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新機種NEC SV-H98,9821Ce,9801Ap/As/Ae(月刊ASCII 1993年7月号6) [月刊アスキー廃棄(スクラップ)]

特集は新機種紹介だった。
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NEC SV-H98 model50f
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知らないマシンなのでしっかりスクラップする。
NEC SV-H98 model50f
 「SV-H98model50f」はCPUにクロック周波数66MHzのPentiumプロセッサを採用している.CPUのバスは64ビット幅であるのに加え,16Kbytesのキャッシュメモリと256Kbytesのセカンドキャッシュを持ち(それぞれ従来のSV-H98の2倍),アクセスの高速化が図られている.サーバー用途向けだけあって,メモリは標準で15.6Mbytes,最大で111.6Mbytesまで増設可能だ.新たに追加された機能として,ECC(Error Correcting Code)対応のメモリを採用しており,1ビットのメモリエラーの検出・自動訂正と2ビットのエラーの検出機能が実現されている.
 ハードディスクは,標準でSCSIタイプの1GbytesHDDユニットを搭載している。本体内にはさらに3スロットのSCSI専用スロットが用意されており,最大4Gbytesまで内蔵できる.内蔵HDDは平均シーク時間9.5ms,平均待ち時間5.6msの高速ディスクを使用しており,SCSIインターフェイスはバスマスタ方式を採用して高速のアクセスが実現されている。
 SV-H98シリーズは,PC-H98シリーズと同様のアーキテクチャが採用されている。ディスプレイは640×400ドットと1120×750ドットの2モード,拡張スロットはNESA(New Extended Standard Architecture)バスとなっている.
 本体デザインはSV-H98mode130/40を継承しており,タワー型の本体のフロントパネルを開けば,FDDや専用ファイルスロット(MOや8mmデータカートリッジなどを装着する)ヘアクセスできるようになっている.
 model50fの価格は270万円と,486DX(66MHz)を搭載するmodel40の230万円よりも40万円高となっているもっとも,model60はSCSI2インターフェイスや本体内に無停電装置と自動電源制御機能を標準で内蔵するが,これらはmodel50fではオプションとなっている.
 SV-H98は,NetWareやWindowsなどのOSのプラットフォームとなり,ファイルサーバーやコミュニケーションサーバーとして利用されるマシンだ。Pentiumの採用による高速処理だけでなく,ECCによるエラー回避などの新機能を備え,トータルで性能や信頼性を高めたモデルだ.
 NECによれば,Pentiumプロセッサは同クロック数の486DX2に比べて約2倍の計算速度を持ち,トータルパフォーマンスで1.5~2倍の処理速度向上が見込めるとしている.今回のSV-H98はサーバーマシンではあるが,PC-98シリーズと同じアーキテクチャを採用している点を考えると,Pentium搭載のパーソナルユースマシンの登場に大きな期待が寄せられるだろう.


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到底個人が買えるようなマシンではなかった。

コラム部分をスクラップする。
Pentiumプロセッサ
 「Pentiumプロセッサ」はインテルのx86ファミリーの第五世代に位置付けられる最新プロセッサである。従来のix86とのバイナリ互換を持ち,なおかクロック周波数66MHz動作時には112MIPSの処理能力を持つ.
 2命令を独立して実行できるパイプライン式のスーパースケーラ・アーキテクチャを採用し,同一クロック周波数の486DXの約2倍の処理速度が実現されている.また,コード/データそれぞれに8Kbytes搭載されているオンチップ・キャッシュ,パイプライン処理を行なう浮動小数点演算ユニットを搭載し,命令コードの分岐先を専用キャッシュに記憶するダイナミック分岐予測機能を持つなど,処理速度を向上させる技術が盛り込まれている.内部データ幅は486と同様の32bitだが,メインメモリへの外部データバスは64bit幅で,データ・キャッシュに256bitのデータを保存するバーストモードにも対応するなど,データ転送の高速化が図られている.
 なお,Pentiumプロセッサの価格は60MHz版が10万5400円,66MHz版は11万5800円(いずれも1000個単位での受注となる).


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386から486への変化はスピードアップを実感したが、486からPentiumはあまり感じなかった。

NEC PC-9821Ce
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NEC PC-9821Ceのまとめ部分をスクラップする。
NEC PC-9821Ce
 PC-9821Ceの価格はmodelS1で33万8000円,modelS2で48万8000円。周辺機器やソフトウェアの価格を考慮するPC-9821A(U2:35万8000円/U7:43万8000円)を同様の構成にするよりも,modelSで約24万円,modelS2ならば約23万5000円安くなる計算だ。
 従来の9821では,CPUが20MHzの386SXということもあってマルチメディア用途での力不足が感じられたが,CPUが486となったことでWindowsの多色モードで画像データを表示するなどの処理でもストレスなく利用できる.最初からひととおりの周辺機器を標準装備してなおかつ価格が手頃な点を考えると,入門機としてもお勧めだ。また,省スペース型のデスクトップ機として利用するのにちょうどいい機種と言える.


9821の型番どおりこのマシンには9801の香りがしなくなった。

NEC 98MATE (PC-9801Ap/As/Ae)
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98MATE
 Windows3.1の発表と同時に,従来からの98MATE(PC-9821Ap/As/Ae)にWindows3.1インストールモデルが発表された.
 ベースとなるのはAp/As/AeのHDD搭載モデルで,MS-DOSとWindows3.1はHDDにインストールされるほか,FDDでも添付されている.
 また,通常のモデルが3.6Mbytesのメモリ搭載しているのに対し,2Mbytes増えた5.6Mbytesを搭載しているさらに,Windows上で最大1024×765ドット表示を可能にする「ウィンドウアクセラレータボードA」と,マウス,マイクが標準で添付されている.
 ディスプレイこそ標準で付かないものの,Windows3.1を快適に利用できる環境が最初からそろっているわけだ。Windowsインストールモデルは,HDD内蔵のみのモデルに比べて5万~5万2000円高い価格構成となっている(表5).しかし,標準で付属する周辺機器の価格を合計すると,2Mbytesメモ(2万円)+ウィンドウアクセラレータボードA(7万円)+マウス(1万円),マイク(2000円)の10万2000円となる.Windows3.1(2万1800円)の価格を加えれば,HDDモデルを購入して同じ構成にするよりも約8万円安価な計算になる.なお,MS-DOSに関しては,従来からのHDDモデルでも標準でインストールされていたが,システムディスクは添付されなかった.Windowsインストールモデルではシステムディスクも付属する.
 インストールする手間が不要なことを考えれば,入門者にとっても手軽にWindows環境を利用することができ,Windows3.1を機会にパソコンを始めようとする人にとってはお勧めだ。また,パソコンを買い替えようと考えている人にとってもお買い得なモデルと言える.


やはり98は高かった。

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米国ハイテク産業,Miscellaneous,社会の木鐸(月刊ASCII 1993年7月号5) [月刊アスキー廃棄(スクラップ)]

「米国ハイテク産業の動向」をスクラップする。
■米国の新しいネットワーク政策
 最近,ホワイトハウスでは,政府で使用されるPCをインターネットに接続するために関連システム.ソフトの発注にのりだしたようだ.インターネットは,米国内のアカデミック,軍の研究機関を中心にそれぞれのローカルエリアネットワークを相互に接続するというやり方で1970年以降急速に発展してきたネットワーク網。
 インターネットで利用できるサービスとしては,接続されているコンピュータ間でのファイル転送,メールの送受信,ニュースサービス,ネットワーク上のほかのコンピュータに対するログインサービスなどがあげられる.
 CompuServeなどに代表される民間のBBSシステムが特定のコンピュータにアクセスし,そのコンピュータの端末としてのサービスを受けるのに対して,インターネットでは,基本的にはネットワークに存在するあらゆるコンピュータに対して直接アクセスできる.プロトコルは主にTCP/IPを利用する.
 現在,すでにインターネットに接続されているノード数は400万以上といわれており、もちろん日本でも大学などを中心に活発に利用されている.これまでは,研究を主体とした非営利な目的のみ接続が認められていたが、最近では,商用のキャリアも出てきて,営利目的でも利用できるようになっている.
 今回のシステム発注は,これにホワイトハウス内で利用されている数千台のPCやワークステーションをインターネットに接続して,ハウス内外とのメールのやりとり政府情報の提供などを行なうのが目的とされている.もちろんこれは,クリントン政権の新しい政策のひとつ,ナショナルインフォメーションインフラ構想の一環であることは間違いない.全米高速をデジタルネットワーク網でつないで,新しい経済発展の動脈にしようという構想だ。最初のステップとして,すでに存在するインターネット網へ接続しようとしているらしい.
 これに関連して、非常に興味深いテキストがある.Corporation For National Research Initiative(CNRI)の副会長でありインターネット学会(Internet Society:ISOC)の会長でもあるVinton G. Cerfが米国下院公聴会で行なった提言だ。ここでは、米国政府が今後とるべき,ハイテク分野への政府の対応を提示している.インターネットコミュニティ全体の意見の代表であるとCerf自身も発言の冒頭で述べているように,インターネット側からの政府への意見書ともいえるものだ。
 特にネットワークを含めたハイテク分野は,米国経済にとっては、日本を含めた第三国に対してアドバンテージを保持している数少ない分野でもあり、場合によっては米国の今後の経済を左右する死活問題である.もちろん,この提言書がどれだけクリントン政権に直接影響を与えたのかは、明確ではない.しかし,冒頭で述べたように,クリントン政権では、少なくとも幾つかはすでに実行に移したようでその後の動きを見ても大枠では提言に添って動いているように見える。
 ここではCerfの提言の概要を見てみることにする.ちなみに,本テキストもインターネットを通じてたまたま入手した.

■提言の中身
・前競争段階にあるソフトウェアの育成と開発への投資

 意見書の冒頭に述べられた提言がこれ.つまり,フリーソフトウェアあるいはパブリックドメインと呼ばれるソフトウェアの育成に政府が援助しましょう,というもの.ストールマンのフリーソフトウェアのコンセプトをほぼ全面的に支援した内容だ.
 理由は簡単。これらが製品レベルのソフトウェアの基礎となること,またしばしば新しいビジネスの育成につながることを,インターネット関係者ならばよく知っているからだ.TCP/IPならびにインターネットがここまで来れたのも,多くはこうしたフリーソフトウェアによっている部分が多い。
 この提言をもし日本の政治家が聞いたとして、はたして理解できるだろうかどうかは非常に疑問.日本では,こうしたフリーソフトウェアのただ乗りはあっても,これらを育成しようという姿勢は皆無に等しい.日本はあくまで大企業中心に世界は回っていある.将来,日米間の新たな火種になることも考えられる.

・産学政の協力による技術情報の標準化
 ここでは,IETF(Internet Engineering Task Force)を例にあげてネットワークを通した標準化作成手順を推奨している.IETFはインターネットで必要な新しい技術とその標準化を話し合う分科会のようなもの.各テーマにしたがって多くのIETFが存在する.実際、いまや米国では技術情報の標準化を行なううえで,メールやニュースグループの利用が欠かせない状態になっている.なぜなら、国土の大きな米国では,会議に参加できる人間が方々に散らばっているので,同時に集まって会議を開くことが非常に困難だからだこうした会議は1年に1回できるかどうかである.ましてやIETFのように,世界的な規模での標準化作業では,会議のたびに毎日みんなが集まっていたのでは.ひとつの仕様を決めるのに何年かかるか分からない.
 これを,インターネットのメール機能やニュースグループなどを利用すると非常に効率よく作業を行なうことができる(多分,時間や労力を考えれば数千分の1に短縮することができるだろう)ただし、こうしたネットワークを通じた標準化作業の場合,参加(発言)するかどうかは各個人にまかされることになるので、参加者の少ない国が国際的な標準の策定作業から取り残されることになりかねない.現にいくつかの作業を見てみると,日本から意見を述べる人があまりにも少ないことが歴然としている.こうなってくるとキーボード文化が日本にはないなどといった,いつもの日本例外論で通る話ではなくなってしまう.

・COCOM規制の見直し
 RASやDES暗号化処理技術がCOCOM規制にひっかかるのは有名な話。たとえばこれらを見直したらどうかというのがここでの課題だ。システムのネットワーク化が進むとともに,こうしたセキュリティ技術の必要性も高まってきている.
 冷戦時に制定されたCOCOM規制を見直さなければならないというのは、業界の懸案事項だ。これに関連する話題はことコンピュータに関しては数知れない.Sun Micorosystems社がいくらONCを推奨しても,DECオーセンティケータが輸出できないのでは話にならない.

・政府管理による情報のオンライン公開化
 政府が作成した、あるいは保持する情報を一般に公開しようという話。たとえば,ホワイトハウス高官による発表なんかは,発表後数分から数時間以内にはオンラインで提供できるようになっている.Cerfの提言では,さらに一歩突っ込んで,これら情報に付加価値を付ける形での商用転売を認めた点にまで言及している.基本的に,政府情報の報道は自由だと定義する観点,またそれからは自由に再販可能だとする点がおもしろい.
・政府管理による情報のオンライン公開化
 政府が作成した、あるいは保持する情報を一般に公開しようという話。たとえば,ホワイトハウス高官による発表なんかは,発表後数分から数時間以内にはオンラインで提供できるようになっている.Cerfの提言では,さらに一歩突っ込んで,これら情報に付加価値を付ける形での商用転売を認めた点にまで言及している.基本的に,政府情報の報道は自由だと定義する観点,またそれからは自由に再販可能だとする点がおもしろい.
・インフォメーションインフラ
 インフォメーションインフラを使用推進の目的として,エネルギー資源の節約,公害を削減,障害者に社会へ参加する窓口を提供するとしている.単に経済上の問題だけにとどまらない視点を持っている点が見逃せない.
 また、別項目になるが,インフォメーションリッチとプアといった差別化を避けるための提言もすでに行なっている.

