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電子で書いた文字,HDDトラブル(月刊ASCII 1991年4月号4) [月刊アスキー廃棄(スクラップ)]

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アスキーはたまにこういう科学雑誌の記事的なものを載せる。
 昨年から今年にかけて「原子で文字を描いた」というニュースが新聞などに発表されていたのを目にした方も多いことだろう。米IBM社,NTT,電子顕微鏡の大手メーカー日本電子,日立製作所が発表したこれらの文字の写真は,いずれも物質の極小単位である原子を使って表現されている(写真1~4).

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ASCII1991(04)h01原子で描いた文字写真2_W350.jpg
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 文字を描いた「筆」に相当するのは,「走査型トンネル顕微鏡(Scanning Tunneling Microscope:STM)」と呼ばれるものだ(注1)顕微鏡であるからには、通常は物質表面の微細な構造を観察するために使われている.

注1
走査型トンネル顕微鏡
(Scanning Tunneling Microscope)

 普通の電子顕微鏡は光の代わりに電子を照射,観察対象の試料で透過、反射したものを電気的なレンズ(電磁コイル)で拡大し,ブラウン管上に像を写す.
 STMの原理はこれと大きく異なり,電圧をかけた金属の針(探針)を,試料表面に接近させ,このとき発生するトンネル電流で像を作る.トンネル電流とは,距離がある電極間では流れない電流が,その距離がミクロン以下になったとき洩れ出る電流のこと.探針と試料間の距離をナノm単位に保ったまま表面を走査し,流れる超微小な電流の変化をコンピュータで解析,最終的には原子レベルの凹凸が画像として得られるわけだ。
 STMは,1981年にIBMチューリッヒ研究所の2人の科学者が発明した.STMでは,試料表面を原子レベルで調べられるほか,探針を利用して原子レベルの加工できる可能性があると発明当時から分かっていたという.


ASCII1991(04)h02原子で描いた文字注1_W355.jpg
 ところが1989年,米IBMアマルデン研究所のD.M.Eigler博士とE.K.Schweizer博士(客員研究員)は,この顕微鏡の探針に高電圧をかけることで,キセノン原子をズルズルと引っ張ることに成功した。こうして原子を思いどおりに並べ替えて作られたのが「IBM」の点文字である。一見,パチンコ玉のように見えるボール状の物質は,直径約1ナノm(10-×1m)のキセノンの原子だ。 今のところ,STMの応用技術としては物質の表面に原子スケールの文字を書くぐらいだ。しかし,この技術がさらに洗練されれば,原子を配列して新しい分子を組み立てたり,原子1個が記憶単位となる超高密度メモリが作れるようになるらしい。
たかが文字,されど文字
 見た目には「並んだビー玉」や「釘で引っかいた落書き」のようだが,文字のサイズはナノ単位である。それぞれの文字の大きさは,今,あなたが目にしている“この文字”の約50万分の1の大きさしかない.4枚の写真を見れば,国内のメーカーが発表したものは,いずれも表面を引っかいたような文字.そしてIBMの写真はツブツブ状に写っている。これらには何か違いがあるのだろうか?STMを使って,原子レベルの加工を行なうには(具体的には文字の描画),現在4種類の方法があるとされている。
 (1)探針の先を試料に直接当てて,表面を引っかく「物理的加工法」試料先端が摩耗するため長時間安定した加工はできない。加工精度は数十ナノmになる.
 (2)探針試料間に10~100Vの高電圧をかけ,そのとき発生する熱で試料表面を溶かす「熱的加工法」。加工範囲が小さくできないのが欠点。精度は10~100ナノmが限界.
 (3)探針にかける電圧を微妙に調節して,探針・試料間に電界を生成,この電界で電子1個1個をつまみ上げて移動させる「電界的加工法」。加工に時間がかかるが,精度は原子サイズ(0.1~1ナノm).
 (4)電流によって化学反応を起こす試料を対象に行なわれる「化学的加工法」レジスト,エッチングなど従来のLSI生成と同等の過程が将来展開できる.精度は数十ナノm
 各メーカーが原子文字の描画に採用したのは,IBMが(3)の電界的加工法,NTTが(4)の化学的加工法,日本電子は(3)に近いが加工時間の短い方法を,日立は(1)に近いが原子レベルで加工ができる方法を取っている。ここで各社の方法を紹介してみよう.

