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座談会、七色のディスプレイ,編集室から(月刊ASCII 1992年7月号12) [月刊アスキー廃棄(スクラップ)]

「男7人座談会 フタを開けたら」をスクラップする。
「男7人座談会 フタを開けたら」
 今年のゴールデンウィークも終わりを告げたとある金曜の夕方,神田錦町の中華料理屋「四川一貫」に男ばっかし7人が集まって勝手なことを言いたい放題。実は毎号エッセイや専門分野に関するコラムを執筆いただいている方々に,15周年を記念して座談会をお願いしたのだ。出席者は,諸岡達一氏,山下幸夫氏,高千穂氏,萩原健太氏,落合正幸氏,丹羽信夫氏,そして進行役は本誌編集長の遠藤である.お題は「ユーザーが考える未来パソコン」.
 ところが,お互いに顔を合わせるのはこれが初めてとあって,ひとりずつの自己紹介だけで延々と1時間.それだけで盛り上がってしまった。全部掲載できないのが残念だけど,いつもとは違う生の姿をご紹介しましょう.


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乾杯なくして始めるべからず――この人に歴史あり
遠藤:ではまず皆さんの初顔合わせを祝して乾杯しましょうか.
一同:カンパーイ.
遠藤:それでは最初は自己紹介モードということで.座っている順番で諸岡さんからいきましょう.パソコンとの出会いや現在の環境などをお願いします。
諸岡:もと毎日新聞編集委員の諸岡です。年長者ということで一番ですか(笑)。パソコンを始めたきっかけは,連載にも書きましたけど,まずPC-8001が出たときにすぐに買ったことです.
山下:古いですねぇ!
諸岡:年長組ですから.これが面白くて.あのころはまだ日本語変換がなかった時代で,BASICだけ.僕は言葉を集めるのが好きで,コンピュータの言葉というのが当時は全部新鮮だった。ひとつひとつ解明しないと面白くない.言葉を解明するところから始めてね。パソコンの仕組みというより,言葉の面白さから入っていきました。GOTOとか,すべてが初体験ですから.
遠藤:そもそも買おうと思われたきっかけは何なんですか.
諸岡:僕は新しいものがりやですよ。たとえば,新しいスーパービュー踊り子号が走ると聞けば一番に乗ったりね。その手の男だから,別に理由はないんです.何しろ名前が達一,一番に達するですから.
遠藤:なるほど。今はどんなマシンを使っているんですか.
諸岡:これがまた古いんだな。エプソンのPC-286VSというやつを必死になって走らせているんですね。
山下:いい機械ですよ.
諸岡:それからMacintosh II ci.
落合:いいの持っているじゃないですか.
諸岡:いいでしょ(笑)。それから,ノートパソコンも持っていますよ。386のNS/T.出たばかりのマシン。
遠藤:なんか自慢大会みたいですね.主にどんなことにお使いですか.眺めているだけなんてことないでしょうね。
諸岡:実はね,僕はつい1年前に毎日新聞社を定年になったんですよ。で,もしパソコンなかりせば定年後めしを食えなかった,というわけで。つまり,パソコンとネットワークを通じて,ある法人の発行物を一手にネットワーク編集しているんです。全国に会員が散らばっています。
落合:秘密結社っぽいですね。
諸岡:低レ研みたいですか?(笑)
遠藤:では,落合さん.機械自慢を!?
落合:いやいや。何と言っても私の場合は昔の学生運動の時代でしたから。ワンチップマイコンの広告が掲載されていたころで,でもそういうものを買うのはブルジョワ的でしょ。しょうがなく,シャープから出た電卓ですよね.大学を卒業したあと東京に出て,コックを始めたんですけれど,会社の中でいろいろ言われるわけです。料理を作ったあとの原価率がどうのとか.だから自分で数字をいじれるようにならなけりゃ,と,真面目なところから始まった.シャープのポケコンで,あの1行しか表示されないやつ。BASICでプログラムを組んで。でもその限界がすごくあるんですよ。それで思い切って買ったのが,PC-8001markII.ディスプレイの接続,テープレコーダからプログラムをロードさせるだけでも2~3日徹夜しました。で,やっと画面が出たときの感動.でも,それが単なるデモ画面なんですね(笑)。そのうち,機能が足りなくなってPC-9801Fを買いました.秋葉原にはよく通いましたよ.