・ネットワークによる広告活動の許可
 現時点では,インターネットではネットワークを通じた広告活動は禁止されている.これには,ネットワークがそもそも非営利を目的としたボランティア的な接続によって広がってきた経緯によっている.ここでは,新たなインフラとして、営利目的の広告活動に道を開くために検討をしましょう,と提言している.
 Cerfの提言では,これらのほかにも,ISDNの環境整備であるとか、学校や図書館などの公的な機関へのネットワークの接続,教育など延々と続く.どれも積極的なものばかりである.しかし問題は、ちゃんと実施されるのかどうかだ。こうした提言は過去にもなされたようだが,いざ実施になると,予算がつかなかったりして、いつのまにか断ち切れになるケースも多い。
 クリントン政権では、早速いくつかは実施されようとしているようである.冒頭で述べたインターネットへの接続は,その最初の一歩だ。
 同時にこれらの提言は、日本のそれにもあてはめて考えてみるとおもしろい.ほとんどは,日本でも現実に直面している問題である.ただし,今の日本の政治情勢を見渡しても日本でこうした提言がなされることも,また政府によって政策として受け入れられることも.実際には運用されることもほぼあり得ないように思えることは非常に残念だ。
 米国では近いうちに,bill@whitehouse...で大統領に直接メールが送れるようになるかもしれないというのに.
(脇山弘敏)



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 まだインターネットが主に研究者に使われていた時代。現在はなんでもかんでもインターネットだ。研究目的から誹謗中傷目的、デマ拡散目的に使われいる。進歩の代償なのか。当時はネットワークを通じた広告ができなかったとはちょっと驚いている。すぐさま広告に利用されたと思っていた。記憶とはあてにならない。
 COCOMは死語になったか。RAS、DES暗号技術は専門家が頭を使えばどの国でも利用できると思っていた。当時はその技術は秘密だったのか。

「Miscellaneous:behind the news」をスクラップする。
COMDEX/WindowsWorld速報
 Atlantaで春のCOMDEXとWindowsWorldが開催された.詳細なレポートは次号に送るとして,速報を伝えておこう.
☆WindowsNT
 まずWindowsNTが発表され、値段は495ドルとなった(出荷は5月24日から60日以内)WindowsかOS/2からのアップグレード価格は295ドル.ネットワーク上のサーバで利用するNTは「WindowsNT Advanced Server」といい,2995ドル(最初の6ヵ月は1495ドル)でMSのLanManかOS/2ユーザーには595ドルとなっている.NT用のSQL ServerとSNA Serverも発表された.同時にハードウェア各社からはNT用のサーバマシンが発表となった(IBMも入っている!!).ソフトウェアもInformix社やIntergraph社は対応アプリケーションを発表した.
☆OLE2.0
 すでにファイル版のOLE2.0SDKが配布されており,WindowsWorldでは25のベンダーが対応ソフトを展示した.順次,各種アプリに付いていくだろう.
☆VisualBasic3.0
 Microsoft AccessのデータベースエンジンやCrystalReport,ODBCなどネットワークとデータベースまわりを強化したもの.
 OLE2.0にも対応している.価格はスタンダードが199ドルでアップグレードは49ドル,プロが395ドルとなっている.

☆DOS7
 Novellは「DOS7」を発表した.ユーティリティメーカーFifth Generationと提携し,ウイルスチェッカとバックアップユーティリティ(ともにDOS用とWindows用)が付いており,ネットワーク・セキュリティ,データ圧縮,マルチタスクも実現しているという.DR DOSの7ではなく「Novell DOS7」というらしい。
☆MPC Level2
 スペックはComdexの前に発表になった.Level2では486以上のCPU,メモリ4Mbytes,160MbytesHDDを基準に,サウンドは16bit,CD-ROMは倍速(300Kbytes/sec)でXAとマルチセッションに対応している必要がある.グラフィックスも640×480ドットで6万5000色が必要.Media VisionがいちはやくUpgradeKitを展示した.
☆Power Publishing
 PostScriptのAdobe社とPCのDell社,グラフィックカードのSuperMac社が共同で「The Power Publishing Alliance」を発表.Dellの直販とVARを通して.Windowsベースのプロ向けカラー印刷システムを販売していく.DellのEISA486マシンにSuperMacの24bitアクセラレータカード,ディスプレイ,Adobe社のPhotoshop,ATMとフォント,PageMakerかQuarkXpressを付けて6695~8995ドルで発売した。
☆OS/2Ver.2.1
 米IBMは,WindowsNTの1週間前にOS/2のVer.2.1を発表.Win3.1アプリに対応しSVGAやXGA用の32bitグラフィックスドライバを搭載している.また,ポータブルマシンへの配慮として,バッテリを長持ちさせるための省エネ機構(Advanced Power Management)とPCMCIAカード用のドライバも搭載。また、このバージョンからCD-ROM版も加わった.
 Win3.1のTrueTypeやMMEへの対抗策として,Adobe Type Manager Level2.5とMultimedia Presentation Manager/2を同梱.WorkplaceShellでのシステムサウンド機能と音声の録音・再生,編集が可能で,CD-ROMプレーヤも内蔵する.さらにVideoforWindowsへの対抗策として,MMPM/2は毎秒30フレームのデジタルビデオ再生をソフトウェアで実現しているという.
 IBMのPersonal Software Products社長Reiswig氏は,「本日の発表によって,OS/2は最高の32bitOSとしての地位を高めた」と見栄を切っている.発売は6月14日で,価格は249ドルだが、最初の90日間はCD-ROM版が99ドルFD版は119ドルのキャンペーンを行ない,さらに2.1に付属のクーポン券と2.0のマニュアルの表紙を郵送すると30ドルが返ってくる.
 出荷に合わせて数百万ドルの広告キャンペーンを展開する予定で.現バージョンの200万本を、今年の末までに300万本売るつもりだという.機能と価格だけでなく,広告でもWindowsNTと対決するつもりらしい。

■覚えようJOT,Amber,Bento,Wings,StarTrek
 MicrosoftとLotus,Apple,GeneralMagic,Go,SlateCorpと並ぶと,PenComputingの主導権を握るべく熾烈な発表合戦を繰り広げているみなさんだが、この6社が共同で「Jot1.0」という「A Specification for an Ink Storage and Interchange Format(インクデータの保存と交換規格)」を発表Penマシンだけでなく、通常のコンピュータを含めて,ハンドライティングデータをやりとりするための規格という.まあ、平たくいうとTIFFのようなものだが,単に画像を持っているというのではなく、請求書へのサインや、原稿への赤入れなど,通常のテキストと合体して利用することもできる.
 さて,Appleは「Amber Archtecture」を発表OLEのVer.2に対抗すべく,Appleが考えた「Compound Document」の規格で,オープンアーキテクチャでソースコードが公開され,Mac上のみならず,WindowsやUNIXでも利用できるというのが特徴である.規格の土台となるファイル形式は「Bento(弁当)」と呼ばれているそうだ.テキストを「ごはん」とすると,煮物は表計算データ,卵焼きはグラフィックスというわけで,幕の内弁当のようなドキュメントの出来上がりとなる.
 MicrosoftはWindowsアプリをMacに移植するための「Wings」というデベロップメントツールを出すようで,UNIXに関してはエミュレーションソフトのInsigna社にWindowsのソースコードを公開したという.Windowsアプリさえ作れば,MacにもUNIXにも持って行けますよというわけだ。
 対するAppleは「Services for Open Systems」構想を発表し,PowerPC,RS/6000,SunSPARC,HP9000用のDesktop Manager.Application Engine,Development Toolsなどを提供するという.これによって,Mac用のアプリケーションが「改造なし」に、UNIXマシンで利用できるようになる.
 さらに、AppleはNovellと協力してIBM PC用のMac FinderとToolBoxを開発中という(プロジェクト名「StarTrek」).Wingsの逆で、Mac用のアプリをPC用へ簡単に移植できるようにするというものである.
 話がグチョグチョだが、要はアプリメーカーに自社OSのAPIを売り込むのが目的。「うちのAPIでコードを書けば,どのマシンでも動きまっせ」という作戦である.特にApple側としては,このところアプリメーカーがWindowsにばかり目をやっているのが気に入らないようである.
 Appleはデベロッパーカンファレンスで,上記の作戦とともに80MHzのPowerPC601を搭載したMacをデモした.来年前半には発売になるようで、現行のMacアプリがそのまま走ると再三強調したうえ,CentrisやQuadraからのアップグレードサービスを行なうことも約束した.

■ガンマン対ジェイソン
 MicrosoftはWindows版とMac版アプリのcodeの共通化を図ってお年末には両OS用のWordのVer.6が出るという.これにより90%以上のcodeが共通化され.プラットフォームごとの変更は10%にまで減少,両OS上でWordを使っているユーザーに使用上の混乱がなくなり.トレーニングやサポート,ファイルの変換も楽になるという。
 すでに同社ではExcelやPowerPoint,Projectでコードの共通化を実現しているという.このところExcelはWindows版とMac版のバージョンアップが同時に行なわれるようになってきた.このあたりの社内技術が,上述の「Wings」として出てくるわけだ。
 話は変わるが,MicrosoftはMac用のEIS Pak(Enterprise Information Systems Pak)の出荷を始めた.これは,ユーザーがExcelなどを使って会社の情報システムを構築するためのツール集である.Microsoft Excel EIS builderとそのサンプル,ドキュメントがセットになっている。このツールがあれば,Excelのマクロを使わずに,アプリケーションを構築できる.すでにWindows版も発売されており出荷記念価格は99ドルとお安い.会社の経理システムなど,ユーザーごとに異なるシステムを柔軟に構築できるという.MS-Mailとともに日本版が待たれるところだ.
 ちなみに,VC++のProfessional Editionの出荷も始まった.ドキュメントは印刷すると10万ページにも及ぶためCD-ROMに入っており紙は付いてこないという(テキストを検索するためのビュアーが付いている)価格は8月1日までは395ドル.
 さて、5月号の本稿でお知らせした,ACMとボストン・コンピュータ博物館主催,コンピュータオタクの東西対決「ComputerBowl」がSanJoseで行なわれ、結果が入った.今年も、試合の結果は衛星を使ってボストンとMicrosoft本社(レドモンド)に中継された.出題者はおなじみBill Gatesである.
 25対14でクリント・イーストウッドばりのガンマンスタイルで登場した西海岸チーム「Horrifying Hackers」が,アイスホッケーのマスクにチェーンソーを手にした東海岸チーム「Terrifying Techies」を下し,「Computer Masters of the Universe」の称号を保持した。今年のMVPはNetwork General社のHarry SaalとPhoenix Technologie社のNeil Colvinで,来年は歴代のMVPによるオールスターゲームになる予定.西海岸チームキャプテンのSaal氏は終了後「It's final proof that Westerners "Excel" over the "Lotus" eaters from the East」と述べた.試合の模様は「ComputerChronicles」というテレビ番組で放映の予定という.

■飛行機ではやっぱりだめなのね
 XeroxのPARCから,Society for Information Display conferenceで新しいコンピュータ用フラット表示パネルの発表があるようだ。噂では13インチのサイズで600万×300万ドットを表示でき,ほとんど紙に近いものになるという.4分の1の解像度になるが,カラー表示も可能で「back-lit transmissive display」という方式.
 さて、先月お伝えした,旅客機でコンピュータの使用制限という話が具体化してきた.NorthWest,Continental,USAirそして最大手のAmericanAirが,離陸時と着陸時のコンピュータと小型ゲーム機,CDプレーヤの使用を禁止.TWAも続くらしい.
 使用が許されるのは、高度が1万フィート以上の場合のみという.同社では「われわれは電子機器によって障害を体験したことはないがIATAの勧告もあり、安全確認のため、向こう60日はこの措置を取る」と述べている。他国の航空会社にも広がったら,辻バードさんのような渡り鳥はどうやって滞空時間を潰すのだろうか.
 米国の噂話としてはよく聞くことだが,「コンピュータ関連の大学院ではアメリカ人がめっきりすくなくなった」が統計で実証された.National Science Foundationによると、米国における'91年度の理系の博士号取得者のうち32%が外国人だった(文系はわずか6%).10年前に比べて17%増えたという.数学科が最高で55%が外国人(同32%増)だ.
 コンピュータや情報系学科では、学部学生を入れて50%以上が外国人で,その多くが卒業後帰国する.その中でも博士過程希望者が多いのは中国,台湾,韓国からの留学生で,外国人の72%(4100人)を占める.米国では,留学生によって,自国の学生が学ぶ機会を奪われているのではとか、科学技術の流出によって米国の地位が揺らぐのではないかとう懸念が出ているようだが、今回の調査ではそこまで追及はしていない。

 印象としてはWindowsNTはプロ向けで安定しているOSだと思っていた。使ってなかったので本当はどうかは分からない。OS/2がこの時点でもWin3.1と対抗しようとしていたとは。私にとってOS/2はもはや試してみようという気にもならなかった。

「社会の木鐸 ハイテク記事ウォッチング 鬼怒川巌 & 甘粕英」をスクラップする。

■アンメーターのように動く“株価”
A 5月28日の日経産業新聞に「米のパソコン値引き競争激化」という記事があって見出しが「タンディ製造部門を売却分離断念,小売り特化」「デルノート型で苦戦2-4月,純利益が半減」となってる.ラジオ・シャックで知られるタンディが業績不振のパソコン製造部門をASTリサーチに売却したという話と,デルコンピュータの'93年2-4月の純利益が前年同期比半減し、株価も急落業界で大きな反響を呼んでるって話.
K たしかGridがタンディの傘下だったでしょ?
A そう.だからGrid Systems社もASTに売られちゃうの.これは日刊工業新聞にも載ってるよ.
K デルはどうしてそうなったの.
A ノート型パソコンの生産が遅れて大量のキャンセルが発生したためだと書いてある.でもデルはデスクトップ機に関しては相変わらず好調で,ノート型マシン事業だけが問題だという見方が一般的だそうだ。
K 株価といえば,AMDとの著作権裁判が再審になったとたんIntelの株価が25%も下落したそうだね。5月12日の日本経済新聞にIntelのゴードン・ムーア会長のインタビューが載ってるけど,ムーア氏は「4月に発表した業績は売り上げ高20億ドルを突破,純利益も約3倍になるなど過去最高だった。にもかかわらず、直後から株価が下がった.業績は拡大,アナリストの予想も上回ったのに……」とこぼしてる.
A パソコン業界の中にいるとIntelの優位は当分揺らぎそうにないように見えるけど,AMDやCyrixといった互換チップメーカーの動きやDECのAlpha,モトローラとIBMのPower PCといったRISC陣営の動きなどに対して株の世界の人たちはすごく敏感に反応している.それが正しい評価かどうかは別としてもね.でも,Intelの'93年の設備投資が18億ドルというのもすごいね.約2000億円だよ.
K それに関しては5月13日の日刊工業新聞にも載ってる.「米インテルが積極投資毎年19億ドル以上計画次世代MPU開発急ピッチ日本メーカーに脅威」という見出しが付いてる.Intelが'94年以降,数年間にわたって毎年総投資額を19億ドル以上とすることを決めたという記事だ.Pentiumの生産増強や次世代MPUの研究・開発および生産体制を強化するのがねらいだといってる.Pentiumの次のP6の開発がオレゴン工場のデザインセンタで始まっているとも書いてある.