★ IBM ★
 重く、不活性のキセノン原子をニッケル基板の上で1つずつ並べ「IBM」の点文字を作った。原子間の距離は1.3ナノm,文字の高さは原子が5個縦に並んでいるので約5ナノmとなる. STM装置と試料は,原子の熱運動を最小限にするため液体ヘリウムで摂氏マイナス269度まで冷却された.さらに,空気中の他の原子が混入しないよう装置は高真空の中に置かれ,人間の音声レベルの震動や,体温などの弱い熱源からも遮断.電界でじわじわと原子を配置した.「IBM」の文字(35個の原子)を並べ替えるのに,22時間もかかったという.
★ 日本電子 ★
 IBM同様に,試料は高真空の中に置かれた。探針のコントロールはすべてコンピュータの画面上でマウスを用いて行なわれるという.マウスをグリグリと動かすと探針にもそのまま動きが伝わり,観察時よりも高い電圧を加えられた探針がマウスの軌跡に沿って原子を剥ぐ.
 描画速度は10ナノm/秒で、数秒で文字が描かれる。文字の感じはIBMのものと異なるが,原子を動かすのはおそらく同じ電界の力ということだ。

★ 日立製作所 ★
 通常と同じように試料表面を走査してゆき,剥離したい原子の真上にきたときに,探針と試料間を約0.3ナノmまで近付け,観察時より高い電圧を0.07秒という短時間でパルス状に加えている。高い電圧といっても5.5V,しかし0.3ナノmの距離で5.5Vの電位差は,1cmの距離での約1.8億Vに相当するという(ちなみに雷でも1cmで1万V).原子が剥ぎ取られる原理はまだ解明されていないが,おそらく「熱で原子間の結合エネルギーが切れて原子が外に飛び出しているのでは?」と考えられている。
 IBMは絶対零度付近で実験を行なっているのだが,日本電子と日立の方法は室温で加工ができ,操作の容易性において優れている。

★ NTT ★
 トンネル電流を使って試料を化学的にエッチングしている.銀とセレンの化合物の膜にセレン原子10個ずつ程度の溝が掘れるという.従来の半導体加工プロセスで展開できるため,応用面での期待が高い。

電子回路はどこまで小さく…
 最近になって64MbitDRAMの試作に成功したと聞く。電子回路の集積度はどこまでも上昇しそうだ。しかし,回路マスクをシリコンウェハーに直接焼き付ける現在の方法では,いくら波長の短い光(電磁波)を使っても,加工スケールは数ナノm程度が限界といわれている.先が見えてしまっているのだ。
 そこで,原子レベルで加工できるSTM技術が注目されはじめた.原子スケールの文字を描いた技術が素子製造に直接影響するものではないが,これらの技術を研究基盤とすることで……,

アトミック素子の開発
 必要最小限の原子数個で素子をデザインする技術
アトミックメモリの実現
 原子そのものの存在配置をメモリとして利用し,現在なみの記憶容量を100万倍以上の高密度に詰め込むなども可能だ。身の回りのコンピュータに,原子レベルの加工技術で製造された電子回路が搭載されるのも,そう遠い日ではないだろう.  (福島 修市)
資料提供
●日本アイ・ビー・エム株式会社
●日本電子株式会社
●株式会社日立製作所
●日本電信電話株式会社 LSI研究所


この号の特集はHDDだった。昔はHDDの取り扱いは手間がかかった。
以下抜粋引用する。
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ただただ懐かしい。DSUBはアップルなので使ったことはないが、残りは皆使った。