遠藤:年賀状を印刷するまでに何百万円か費やしたって言ってませんでしたか.
落合:ああ、名刺管理をするのにソフトとかにすごく投資してます。データベースをやりたかったですからね。でもある事情をきっかけに(外野席:言えないけどこれがすごい事情なんですよ),通信にどっぷりはまりまして,ついに会社をやめてシェフネットを始めました。辞めるとき,それで食っていけるのかと上司に言われたけれど,食っていけないからやれると思った.食えないからシェアがない。誰もやらない。でも,これからはきっとそんな仕事も生まれてくる,と.
萩原:人生を教えられるなぁ。
遠藤:現在お持ちのマシンと使い方は?
落合:ホストが,東京,横浜,大阪にありますから,それぞれに1台ずつPC-98シリーズですよね。
高千穂:いっそワークステーションにしてしまえばいいのに.
落合:それではコストがかかり過ぎますからね。マジな話になりますけど.4回線程度でやるんでしたら,286の12MHz程度で十分です.うちなんかPC-9801U2がまだ生きていますよ。それとかVM2とかいれると10台超えますね.ときめいたマシンはやはりAppleII.ゲームの考え方とかすばらしいですよ.
遠藤:各種マシンが散乱しているわけですね。では次,萩原さん.
萩原:お二人に比べると,僕が始めたのけっこう遅いほうかも。そもそも僕は字が丸くて,女子高生みたいとか言われてね、ものを書く商売をしていてそう言われるのは恥ずかしいなぁと思っていたところ、ワープロというものがあると聞いて.不幸なことに最初にOASYSを使ってしまったんです(笑).20万円くらいで叩き売りしていたやつをね。その後,少しずつマシンを替えていったんですよ.OASYSシリーズで,そのうち,やはりパソコンのほうがいいかなと思うようになって。でも,すでに僕は親指シフトしか使えなくなっていたでしょ。それで仕方なく富士通のFMRを買いました。だけど,親指君*1というキーボード付きのソフトが出て,これだというんで,98に乗り換えようと,PC-9801CVを買って,一太郎を使ってみた。要するに原稿書きが主な仕事なんですね。
*1 (株)アスキーより発売されたPC-9801シリーズ用の親指シフトキーボード(OASYS文書をサポートしたワープロが付属)。現在はモデルチェンジをして「アスキーボード(ASkeyboard)」になっている.
高千穂:音楽ソフトは使われないんですか?
萩原:それはMacのほうですね。でもレコーディングではマニピュレータ*2に頼んでしまうので,まぁ,テキスト処理はDOSマシンですね。ほんと,アスキーボードがなくなったらどうしよう.
*2 manipulator.直訳すると「操縦者」.スタジオでコンピュータやシンセサイザー,サンプラーなどのデジタル機器を使って,必要な音を用意してくれる人。
遠藤:今のマシンは?
萩原:PC-9801ESとDAをアスキーボードで.CVはお役ごめんです.
遠藤:では次の方,丹羽さん.
丹羽:最初に使ったのは日立のレベルIIです.(一同「おおーっ!」)アスキーには大変お世話になっていて,ゲーム言語,TL/Iとか入れて楽しんでました.TBN*3にはお世話になりました.一番使ったのはAppleIIです.50万ぐらいしました。純正のを持っていましたから。
*3 弊誌の「TBN」はTiny Basic Newsletterの略。このコーナーが作られた当時はTiny Basicに関する読者の情報交換の場として存在していた(現在は名前だけが名残として続いている).
遠藤:ソフトでは?
丹羽:ウィザードリィですよね。今ごろ98で流行っているのは許しがたいというか.そのころログインが出たんですよね.ウィザードリィは3までやりました。あとは,プロテクトですよね。
諸岡:プロテクト外しですか?
丹羽:そうです.
遠藤:マシンは何で?
丹羽:メインはPC-9801RA.古いですが.
山下:古くないですよ.
丹羽:いや古いですよ.
遠藤:Amigaを導入して低レ研がアメリカ進出するという噂がありましたが.
丹羽:Amigaもあります.あとFMR-CARDも持ってます。
遠藤:Amigaでは何を?グラフィック?