■ゲームのレーティングでもSEGA V.S. Nintendo
A 5月28日の読売新聞に「米TVゲーム論争“成人向け”表示巡り2社対立」という記事がある.セガの米国法人が発売する「夜のわな」というゲームソフトに対して英国映像審査委員会が流血シーンやセクシャルハラスメントを想起させる場面があるとクレームをつけたことを受けて,同社は6月から発売するソフトに「制限なし」「17歳未満不適当」「13歳未満は成人の付き添いを要する」という3段階のレーティング表示をすることにした.ところが,そのセガの対応に対して米国任天堂が17歳未満不適当なんていう表示は暴力シーンを正当化するものだと批判したという話.
K 任天堂は「'88年に審査部門を設け、流血や暴力.死体の写実的描写,宗教への冒涜など4項目で厳格な基準を適用している」といってる.だから表示など不要だというわけ。これに対してセガは「任天堂も清廉潔白ではないはず.自社ソフトのシェアを伸ばしたいための言いがかりだ」と反論しているとか.米国内では「表示義務のある映画の映像がゲームソフトに用いられる例が増えている以上.ソフトにも表示は必要」という意見もあるって書いてある.
A 両者の立場の相違は任天堂とセガのユーザー層の違いという背景があるようだね.この記事にもあるように,米国ではセガのゲームの購買層は70%以上が18歳以上で、任天堂のほうは15歳以下が70%を占めている.それぞれの企業戦略が今回の論争を生んだということか.

■やっぱ合併したほうがよかったかなー
K 5月28日の日本工業新聞に「IBMとの合併も考えた米アップルコンピュータスカリー会長がポツリ」という記事がある.31日発売の米FORTUNE誌のインタビューに答えてIBMのエイカーズ前会長が1月に退任を表明し,その後継候補の一人としてスカリー会長に打診があったとき、スカリー氏は「AppleはIBMのもっとも優れた部門と合併すべきだと考えた」と述べているそうだ。
A じゃあ、どうして合併しなかったのかな.
K 当時はIBMの株価が下落し続けていてIBMがAppleを取得した場合、そのコスト負担で株価がさらに落ち込む恐れがあって、それで実現しなかったと語ったと書いてある.ただし,スカリー氏は「『IBMがアップルを取得することで成功する可能性は大きかったはずだが』」と残念そうに述べている」とあるよ.
A この業界ではそうとう成功している企業でも、将来(それも数年先)のことを考えるとトップは一時も安穏とはしていられないようだ。株価も気にせにゃいかんし.アメリカの経営者はたいへんらしいよ。

■CGを手で触ろう
A 5月17日の日経産業新聞に「空気の流れ手で実感東大広瀬研,VRシステム」というのがある.東大工学部の広瀬通孝助教授らの研究グループが,3Dのコンピュータグラフィックスでシミュレートした空気の流れなどの現象を同時に手で実感できるシステムをつくったという話.
K どんなものなの?
A まずオペレーターはいくつかのファンを組み込んだ装置を手に取り付ける.ファンが手を取り囲んだようなかたちになるわけ。たとえば,風の流れが障害物に当たって渦を巻いたりするのをシミュレーション解析した状況とオペレーターの手をCGで表示して、オペレーターが手を動かすと画面上の手も連動してリアルタイムで動くと同時に手にぶつかる流れに合わせてファンが作動して,実際にその空間に手を入れたような擬似体験ができるという仕組み.
K 視覚と触覚を使うヴァーチャルリアリティってことね.でも,そういうのってけっこう昔からあるよね.CG空間の中のオブジェクトにマニピュレータをとおして触れて、柔らかいとか硬いとかいうのがちゃんと分かるとかね.

■見つめあう部長と専務
K 5月20日の日刊工業新聞に「会議室の臨場感を演出NTTTV会議システム開発」という記事がある.これはどういうものかというと,「会議に参加する一人ひとりに,かまぼこ型のレンチキュラスクリーンを通して相手の画像を投射することで,本当の会議に参加しているのと同じ人工現実感をつくれる」というもの。このNTTが試作したシステムは「お互いの目線が一致する」ほか,「会議中に発言している人に目線が集中するなど,会議室で座っている位置関係まで擬似体験できるのが特徴」で,「ハーフミラー方式による目線一致技術の導入によって,あたかも目の前の人と本当に話し合っているような現実感がつくれる」というからけっこうすごい。
A なになに「これまで1対1の目線一致技術はあったが,NTTは特殊スクリーンに各人によって異なる映像を映し出すことで臨場感あふれるシステムを構築できた.配置するカメラと投射装置を増やせば,何人でも会議に参加できる」ときた.
K すると,近い将来第2会議室はブリュッセルとつながっていて、第3会議室へ行くと香港とつながっていたりしてどこでもドア的な世界が会社に出現するのかな.このシステム,なんかほかにもいろいろとすごくおもしろい使い方がありそうだな.
工藤 え?なんですか,ドラえもんがGateway2000の486を買ってどうかしたんですか?
K なにトチ狂ったこといってんだよ.余計なこといってないで早くエキプレの原稿書いてくれよ.あー疲れる.

■CDも、できたてをテイクアウトできます
A 5月12日の日経に「米IBMマルチメディアで新会社ビデオレンタル最大手と」というのが載ってる.米IBMとビデオレンタル業界最大手のブロックバスター・エンターテインメントが新会社をつくったという話なんだけど、なにをするのかというと,コンパクトディスクを小売り店の店頭で即座につくることのできるシステムを開発するのだそうだ。
K なるほど.CDの音楽情報をデジタル回線でレコード会社から小売り店に送り、顧客が希望するCDをその場で製造して販売するというシステムができれば,客はせっかく買いにきたのに品切れということがなくなるし、店の側も過大な在庫を抱える必要がない.エブリワン・ハッピーってわけだ.
A IBMは「CD業界は在庫切れのために年間10億ドルの損失を出してる」とみてるそうだ。
K きっちりマーケティングしてるな.
A 「将来は同様のシステムが『ゲームソフトやビデオにも適用できる』見通しで,実現すれば娯楽ソフト業界の流通機構が大幅に変化しそうだ」といってる.Kでも,それってもしかすると小売り店をすっ飛ばして家庭へダイレクトにデジタル送信するとかいうことになっちゃうかもね。
A あと,ジャケットアートなんていうものもなくなっちゃうんだろうなぁ.未来人は今のCDジャケットを、現在ぼくらがミケランジェロがシスティーナ礼拝堂に描いた天井画「最後の審判」を見るような気分で眺めるんだろうか.

 パソコン業界には一時期危うくなっても盛り返すしぶとい会社もある。デルも今でも頑張っている。
 今は不調のようだけど当時インテルの強さは設備投資だった。年間2000億円設備投資できるということは利益も見込めるということでCPUを何千万個と売ることができる営業力があればこそだ。CPUで日本が敵うはずがない。
 テレビ会議もなかなか実現しなかった。技術的には可能だが安価にできなくては広まらない。この時点ではものにならないと思っていた。
 「小売り店をすっ飛ばして家庭へダイレクトにデジタル送信する」も今では当たり前だが当時はいつ実現するか分からなかった未来の技術だった。

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エイサー会長スタン・シー氏インタビュー他 (月刊ASCII 1993年7月号4) [月刊アスキー廃棄(スクラップ)]

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「連載インタビュー 第23回」をスクラップする。
連載インタビュー 第23回
エイサー会長 スタン・シー氏

 スタン・シー氏は,全世界でPC互換機を販売する世界屈指のコンピュータメーカー,台湾エイサーグループの総裁である.来日した同氏に,今後のハイエンドパソコンの行方などについてお話をうかがった.
――御社は先日,R4400(RISCCPU)ベースのWindowsNTマシンを実現するためのチップセット「PICA」(コラム参照)を発表されましたが,これからのパソコンはみんなNTマシンになるのでしょうか?
スタン――RISCチップを載せたNTマシンは非常にパワフルですが、現時点ではとても高いですから、既存のWindowsマシンを完全にリプレースするということはないでしょう.リプレースという意味では、むしろダウンサイジングの波に乗って,ワークステーションなどからのリプレースがずいぶん進むはずです.
 とはいえ,現在のパソコンのユーザーも,いずれ,よりパワフルなマシンを望むようになります.私たちが次のCOMDEXで発表するAcer Formula,このFormulaというのはFormula1,つまりF1から取ったんですが,F1マシンの値段というのは普通の車とはけた違いのもので,とても買えません.けれど,我々のFormulaは,レーシングカー並みのパワーを普通のパソコン程度の価格で実現しようという願いもこめています.Acer Formulaは,まだハイエンドパソコンくらいの価格ですが,2~3年もすれば安くなります.そうなれば、普通のパソコンユーザーだって欲しくなるでしょう.
――安いというのは、具体的にどれくらいなのでしょうか?
スタン――だいたい,3500ドルくらいです.
――今回PICAチップのCPUとしてR4400を採用されましたが,高速RISCチップでNT対応のものとしては,ほかにもDECのAlphaなどの候補があるかと思います。R4400に決めた理由は何でしょうか?あるいは今後チップを代えることもあるのでしょうか?
スタン――我々が次期RISCチップの策定を始めた時点では,まだAlphaはアナウンスされていませんでした.その2年前から設計していたのです.それに,Alphaは現時点ではまだオープンではありません。その点R4400は,日本の半導体メーカーが何社も作っていますから、より安定した供給が望めます.今回PICAチップを発売し,OEM供給する理由は,パワフルでコストパフォーマンスの良いNTマシンを大量に作れるように,という趣旨ですから.
 補足ですが,PICAについていえば,これは必ずしもR4400マシンのためのものではありません.確かに,PICAはR4400やWindowsNTをターゲットに設計はしています.でもほかのOSやほかのチップにも応用可能なものです.
――話は変わりますが,エイサーさんは日本の大手パソコンメーカーに何社もパソコンをOEM供給していらっしゃいますが,ご自身での販売は,あまり派手にはやっていないように見受けられます.たとえばコンパックやデルのように,日本市場に本格的に参入することは,近い将来検討していらっしゃいますか?
スタン――それはひとことでいうと,まだ準備ができていません.私たちは,それらのメーカー以上に進んだ技術と、製品群を持っています.けれど,日本で彼らがやっているような大がかりな販売攻勢をかけるには,サービスや流通などの面でのパートナーを見つけなくてはなりません.
 それに,我々はブランドネームを得る前にまず,テクノロジーリーダーとしての名声を確保することに力を注ぎたいと思っているのです.
 もっともDOS/Vが登場して以来、昔に比べれば市場への参入はずっと楽になりました.パートナーに巡り会える機会もずっと増えています。将来的には日本市場への参入もありうるでしょう.
――楽しみにしています。

コラム
PICAチップセット

 PICAは,Windows NT向けのマシンを作るためのチップセットで,CPUにはMIPS社のR4000またはR4400を使用,周辺には64ビットローカルバス接続された6種類のVLSIを用意している.ビデオ制御,LANなど高速なデータ転送が必要なデバイスについては64ビットバスを,それ以外の低速なデバイスについてはISAバスを採用することで,低価格で高性能のRISCマシンを製造できるとしている.チップセットはハードメーカーにOEM供給されるほか,今年度中には同社ブランドのマシンも登場する.

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■富士通とサンが次世代のマイクロプロセッサの開発で提携
 富士通マイクロエレクトロニクスと米Sun Microsystems Computer社は次世代のマイクロプロセッサ「MicroSPARC II」の実用化で協力,富士通が最初に同プロセッサを生産することで合意したと発表した。MicroSPARC IIは現在のMicroSPARCの後継製品で,処理速度は2倍以上になるという.サンプル出荷は1993年末の予定.(時事)


■IPAがコンピュータウイルス被害の届出状況を発表
 情報処理振興事業協会は,1993年4月のコンピュータウイルスの被害届出状況を発表した.それによると,届出数は32件で前月に比べ減少しているものの、前年同月に比べると大幅な増加を示しているという.感染機種の内訳は、PC-9801シリーズが17件と最も多く,以下IBM互換機の5件,J-3100の4件,IBMPSが3件と続き,エプソン,富士通,松下が各1件.届出者別では,情報産業からが18件般法人ユーザーからが8件.今回初めて届出があったウイルスは外国産の「64」と「エアーコップ」の2種類.前者はEXE/COMファイルに感染する常駐型のウイルスで,1991年以降毎年6月4日に感染ファイルを実行すると英文で天案門事件に関するメッセージを表示するもの.後者も常駐型で,フロッピーディスクのブートセクタを感染させ,感染の成功した回数が8の倍数になると英文のメッセージを表示するというもの.


