容量については、当初OS/2には前身のMS-DOSと同様にアドレス可能な磁気ディスク容量が1パーティション当たり32Mbytesに制限されていたという欠点があった.WSを多用するユーザーにとって厳しい制限だったが,OS/2 Ver.1.1ではこれが512Mbytesに拡張された.しかし,UNIXは磁気ディスク容量に制限を設けていない.OS/2は広く普及しているMS-DOSアプリケーションも実行できるよう設計された.この戦略がOS/2を非常に不自由なものにしている.
 必要な動作環境はOS/2 Ver.1.3の場合,最低でもメインメモリ2Mbytes,ハードディスク60Mbytesが必要.しかし、多くのユーザーは「ユーザーアプリケーションを載せると6Mbytesでも苦しい」と言い,大半は8~10Mbytesを積んでいる.UNIXはシステム構成,インストレーションによって変わるために一概には言えないが,X Window上でアプリケーションを稼動させると最低でも6Mbytes,通常8Mbytes程度のメインメモリがいる.ハードディスクは通常で150Mbytes程度,すべての機能を入れるには200Mbytesは必要という.OS/2のほうがメインメモリ,磁気ディスクとも少なくてすむことになる.
 稼動可能なプロセッサはこれまでにも触れたようにUNIXは制限がなく,OS/2はインテルの8086系MPUだけを対象にしている.OS/2のRISCバージョンの開発については,インテル/IBM/マイクロソフトの関係から考えて,CPUはインテルのi860になるだろう.ただ,OS/2のCPU制約が不利になるかというと、必ずしもそうではない.すでに述べたようにバイナリ互換(機械語レベルでの互換)という点では逆に有利になる.
 残るオープン性(ユーザー側から見て複数のメーカーがサポートしていること)の面ではIBM/マイクロソフトの共同発表を受けてOS/2にも光が差しUNIXと同レベルになったといえる.IBM独自のOS2拡張機能は今後、他メーカーもマイクロソフトを通じて入手できるのだ。ただしOSのソースコードを改変できるメーカーの場合はUNIXのほうが上位になる.
 OSのインターフェイスはUNIXの場合,世界的な標準化団体であるX/OpenやPOSIXの仕様に準拠しているが,OS/2は独自.しかし,この点でも「OS/2のインターフェイスをPOSIX準拠にする計画がある」とのマイクロソフト・サイドの発言がある
 こう見てくると,IBMとマイクロソフトが積極的に機能拡張を進めている分,OS/2がUNIXに機能的に近づき,両OSはあまり変わらなくなっていることが分かる.
 ベンダー各社はこの点について「OS/2はUNIXの影響をかなり強く受けている.長い目で見ればOS/2とUNIXはアプリケーションも含めてほぼ同じものになるのではないか」と予測する.


パーソナル市場は、OS/2が先鋒を切る
 1990年4月のUIとOSFによるUNIX統合化交渉決裂の発表は,System Vリリース4.0あるいは OSF/1,OPEN LOOKやOSF/Motifがどちらかに一本化される可能性が完全になくなったことを示した。UNIXそのものの勝敗の行方が不明なため,ユーザーもUNIX導入に踏み切りにくいという汚点を残したのだ。
 半面,OS/2は1つの形態しかない.また,UNIXには種々の端末が存在するが,OS/2には1種類の端末しかない.したがって,UNIXよりもOS/2のほうが移植が容易に行なえ,安定した普及を目指せるとの利点がある.
 また,UNIXにさまざまなバリエーションがある問題の延長線上には,日本市場での日本語環境の統一も大きな課題として残っている.
 たとえば,アウトラインフォントが違えば、プリンタのように重要で高価な周辺機器が共有できないことになる.特定のMPUを使用する条件下でのバイナリ互換を実現する規約「ABI(BSC)」にしても現時点では英語版だけで進行している。日本語環境をサポートしたうえで実現できるかどうかはまだ見えない要素が多い。
 その点、こうした問題がないOS/2が,MS-DOSマシンの上位機からハイエンドパーソナルマシン,ビジネスWSの市場へと普及する可能性は高い.OS/2はその前身であるMS-DOSと同様にパーソナルマシンでの処理環境に適合するよう,設計されている.一方のUNIXは,「シェアドロジック」(複数ユーザーによる共有)という,部門コンピュータ処理に理想的な特性を持つ。
 このためか,日電を含めてほぼ全メーカーが将来のハイエンドパーソナルマシンのOSは,UNIXではなくOS/2になると見ている(図2).