まずはフォーマットについて。
 PC-9801シリーズのMS-DOS(Ver.3.3BまたはVer.3.3C)を例にとり,FORMAT.EXEの機能について見直してみよう。
 まず最初に行なうのが「初期化(画面1)」である.これは,接続されたHDDに,セクタやトラックなどを作るための作業だ。容量40MbytesのHDDならば,40Mbytesすべてに単一のデータを書き込む(画面2).
 次に,HDDの中身をいくつかの部分に分ける「領域確保」を行なう.領域確保は,「MS-DOS」,「OS/2」,「BASIC」などOSごとのHDDの使用範囲を確保し、外部記憶ドライブとして使えるように番地割りをすることだ(FATの書き込み).それぞれのOSで1Mbytes以上の任意の容量を確保できるほか,同OSでも複数の領域が利用できる.
 たとえば,1台のHDDにMS-DOSとOS/2の領域を作っておけば、HDDからOSを立ち上げる際,必要に応じてどちらかのOSを起動させることができる.また,容量40MbytesのHDDを30Mbytesと10Mbytesのように2つの部分(パーティション)に分け,それぞれにMS-DOSをインストールすることもできる。このような場合,パーティションは仮想的に1つのドライブとして扱うことができる.
 1台のHDDに設定できるパーティションの最大数は決まっている.しかし,運用しだいでは、各々のパーティションの環境を変えておき,目的に応じて起動ドライブを変更することもできる。極端な例を挙げれば,アプリケーション別のパーティションを作り,HDD起動メニューを「アプリケーションメニュー」として使うこともできるのだ(画面3).


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40~100M程度のHDDなのにフォーマットは時間がかかった。
私はDiskBasicなど使わなかったのでMS-DOSだけの領域で良かった。
パーティションはシステムとデータに分かるのが通常だった。システム側のパーティションがエラーのときデータが助かるからだ。OSの再インストールは何回もやったものだ。

部屋(パーティション)を作ろう
 HDDのパーティションとはどういうものなのかは,前のページで理解いただけたと思う。では,実際にどのようなパーティションを設定すれば,最も効率の良い使い方ができるのだろうか。ここで,鍵になるのが,クラスタサイズとパーティションサイズの関係だ。
 クラスタサイズ(またはアロケーションユニット容量)とは,MS-DOSが各ファイルに割り当てるディスクスペースの最小単位のことだ。たとえば,1byteの容量しかないファイルでも,ディスクの中では1クラスタ(たとえば4Kbytes)の大きさの領域が割り当てられる.
 このクラスタサイズは,パーティションの大きさによって変化する特性もある。たとえば,日本電気のMS-DOS Ver.3.3で拡張フォーマットした場合,クラスタサイズの変化はグラフ1のようになる。クラスタサイズが大きいと,小さなファイルも余計なディスクスペースを消費するので効率が悪い。たとえば,2Kbytesの文書ファイルを保存する場合,SASIタイプのHDDを10Mbytesでフォーマットした場合は4Kbytesのスペース消費ですむが,40Mbytesでフォーマットすると,4倍の16Kbytesも消費してしまう.また,ファイルアクセス速度もクラスタサイズが大きいと若干遅くなるという結果が出ている(グラフ2).SCSIタイプのHDDの場合はそれほど神経質になる必要はないが,SASIの40Mbytesクラスのドライブを使っている場合には,適当にパーティションを切り分けたほうが効率が良くなるわけだ。

パーティションの正しい活用法
 さらに実用的な面でパーティションを作る効用としては,データとプログラムを別々のドライブで管理できる点がある.アプリケーション,データ,MS-DOSなどの専用パーティションを作るわけだ。たとえば,MS-DOSのシステムを入れる専用のパーティションを作っておけば,MS-DOSがバージョンアップされても,そのパーティションだけを再度作りなおせばすみ,アプリケーションなどを再インストールする必要はない.また,不幸にもあるパーティションがクラッシュした場合でも,他のパーティションのデータは無事な場合が多く,アプリケーションとデータが一度に失われる危険は少なくなる。セキュリティの面からもデータのパーティションを別に作ることが望ましいのだ。

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メインの用途が作成した文書ファイル等の保存だからファイルサイズは小さい。1ファイルで何Mbytesのデータを入力なんてしない。ファイル数は多くなるのでクラスタサイズは気にしていた。