ビジネスシヨウ'93TOKYO
 今年も5月19日~22日の4日間、晴海でビジネスショウが開催された.参考出品はPentiumを搭載したサーバが中心で,IBM,日立,東芝が出品.入場者の関心が高かったのは、各社とも製品として発売を開始したペン入力の携帯マシンやWindows3.1関連のハード・ソフトであった(Windows3.1とPentiumの発表直後だから当然かもしれないが).
 身近なところでは,メガソフトの「StarFax1414」やクリエイティブ・ラボの「98用サウンドブラスター」,エー・アイ・ソフトのWindows用FAXソフト「EasyFax」,ソニーの倍速CD-ROMドライブなどが期待の新人として挙げられるだろう.


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ソフト,ハード(月刊ASCII 1993年7月号3) [月刊アスキー廃棄(スクラップ)]

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「MicrosoftがWindows3.1日本語版を発表」
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使い物になるとは言えないけれどやっと使えるOSになった。よく落ちたけれど。

■アルダスがAldusPageMaker4.5Jを発売
 アルダス(株)は,Macintosh用DTPソフト「Aldus PageMaker 4.5J(日本語版)」を6月下旬より販売開始する.今回のバージョンアップで追加された機能は,レイアウト位置の数値入力を実現した「コントロールパレット」,プログラム本体への機能追加を可能にする「Aldus Additions」数式の作成が行なえる「数式エディタ」など,さらに漢字Talk7の「発行と引用」や,CMYK形式のTIFFやバイナリ形式のEPSFにも対応している.動作環境は,Macintosh Plus以上,漢字Talk6.0.7以上(漢字Talk7対応)メモリ4Mbytes以上(漢字Talk7の場合は5Mbytes以上),ハードディスクに10Mbytes以上の空き容量が必要.価格は14万8000円.
 今回のバージョンアップでは、機能強化に加えて,アプリケーションに関する全体的なサポート体制も見直された.その一環としてPageMaker 4.5Jにはハイエンド出力時のガイドラインを提示する小冊子が同梱される.この冊子には,DTPでよく用いられる他のソフトウェアとのデータやり取りのコツなどが記述されている.さらに,商業印刷向けの出力サービス店を支援するため,アルダスサービスビューロープログラムという企画が実施される.これはアルダスがセミナーなどを行なうことによって,出力サービス店側のよりきめの細かなハイエンドDTPの実践を目指すというもの.現在60社以上のサービスビューローが参加しており今後はこれらハイエンドユーザーの声をダイレクトに製品づくりに反映させてゆくという.
 また,企業や教育機関など大量導入ユーザーに対する「ライセンスパック」も発売された.これは必要台数分のライセンスのみを追加販売するというもので,マニュアルは必要数無償提供される。企業の場合,5セット以上の購入が対象となり,パッケージを購入するより25~35%低価格教育機関は11セット以上が対象で,45%低価格。バージョンアップもディスカウント価格で一括に行なえる.既存の大量導入ユーザーも,バージョンアップの際にライセンスパックへの切り替えが可能.


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PageMakerはWindows 3.1で使った。Windows 3.1がよく落ちたので1ページ作るたびに保存していた。

■三菱電機がWin3.0対応日本語ワードプロセッサを発売
 三菱電機東部コンピュータシステム(株)は,MS-DOS対応の日本語ワードプロセッサ「A1・MARK3」をMS-Windows3.0に移植し、「A1 for Windows」として発売した.
 主な特徴は、(1)領域を指定せずに図形の描画が可能(2)文字や罫線上に重ねて図形の表示が可能,(3)文字.罫線図形の同時移動,複写,削除が可能,(4)入力データに合わせて表が拡大・縮小する作表機能を持ち,表内では禁則処理やインデント,ソート,表計算機能をサポート,(5)文字間、行間罫線,斜め線の描画が可能(6)1ページ単位で用紙サイズ,用紙方向の設定が可能。(7)最大で9ウィンドウのオープンが可能,(8)テキスト,CSV,BMP,PCXTIFFの各ファイルの入出力が可能――など.
 対応機種は,MS-Windows3.0が動作するDOS/VとAXマシン.動作環境は,DOS/VマシンがDOSJ4.0/V以上とMS-Windows3.0.2,AXマシンがMS-DOSVer.3.2以上とMS-Windows3.0Aで,メインメモリ約3.6Mbytes,HDD空き容量約3Mbytes以上が必要.
 価格は4万8000円.


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三菱電機がワープロソフトを作っていたとは。商売になると思ったのだろうか。資源の無駄遣いだと思う。

■ヴァル研究所,「駅すぱあと」をバージョンアップ
 (株)ヴァル研究所は,首都圏電車乗り継ぎ運賃案内ソフト「駅すぱあと」をバージョンアップして1993年5月版とした.新たな路線データなどの追加のほか,列車種別料金や定期代の算出なども可能になった.また,MS-DOS版に加えて,Windows3.1版とMacintosh版も発売された.価格はいずれも1万9800円.
 今はこのようなアプリが無料で使えるが当時はこんなに高かった。

■日立がTRON仕様の32bitマイクロプロセッサを発表
 (株)日立製作所はTRON仕様に基づく32bitマイクロプロセッサのS最上位機種として「GMICRO H32/500」(HD645032)を開発製品化したと発表した。
 主な特徴は,(1)66MHz動作時に9Wの低消費電力で130MIPSの処理性能を実現(50MHzでは7Wで100MIPS)(2)命令実行部分に演算器をそれぞれ2系統内蔵することにより1クロックで整数系命令を2命令実行可能なスーパースカラアーキテクチャを採用,(3)分岐命令を分岐専用キャッシュにより高速に実行できる“高速分岐方式”を採用,(4)IEEE規格準拠の浮動小数点演算ユニット(10MFLOPS)を内蔵,(5)アドレスバス32bit,データバス64bitで,バーストモードにも対応――など.
 同社では,通信機器やフォールトトレラントコンピュータ,BTRON/ITRON機器への応用を見込んでいる.
 50MHz版のサンプル価格は30万円.1993年10月からサンプル出荷を開始.66MHz版は1994年第1四半期よりサンプル出荷が開始される予定。


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 TRONがまだ生きていた。ただCPUが30万円だとは。量産できないCPUの宿命か。TRONは商売にならなかった。CPUを作る技術力があっても利益を生み出さなければ技術を維持できなかった。

■サイリックスが486SXピン互換の倍クロックCPUファミリを発表
 米Cyrix社は,486SXピン互換のCPU「Cx486S」6種類と,数値演算プロセッサ「Cx487S」4種類の計10種類で構成される「Cx486Sファミリ」を発表した.
 Cx486Sは,ライトバックキャッシュ/システム管理モード/SMI(システム管理割込りみ)電源管理/倍クロック機能/クロック停止機能などを装備.クロック周波数は最大50MHz.
 1万個当たりの単価は,CPUコアとバス共に40MHzの「Cx486S-40」が2万1000円,同33MHzの「Cx486S-33」が1万6500円,コアが50MHzでバスが25MHzの「Cx486S2/50」が2万5000円,同40MHz/20MHzの「Cx486S2/40」が2万1000円,3.3V動作で33MHzの「Cx486S-V33」が2万1000円,同25MHzの「Cx486S-V25」が1万6500円.数値演算プロセッサは40MHzクロック用の「Cx487S-40」が5600円33MHzの「Cx487S-33」が4500円Cx486S-V33用が5600円Cx486S-V25用が4500円となっている.


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■ABMが80286マシン用486アクセラレータを開発
 (株)エービーエムは,80286搭載マシン用の486CPUアクセラレータ「A2486C-25」を開発したと発表した.
 主な特徴は.(1)Cx486SLC-25またはTx486SLC-25を採用(2)80286ピン互換,(3)標準で1.65Wの低消費電力(4)入力クロックを倍にする逓倍回路を内蔵,(5)同社のCPUアクセラレータボード「486GT-R」と同等の性能を実現――など.
 対象となるマシンはCPUに80286を採用したマシンで動作クロック周波数が10MHzあるいは12MHzのものとなる.数値演算プロセッサには対応していない.また,同時に,CPUに25MHzの386SXを採用した「A2386C-25」も発表された.
 サンプル価格は「A2486C-25」が3万9800円,「A2386C-25」が1万9800円販売はOEMのみ.


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■インテルがPentiumプロセッサの価格を発表
 インテルジャパン(株)は、同社の第5世代プロセッサ「Pentiumプロセッサ」およびそれに対応したPCIセット「82430PCIセット」の価格を発表した.
 Pentiumプロセッサの価格は,1000個ロットオーダー時に66MHz版の単価が11万5800円60MHz版の単価が10万5400円.
 また,82430PCIセットに関しては,EISA用キットの単価が1万4600円ISA用キットの単価が1万1300円となっている(共に1000個ロットオーダー時).



■日本電気がRISC型マイクロプロセッサを開発
 日本電気(株)は,米国MIPS Technology社と共同で、低消費電力化を図ったRISC型マイクロプロセッサ「VR4200」を開発したと発表した.
 VR4200は,MIPSアーキテクチャを採用した64bitマイクロプロセッサ「VR4000」と互換性を持つ.
 主な特徴は,(1)8.8mm×9.2mmのチップ上に130万トランジスタを集積,(2)3.3V駆動のCMOSロジックを採用,(3)1.5Wの低消費電力を実現(4)部分的に電力を低減できるキャッシュメモリを搭載,(5)スピードが約1/4で0.4Wの“低消費電力モード”を装備,(6)内部クロック周波数が80MHz/外部クロック周波数が40MHzで整数演算が55SPECint92/浮動小数点演算が30SPECft92を実現(7)16Kbytesの命令キャッシュ/8Kbytesのデータキャッシュを内蔵――など.
 パッケージは179ピンのセラミックPGA(Pin-Grid Array)と208ピンのプラスチックQFPの2種類が供給される.量産時の販売価格は,プラスチックパッケージが1個8000円程度を予定している.サンプル出荷の開始は秋から.



■日立が光ニューラルネットワーク基本技術を開発
 日立ヨーロッパ(株)の日立ダブリン研究所は,半導体技術を応用した光・電子量子効果素子を利用して,認識対象の位置が変化すると識別能力が極端に劣化するパターン認識の問題点を解消する,光ニューラルネットワークの基本技術を開発したと発表した.
 通常,視覚認識を行なう場合,画像をデジタル信号に変換した後,計算機で処理を行なう。しかし原始的なニューラルネットワークの場合,認識対象が平行移動してしまうと,同じ対象であるにもかかわらずまったく違うデータとして処理しなければならない。このパターンの平行移動に対応するには,位置ずれの可能性のあるすべてのパターンを学習させなければならないが,過剰な学習は性能を低下させることになる.
 一方,人間に備わっている画像の変形に対する視覚機能を基に,多次元的にネットワークが結合した複雑な高次ネットワークを利用することで、画像の変形に対応できると考えられているが,高次ネットワークを従来の電気的手段で実現しようとすると配線が複雑で膨大なものとなる.
 そこで,これらの問題を解決する手段として,光・電子量子効果素子が試作され,高次ネットワーク構築の基礎となる2次の光ネットワークを作成,原理動作が確認されたという.開発システムは,日立ヨーロッパが独自に考案した高速処理向きの2次の光ニューラルネットワークアーキテクチャに,ダブリン大学トリニティカレッジが開発した光・電子量子効果素子を組み合わせた構造となっている.
 2次ネットワークでは、複数のニューロンから出る信号を、次のニューロンに送る前にお互いに掛け合わせる“2次化”の操作が必要で,この部分の高速化がネットワークの性能を決める.日立ダブリン研究所は,入力するデジタル信号をバーコード形状の光信号に変換し、その後で光信号を90度回転させ元の信号と重ね合わせることで、2次化の操作を瞬時に行なう方法を開発した.
 試作したシステムは,デジタル化した画像データを光に変換し反射や干渉などの操作を経て得られた光の強度からパターンを認識するもので,光の変調機能を備えた反射型の光デバイス,光の経路を制御するプリズムとレンズ,受光素子,制御用のコンピュータで構成される.
 パターン情報や重みの書き込みは素子1個あたり数十ナノ秒で行なわれる.素子の微細化と最適化により,理論的にはさらに1000倍程度まで向上できるという.最も重要な演算処理は、光の速さで実行しており,3ナノ秒で400回の乗算が可能という(130GCPS*1(*1 ニューラルネットワークの処理能力を比較する基準.1秒間に処理,計算できるコネクションの数.)に相当).
 同社では,このシステムを大規模化し,画像入力部にカメラを付けることで,人間の目の機能を代用する「ロボットの目」を実現できるとしている.


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■TDKが記憶容量を増やしたCD-RELを開発
 TDK(株)は,記憶容量を増やした大容量のCD-R*1(*1 CD-Recordable(一度だけ記録可能なCD).)EL*2(*2 Extra Lengthの略.)タイプのCD「CD-W12EL」と「CD-W08EL」を開発したと発表した.
 「CD-W12EL」は同社のCD-W12(660Mbytes)の容量を780Mbytesに,また「CD-W08EL」はCD-W08(190Mbytes)の容量を220Mbytesにそれぞれ増やしたもの.ELタイプは、ディスクの回転速度(線速度)を1.4m/sから1.2m/sに遅くすることで記録密度を向上させている.