丹羽:いやゲームですよ.(外野席:このとき丹羽さん何だか怒っているよう)
遠藤:まあまあ,あんまりシリアスにならないで.(外野席:遠藤さんがあせってます)
高千穂:意外と真面目なんですね。
山下:そうですよね。真面目ですね.
丹羽:僕はまったく真面目ですよ.(一同大爆笑)
遠藤:最初,丹羽さんのところにお電話したとき子供さんが出たんですよ。それだけでもうショックを受けてしまった……(笑)。じゃ次は高千穂さん.
高千穂:僕は小説書いてますけど,パソコンに触って3年ぐらいです.大学生のころに,「スタジオぬえ」という会社を作って,今もやっているわけですが,コンピュータは会社内でも企画部門だけが使っていました。ほかの連中は,感電すると危険だから触らないようにしていました。
遠藤:真面目にそういう議論があるんですよ.営業さんにパソコンをわたすと,はまって営業に行かなくなってしまうからコンピュータをわたすな,という意味で.
高千穂:今じゃはまってしまって,原稿落としまくっていますよ。で、触らないでいたんだけど,ただ,もともとキーボードにはあこがれていて,タイプライタで打つというのは作家の夢ですから.朝起きて,シャワー浴びて,おもむろにサッサッサッサと打って,それで,今日はもう終わりだからといってコンバーチブルかなんかで出ていく。それで最初に買ったのがキヤノワード45というワープロです。けっこう相性がよかった。バージョきにもして,ずっとキヤノワード.HDD付のもしてずっとキヤノワード。 世間もみんなワープロだと思っていた.そしたらある日、仲間から「まだキヤノワードを使っているの?」とか言われて,「今はパソコンの時代だよ」と.もう取り残されているわけですよ。そうこうしているうちに,キヤノワード7000がハングした。単語登録がある限界を超えるとハングするというシステムのバグですね。それでパソコンに転向。それ以来1年に1台ずつ買い替えています。来週,エプ ソンの新しいマシンの486/25MHzがくるんです.4台目。
遠藤:通信はいつからですか。
高千穂:7000を買ったときに通信ソフトが付いてきたので,そのときから.NIFTY(Serve)に入ってFGAL*4へ.そのあと,ずっとフリーソフトにはまってます。今はPC-386Sと386NOTEW.基本的には原稿が書けて,通信ができればいい。でも24ドット文字じゃないといやなので,ハイレゾじゃないとつらいんです.
*4 NIFTY-Serve内にある「ソフトウェアギャラリー」フォーラム.さまざまなフリーソフトウェアが一堂に集まっている.
遠藤:では最後になりましたけど,一番堅いと言われている山下さん。
山下:僕は司法試験を受かったころに,ワープロを使いたいなと思ったのが最初です.そのころ,ワープロが普及し始めて.通信も商用化されたころで,雑誌を見ているうちにやりたくなって東芝のRUPOを買い,NIFTYに入ったら,しっかりはまってしまいました。
高千穂:弁護士さんがはまるフォーラムってどこですか?
山下:FJON.
遠藤:FJONって何ですか?
高千穂:素人ジャーナル,どこかのフォーラムでもめごとがあると,そこで全部分かるんです.
落合:うるさいフォーラムなんだ.でも面白いからみんなそこにいくの。
山下:高松に1年半ぐらい研修で行っていたんです.そのとき,原発のことをFJONにレポートしていました.それで市民フォーラムを作って,サブシスをやっていたので7~8万円ぐらい電話料金に注ぎ込みました。給料のほとんど.
遠藤:7~8万で給料全部ということはないでしょう(笑).
山下:PDSのトラブルがそのころあちこちにあって,いろいろ勉強しているうちに詳しくなってしまいました。RUPOは1年ぐらいでやめて,パソコンが欲しくなって,僕はNECが嫌いだからエプソンのPC-286LEを買ったんです.
遠藤:なんで嫌いなの?
山下:うーん,ちょっと横柄に思える.それで2年の研修が終わってから弁護士になって4年目なんですが,今はPC-386Pと386NOTEA.仕事でも通信を使ってます.フリーソフトウェアの著作権の問題などがライフワークになってますしね。
諸岡:弁護士ネットとかありますよね。
山下:ああ、そうですね。でも,私はやっていません。内輪の話が多いので.