ASCII1991(03)j05UNIXとOS2図2_W520.jpg
「ほぼ全メーカーが将来のハイエンドパーソナルマシンのOSは,UNIXではなくOS/2になると見ている」全く意外な予想だ。実際はどうだったのだろうか。私は分析装置でしかOS/2を見たことがない。

 しかし,これが長期的に続くかというのは疑問視されている.OS/2そのものの特色を生かせるアプリケーションの種数拡大や,一方でMS-DOSの機能強化(MS-Windows3.0やMS-DOS Ver.5の登場など)をどう見るかという戦略もある。実際には当初の目論見ほどOS/2は普及しないかもしれない。
 加えて多くのメーカーが指摘する難点「RISCチップにも適用できるUNIXに比べ,選択の幅が狭い」という点も解消する必要がある.これらが実現されなければ「32bitのパソコンとWSの分野のOSは、2~3年後にUNIXの比率が25%になると考えている(あるメインフレームの幹部)」という予測が現実になるかもしれない.


オフコン市場に、なんとか入り込むUNIX
 パーソナル分野で優勢だったOS/2も、より広範囲のユーザーが使うミッドレンジ領域では立つ瀬がない。この分野ではUNIX拡大の可能性が強い.
 しかし,ミッドレンジ領域の市場ではUNIXの前にオフコンが立ちふさがっている.前にメインフレーマ4社の戦略で見たように,各社のUNIXマシンの中核機種は今後WSからオフコンにかけてのミッドレンジ領域になる。年間1兆円にもなるオフコン市場に食い込めるかどうかが,UNIX市場拡大の大きな鍵となるであろう.
 現在のオフコン市場は大きく2つの分野に分かれる。ひとつは中小企業のホストコンピュータであり,もうひとつは大企業の部門コンピュータである。このうち各メーカーがUNIXマシンの有望な市場と見なしているのが大企業の部門コンピュータだ(図3)。


ASCII1991(03)j07UNIXとOS2図3_W520.jpg
 「部門コンピュータでは,パソコンとのネットワーク機能や,使いやすいリレーショナルデータベースが求められる。この点ではメーカー独自のオフコンよりも,豊富なサードパーティソフトを使えるUNIXマシンのほうが優れている(日本ユニシス)」という意見がある.すでに日本ユニシスや東芝,日本NCRなどはこの分野に向けてUNIXマシンを積極的に販売し、実績も上げてきた.メインフレーマ4社もミッドレンジのUNIXマシンの市場として大企業の部門コンピュータを最大のターゲットにしており,この分野へのUNIXの普及はかなり早そうだ。
 しかし,もうひとつの市場である中小企業のホストに,UNIXマシンを販売することは各メーカーとも消極的である.「オフコンには特定分野向けにカスタマイズされたソフト資産があり,ユーザーの使用ベースもある。これをUNIXに移行してもメリットがない」と,メーカーは見ている.もし,機能面でメーカー独自のオフコンと決定的な差がつけば,中小企業向けにもUNIXマシンを販売するメーカーが増えるのだが……
 また,RISCチップを搭載のUNIXマシンではコストパフォーマンスの点で,従来のオフコンを抜き返すこともあるだろう.「あとはソフト・ベンダーが積極的にアプリケーションを開発すれば,中小企業のマーケットにもUNIXマシンが浸透するかもしれない(日本ユニシス)」との声もある(表2)。