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■ソニーが大容量の3.5インチフロッピーディスクを開発
 ソニー(株)は,21Mbytesの記憶容量を持つ3.5インチマイクロフロッピーディスク「メタルサーボ・マイクロフロッピーディスク」を開発したと発表した.
 メタルサーボ・マイクロフロッピーディスクは,日本電子工業振興協会(JEIDA)で原案作成され,1993年秋に日本工業規格(JIS)に制定される予定の大容量FDの規格に準拠したもの記録方式には,内周に対して外周の記憶容量を高める“ゾーンマネージメント方式”と,効率的な記録を行なう2-7RLL(RunLengthLimited)コーディングを採用している.メディアにはメタル磁性体を用い,トラック密度を約4倍に向上.あらかじめディスク上に記録されたトラッキングサーボ信号を基にヘッドのトラッキングの補正を行なうようになっている.



■オリンパスがゴーグルタイプの液晶モニタを開発
 オリンパス光学工業(株)は、医療やエンターテイメントなどの分野で利用可能なゴーグルタイプの液晶カラーモニタを開発したと発表した.
 ゴーグルの左右それぞれに0.7インチ9万6600画素の超小型液晶カラーモニタを使用し、独自開発のプラスチック製非球面レンズとハーフミラーなどを組み合わせた特殊光学系の採用により水平角度35度で歪みの少ない大画面感覚の映像を実現したという(1.2mの距離の37型TVに相当)モニタは左目用と右目用を別々に内蔵したため,2D映像はもとより、3D映像用のモニタとしても利用できる.また,液晶シャッタの採用で,シースルー機能とスーパーインポーズ機能が利用可能.シースルー機能はモニタを装着したままで外界を見る機能で、スーパーインポーズ機能は外界と映像を重ねて見る機能.そのほか,光束径を大きくしたことで眼幅調整が不要となり,眼鏡をかけたまま利用できる.本体の側面にオープンタイプのスピーカを内蔵し、イヤホンを着脱する必要がないのが特徴。
 同社では、患者に診断中の画像を直接重ねて表示するといった医療分野での利用のほか,テレイグジスタンスや教育用シミュレーション,アーケードゲームなどに応用できるとしている.なお、発売時期ならびに価格は未定.


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このゴーグル今のと比べ遜色がないのではないか。というか、このタイプの製品あまり進歩していないのではないかと思う。

■松下が量子化ニューロンを高速実行するデジタルLSIを開発
 松下電器産業(株)半導体研究センターは,同社の中央研究所と共同で,「量子化ニューロン*2(*2 松下電器産業が提案した神経細胞のモデル。ほかのニューロンとの結合荷重を学習によって変化させるだけでなく,入力信号を量子化,その代表値を中心に結合荷重を適応的に設定するという.)を用いたニューラルネットワーク」に基づく,文字や図形などの学習および認識の高性能化が可能なデジタルニューロLSIを開発したと発表した.
 主な特徴は,(1)量子化ニューロンの採用と新しい回路設計により高速な認識と学習が可能,(2)階層ごとに演算ブロックを設け,複数ニューロンの処理を実行することにより素子数を削減し,コンパクトなアーキテクチャを実現(3)その結果,シナプスの重みを外部の汎用メモリに持たせることが可能となり,ネットワークの大規模化を実現――など.
 同社では,このニューロLSIを用いた文字認識ボードを試作,英数字の活字文字の高速認識(1600文字/秒)を実現しており,今後,OA機器などでの手書き文字の読み取りや,FA機器などでの物体認識などの高性能化が図れるとしている.



■パイオニアが画像伸長用LSIチップセットを開発
 パイオニア(株)は,MPEG1,JPEG,テレビ電話/会議のH.261の3種類の画像圧縮伸長規格に対応した画像伸長用LSIチップセット「CD1100「シリーズ」を開発したと発表した.同チップセットは,MPEG1のSIFの解像度(352×240)の動画からCCIR601規格のデジタルテレビの解像度(704×480)の動画までをリアルタイムで伸長可能なほか,JPEG準拠の静止画,H.261準拠の画像の伸長も行なえるもの.各フレームの圧縮画像を伸長する「CD1101」,前後フレームから動きを補償予測する「CD1102」,出力をビデオ・フォーマットに変換する「CD1103」の3チップで構成される.同社では,CATVやCD-ROMのパッケージメディア,テレビ電話などに応用が可能なほか,規格化が進行中のMPEG2にも展開可能としている.


■マイクロソフトがマウスの新バージョンを発売
 マイクロソフト(株)は,マウスの新モデル「Microsoft Mouse Version2.0」の販売を開始した.MS-Windows3.1の出荷に合わせて発売したもので,Windows3.1とのセット製品「Microsoft Mouse & Win-dows Version3.1」もラインナップに追加された.
 主な特徴は,(1)エルゴノミクス研究に基づき,左右どちらの手でも快適に使え、手首に緊張やストレスのない状態で作業ができる設計,(2)外形サイズは,65(W)×112(D)×39(H)mmで,滑らかな曲線を生かしたデザイン,(3)添付のユーティリティソフト(マウスマネージャ)によって,マウスの感度や左右ボタンの切り替え,加速度機能などのカスタマイズが可能――など.
 PC-9801シリーズ用とMS-DOS5.0/Vマシン用があり、価格はそれぞれ1万2500円.また,Windows3.1とのセット価格は,各2万4800円.


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マウスが1万2500円という時代があった。

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パソコン(月刊ASCII 1993年7月号2) [月刊アスキー廃棄(スクラップ)]

ASCII EXPRESSをスクラップする。

■東芝がSVGA対応の12インチカラー液晶搭載マシンを発売
 (株)東芝はSVGA対応のTFTカラー液晶ディスプレイを搭載したラップトップコンピュータ「J-3100GT-SD201STモデル」を発売した.主な特徴は、(1)解像度1024×768ドットで最大4096色中256色を同時表示可能な12インチの大型カラー液晶ディスプレイを搭載,(2)i486DX(33MHz)を搭載,(3)標準でメインメモリ8Mbytesを実装し,オプションで最大40Mbytesまでの拡張が可能,(4)200MbytesのHDDを標準装備,(5)720Kbytes,1.2Mbytes,1.44Mbytesに対応した3.5インチFDDを1基搭載など.出荷は1993年12月を予定.価格は174万8000円.

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■東芝がカラー液晶を装備したSPARC LT2機種を発売
 東芝は,13.8インチのカラーTFT液晶を備えたラップトップ型ワークステーション「SPARCLT」の新機種2モデルを発売した.
 型番「AS1000/C50」および「同C40」は、順にクロック周波数33MHzのSuperSPARC40MHzのSPARCを搭載している.主な特徴は(1)従来のSPARCLTに比べ,C50で2.6倍,C40で1.4倍の処理速度を実現,CPUパワーは順に60MIPS,31.5MIPS,(2)13.8インチのカラーTFT液晶で1152×900ドットの解像度を実現(3)C50は1.05Gbytes,C40は517MbytesのHDDを標準装備,(4)レジューム機能,電源投入後に自動的に業務プログラムを起動できる自動ログイン機能,システム環境の設定を容易に行なえるセットアップツールなどを用意――など.
 OSには,Solaris2.1またはOA/ASV4.11をプレインストール.価格は順に328万円,228万円.


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■東芝ペン入力情報ツールを発売
 東芝は、住所録やスケジュール管理,ワープロ専用機やパソコンのデータを表示・編集できる携帯情報ツール「XTEND(エクステンド)PN10」を発売した.
 主な特徴は,(1)スケジュールや住所録テキスト/手描きメモなどの個人情報を管理するPersonal Information Manager機能を搭載,(2)同社のワープロ「Rupo」シリーズ同様のワープロ機能を装備,(3)「一太郎」や「1-2-3」,MS-DOSテキスト形式,Rupo文書ファイルの読み込みや表示,データ変換が可能,(4)FDからのアプリケーション起動が可能――など.
 本体サイズは225(W)×171(D)×28(H)mmと小型で,重さは約900gと軽量.内蔵する3.5インチFDDはRupoフォーマットとMS-DOSフォーマット(2DD/2HD)のディスクに対応する.画面表示は640×400ドット(40字×20行)で,液晶画面は感圧型のタブレットを兼ねており、高認識率のペン入力方式を採用している.本体にはマイクが内蔵され,音声をメモリもしくはFDに記録可能
 価格は12万8000円で,アプリケーションには表計算や英和・和英辞典,手描きイメージ作成ソフトなどの実用ソフトのほか,クイズ,麻雀,詰碁などが予定されている.


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■松下電産がi486搭載のPanacomシリーズを発売
 松下電器産業(株)は,i486CPUを搭載した富士通FMR互換のデスクトップパソコン「Panacom M21」シリーズ12機種を発売する.シリーズの主な特徴は、(1)CPU2種類(i486DX2/66MHz,i486SX/25MHz),解像度2種類(640×400(480)/1120×750ドッ下),HDD3種類(なし/120/340Mbytes)の組み合わせによる12種類を用意,(2)i486CPU,グラフィックアクセラレータ「HSGAII」による処理の高速化,(3)720Kbytes1.2Mbytes,1.44Mbytesに対応した3.5インチFDDを2基搭載,(4)5インチFDユニットなどを内蔵できるドライブスロット,拡張カードを最大4枚内蔵可能な拡張スロットなどを装備,(5)HDD搭載モデルにはMS-DOSVer.5.MS-Windows3.1をインストール済み――など.価格は,i486SX(25MHz),解像度640×400(480)ドット,FDモデルが29万8000円,1486DX2(66MHz)解像度1120×750ドット,340MbytesHDDモデルが79万8000円――など.
 また,同社はPanacom M OPERATEシリーズの新製品も発売した.価格は,「Panacom M8200A」(i486DX2/50MHz,MN1617X/28MHz,220MbytesHDD,CASIIIR付属)が76万円など.


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■プロサイドがVL-Bus採用のPC互換機を発売
 プロサイド(株)は,DOS/Vマシンの新ラインナップとして,VL-Bus搭載のPC互換機「PRO-EXPOJLBII」シリーズを発売した.
 主な特徴は,(1)ISAバス4基,VL/ISAバス兼用1基を装備,(2)Pentium対応P24Tソケット(i486DX2オーバードライブ用)を装備,(3)640×480ドット6万5536色表示,1280×1024ドット256色表示などを可能にするC&T社製グラフィックスアクセラレータWingineWindowsEngine(64200)を搭載,(4)メモリは最大32Mbytesまで増設可能,(5)VRAMを2Mbytesまで拡張可能――など.シリーズの内訳は,i486DX(33MHz)を搭載した「JD1994DX-33JLB II」とi486DX2(66MHz)を搭載した「同DX2-66JLB II」の2機種で,価格はそれぞれ14万9000円,19万9000円.メモリHDDなどはオプションで,オプションキットの「SF041VFD1」(メモリ4Mbytes)が3万4000円,「SF041V250FD1」(メモリ4Mbytes,3.5インチFDD250MbytesHDD)が9万4000円.


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■SEGA,小児向けコンピュータを発売
 (株)セガ・エンタープライゼスは,知育・学習を目的とした小児向けコンピュータ「PICO(ピコ)」を6月26日より発売する.
 主な特徴は,(1)絵本形態のソフトによるインタラクティブな操作性、(2)ソフトウェアの供給による発展性,(3)子供のコンピュータ操作への予備学習機能など.セガ・エンタープライゼスによれば,対象年齢は3~6歳としたソフト構成としているが,小学生に向けたソフト開発を段階的に予定しているという.
 ハードウェアはCPUに8MHzのMC68000を採用し,RAM,VRAMともに64Kbytesを搭載する.ビデオ出力により,家庭用TVなどへ512色中64色表示が可能.操作は十字キーと1ボタン,ペン入力タブレットで行ない,キーやタブレットは本体と一体化されている.
 ソフトウェアは「絵本ソフト」と呼ばれるカートリッジで供給され,「ミッキーのゆかいなぼうけん」,「ドラえもんのびたとまいごのきょうりゅう」「ハローキティのたのしいぶとうかい」,「ガチャピン・ムックのパーティをひらこう」などが同時にリリースされる.
 価格はPICOが1万6000円,絵本ソフトはいずれも3980円.


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■三洋電機,DOS/VAX両対応の新AXAGEを発売
 三洋電機(株)は,DOS/VとAXに対応した“AXAGE V"「MBC-19CVDシリーズ」を発表した.CPUはi486DX2(66MHz)メモリは4Mbytes,VGAチップはウェスタンデジタル社の“90C31"を搭載し、最大1024×768ドット,最大3万2000色の表示が可能.内訳は,FDモデル,160Mbytes/320MbytesHDDモデルの3系統MS-Windows3.0A/3.1インストールモデルも用意されている.価格はFDモデルが34万円,160MbytesHDDモデルが41万円,320MbytesHDDモデルが46万円.


■日本DEC,AlphaAXPを搭載したNTパソコンを発売
 日本DECは、同社が開発したRISC CPU「AlphaAXP」を搭載した初のパソコン「DECpc α XP150」を発売する
.  同機の主な特徴は、(1)クロック周波数150MHzのAlphaAXPを搭載し,100SPECmark以上の処理速度を達成。パソコンとしては世界最高速を実現(2)512Kbytesの外部キャッシュを標準装備(3)Microsoftが開発する新OS「Windows NT」を標準装備し,MS-DOS.Windowsのアプリケーションをそのまま実行できる,(4)標準で32Mbytes.最大128Mbytesのメインメモリと,標準で426Mbytes.最大29.4GbytesのHDDを接続可能,(5)バスはEISA仕様で6スロットを装備し,IBM PC用の豊富な周辺機器を装着可能,(6)Windows NTのアドバンスドサーバソフトウェアにより,LAN ManagerやNetWareなどPCをクライアントにしたサーバに最適,(7)米国政府のC2レベルセキュリティ機能を提供8表示部にはCOMPAQ社のQvisionを搭載し,最大1024×768ドットで256色の表示が可能,9表のような統合ソフトウェアを順次提供予定――など。価格は95万7000円.