ディスク高速化ユーティリティとはなんぞや
 HDDの中身はファイルの作成や削除が頻繁に行なわれ,はげしく変化している。MS-DOSは,新しいファイルを作る場合,ディスクスペースを無駄にしないために,以前に削除されたファイルが使っていた領域(クラスタ)も再利用する.このため,ファイルの削除と作成を繰り返すと、新しく作られるファイルのディスク内での状態は,図1-aに示すように飛び飛びの状態になってしまう.このような状態のファイルをアクセスすると,HDDの磁気ヘッドの動きが大きくなり,アクセススピードが落ちてしまう。
 そこで登場するのが,HDDの中身を整理して,アクセス速度を改善する、いわゆる「ディスク高速化プログラム」や「ファイル再配置プログラム」と呼ばれるものだ。これらのプログラムは,ばらばらになったファイルの配置を整理して,図1-bのようなきれいな状態にするものだ。最近の製品では,めったに削除や更新をしないアプリケーションプログラムなどのファイルを,ディスクの記憶領域の先頭に集めて,ファイルの断片化を起こしにくくする機能を持つものもある。
 HDDをどのように使っているかで効果は変わってくるが,特に大容量HDDでファイルの書き換えを頻繁に行なっている場合などには有効だ。ファイルがどのくらい断片化しているのかを調べて,数値で表示する機能を持つものがほとんどなので,ときどき使ってみて断片化がひどいようであれば,再整理をすれればよい。このようなディスク高速化プログラムは,専用ソフトの「ノストラダムス」のほか,「Norton Utilities」,「Newton-98」,「MS-DOS SOFTWARE TOOLS」などのディスクユーティリティにも付属している(画面1).


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ノストラダムスは良く使っていた。HDDは使い込むとコココ、コココと音が続きいかにもディスクヘッドがあちこち動いているなと感じた。そうなるとノストラダムスの出番だ。

昔のHDDのデータはよく飛んだ。今から思えばどうしてなんだろうと思う。
ドライブは見える,が……
 chkdskコマンドを使ったらエラーが出た──これは,「FAT」や「ディレクトリ」の異常が原因だ。
 chkdskコマンドで報告されるエラーは,主に「破損クラスタ」と「重複リンク」である.破損クラスタというと聞こえが悪いが,中身が壊れているわけではない。どのファイルも使っていないはずなのに,FATの上では「使用中」になっているクラスタをこう呼ぶ(図2).MS-DOSではクラスタは,ファイルによって専有されているか,未使用であるかのどちらかだから、そうでない領域があるのはおかしい.それをchkdskコマンドが報告してくれるわけである。
 一方,重複リンクのほうは,ディスク上の同じ領域を,複数のファイルが持っているという状態を指す。MS-DOSでは,ある領域を複数のファイルが同時に持つということはありえないので,これも異常である,というわけだ.
 ワープロで文書を読むと途中で切れるといった事態では,FATのエラーの可能性が高い(図3)。途中で勝手に終わりになっていたり、本来読み出すべきところとは違うところを読むように書き換わってしまっているのだ.
 dirをとると変な文字が出たり,ファイルがとんでもないサイズになっていたりするのは,ディレクトリが不正に書き換えられていると考えられる.

悪いのは機械ばかりではない
 間違って「del *.*」してしまった,それどころか「format」してしまった.*.*とはいわないまでも、必要なファイルを削除するというのはよくやるミスだ。
 delするとどうしてファイルがなくなってしまうのか.それは,ファイル名の頭文字が16進数の「E5H」という数値に書き換えられているからである.E5Hというのは「このファイルは削除されたので存在しません」というマーク,dirコマンドなどはこれを見て,「あ、ここにはファイルはないんだな」ということで,表示してくれなくなる.
 逆にいうと,delコマンドによって永久に葬り去られるのは、1ファイル名の最初の1文字と2ファイルがディスク内のどこを専有していたかという情報だけだ。削除した直後なら,ファイルの内容はまだディスクの中に残っている.b  これに対して,formatをしてしまった場合は救いようがない。ディスクの中を特定の数値で埋め尽くしてしまうからだ