ASCII1991(03)j06UNIXとOS2表2_W520.jpg
両者ともに不利なメインフレーム分野
 メインフレームの分野はどうか。この分野でもOS/2の活躍の場はない。また,UNIXをメインフレーム分野に積極的に推し進めるメーカーも富士通だけである。他のメインフレーマは大学や研究所など特定の分野に限定し,小規模なUNIXビジネスを行なっているにすぎない(図4)。

ASCII1991(03)j08UNIXとOS2図4_W520.jpg
 しかし,メインフレーマ各社の見方は必ずしもこの分野のUNIXに悲観的ではない。「伝統的なメインフレームの市場に急速にUNIXが入り込むことはない。ただOLTP(オンライントランザクション処理)のような新しいアプリケーションの分野では,コストパフォーマンスの良いUNIXマシンに移っていく可能性が十分ある(日電)」.
 富士通でも,1990年9月に発表したメインフレームで新しいコンセプトを打ち出し,この中でOLTPに関連する通信処理の部分をUNIXベースの専用マシンに分散する計画を表明している。メインフレーム発表の1週間後に出した通信プロセッサのSURE SYSTEM2000がこの計画の第1弾である。現在は独自のOSを搭載しているが,インターフェイス仕様はUNIXに合わせてある。「いずれUNIXを前面に出し,OLTP向けのコンピュータとして発表したい(富士通)」と意気込む。
 メインフレーマ4社を中心にUNIXシフトが進み始めたとはいえ,どのメーカーのUNIX戦略もまだ緒についたばかり.アプリケーションの品ぞろえや販売網で決定的な強みを持っているところは1社もない。これまで劣勢に立たされていたメーカーにもUNIXでは大いに巻き返しのチャンスがあるわけだ。一方のOS/2では,以前からメインフレーマが中心になって普及を促進しており,どんでん返しは起こりそうにもない.
 メーカーの取り組み具合は,即,普及拡大に拍車をかけるものではない。しかし,UNIXとOS/2は,ユーザーパワーで革新が進んできたMS-DOS/MS-Windowsとは異なる道のりを選び,普及に向けて歩んできた.
 コンピュータシステムがネットワーク化に向けて変容する現在,ネットワークに強いことが市場制覇のための課題になるだろう.
 結論を言えば……,
「UNIXマシンは,メインフレームからワークステーションにかけての分野」「OS/2マシンは,ハイエンドパーソナルマシンの市場」と,それぞれに棲み分け,将来に向けて幅広く浸透するための手段を模索しているのである.

 この結論もどうだったか。OS/2については大外れだったとしか記憶していない。
どうしてアスキーの記事はOS/2を推していたのか不思議だ。

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:パソコン・インターネット

ハビタット,バス,TRON(月刊ASCII 1991年3月号5) [月刊アスキー廃棄(スクラップ)]

ヴァーチャルリアリティは33年前からあった。別に新しいものではない。というか古いものだ。10年ひと昔なら3昔前だ。なんと古いくさいものをさも新しいものかであるかのように言っているのか。セカンドライフやメタバースの原形だと私が思っているハビタットの記事があった。
ASCII1991(03)d01サイバーソンリード_W520.jpg
ハビタット
 今まで紹介した有力企業以外でも,人工現実ビジネスに携わる人々が多彩なアプリケーションを展示して,サイバーソンの参加者の目を楽しませてくれました。その中から,いくつか面白い例を紹介しましょう.
 ハッカー・コミュニティ仲間のひとり,チップ・モーニングスターが,ハビタットという人工現実風のゲームを展示していました。チップはベテランのプログラマでハッカーズ会議の常連であり,ゲームプレイヤーの行動それ自体によって進行していくコンピュータゲームに深い関心を抱いています。チップとF.ランドール・ファーマーは,現実世界のロールプレイング・シミュレーションに最適な環境,ハビタットを協力して作り上げました.ハビタットは,コンピュータを仲介役としてプレイヤー同士がコミュニケーションできるシステムです.自宅のコンピュータの前に座っているプレイヤーは,ホストコンピュータを通して別のユーザーとつながるのです.ハビタットのプレイヤーはいくつかの「実体」を直接コントロールでき,あるプレイヤーの「実体」はほかの全プレイヤーの「実体」とコミュニケーションできます。ダンジョンズ・アンド・ドラゴンズ(TM)のようなロールプレイングゲームにちょっと似たところがあります.
 ハビタットは,もともと1985年に「クラブ・カリービ」として世に出ました。これはCommodore 64をプレイヤーのフロントエンドに使っていましたが,新しいバージョンではFM TOWNSが使われています。ハビタットの画面は2つに分かれていて,大きいほうがプレイの進行を人工現実のグラフィック・イメージによって表示するために使われ,小さいほうがコマンド入力用で,プレイヤーはここでコマンドを入れたりメッセージを読んだりします。プレイヤーを表わすイメージは,アバタと呼ばれます。アバタは,人工現実の中の物体をプレイヤーコマンドの指示どおりに取り扱います。ハビタットの世界の中では,アバタが結婚したり離婚したり、会社を作ったり教会を建てたり、探偵になったり公共機関を運営したりするのです.
 チップは,「ハビタットは日本で大人気なんだ。今デモをやってるゲームが,日本のNIFTY-Serveっていうネットワークで現に動いているんだよ」と言っていました。この記事を読んでいる人の中にも,きっと自分でハビタットをプレイしている人がいるはずです.もしそうなら,ハビタットをどう使っているかということと,あなた自身について書いたお便りをぜひハイパー・ハッカー宛にお送りください。