高千穂:そうそう,僕もSF関係のネットとかけっこう敬遠してますね。


日本語環境を何とかして!だと思ったらCD-ROMが面白いという話
遠藤:身近なところで,パソコンのここが好きここが嫌いとかありますか.
山下:富士通批判になりそうだなー.
遠藤:そうですか?TOWNSとか頑張っていますよね。
萩原:そう,通信でも見かけますよ。TOWNSで通信ができるとは思わなかったとか言われてますよ.
丹羽:18万台売れているんだそうですね。
遠藤:僕らの周りには使っている人はあまりいないですけどね。新しいユーザーが買っているということですよね。PC-8001から使っているという人じゃない層が,親子でショップに行って買う.
丹羽:フラクタルエンジン*5すごいですよね。
*5 英国シグノシス社がAmigaなどのマシン用に作成したゲームのデモ集がFMTOWNS用としてCD-ROMで発売されている.超高速で展開するアニメーションCG.
高千穂:あれってAmigaのまねじゃないですか.Amiga買ったほうが安いでしょ.
遠藤:まぁ、いいじゃないですか。タバコは地元で買いましょうみたいなもので.
萩原:TOWNSってスペックだけ見たらすごくいろんなことができそうなのにね。「カラオケもできます」なんて言われるから,がっくりきます。
高千穂:テキストが弱いんですよね。OAK*6ですから.
*6 富士通(株)が提供するかな漢字変換機能.
遠藤:僕はOAKってけっこう好きなんだけどな。慣れるといいですよ.
萩原:OAKはけっこういいですよ。そうそう,慣れるといい.
高千穂:OAKをかばう人って初めて.
萩原:かばうっていうのは何ですか。たっぷり語らせてもらいましょう(笑).
遠藤:細かい話だけど,OAKがいいのは漢字辞書が別でしょ.
高千穂:それは,一語一語変換する場合でしょう.思いついた文をだっーと入力するとなるとね.
萩原:確かにOAKでできることは他のFEPでもできますよ。(一同ズッこける)
落合:萩原さんからFEPなどという言葉を聞くと,ちょっと意外だなぁ.
高千穂:OAKは単文節を前提にしているでしょ。そこが僕に合わないというだけで,不満があるわけじゃない.それよりもJISを何とかしてもらいたい.漢字がなくて,僕はずっとJISと戦い続けていますから。
諸岡:何でもありのマルチ言語対応がいいですね。フランス語もできるといいな.
落合:じゃCD-ROMの12カ国辞書を持たないといけないですね.
高千穂:CD-ROMはハイレゾ対応していないんですよね。
諸岡:世界大百科事典*7,買いたいね.
*7 (株)平凡社「世界大百科事典」(1988年版)全35巻が電子化されたもの。項目数9万.
高千穂:僕も買いたいけれど,ハイレゾに対応していない.それに,あの1枚のCDに25万円でしょ.
諸岡:でも検索のやりがいがあるよ.ちょっと使ってみたけれど面白かった。広辞苑も面白いけど,これははるかに面白いです.1日中遊んじゃって25万円も高くないですよ。
高千穂:確かにすばらしいがハイレゾに対応していない(笑)。(外野席:いいなあ、そのこだわり)
諸岡:すごいことに自分のファイルにそのまま落とせるんですよ.
山下:それは問題になっているんですよ。
高千穂:百科事典は昔から引用してもいいことになっていたんじゃないですか.
山下:でも,そのまま貼り付けてしまうのと自分で写すのは違うんですよ.私は今,電子ブックコミッティに相談を受けているんです.今後どうすべきか
遠藤:OKって言ってくださいよ。
高千穂:でも,辞書はOKにしなければ辞書の意味をなさないですよ.
山下:でもその限度というかね。それに海外のほうが問題になっているんですよ。
高千穂:辞書の引用がだめになったら,論文とか書けなくなってしまうじゃないですか.
萩原:音楽の世界でもサンプリングが問題になってますけど。でも新しい表現の方法として使いたいじゃないですか.新しい著作権法を作ってほしいですよね。
遠藤:ここ1~2年でCD-ROMは立ち上がりますよね。文字ものでね。
高千穂:僕は電子ブックも買ったけれど国語辞典などは使い物にならなかった.でも,百科事典は違うでしょうね。
諸岡:キーワード検索で「料理」を引くでしょう。そのキーワードを持つデータをすべて網羅するから,項目数だけで500件を超えるの.でも,256件を超える項目は表示されないんです.