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■DECが低価格EISA PCサーバ2機種12モデルを発売
 日本ディジタルイクイップメント(株)は,DOS/Vマシンの新ラインナップとして.「DECpc MTE EISAミニタワー」シリーズ2機種12モデルを発売した.
 DECpc MTEは、ミニタワータイプのPCサーバで,主な特徴は.(1)32/16/8bit対応のEISAバス6スロット(ひとつはVESAのVL-Bus兼用)を装備,(2)S3社のグラフィックアクセラレータ86C805"または"86C928"を搭載したビデオボードを実装,(3)i486DX/DX2およびPentium仕様のODPへのアップグレードに対応した238ピンのZIF(ZeroInsertionForce)ソケットを採用,(4)メモリ容量を最大128Mbytesまで拡張可能,――など.
 機種の内訳は,i486DX(33MHz)を搭載した「DECpc 433dx MTE」と,i486DX2(66MHz)を搭載した「同466d2 MTE」の2機種価格は、DECpc 433dx MTEの最小構成(メモリ8Mbytes.86C805搭載HDDなし)が54万5000円など(表1)。なお、ユーザーには1年間の無償オンサイトサービスが適用される.オプションとして64Mbytesのメモリ(89万8000円),SCSI仕様のCD-ROMドライブ(10万8000円)なども発売された.


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■サンが最大1000MIPSのサーバなどを発売
 日本サンマイクロシステムズは,同社のワークステーション「SPARCStatrion」シリーズの中位に新たに10機種を追加した.
 「SPARCserver 1000」は,最上位機種SPARCcenter 2000の下位に来るハイエンドモデル,本体には4枚までの「システムボード」を装着でき,各システムボードには標準で1つ.最大2つのSuperSPARC+チップと,標準で32Mbytes,最大512Mbytesのメモリを装着できるため,合計8つのSuperSPARC+チップと2Gbytesのメインメモリを装着可能となっている.
 SPARCserver 1000の主な特徴は,(1)初めてクロック周波数50MHzのSuperSPARCを採用,(2)システムボード1枚のエントリー構成で135MIPS,CPU8個フル実装時には1000MIPS以上の処理速度を実現可能,この状態では業界最高のデータベース性能400.8tpsA,NFSファイルサーバ性能1400NFSops/秒を実現する(3)システムボードの増設でI/Oスループットも4倍に高速化される,(4)システム内に最大8.5Gbytesのディスクを内蔵可能,(5)セルフチェック機能,障害発生時の自動修復機能などを装備など.価格はシステムボード1枚,32Mbytesメモリ1070MbytesHDD,Solarisライセンス,CD-ROMドライブの構成で801万5000円.
 「SPARCstation 10」シリーズはデスクトップのハイエンドモデルだが,ここにも新たに5機種が追加された.CPUクロックが30/40/50MHzのSuperSPARCを搭載したユニプロサッサモデル3機種と,CPUクロックが40/50MHzのSuperSPARCを2つまで搭載できるマルチプロセッサモデル2機種から構成される.
 最上位機種「SPARCcenter 2000」のCPUモジュールには,50MHzのSuperSPARC+と2Mbytes外部キャッシュを搭載した新モデルが追加され,データベース性能が従来機より30%アップした.
 OSとしては「日本語Solaris 2.2」が新たに提供され,全SPARCモデルで利用可能となった.Solaris 2.1からの主な改善点は、(1)データベース性能の向上,(2)対称型マルチプロセッシングおよびマルチスレッドのサポートによりシステムスループットが大幅に向上,(3)ネットワーク環境におけるシステム管理機能の改善(4)オフィス用ユーティリティ「Deskset」にイメージデータの描画が可能な「イメージ・ツール」を追加するなど機能の拡充,(5)グラフィックスおよびイメージング操作環境を標準装備――など.
 なお同社の発表に合わせて,東芝,富士通,伊藤忠テクノサイエンスなどから各社のブランドで新SPARC製品が発売される.


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■クボタコンピュータが最高速のAlphaマシンを発売
 クボタコンピュータ(株)は,グラフィックススーパーコンピュー「TITAN2」シリーズに、2モデル10機種を追加した.
 「TITAN2 モデル500X」は,DEC社のRISCチップ「AlphaAXP」を採用した。新しい最上位モデルクロック周波数200MHzの最高速バージョンのAlphaAXPの搭載により,160.8SPECmark(89),164.1SPECfp.92110.95SPECint92の世界最高速の演算性能を実現している.
 「TITAN2 モデル300」は,クロック周波数150MHzのAlphaAXPを採用したエントリーモデル,レンダリングバッファは10Mbytes処理速度は85.5SPECmark(89),91.5SPECfp92,66.2SPECint92を実現している.
 両機種ともグラフィックサブシステムには同社が開発した「Denali」を使用するが,新たにエントリーセットの「E105」中位の「D310」最上位の「SD80」が追加された.本体に500X,サブシステムにSD80を搭載したモデルでは,80Mbytesのレンダリングバッファを利用でき,最大122万ポリゴン/秒の世界最高レベルの描画速度を実現できる.
 価格は、本体が300.サブシステムにE105を搭載したエントリーモデルで576万円(64Mbytesメモリ1GbytesHDD,16インチカラーモニタ、基本ソフト一式など含む),本体が500,サブシステムにSD80を組み合わせたモデルで1961万円(モニタが19インチであるほか前項に同じ).


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パソコン広告(月刊ASCII 1993年7月号1) [月刊アスキー廃棄(スクラップ)]

【7月号】
ASCII1993(07)表裏_W520.jpg
裏表紙は富士通のマーティ。

【7月号】
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98MULTi

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98MATEと98MULTi

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FM TOWNS II

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FM R-70CL1

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左ページはPACKARD BELL、ほぼ前号の使いまわし。
右ページはDynaBook EX486。

ASCII1993(07)a05LASERSHOT_W520.jpg
レーザーショット。前号の使いまわし。

ASCII1993(07)a06LASERSHOT_W520.jpg
レーザーショット。前号の使いまわし。

ASCII1993(07)a07BJ-desk_W520.jpg
キヤノンのBJ-deskプリンタ。

ASCII1993(07)a08BJC-880J_W520.jpg
キヤノンのBJC-880J。前号の使いまわし。

ASCII1993(07)a09EPSONアップグレードノート_W520.jpg
EPSONのUP GRADE NOTE(アップグレードノート)。

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SONYのQuaterL。

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DELL

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intelのOverDriveプロセッサ

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WORD for WINDOWS 5.0

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WORKSはMS-DOSのアプリ。

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一太郎 Ver.5

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マイクロデータの近日登場してないアストロノミー。

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COMPAQ

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ASCII1993(07)a19ツクモ_W520.jpg
ツクモ

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ThinkPad 220

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WORD for WINDOWS 5.0。
一太郎のシステムディスクをもっていれば25,000円で手に入る。このころマイクロソフトは一太郎を切り崩そうと頑張っていた。

裏表紙裏はFUJI FILMのFD。
【7月号】
ASCII1993(07)裏裏_W260.jpg
前号の使いまわし。

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バス,M68000,LAN,その他(月刊ASCII 1993年6月号7) [月刊アスキー廃棄(スクラップ)]

「TBN なんでも相談室」をスクラップする。

32bitバスとローカルバスはどうなるの?
Q 最近,ローカルバスがいいという話をよく聞きますが,NESAのような32bitバスの将来はどうなるのでしょうか.また,ローカルバスはNESAよりも優れているということなのでしょうか.
A 近ごろは,ローカルバスが大流行で,ローカルバスでなければパーソナルコンピュータではない,というのはおおげさにしても,どうせ買うならローカルバスがいいという人が増えています.
 ごぞんじのとおり,最近話題になっているローカルバスとは,外部の周辺機器に接続するための信号経路です.必ずしもローカルバスは拡張スロットの規格の呼び名というわけではありません。一般にローカルバス=新しい拡張スロットと考えられているようですが,拡張スロットを経由せず,マザーボード上のローカルバスに直接周辺チップを組み込んでいるハードウェアメーカーもあります.
 ローカルバスが拡張スロットの規格と考えられるようになったのは,ローカルバスの信号が規格化されるようになったからでしょう.このような動きは,昨年VESAという団体がIBM互換機用にローカルバスの信号を規格化し,メーカーの違いにかかわらず,従来の拡張スロットのように自由にインターフェイスカードを交換できるようにしたことにはじまります。そしてこの動きに触発されて日電が98MATEシリーズに同じようなローカルバスを使った拡張スロットが搭載され,98ユーザーの間でもローカルバスが利用できるようになっています。

ローカルバスと32bitバス
 さて,ローカルバスの特徴はさまざまですが,最大のうたい文句は高速のクロックに対応しているということでしょう.
 従来の拡張スロットは,過去の製品にあわせて作られたインターフェイスカードでも動作を保証するために,動作クロックの上限が制限されていました。つまり,CPUのクロック周波数がいくら上がっても、従来の拡張スロットのクロックは8MHz止まりだったわけです。したがって,最近のように33MHz,50MHzといった高速クロックのCPUを搭載したパーソナルコンピュータも,周辺機器との間でデータを交換しようと思うと,拡張スロットのクロックにあわせてゆっくりデータを交換しなければならなかったのです.
 もちろん,こうしたバスの限界は、5年以上前から問題とされてきました.そこで登場したのがIBMのマイクロチャネルアーキテクチャ(MCA:Micro Channel Architecture),IBM互換機のEISA,そして日電のNESAといった高性能な32bitバスです.しかし,これらの32bitバスは,データ転送の高速化というよりも、むしろ当時ポストMS-DOSの本命とされていたOS/2への対応という意味合いが強かったようです.つまり,従来の16bitバスでは本格的なマルチタスクOSが要求する性能を満足できないことから,新しいバスが必要になったということでしょう.
 これらの32bitバスの特徴は,32bitバスによる高速転送のほか,複数のインターフェイスカードからバスの占有権が要求されたときに,それぞれのカードの動作時間を調整するバス・アービトレーションの機能や,各カードのIRQ,DMAを自動的に設定できるオートコンフィギュレーション機能などがあります。中でも,バス・アービトレーション機能は,マルチタスクOSを効率的に動作させるためには必須の機能でした。
 また,IBMはMCAにより,当時増えつつあった互換機を,新しいバスの搭載を機会に,一気に時代遅れのモデルにしてしまおうという意図があったとも言われています。IBMがPS/2に搭載したMCAバスは,従来の16bitバス(ISA)とは互換性のない,まったく新しい規格だったのです.しかし,IBM互換機陣営は,IBMのまったく新しいバスに対して,従来のISAバスを拡張したEISAバスを発表しました.
 日電もEISAにわずかに遅れて,PC-9801をOS/2で動作させるNESAと呼ばれるバスを発表したわけです.ちなみに,バスの規格としては,NESAはEISAとよく似た規格です.
 しかし,OS/2が予想外に不評だったことや,サードパーティの協力が得られなかったこと,そしてMS-DOSを使う限り,ユーザーがISAで取り立てて不便を感じなかったことなどの理由で,これらの32bitバスはあまり普及していません。
 ところが,この数年、高性能なパーソナルコンピュータを要求するWindowsのヒットやCPUの高速化により,従来バスの性能の問題が急激にクローズアップされてきました.
 従来バスでは,せいぜい毎秒1Mbytes程度しかデータを転送できません。これでは,常に膨大な画像データを送り出さなければならないビデオインターフェイスはたちまちパンクしてしまいます.また,Windowsは大きなファイルを常時読み書きしなければならないのですが,ちょっとファイルをアクセスするだけで延々と待たされるのではたまりません。
 そこで,バスの機能はともかく,際限なく上がる一方のクロックに対応して,高速にデータを転送できるバスが求められるようになり,ローカルバスが登場したというわけです.
 最後になってしまいましたが,現時点では32bitバスの将来性を評価するのはかなり困難です.
 EISA,NESAなどのバスは,高度な機能を持っていますが,データの転送速度はせいぜい毎秒30Mbytes程度が理論的な限界です.それに対して,ローカルバスでは毎秒100Mbytesを超える転送速度が期待できます.とはいえ,MCAはローカルバスと同等の速度でデータを転送できるモードで動作させることができます。
 しかし,拡張スロットの評価は,単に性能だけではないという点が難しいところでしょう.MCAが高速で高性能なバスとして早くからIBM機に搭載されていたにもかかわらず,インテル系CPUのマシン全体からみると,MCAのシェアは決して大きくありません。
 安くて高性能なローカルバスにしても,もともとビデオカードの高速化を目的としたもので,汎用性のある拡張スロットとしての実力は未知数です。特に,日電のニューモデルに搭載されているローカルバスは,今後仕様の変更もあり得るということで,詳しい仕様は公開されていません。また,仕様が公開されているIBM互換機のVESAローカルバスにしても,マザーボードとサードパーティのインターフェイスの相性の問題を解決するのが急務だと言われています.
 さらに,VESAや98MATEのローカルバスとは異なった考え方で設計されるPCIという規格のローカルバスも控えています.これは拡張スロット用のローカルバスではありませんが,CPUと周辺チップの橋渡しをする高性能なバスの規格です.
 将来のバスがどうなるのか,筆者には確実な予想ができませんが,ここ数年はビデオとディスクのインターフェイスとして,ローカルバス搭載のパーソナルコンピュータが一般的になるでしょう.周辺機器は,当分は従来の16bitバス用インターフェイスが使われると思いますが,サーバをはじめとする一部のハイエンド機では,NESAやEISAなどのバスが使われていくことになるでしょう。
(安田幸弘)


 ここでやっとPCIバスという用語が出てきた。


CPUの関係が分からない
Q X68030ではMC68EC030が使われています。ECタイプではMC68030とどのように違うのですか.MC68020などでもMC68EC020があるようですし,68K系の種類と違いを教えてください。
A マイクロプロセッサは技術の進歩とともに目まぐるしい勢いで世代交替を繰り返しています。今回は数あるプロセッサファミリーの中から、質問にあるモトローラ社のM68000を取り上げてみました.
 1970年代末に発表されたMC68000に始まるモトローラ社のM68000ファミリーは,すっきりしていて,しかも強力な仕様が技術者に受け,高級コントローラやワークステーション,パーソナルコンピュータの主要な部品として広く使われています。パーソナルコンピュータでは,Apple社のMacintoshやCommodoreAmiga,Atari社のFalcon/STなどがこのプロセッサを採用しています。それではM68000ファミリーの各製品の違いについて,簡単に説明してみましょう.