 ハビタットをセカンドライフやメタバースと読み換えても通じるだろう。

TBNの「なんでも相談室」にバスの解説があった。
システムバスと拡張バス
 バスとは,コンピュータ内のある回路と別の回路の間を結ぶ信号線で,データなどの信号が通る道のことです。通り道といっても、通常は信号線が何本かまとまって走っており,その一組の信号線束を指します。1本の線には一つの信号が流れますが,バラバラな速さで流れるのではなく、タイミングをとって,同時に複数の信号が流れています。たとえば,乗り合いバスを考えてみてください。乗り合いバスはさまざまな人が一緒に乗って目的地へ行きます。これと同じように,データやら制御信号やらが一緒に回路まで行く通路がバスというわけです。バス停が接続している回路,乗客がデータや制御信号に当たります(図1).ちなみに,この信号線束の信号の仕様をバスと呼ぶ場合もありますが、ここでは,バスはあくまで通り道のこととして説明していきます.

ASCII1991(03)h03バス図1_W520.jpg
 コンピュータシステム内部では,プロセッサやメモリなどを結んで「システムバス」が走っています.これは人間にたとえると脊椎ともいうべき重要な道です。コンピュータ雑誌などで使われるバスという言葉は、主にこのシステムバスのことを指しています。バス構造を中心にコンピュータ内部の概念図を示すと図2のようになります。システムバスが脊髄ならば,プロセッサは人間の脳に当たるでしょう.プロセッサとメモリ間などのデータのやり取りは,システムバスを通して行なわれているのです.そのため,システムバスを(システムの)内部バスということもあります。