丹羽:メモリの関係ですか?メモリに全部読み込んでいるんでしょうか.
諸岡:メモリが足りないのか載っているメモリを利用できないのか,ちょっと分からないけれど.
遠藤:その点は要チェックですよね。今のところメーカーはその枠を広げる方向で動いているようですよ.キーワード検索では256件なんてすぐですからね。
諸岡:百科事典って図形やイラストも出てくるでしょう.あれはいいですよね。
落合:個人が大容量のメモリを持つ時代ですからね。ホストと同じ情報を自分が持つ時代ですよ。ダウンロードして.
萩原:でも、そういう情報って,CD-ROMとかの形で全部自分が持っていなくちゃいけないんですかね.ホストが持っていて好きなときに取り出せるとか.音楽の世界だと,最終的にCDという形のメディアで売られることはなくなるだろうと言われているんですよ.
高千穂:それっていたずらにNTTを儲けさせるだけという気も.
萩原:音楽の世界も,今はハードメーカーがメディアのあり方を決めている。ハードメーカーの行こうとする先にしか行かない.今はデジタルのものをアナログ化して売るというパターンです。でも,今後はデジタルをデジタルのままやり取りする方向へ行かざるを得ないでしょう.
丹羽:音楽だと,MIDIデータの無料文字放送もあるみたいですね.
萩原:百科事典にしても、個人ですべてのデータはいらないわけですよね。「すもう」と「料理」があればいいとか.
高千穂:データベースでいうと,今のように専門家じゃないとサーチできないみたいな形じゃなくて,ゆったりとした気分でサーチしたいなあ。値段が1分80円じゃ高すぎますし.
遠藤:パソコン通信の感覚でいくと,とんでもないけれど,光ケーブルとかを使えば何でもないかも。今ではISDNが64Kとか言っているけれど,4Mbytesとかになると,CD1枚の情報を持ってくるのもたいして時間がかからない.
萩原:過渡期なんですね。コンピュータの役割はデータを保持していなくても使用できるというところにもある.
諸岡:新聞も衛星で空から配達されるようになるかもしれない.新聞販売店はどうなるんでしょう.
高千穂:とにかく情報が高すぎるっていうのはある.
落合:日本は情報を取るのは高いのに,情報自体はタダという感じがあるね。
萩原:とにかくもう少し安くしてほしいですよね。安くしないと成長しませんよ.


小さくなる?軽くなる?でも携帯してまで使う用途があるのかが問題
遠藤:小さいコンピュータってどうですかね。欲しくないですか.
落合:今のノート型マシンって、僕も欲しくて秋葉原を回っていろいろ見てるんですが,何で買わないかというと,見づらくて,はっきり言ってやってられないんですよね.
高千穂:それは正面からライトを当てればいいんですよ。
萩原:頭にライトを付けるんですか(笑)。
落合:炭鉱夫じゃないんですから。それは面白いアイデアですけど.それともうひとつは,小さいとタイピングがたいへんだと思う.
丹羽:そうでもないですよ.
遠藤:そうでもないですよね。FMR-CARDはけっこういいですよ。
落合:CARDは大きさとしてはいいですね。でも親指シフトは見た時点でもう,アレルギーのかたまり.
遠藤:JISだってありますよ.
萩原:僕はJISを見るとだめです。
落合:それってまるで,人種が違うみたいね。
萩原:こりゃもう,しょうがないですね,生まれたときに初めて見たものを親と思うって,あれです.
山下:キーボードの問題は確かに大きいですね.
遠藤:新JISなんていうのもあったけれど,誰も使っていないでしょ。どこへ行ってしまったんでしょうね。
高千穂:僕はアスキーボートのタッチが好きで使ってます。ローマ字入力ですけど.エプソンのタッチは苦手で.
萩原:ちょっと話が細かすぎますよ。
高千穂:だって,10年先なんて分からないですよ.
諸岡:それは分かりませんよ.生きてるかどうかも(笑)。
遠藤:やっぱり形としては小さくなるんでしょうけど.
諸岡:いやー,そんなに小さくならないかもしれませんよ。キーボードは必要でしょ。でもキーの数は今より少なくなるんじゃないですか.