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間違えてファイルを消すのは良くある話でマーフィーの法則ではないが、普段はコマンドやファイル名をタイプミスして「コマンドまたはファイルが見つかりません」とMS-DOSが返すのに間違えて削除するときに限って正しくコマンド、ファイル名を投入し、消してしまう。修復は何度もやった。

chkdskでエラーが出るんですけど
破損クラスタがある場合
 破損クラスタが報告される場合,それはたいてい、ほかのファイルの後ろの部分がちぎれて浮かんでいるものである.この場合は迷わず「chkdsk /f」と入力し,「破損クラスタを修復しますか?」に対して「Y」を応える。そうすると,FILE0000.CHKといった名前のファイルが(場合によっては複数)作られる。これが,破損クラスタを無理やりファイルにしたものである.
 さて,もしこれが他のファイルのちぎれた部分であるとすると,逆にどこかのファイルがしり切れとんぼになっているはずだ(図1)。この場合,ディレクトリに書いてあるファイルサイズに比べて,実際にディスク上を専有している大きさが小さくなってしまうため,chkdsk /f時に「サイズを調整しました」と報告される.ファイル名も表示されるので,こいつの後ろに先程の「CHK」ファイルを追加してやればうまく戻る可能性がある.ただ,テキストファイルならエディ夕か何かでくっつけたほうが安心だ.

重複リンクしている場合
 重複リンクはchkdsk /fでも解消されないが,これは放置すると危険である.同じディスク領域を2つのファイルが利用しているということは,片方を消去した場合に,もう片方のファイルについても、重複リンクしている部分以降が消えてしまうことになるからだ(図2).
 妥当な解決策は,重複リンクしているファイルをすべて別ファイルにコピーしてから,オリジナルを全部削除してしまうことだ。こうすることで重複リンク状態は解消され,2つのファイルの内容も残る.


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間違ってファイルを消してしまった
 事故としては最も多いのが、うっかり「del *.*」してしまうケースだ。これに対しては,上記3本のソフトがいずれも解決策を用意している。一般にundeleteと呼ばれる機能で,フリーウェアやMS-DOS SOFTWARE TOOLSなどにも類似のソフトがある.
 手軽さという点ではエコロジーIIとNewton-98(以下ニュートンと略す)が出色。これらはツリー表示やアプリケーションの実行もできるシェル的な存在だが,エコロジーならUキーを、ニュートンならメニューからファイル復活を選ぶだけで,まるでファイルがあるかのように,削除されたファイルを表示してくれる(写真1).復活させたいファイルを指定し,失われた最初の1文字を入力すれば復活完了だ.
 Norton Utilities(以下ノートンと略す)では,簡易版のQU(Quick Unerase)と,重症のときのためのNU(Norton Utility)を用意している。機能的にはQUが,ほかの2本の「自動復活モード」にほぼ相当する.

undeleteの仕組みと限界
 undelete機能はしばしば「直後なら大丈夫」といわれるが,実際はそんなに簡単なものではない.削除されたファイルがディスクの「どこから入っていたか」は分かるのだが,「どことどこに散らばっていたか」という情報は残されていないのだ。そこで,undeleteプログラムは,開始位置から後ろへ空きエリアを順番に確保していく.ファイルの作成/削除を繰り返したディスクでは,削除した直後でも失敗する可能性がある(図3).
 失敗した場合に備えて,各ソフトとも「マニュアル」モードも備えている.間違ったセクタを人力で振り分けさせるというものだ。人間が判断するのだから,目で見て読めるようなデータに限られる.実行ファイル,データベースのファイル,表計算のファイルは読めないし,ワープロだって一太郎Ver.4や新松は独自フォーマットの文書ファイルを出力する.undeleteを過信するのは避けるべきだ。

undeleteを完璧にする
 ところが敵(?)もさるもの,ノートンとニュートンでは,FATとルートディレクトリの内容をファイル化する機能を持っている。このデータを連動させれば,消されたファイルの名前が何で,ディスク内のどの位置にあったかまですべてお見通しだ。ノートンではfr/save,ニュートンではdiskopt/saveとすることで情報ファイルが作れる.AUTOEXEC.BAT内に記述しておくと,手間も省けるし忘れずにすむので便利だ。ただ,情報を保存した後で作ったファイルに関しては効果がない.
 また,速度向上の意味も込めて,こまめにディスクの並べ替えを行なうのもよい.ノートンのSD(SpeedDisk),ニュートンのDISKOPTなどを利用すると,こまぎれになっているファイルをきちんと並べ替えてくれる(写真2).順番にさえ並んでいれば,たとえ情報ファイルがなくても,undelete機能が正確に動作する.