ASCII1991(03)h04バス図2_W520.jpg
 システムバスに流れている信号は,アドレス信号,データ信号,制御信号の3種類に分けられます。アドレス信号は,プロセッサがどこのデータを使うのかを指定する信号です.データ信号は,アドレス信号で指定されたデータの通り道です。制御信号は,アドレス信号で指定されたデータをどうするのか(読み取るのか,書き込むのか、別の回路に持っていくのか,etc.)を指示します.
 ところで,プロセッサが一時に扱えるアドレス信号とデータ信号の量を数字で表わしたものが,プロセッサのbit数です.32bitプロセッサは,一時にアドレス信号,データ信号とも32個まで扱うことができるわけです。これと同じように,システムバスも一度に伝える量によって,16bitバス,32bitバスという言い方をよくします.このときのバスのデータの伝達量を,バス幅といいます.なお,コンピュータのbit数はプロセッサのbit数ばかりでなく,システムバスの幅によっても左右されます。いくら32bitプロセッサを使っていても,システムバスの幅が16bitだと,本当の意味では32bitコンピュータとはいえないのです。
 さて,コンピュータにはシステムバスとは別にもうひとつのバスが通っています。これを拡張バスといいます。機能自体は,システムバスとほとんど同じで、主にプロセッサとI/デバイスとの接続に使われています。このバスに各種機能拡張ボードを接続することによって,本体にはない機能を利用できるようになるわけです。
 システムバスや拡張バスの仕様はメーカーによって異なるのが一般的ですが,よく利用する信号線種やスロット形状などは,協会などの団体によって規格化標準化されたものもあり,これを標準バス規格といいます。標準バス規格を利用すれば,同じ規格の機材を違うメーカーのコンピュータ上に搭載できたり,開発コストを低く抑えられるというメリットがあります。標準を勧告している主な協会は,ISO(国際標準化機構),IEEE(米国電気電子技術者協会),ANSI(米国規格協会)など.日本国内ではJIS(日本工業規格)が主に標準化を進めています。
 標準バスとして有名なものに,VMEbus(IEEE1014)や,NuBus(IEEE1196)などがあります.VMEbusは,Motorolaが中心となって開発したバスで,エンジニアリングワークステーションによく使われています.NuBusは,マサチューセッツ工科大学(MIT)で開発されたものです.ともに,システムバスや拡張バスとして利用されています.また,計測器用のGP-IB(IEEE488)や、二次記憶装置用のSCSI(ANSI標準規格)も標準バス規格のひとつです。

バスマスタとスレイブ
 バスに接続される装置のうち,ほかの装置へ命令し操作するプロセッサのようなものをバスマスタといい,バスマスタに制御されるメモリなどのものをスレイブといいます.スレイブは,バスマスタからの命令(アドレス信号,制御信号)があったときに初めてデータ信号の送受を行ないます。自分からほかのスレイブに命令したり,バスマスタを無視して勝手に動作することは決してありません。図2の例では,システムバスから見た場合,プロセッサがバスマスタ,メインメモリがスレイブになります.また,拡張バスから見ると,バスコントローラより上のシステムがバスマス夕,I/Oデバイスがスレイブになります.
 システムバスと拡張バスとの違いは,その名のとおり,システムバスはコンピュータシステム内部の閉ざされた中でのデータのやり取りを行ない,拡張バスはコンピュータと外部インターフェイスとのデータのやり取りに使われる点です。また,システムバスと拡張バスでは,システムバスが明らかな優先順位を持っています.システムバスのバスマスタであるプロセッサは,拡張バス上の制御装置を操作できますが,拡張バス上の制御装置は,プロセッサなど,システムバス上のチップを制御できません.この部分がシステムバスと拡張バスの最も大きな違いです。
 ただし,実際のコンピュータの構造の細かい部分は機種ごとに違ってきます。I/Oデバイスをシステムバス上に設置しているコンピュータもありますし,システムバスと拡張バスの区別が曖昧なコンピュータもあります。中には,拡張バスのないコンピュータも存在しますので,これまでの話はあくまで一般的なものだと考えてください.

32bit拡張バスとは何か?
 さきほどバス幅の話をしましたが,32bitプロセッサがパーソナルコンピュータに搭載されるようになっても,メーカーは,依然として拡張バスは32bitではなく16bitを利用していました。なぜかというと,従来の16bit拡張バス仕様の拡張スロットに対応しているボードの互換性を保つためです(それに対して,システムバスのほうは32bitプロセッサの搭載とともにほとんどのメーカーが対応し,現在では完全に32bit化されているようです)しかし、最近になって拡張バスも徐々に32bit化され,各メーカーは次々に新しい32bit拡張バスを搭載したコンピュータを送り出しています。その拡張バス規格が,宮崎さんのご質問にあるNESAやEISAですNESAは日本電気が発表した32bit拡張バス規格,EISAはCompaq ComputerIBM PC互換機メーカーグループが発表した規格です.またこれより早い時期に,IBMはMCAという規格を発表し,Apple ComputerはMacintoshIIシリーズ用の拡張バスとして,前述したNuBusという標準バス規格を採用しています(表1).