高千穂:音声入力とか,そういう部分でもっとやさしくなるだろうと思うけど。
落合:でもさ,音声入力ってあほらしいと思いませんか.僕ははっきり言ってできませんよ。それさ,小説でやってごらん。たとえばエッチな小説だったらどうするんですか.
高千穂:ところがプロの作家では意外に口述筆記って多いんですよ.
落合:へーっ、そうなんですか.真面目にやってるんですね。
萩原:まあ,大きさにしてもキーボードがどうのこうのにしても,一度は行くところまで行くんでしょうね。そのあと選択としていいところだけ残っていくでしょう.そうなってほしいというか。
落合:さすがまとめますねぇ。(外野席:ほんとほんと.貴重な人材です)
遠藤:テレビのリモコンみたいなものがね,コンピュータになるんじゃないかという話もありますけれども。
萩原:形とか重さのこともありますけど,それを取り巻く環境がどうなってくるかということも大切ですよね。
高千穂:あるテクニカルライターと話していたんだけど,彼はIBM PCを入れてDOS/Vやってまして,で,ビデオカードがあってテレビが映せる.テレビなんて横に小さいのを置けばいいんだけど,ここにテレビを映せるということは,このテレビを使って何かができる将来があるということで,そういう未来が考えられるパソコンを作ってくれという話をしたんですよ.
諸岡:この前,NTTの人にも言ったんだけどね。公衆電話にね,公衆電話パソコンを置いたらいいんじゃないかとね。今のあの差し込みだけじゃ誰も使わないわけですよ。キーボードごと全部置けばいいんですよ.
萩原:そのときはぜひ親指シフトも(笑)。
山下:モデムだけでも付いていればね。
落合:キーボードをパネルにするとか.
遠藤:AT&Tがアメリカでもう公衆電話パソコンをやるそうです.この間のショウ*8で見たんですけど.
*8 コミュニケーションTOKYO'92にて.
高千穂:アメリカは26文字しかないからいいですよ.
萩原:僕は大きさとかこんなものでいいんじゃないかと思うんですよ。かなり限界でしょ。それに,僕は持ち歩かないですよ。持っていると,出先でも仕事しちゃうんですよね。何でこんなところまで来て仕事しているんだろうと思ってしまう.
落合:それに,電車の中でもやっている人がいるけれど,あれは僕には無理だね.あそこまでしたくない。逆に腹が立つよ.この間,グリーン車に乗ってね、おれは寝ようとして乗っているのに,カチャカチャカチャカチャうるさいんですよ。
山下:「このやろう!」っていう感じ。(外野席:おお、フレンドリーな弁護士さん)
諸岡:車内放送あるじゃない.「携帯電話をおかけの方はデッキで」っていう.あれを「携帯電話とパソコンをお使いの方は……」ってことになるんでしょうか(笑)。


みんな通信テクニックは筋金入り
遠藤:考えてみれば全員NIFTYの会員で通信やってるんじゃないですか.
諸岡:アスキーネットのIDも持ってますよ。ほとんどアクセスしてないんですけどね。それにしてもみなさんせっかくNIFTYに入っているんですから「テフニィで朝食を」っていうのを読んでくださいよ。一度も読んだことないでしょ.(外野席:みなさん,控え目にうなずいていた模様)ははは。あれね,アクセス回数が出るんで,だんだん読者が減ってきてるとか、何月はやたら増えてるとか分かるんです.面白いですよ. 落合:その気持ちって分かる分かる.シスオペやっているとすごく面白いですよね。
遠藤:原稿をネットに上げるということは,それだけでバックアップがとれてるというメリットがありますね。
高千穂:あっ,よくあるんですけれどもね,原稿を火事からも守るにはどうしたらいいかって.メールで自分あてに送っておく.
落合:ホストをやっていると,そういう使い方をしたいという人がいるんですよ.
山下:そうでしょうね。
落合:いつハードディスクが壊れるか分からないし.バックアップ用にね。だからこそ,フリーウェアもアップしておくといいんですよね。自分のためにもね。
高千穂:VZ Editorの兵藤さんなんか,ソース付きでVZを売っていますから,「もうバックアップは10万枚」だって言ってますよね(笑)。
落合:パソコン通信自体が,テレビの次の形じゃないかと言われているでしょ.