MC68000/MC68008
 「MC68000」はファミリー最初の製品ですが,32bitのデータサイズ,8本のデータレジスタ,同じく8本のアドレスレジスタ,ユーザーモードとスーパーバイザモードの区別など,ユーザーモードでの互換性を保ちつつ拡張するために必要な仕様をほとんど備えています。
 扱えるデータは加算と減算では32bitの整数,乗算と除算では16bitの整数までで,MC68020で実現された32bit整数の乗除算やビットフィールドの扱いはできません。
 外部とのインターフェイスとしては,16Mbytesのアドレス空間と16bitのデータバスを持ち,M6800ファミリー(モトローラ社の8bitMPUのファミリー)用の周辺LSIと接続するための信号線もあります。
 「MC68008」はMC68000の小型版で,1Mbytesのアドレス空間,8bitのデータバスとなっています。

MC68010/MC68012
 「MC68010」(写真1)はMC68000の改良型で、命令実行クロック数が短縮され,ループモードによる文字列操作の高速化,“MOVES”命令によるコプロセッサのサポート(ただしソフトウェアが必要),命令継続法による仮想記憶のサポートが追加されました。
ASCII1993(06)g02CPU写真1_W443.jpg  また,ユーザーモードのプログラムの環境をシステムに依存しないようにするために,“Move from SR”命令がユーザーモードでは実行できなくなり,その代わりに“Move from CCR”命令が追加されました.
 「MC68012」はMC68010の外部アドレス空間を1Gbytesに拡張したものです.

MC68451
 これはMC68000とMC68010用のメモリ管理ユニット(MMU:Memory Management Unit)で,セグメンテーション方式のメモリ管理を行ないます.
MC68020,MC68EC020
 「MC68020」は,MC68000の次の世代の製品(モトローラ社では“第2世代”としている)で,完全に32bit化されています.外部データバスの幅が2倍になり,メモリアクセス時のクロック数を1クロック縮め,256bytesの命令キャッシュと32bitのバレルシフタを内蔵したことにより,同じクロック周波数でMC68000の2倍以上の性能を達成しました。
 また,命令セットとしては32bitの乗除算とビットフィールド扱いが追加され,コプロセッサ命令もマイクロプログラムによりサポートされています.
 さらにアドレッシングモードが大幅に拡張され,データレジスタによるレジスタ間接,配列の参照に便利なスケールド・インデックス,メモリ間接とインデックスを組み合わせた複雑な参照などが可能になりました。
 アドレスバスも32bit化されたため,外部アドレス空間も4Gbytesに拡大され,8bitや16bitの周辺回路と接続するためのダイナミック・バス・サイジング機能も追加されています.
 なお,プロセッサの速度がM6800ファミリーとはかなり異なっているためか,M6800ファミリーの周辺LSI接続用の信号線はなくなっています.
 「MC68EC020」は,MC68020のエンベデッドコントローラ(Embedded Controller:埋込みコントローラ)版で,外部アドレス空間が16Mbytesになっています(写真2).
ASCII1993(06)g03CPU写真2_W489.jpg

MC68851
 「MC68851」は,MC68020用のデマンド・ページング方式のメモリ管理ユニットで,コプロセッサとして接続され,可変ページサイズ,段数可変のページテーブル,MC68020の“CALLM”命令のサポートなどの特徴があります.
 このCALLM命令とは,特権レベルのチェックと移行,パラメータの受け渡しを一度に行なう高度な命令です(x86系CPUのコール・ゲートによる呼び出しのようなもの)。なお,このメモリ管理ユニットを接続するとMC68020のメモリアクセス時に1クロック余計に時間がかかってしまいます。

MC68030/MC68EC030
 「MC68030」はMC68020の改良型で,256bytesのデータキャッシュ(ライトスルー),デマンドページング方式のメモリ管理ユニットが追加されました.ただし,このメモリ管理ユニットではCALLM命令の特権レベルのチェック機能のサポートはありません。また,内蔵したキャッシュと外部のメモリとのデータ転送を高速化するために,バスのタイミングに同期モードが追加されました.
 「MC68EC030」はMC68030のエンベデッドコントローラ版で,メモリ管理ユニットが省略されたものです(写真3).
ASCII1993(06)g03CPU写真3_W410.jpg

MC68881,MC68882
 「MC68881」はMC68020,MC68030用の浮動小数点演算コプロセッサで,IEEE-754準拠の倍精度,単精度の浮動小数点形式のサポート,8本の浮動小数点レジスタ,高精度の三角関数指数関数・対数関数,パックされたBCD形式の浮動小数点数のロードとストアなどの特徴があります.
 「MC68882」はMC68881の改良型で,データ形式の変換と演算とを同時に実行できるようにしたことにより,実行クロック数が短縮されています.
 これらは汎用のコプロセッサ・インターフェイスで接続されるので,ひとつのMPUに対して複数個接続することが可能です。ちなみにM68000ファミリーのコプロセッサインターフェイスでは最大8個までのコプロセッサを接続することができ,メモリ管理ユニットの分を差し引いても最大7個接続できます.ただ,現実にそのようなシステムが見当たらないのは、あまり効果がないからかもしれません。なお,これらをMC68000やMC68010に接続するためには,MC68020などでマイクロプログラムにより実現されている部分をソフトウェアで処理する必要があります(シャープのX68000がこの方法を取っています)。

MC68040/MC68EC040/MC68LC040
 「MC68040」は,MC68020の次の世代の製品(モトローラ社では“第3世代”としている)で,現行のM68000ファミリーの中では最高速のものです(写真4).
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高速な浮動小数点演算ユニットを内蔵し,整数ユニットも高度なパイプライン処理により高速化されています.それぞれ4Kbytesに増えた命令,データのキャッシュ(コピーバック可)の助けもあって,MC68030+MC68882との比較で,整数演算で2倍以上,浮動小数点数の加算・減算・乗算では10倍(除算はそこまではいかない)の能力があります。ただし,MC68040の浮動小数点演算ユニットはMC68882のすべての機能を実現しているわけではないので,実現されていない機能を使用している場合にはオペレーティングシステムがその機能を代行する必要があります。省略された機能には,三角関数指数関数・対数関数などと,BCDデータのロード・ストアなどがあります.
 また,内蔵されているメモリ管理ユニットは,ページサイズの選択の幅が狭くなり,ページテーブルの段数も固定になってしまいました(ただしアドレス変換を行なわない領域を指定することにより,アドレス変換キャッシュの浪費を防ぐことができる)。もっとも,このことはMC68851がきわめて柔軟にできていたというだけで,大部分のプロセッサのアーキテクチャでは,この程度の仕様になっています。さらに,外部バスのタイミングを大幅に変更したためか,ダイナミック・バス・サイジング機構とコプロセッサ・インターフェイスもなくなりました。
 このように,MC68040は過去との互換性をある程度犠牲にしてでも高速化を図ろうとしたものと言えます。犠牲になった部分の影響を受けるのは,ハードウェアとオペレーティングシステムなどのシステムソフトウェアのみで,ユーザーモードのアプリケーションには影響はないはずです。ですが,MC68040に限らず,一般にM68000ファミリーのスーパーバイザモードのプログラムは,MPUやコプロセッサを換装したときには修正が必要になってしまうことが多いものです.
 「MC68EC040」は,MC68040のエンベデッドコントローラ版で,浮動小数点演算ユニットとメモリ管理ユニットが省略されています(Commodore社の初期のAmiga4000/040に実装されている.当該モデルでもMC68040へ換装し,そのMMUの機能を利用できる).
 また「MC68LC040」は,MC68040の浮動小数点演算ユニットを省略したもので,インテル社の486DXと486SXとの関係によく似ています(Apple社のMacintoshCentris610が採用。MC68040への換装に対応している).

MC68060
 MC68060は現在開発中の製品で,今年の秋の発表が噂されているMC68040の次世代に当たるものです。インテル社のPentiumプロセッサと同様にスーパースカラー技術を使用して,100MIPSの性能を実現すると言われています.
MC683XX
 「MC683××」は,M68000ファミリーのMPUコアを使用し,特定用途向けに周辺回路を集積したもので,MC68000をコアに使用した「MC68302」やMC68010とMC68020の中間的な性格の“CPU32"をコアに使用した「MC68330」,「MC68331」,「MC68332」,「MC68340」などがあります.
 専門用語が多くて分かりにくかったかもしれませんが,マイクロプロセッサを語るときには避けて通れないものですから,プロセッサの解説書を参照してください。また,各プロセッサの機能の詳細については,参考文献として挙げたマニュアルなどを購入することをお勧めします。
(菅野)



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 モトローラのM68000系CPUを好きだという割には知らなかったものが多かった。すでに86系のCPUばかり使っていて68系を知ろうという気持ちがなくなっていた。86憎しというわりには86の知識を増やしていった。なんか残念だ。

「今月のキーワード LAN(Local Area Network)」をスクラップする。

 LANとは地域内通信網と邦訳されているが,主に会社や学校の中に構築されたコンピュータネットワークを指すことが多い.
 最近では,低価格のEthernetボードが登場して,普及にはずみがつきそうな気配だ.今回は,身近なネットワークとして知られているLANをとりあげる.

■1+1≦2
 パソコンでネットワークを作る利点のひとつは,一言でいえば「相互の情報をやり取り「できる」ということだ.お互いのコンピュータが持つ情報を自由自在に活用すれば,1台のパソコンが何台分もの活躍をする.
 たとえば,顧客情報のデータベースを収めたパソコンから別のパソコンを使って必要なデータを取り出すことが簡単にできる.膨大な量の顧客情報すべてを担当者全員が自分のパソコンのハードディスクに持つ必要がないわけだ.それとともに,情報の重要度に応じてアクセスする人を制限することで,情報漏れを防止することもできる.
 もうひとつの利点として,周辺機器の共有が挙げられる.レーザープリンタを使用する場合,パソコン1台ごとにレーザープリンタを用意するのでは,多額の費用がかかってしまう.個々のプリンタの稼動率はそれほど高くないので,複数のパソコンで1台のプリンタを共有すれば,プリンタの数を減らせるし稼働率を高めることも可能になる.

■パソコン通信=LAN?
 コンピュータのネットワークで身近なものは,パソコン通信だろう.パソコン通信では、家庭内のパソコン(ターミナル)と通信センターのコンピュータ(ホスト)を接続して,情報を得ることができる。パソコン通信では主に電話回線で通信を行なうが,LANでは,一般に同軸ケーブルや光ファイバーを用いる.そのため,敷設する地域は限定されるが,大量の情報をスムーズにやり取りできる点で,パソコン通信とは異なる.
 では、2台のパソコン同士を単にケーブルでつなげば,LANになるのだろうか.たしかに,パソコンのRS-232C端子を使って接続し相手のコンピュータを自機の増設ドライブのように使うソフトウェアもある.しかし,2台以上の接続や,異なる機種同士を接続することはできないし、印字や複雑な計算などの処理を、相手に任せることまではできない.

■神経細胞のように
 LANと呼ぶためには,以下の2点を満たしていることが必要だ。
(1)接続されたコンピュータ同士がお互いに)周辺機器を含めてハードウェア・ソフトウェアが利用できること
(2)高速に通信するために,通信する方法(プロトコル)を規定していること.
 電話回線は,普及率が高く利用しやすいが,雑音が多く高速通信には向かない.そのため,LANではツイストペア(撚り線)やシールド線,光ファイバーケーブルなどの専用線を使う.専用線を使用することにより,動画も扱えるほどの大容量で高速な双方向通信が可能になる(パソコン通信では9600ビット/秒だが,LANでは1000万ビット/秒).
 このような,高度な通信を可能にするためには、通信に関する規格が整備されていなければならない.LANの標準化に関しては,IEEE(アメリカ電気電子技術者協会)とANSI(アメリカ規格協会)という2つの組織が活動している.特に,ANSIでは100Mビット/秒という高速通信規格の標準化を行なっている.
 LANとは,生物の神経細胞のように有機的につながって活躍するもの,といってもよいだろう.

■LANいろいろ
 LANのネットワーク形式は,スター型,バス型,リング型の3つに大別される.
 スター型とは,各コンピュータからの配線を一ヶ所に集めて分配する方式で,バス型は、1本の配線上に各パソコンを接続して,両端にターミネータと呼ばれる終端装置を設置するのが特徴だ.リング型は,バケツリレー式にトークンと呼ばれるアクセス権を巡回させる方式で回覧版を想像してもらえれば,わかりやすいだろう(図).
 どの方式にしても,ケーブルが必要となるが,ワイヤレスで情報のやり取りをするものもある.LANでは何十mものケーブルが必要になるため、部署移動や改築,コンピュータの増設などのたびに,ケーブルを敷設しなおさなくてはならない.過去には,赤外線を使ったワイヤレスLANがあったが,到達距離が短く障害物が多いと送受信できない欠点を持っていた.しかし,最近の製品では,無線を用いてケーブルと同等の伝送速度を実現した製品がある.米国では,すでに普及しはじめているが,日本でも規格や法律の整備がなされてきているので,普及しはじめるのも近いと思われる.