ASCII1991(03)h05バス表1_W520.jpg
 Apple ComputerのNuBus(AppleNuBus)は,1987年という早い時期に発表されました.そもそもMacintoshには拡張バスがなかったため,標準バスであるNuBusを採用することによって,拡張ボードを開発しやすくするといった意図があったのかもしれません。なお,Apple NuBusは,標準バス仕様のNuBusと比べて,基板サイズが縮小され,機能が若干省略されています.そのため標準バス仕様の拡張ボードを利用することはできません.
 同じく1987年発表のIBMのMCAは,従来のIBM PC/ATの16bitバス規格(ISA)との互換性を捨て、まったく新しい規格として発表されました。ですから,従来の16bit拡張バス対応の拡張ボードを利用することはできません。従来との互換性よりも,32bitの高性能を選択したのでしょう.
 対するCompaq ComputerなどのIBM互換機メーカーのEISAは,従来のISAと互換性のあるものになっています.つまり,拡張スロットに,従来の16bit拡張バス対応の拡張ボードと32bit拡張バス対応の拡張ボード両方を設置できます。その分,技術的にかなり大変だったのか。規格の発表は1988年でしたが実際に市場に出回るまでにはさらに1年以上かかりました.
 NESAは,日電がPC-9801の32bit拡張バス規格として1989年に発表したものです。EISAと同じく従来のPC-9801シリーズの拡張ボードも利用できるようになっており,その仕様にはEISAと似ている部分も見られます.

32bit拡張バスはどのように優れているのか?
 Apple NuBus,MCA,EISA,NESAの4つのバス仕様に共通している特徴は次のようなことです。
 まずバス幅(アドレス信号の通るアドレスバス幅,データ信号の通るデータバス幅のそれぞれ)を32bitにしたことです。これによって単位時間当たりに処理できる情報量が16bit拡張バスの2倍になりました.また,最大データ転送速度を20~33Mbytes/秒と,高速化しています。今までの最大データ転送速度が2~10Mbytes/秒程度ですので,メーカーによっては最大で10倍以上高速化したことになります。
 次に自動コンフィギュレーション機能があります。これは,拡張ボードの設定をボード側が自動的に行なってくれる機能です.今までの16bit拡張バスでは,拡張ボードの設定をユーザーが自分で行なわなければなりませんでした。読者の方の中には,マニュアルを見ながら拡張ボード上のディップスイッチやジャンパ線を切り替えた経験があるかと思います.拡張バスは,このようなスイッチがボード上からなくなり,ほとんど本体任せにできます.
 最後に,バスマスタ機能があります。これは,拡張ボードが拡張バスのバスマスタになれるという機能です。これによって,スレイブの制御などの仕事をほかの拡張バス上の回路で行ない,プロセッサへの負担を軽くすることができます.そしてシステム全体を高速化できるのです.たとえば,特定の仕事を拡張ボード上のアクセラレータに任せたり,I/Oデバイス自身にI/O制御をさせたりできます(図3)。また,複数のバスマスタが同時にバスの使用を要求したとき,どのバスマスタを優先させるかを決定する機能(アービトレーション機能)も持っています.


ASCII1991(03)h05バス図3_W520.jpg
 バスマスタ機能を搭載した代表的なものとして,MacintoshIIシリーズのビデオボード「Apple8・24GCビデオカード」が挙げられるでしょう.MacintoshIIシリーズでは,ビデオ回路はNuBus上の拡張ボードで(ci/siは内蔵),ボードを替えることによってディスプレイの表示能力を選択できるようになっているのですが,その中でもApple8・24GCビデオカードにはAm29000RISCプロセッサが搭載されており,バスマスタとして機能します。これによってグラフィックス処理をメインプロセッサ上で行なわず,ビデオボード上で行なっているのです.
 なお,バスマスタ機能および自動コンフィギュレーション機能を持つバスをインテリジェントバスと呼ぶこともあります.
 これらの拡張バス規格は,パーソナルコンピュータばかりでなく,ワークステーションなど,マルチタスクが可能な上級機種用の拡張バス規格としても利用できる性能を持っています。実際にNuBusはTexas Instruments社などのワークステーションにも採用されていますし,EISA,MCA,NESAもRISCワークステーションやオフコンなどの上級機に利用される予定がありますMCAに至っては,機能拡張でメインフレームにまで利用できる性能を持たせようという計画があるそうです(目標とする最大データ転送速度は160Mbytes/秒!).現在,ワークステーションの低価格化で,パーソナルコンピュータとワークステーションの区別がなくなってきつつある,と言われています。拡張バスひとつ取ってみても,パソコンの高性能化がかなりの速度で進んできているようです。     (加藤)