萩原:今は,パソコン通信といったら誰でも入れて、誰でも書けちゃうメディアだから,このあとどうなるんでしょうね。
遠藤:会員が本当に1000万人とかになったら,そのころには野球の落合選手も入っているだろうし,どの落合さんだろうって会員情報を見るだけにもいちいち重くなってしまいますよね。
落合:そう,いちいち重くなるって,その言葉は重いですよ。だって,ちいさなネットだって,やっぱり佐藤さんとか田中さんとか多いんです。
諸岡:そうすると名字って,自分で作らないといけなくなりますよね。西落合とか新落合とか.
高千穂:シェフ落合とか.
諸岡:山田さんが結婚したら新山田とかって名のってもらうわけです(笑)。
落合:しかし昔のことを思えば,すばらしいですよ。今の世の中
萩原:けっこう,満足しちゃってるところがありますよね。通信上のいろんな人に助けられて,おかげさまで…….
高千穂:速いマシンを買うと,当時はなんであの環境で我慢できたのかっていうことになるんですけどね。
遠藤:(頭をかきながら)あらら,そうですか.みなさん今の環境にけっこう充足しちゃってるんですね.
落合:充足しすぎですよ。ほんと.
諸岡:そうだよな。昔の,伝書鳩にお世話になったころを思えばなぁ.(……――同言葉をなくして唖然。外野席もしかり)
 諸岡氏の、昔の新聞社は出張先で書いた記事を伝書鳩の足につけて本社に送った(それも1羽じゃ不安だから、同じ文章を数羽に託して)という話は,その場のみんなに深い感動を与えたのだった。特別仕込みの四川料理を食べ尽くした後も話は終わらず(ああ、本日のメニューの話が全然できなかったよ),本編終了後「軽くお茶でも飲んで終わりましよう」と入った喫茶店で,なおも2時間オフ会モードの状態は衰えることがなかった.
(外野席の編集部)


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 未来予測がいかに困難かということが分かる対談だった。この検証も後回しにする。

「七色のディスプレイ」をスクラップする。
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「編集室から」をスクラップする。

21世紀における「個人」とは
■コンピュータが作られて間もない頃、このような機械は,世界中に十数台もあれば十分だろうといった偉い先生がいたという話を聞いたことがある。コンピュータの世界は,いまこれとはまったく逆の方向に動いている.
 たとえば,'70年代までの大型コンピュータ中心の世界は、マスメディアに比較できるのかもしれない。テレビや新聞や広告といったメディアは,まったく同じ情報をできるだけ大量に送り届けることを目的としている.それは,何十万人の顧客データを一括に処理する,大型コンピュータのバッチ処理を連想させる。
 これは,どこを切ってもキンタロウの没個性の世界だ。なぜなら,マスメディアは,ある個人の個性に価値を認めると、ひたすらその個性だけを極大化して茶の間に届けようとするからである.というよりも、ほとんどの個人は,テレビや新聞や広告を見ることで,それら商品化された個性を,一方的に受け取る側に回ってしまう。大多数の人が,大型コンピュータのバッチ処理のデータになろうとしている。
 おそらくパーソナルコンピュータが,こうした状況を打開する唯一の抜け穴だ。パーソナルコンピュータは、名前のとおり個人のコンピュータであり,没個性とはまったく逆の性向を持ついちばん端的な現象は,パーソナルコンピュータがもっともメディア的な性格を示すパソコン通信の世界で,すでに始まっている。パソコン通信は,数十万人規模のマスメディアでありながら,全体は,1人1人の個性から成り立っているようなところがある。
 たとえば,ごく普通の会社のなんでもないサラリーマンがいるとしよう。彼が,昨日まで見ていたテレビのスイッチを切って,パソコン通信の中を自由に動き回る。このメディアの中で,何らかの発言をすることができる.ひとことでいって「キミこそスターだ!」の常識化が,パソコン通信の世界である.それじゃ,みんなが勝手に騒ぎだしたら収拾が付かないじゃないかというかもしれない。それを,峻別して自分の欲しいものだけを引き当てるのがパーソナルコンピュータの仕事なのだ。パーソナルコンピュータは,つまり,個人の復権だと思う.
(遠藤 諭)


 行きついた先が現在社会だ。ゴミ情報に溺れる時代になるとはひどいありさまだ。ゴミ情報によりAIまでが汚染されるとは。悪貨は良貨を駆逐するとはよく言ったものだ。

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