ディレクトリ整理のもうひとつのメリット
 undeleteの際に,事をやっかいにするのが「汚いディレクトリ」である.ファイルを作ったり消したりを繰り返していると,「復活させると同じ名前になってしまうファイル」がディレクトリに2つも3つもあったりする。もちろん正解はひとつだけだから,間違うと変なところを復活させてしまったりしかねない.
 そのために、日ごろからディレクトリはソートしておいたほうがいい。ノートンのDS,ニュートンやエコロジーのソート機能のほか,シェルの機能としてディレクトリソートができるものもある.ソートしてあれば,ファイルのエントリは上から詰めて並べられるから,同名ファイルがあっても正解は常に一番上に来る。


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ディレクトリのソートは習慣化していた。

FATが飛んだ,ディレクトリが壊れた
 プログラムのバグなどで,FATやディレクトリが壊れることがある。ここにでたらめなデータが書き込まれると,HDDのファイルアクセスはほとんど不可能になってしまう.
 まだいくぶんなりともファイルが見えるようなら,必要なものだけをとりあえずバックアップする.chkdsk /fも行ない,作られた「CHK」ファイルを片っ端からダンプして素性を確認し,正しい名前にして,これも保存する.
 重要なものがまだディスクのどこかに残っているはずなのにファイルとして残っていない,という状況では,ソフトウェアで探すしかない。ここで便利なのが,MS-DOS SOFTWARE TOOLSにある「NOMORE」というプログラムだ。これは,ディスク上の未使用領域をすべてまとめてひとつのファイルにする,という機能を持っている。そのファイルをエディタ(バイナリモード)でオープンすれば、必要な部分がファイルに書き出せるというわけだ(写真3)。
 NUも強力だ.FATやディレクトリが完全に破壊されていても大丈夫.データサーチ機能を併用してファイルの断片を探し,それを別のディスクにファイルとして書き出すことができる(写真4).

FATのバックアップは常識だ
 上のような手段は,大容量のHDDが相手ではかかる手間も時間もばかにならない.ところが,前述したようにFATとディレクトリが保存してあれば話は早い.どんな壊れ方をしていようと,保存データが生きていれば、ほぼ完璧な復活が期待できる.目ではまず復活できないバイナリファイルも大丈夫だ。その意味でも,FATとディレクトリはぜひ保存しておきたい.

ASCII1991(04)c10HDD写真3-4_W520.jpg
「FATのバックアップは常識だ」と書かれているが、バックアップしたことがない。知人でバックアップしてる人もいない。常識は筆者周辺のことだろう。
間違えてフォーマットしてしまった
 ハードディスクをうっかりフォーマットすることはそうそうないにしても,フロッピーでは可能性もなくはない.あるいは,いらないと思ってフォーマットしたディスクに大事なデータが入っていた,というのもたまにあることだ。
 本来ディスクというのは,物理的なフォーマットが終わっていれば,あとはFATとディレクトリをクリアするだけで見かけ上まっさらになるのに,DOSのformatコマンドはごていねいにもディスク全域を塗りつぶしてくれる.これでは復活のしようがない.
 そこで,ノートンとニュートンは,セーフフォーマットというフォーマットプログラムを用意している.これは,データ領域には手を付けず,FATとディレクトリ領域だけをクリアし,そのオリジナルはディスクの後ろのほうの空き領域にとっておくというものだ(図4).前述したFATをファイル化する処理(fr/saveなど)とほぼ同じだが,フォーマットの場合,ディスク上にファイルを残すわけにはいかないので,ファイルとしてではなく,こっそりデータを書き込んでおく点が異なっている.
 DOSのformatコマンドはformat.oldに,セーフフォーマッタをformat.exeにそれぞれリネームしておけば,事故はさらに減るだろう.もちろんセーフフォーマットはHDDに対しても有効だ。


ASCII1991(04)c10HDD図4_W520.jpg
これは使ったことがない。FDDを間違えてフォーマットしたことはない。

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