死んだと思っていたTRONがどっこい生きていた。
▲BTRONを買いました。突然こんなことを言っていいのかどうか分かりませんが,取材にきてください!
△……という手紙が編集部に届いた.いきな「取材にきて」というのも凄いが,なんといっても「BTRON」。これにはインパクトがあった.
 いまさら説明するまでもないが,BTRONは新しいコンピュータの規格を作る「TRONプロジェクト」のパソコン関係の規格である.数年前は,MS-DOSのような輸入文化一色のパソコンの世界を変えるものとして,かなり期待されていた.ところが,「来年には発売されます」と提唱者の坂村健さんが毎年言うものの「BTRONマシン」はなかなか発売されない。だから、いつのまにか「BTRONなんて永久に出てこないんじゃないか」という気分になっていた。そこへ、この手紙がやってきた.」
 編集部内での反応は「ヘー!BTRONって発売されてたんだー」「そういえば,この前聞いたなー」などさまざま。「いったい、何に使っているの?」という疑問がふつふつと湧いてきて、「せっかく呼ばれたんだから,行ってみよう」ということになった.」

 手紙の主さんは,中学校高等学校の物理科の助手をしている男性.BTRONマシンは物理準備室にある机の上に置いてあった(写真1).一見したところPC-9801UV11をひと回り大きくした感じ。」
「これが,BTRONですか」
「ええ.というかハード自体は松下のPanacom M550という普通のパソコンです。CPUは80386SXで40Mbytesのハードディスクを内蔵しています。だからMS-DOSのフロッピーを差せば,MS-DOSマシンになります(といってMS-DOSを走らせてみせる)」
「この上で80286用のBTRON-OSを走らせているわけですね」
「そうです.ただBTRONという名前じゃなくETマスターという名前になっています(今度はBTRONというかETマスターを起動してみせてくれた)」
 初めてみるBTRONの印象は,「MS-Windowsみたい」だった.画面上でアイコンやウィンドウみたいなの(本当は「仮身」「実身」というのだ)が複数表示されてマウスで操作する。
「どんなソフトがあるんですか?」
「ワープロとグラフィックソフトの2本が入った基本エディタとBASIC/98を買いました」
「MS-Windowsとどこが違うんですか」
「仮身(アイコン)を実身(ウィンドウ)の中に埋め込んで、入れ子構造にできることが違うんです」
「OS上でハイパーテキストを実現しているようなものですね。ところで,なぜBTRONを買ったんですか?」
「以前からずっと欲しかったんです.私は最初MZ-700のユーザーで、その後MZ-1500を使っていたんですが,そのころ『Oh!MZ』でTRONの記事を読んで以来欲しかったんです」
「MZのほかにどんなマシンを?」
「その後ソードのM68000を中古で買ってCP/M-68Kを使ったりPC-286Lを使ったりしたんですが,98はどこにでもあるので286Lを売ってこれを買ったんです」
「筋金入りのマイナー機種ユーザーですね(笑)。実際使ってみてどうですか?」
「いや,いいですよ!ただ問題も多いですけど.現在,1Mbytesのメモリに2Mbytes増設して3Mbytesで使っているんですけど、すぐにメモリが足りなくなります。漢字変換の辞書をメモリ上に置いているせいらしいんです.あと印刷が汚い.BTRONはプリンタの内蔵フォントを使わないので本体の16ドットフォントで印刷してしまうんです.この2点は辞書ROMやフォントを内蔵した教育用カードを買えば解決するんですが20万円もするんです。あと、情報の公開が少なくて,MS-DOSのconfig.sysに当たるファイルさえ書き換え方を教えてもらえないんですよ」
「やはり,苦労も多いですね。最後に一言どうぞ」
「とにかく早くアスキーのカラーページで紹介してください。最近のアスキーはTRONに冷たすぎます」

 発売元の松下にも問い合わせてみた.ETマスターはちゃんとしたBTRONだが,現在はCAIツールと一緒に教育用セットとして発売しているそうだ。BTRONならではのマルチメディア,マルチタスクが売り物で,MS-Windowsと違って80286マシンでもストレスなく使えるそうだ(渡辺さんは386SXのM550だったが,本来の推奨セットは286のM530).現在,北海道,九州,および都内のいくつかの学校で導入が検討されているらしい。
 ちなみにお値段は先生用1台+生徒用20台が基準で基本セットが2000万円,フルセットで4000万円だそうだ。渡辺さん自身は同クラスのPC-9801の実売価格よりもやや高い金額で購入したというが、基本的には個人に対する販売は当分行なわないそうだ。興味のある人は新橋にあるPanacomAVセンターに行ってみてください。   (根岸)


ASCII1991(03)h02TRON写真1_W391.jpg
 マイナー機種のユーザはトラブルシューティングが趣味の傾向があると思う。情報を探し、試行錯誤しながら使っていく。問題解決した時の快感はゲームに優るとも劣らない。

編集室からをスクラップする。
ソフトウェアプレイヤとしてのパソコン
▲480×640.これはパーソナルコンピュータの画面を構成する縦横のドット数(解像度:レゾリューション)である.IBM PS/2が採用するVGAのそれに等しい。この解像度はいま2つの理由で注目されている。1つは,今年の最大のエポックとなるはずのMS-Windows3.0が,このVGAのグラフィックスで,まず,我々の目に入ってきた点。もう1つは,この480という縦の解像度が,ビデオのデータを扱うのに具合がよいとされる点だ.MS-Windows3.0には,マルチメディアのプラットフォームとしての役割も求められている。
▲渋谷のパソコンショップに行って,ソフト売場の壁一面に並んだパッケージを見ると,パソコンはすでに「ソフトウェアプレイヤ」の領域になっているのを実感する.パッと立ち寄って気に入ったソフトを買って帰り,自分のマシンに「かけて」みるという使い方もすぐそこだ.
 コンピュータとメディアの境界線が解かれるポイントは,膨大な設置台数やサポート環境を持つDOSマシン+Windows3.0なのか、マルチメディアに積極的なMacintoshなのだろうか.
▲480ドットといえば,日本アイ・ビー・エムが突如発表したオープンアーキテクチャディベロッパーズグループも波紋を呼んでいる.DOSJ/Vという日本語DOSの提供を軸とするこの発表は,それまで独自にIBM PC互換マシンの日本語化を行なってきたJ-3100シリーズやAXに判断を迫っている.これも480×640ドットのVGAにおける日本語の表示についてのものだ。
 遅まきながらWindows2.1をリリースした日本アイ・ビー・エムは,3.0についてはDOSJ/Vからのリリースとなるようだ。国内のIBMアーキテクチャの世界がこの方向でまとまってくることは,ほぼ確実ではなかろうか.
▲特別付録の「お楽しみディスクvol.5」は,MS-Windows3.0とは対極にある世界を,つまり,MS-DOSの世界もまだまだ続くということを,偶然にも表わすような形になった.DOSの世界のあっけらかんとした自由さが伝わってきて楽しい。ユーザーにとっても微妙な季節である.
   (遠藤諭)

 このときはまだDOS/Vがどれだけ普及するか分からなかった。結局98とMS-DOSの天下が続くのだろうと思っていた。日本の640×400ではWindowsは使い物にならない。結局ハイレゾマシンを買うしかなかった。そうして私はPC-486GR5PC-486GR3を買ってWindowsを使い始めた。

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:パソコン・インターネット