 企業ではLANの導入が一般的になりつつある.しかし,スタンドアロンでの使い方が主流である個人所有のパソコンでは,外部との情報のやり取りは,パソコン通信だけだといってもいいだろう.パソコンの能力がワークステーションを脅かすほどになったいま、自分の目前にあるマシンだけを使うのではもったいない.本格的なネットワークの利用が個人でも可能になる日は近づいている.
(藤田)



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 職場ではAppleに関してはAppleTalkだった。PC-9801にはWindows 3.1から導入されていたが、家でLANを使い始めたのはWindows95からだった。LANをやってみたくてパソコンを自作し複数台使っていた。しかし、Win95のころは設定が難しく、動いていたものがちょっとしたことで相手のPCが見えなくなっていた。今は何も考えなくてもできる。便利になったものだ。

「編集室から」をスクラップする。
豆腐屋さんと下駄屋さん
▲ここ2,3年の間,誰かにこれからのパソコンについて聞かれたときに答えていることがある。それは「パソコンは本屋さんに行く人を相手にしなきゃダメだ」というえらくシンプルなお話で,要は、週に1度、月に1度でも本屋さんに足を運んで,マンガでも雑誌でも本でもなんでもいいから買う人なら,きっとパソコンが役に立つということだ。残念ながら,滅多に本屋さんに行かない人は、いまのところお客さんになりにくいように思う.マルチメディアが本格的に立ち上がるならば、本屋さんに足を運ばなくても,テレビを見るだけの人だってだいじょうぶでしょう?というかもしれないが,まあ、1つの目安として,どこの街やどこの駅前にもある本屋さんのお客さんが,すべてパソコン業界にとっては潜在的なお客さんだというのだから明るい気分になる.
 ところが,出版の世界は,どちらかというとかなり地道な業界なのである.だいぶ前に,出版界の売り上げの総合計が,豆腐屋さんの売り上げと同じくらいというような話を聞いたことがある.現在は,どのような状況なのかちょっと分からないが,社会事業のような商売ですねといわれても仕方のない部分もあるわけだ。そして,これに対して,というのではないが,パソコン用のパッケージの世界の売り上げが,下駄屋さんの売り上げ(正確には下駄とサンダルの売り上げ)と同じくらいだという話を,これは数年前に聞いた.出所はどうやら,マイクロソフトの古川会長らしいのだが,これは現在は,かなり状況が変わってきているのではないかと思う.
 逆に,パソコンが本屋さんに行くような人すべての道具となったならば,本屋さんの売り上げは,豆腐屋さん+肉屋さん+魚屋さん+八百屋さんくらいになるかもしれないし,ソフト屋さんの売り上げは,下駄屋さん+靴屋さん+下着屋さん+帽子屋さんくらいは軽くクリアしてくれないかと思う.とにかく,そうなるためには,電子出版,それも見た目が派手な絵本や写真集の世界ではなく,ガチッと中身で勝負する内容のCD-ROMやパソコン通信が重要な意味を持ってくるのだと思う.パソコン通信サービスは,本屋さんにノボリを立てて宣伝し,CD-ROMは紙の本より安いものをバリバリ出す必要がある。
(遠藤諭)


 市場が成熟するまでの混沌とした雰囲気が良いと思う。成熟してしまうとつまらないものだ。

「なないろのディスプレイ」最終回をスクラップする。
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パラメトロン後藤英一インタビュー(月刊ASCII 1993年6月号6) [月刊アスキー廃棄(スクラップ)]

「月刊アスキー最高部数更新中キャンペーン スペシャルインタビュー(2) パラメトロンから量子コンピュータまで…… 後藤英一 インタビュアー:編集部遠藤諭」をスクラップする。
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 世界のコンピュータの主流がまだ真空管式だった1954年,真空管よりもはるかに安定したまったく日本独自のコンピュータ素子が創られた。東京大学理学部物理学科の高橋秀俊研究室による「パラメトロン」である.これを考案した後藤英一氏は,このときまだ,大学院生だった。
 トランジスタによるマシンが普及するまでの間,日立,富士通,日本電気など日本のコンピュータメーカーが,これを採用したマシンを出荷した。コンピュータの世界ならではの非常に短い期間ではあったが,まったく日本独自の一世代が築かれたことは,日本のコンピュー夕界にとって貴重な経験となった.
 後藤英一氏は,現在も磁束量子コンピュータの研究などで,最先端技術の第一線を走り続けている.これは,シリコンの素子に比べ,実行速度で2桁,消費エネルギーで8桁優れるというジョセフソン素子の研究の中でも最も有力視されているものの一つだ。これに国産コンピュータ黎明期の「パラメトロン」の技術が生きているという!

 JR東海道本線を辻堂駅で降り,タクシーを10分ほど走らせると,江ノ島を臨む海岸に近い後藤英一氏のお宅に到着する。登場した後藤氏は,「海岸で撮影しませんか」というカメラマンの提案に,「そうかそうか」と気軽に応じてくれた.海岸までの5分ほどの道のりの間にも、ややベンラメエ調のいかにも気取らない調子で,25年間住んでいる藤沢市についてや、日本語処理についてのお考えなど実にさまざまなお話をしてくださった.
●パラメトロンが生まれた理由
――どうしてパラメトロンという素子を作られたのでしょうか?
「そのころ,日本にはコンピュータがなかったんだ。そこで東大の高橋研究室で作ろうということになってさ.だけど大学の研究室じゃ,予算が足りない.当時,真空管は1個1000円,トランジスタだと1個8000円もしたんだ。それに,真空管はすぐに消耗するだろ.トランジスタはまだ不安定だったしさ,そこへいくと,昔からラジオ製作なんかで馴染みのあるフェライトコア*1(*1 フェライトコア:ラジオの同調などに使用される,鉄,コバルト,ニッケル,マンガンなどの酸化物.)は1個5円だった。じゃあ、フェライトコアを素材にしたらってことで理論を創ったんだ.パラメーター励振という原理を利用するから,パラメトロンっていうんだけどさ.フェライトコアは安定した素材だし,焼き物なんで,一度うまく作れば壊れないんだ」
――子供のころからラジオ製作などをなさっていたんですか?
「子供のころは,やっぱり数学とか理科が得意だったけど,ラジオ製作なんかを始めたのは15歳ぐらいだったかな。その後,ラジオの部品であるフェライトの飽和現象を利用したり,スイープジェネレータを自分で作ったりしてたから,それらを利用して何かできないかと思っていたんだ」
――パラメトロンをかいつまんで説明していただくと,どういうことになるのでしょうか?
「1個のパラメトロン素子は,2個のフェライトコアと1個のコンデンサで作る.フェライトコアのドーナツにコイルを10回巻いてね。それをハンダでつなぐんだ.これに励振電流を通すことで,電気的な振動を発生させるんだな.1/2分周と言ってさ,フェライトコアの磁気的性質を利用した,周波数を2分の1にする現象を使うんだ.すると180度異なる位相が2つできるから,それで0と1の2進数が記憶できる.それに,2つの状態ができたりなくなったりして切り替わるときには,一種の増幅作用がある。あとは入出力ができれば,多数決の論理演算ができるんだよ」
――フェライトコアはどんなものを使われたんでしょう?
「使用したフェライトコアは,東京電気化学工業(TDK)に作ってもらった4mm外径のものだったんだけど,あとから考えてみるとこれが非常にパラメトロン向きの性質を持っていた素材でね。このTDKの素材を使用していなかったら,パラメトロンの成功は難しかったろうね.パラメトロンが成功してからそれに合った素材を作ってもらうのは楽だけど,成功以前に適切な素材から研究して作るっては非常に困難なんだ.TDKのを使ったのは,まったく偶然だったけど,非常にラッキーだったよ」
――コンピュータを作るのに,パラメトロン以外に方法は考えなかったのでしょうか?
「そりゃあ,ボツになった案は多いよ。電話交換機に使う回転スイッチと真空管回路を組み合わせた機械電子式計算機とか,10進法を使ったデカトロンコンピュータとかさ.そういう案がうまくいくかどうかを,今ならさっとコンピュータでシミュレートするところだが,そのコンピュータ自体を作ろうってんだから,全部手でさ,数式で計算してシミュレートしたんだ.それでいけそうな案を絞りこんだんだな.物理学科で,物理や応用数学に詳しくなっていたのが大いに役立ったね」

●4300個のパラメトロンを使用したPC-1
――そして,パラメトロン計算機が誕生するわけですね。
「まぁ、いきなり本格的なのを作るわけにはいかないからさ。まずは2進4桁の加算機なんかを試作したな。9ビットの加算機PC-1/4(クォーター)は,PC-1の予備実験機として1957年に完成した.そして1958年,パラメトロン計算機として,36ビットのPC-1が完成したんだ。パラメトロンを4300個使ったんだけど、当時はそれをリレー配線の女の子たちがひとつひとつ手で作ってくれたんだ」
 パラメトロンコンピュータPC-1は,励振周波数2MHzのパラメトロン素子を4300個使用した2進法コンピュータだった。後藤氏発案の加減除算を高速に処理する「高速桁上げ回路」,複数の命令の制御を並列に行なわせる「先回り制御」などを搭載していたが,命令構成は加減乗除など,オーソドックスなものに限られていた.入出力には,6単位紙テープを使用し,語長は36ビットだった.
――PC-1/4とPC-1の大きさは,どれぐらいだったのですか?
「PC-1/4は(両手の親指と人指し指で長方形を作って)このくらい,PC-1は,そうだなぁ,幅2m,高さ1.5mぐらいだったかな」
――パラメトロン計算機の反響はいかがでしたか?
「それほど大騒ぎにはならなかったよ.海外では、10年前にすでにENIAC(1946年),EDSAC(1948年)なんかがあったし,それにパラメトロンはトランジスタコンピュータに比べて処理速度が遅いからさ。トランジスタコンピュータのクロックが1MHzなのに対して,パラメトロンコンピュータはせいぜい10~30kHz程度だったんだから.ずっとあとになって,MIT(マサチューセッツ工科大学)のマッカーシー(人工知能で知られる)と親しくなったんだが,言われたよ,『パラメトロンとはおもしろいことを考えたもんだが,何でそんな遅い素子を作ったんだい?』ってね.そんなこと言われたって,予算はMITの1000分の1ぐらいしかなかったんだからさ。でも、当時の大学でコンピュータを利用可能にしたという達成感はあったね。256語しかメモリはなかったんだけど,多くの人が使いにきたよ.当時はほかにコンピュータがなかったからね」
――最初にPC-1で動いたソフトというのは何でしょう?
「イレーズ・ブランクかな。当時,入出力は紙テープを使っていたんだが,穴がひとつもないまっ白な部分は飛ばす,データが0なら元に戻るっていうやつだ。つまり真っ白なテープはコピーしないっていうソフトだな」
――その後,日本にパラメトロンコンピュータの時代が来るわけですね?
「でも,実際はそれほど使われていないよ.日立,富士通,日本電気とか,数社で採用となっただけでね。やっぱり速度が遅かったからね.企業は予算をかけてトランジスタコンピュータを作るほうが効率が良かったろう」
 パラメトロン素子を使用したコンピュータとしては,日立製作所の「HIPAC103」(1957年),日本電気の「NEAC1101」(1958年)などが作られた。ちなみに研究室では,PC-1を本格的な科学用計算機としてパワーアップさせたPC-2*2(*2 PC-2:パラメトロン素子を約1万3000個使用した本格的科学用計算機。1961年完成。文部省からの資金援助を受け,製作は富士通が行なった。語長は48ビット.浮動小数点演算機能,索表命令,4進乗算などを追加し,当時の一流のコンピュータと同等以上の機能を搭載。パラメトロンの励振周波数はPC-1の約3倍の6MHz,クロックは66kHzとなった。自然対数の底eを1000桁計算するのに約9秒かかったという。)が1961年に完成している.しかし,その後,日本のコンピュータは速度の速いトランジスタ時代へと移行していった。

●尽きせぬアイデアと紫綬褒章
 その後も,後藤氏は実にさまざまな分野で活躍されている.1960年代の終わりごろにはワイヤーメモリを発明し,これは日立の大型計算機HITAC8700で使用された。多項式を掛け合わせるのに一番速いアルゴリズムを発見するなど,数式処理の普及にも大きく貢献している.「ウルフラム*3(*3 ウルフラム(StephenWolfram):1959年,ロンドン生まれ。理論物理学博士。1987年にWolframResearchInc.を設立。数式/記号計算処理,グラフィックス処理のソフトMathematica開発の中心人物。本誌'92年1月号でのインタビューも参照されたい。)ってのはおそろしく頭のいい奴だな」などと切り出して,数式処理やMathematicaにも話がおよんだのだが,後藤氏自身は,“Reduce”を作ったトニー・ハーンとお知り合いで、実はReduce派とのこと.
――理化学研究所でもご活躍なさっていますね。
「理研では,100くらい特許を書いたな。でもヒットしたのは、理研の主任になってからの“可変断面積電子ビーム露光法"(1979年)ぐらいだ。ただ,理化学研究所の物理学部門では,特許収入は一番だよ」
――“可変断面積電子ビーム露光法”とはどういうものなんでしょう?
「ICのマスクを今は電子ビームで打って作るんだけどさ,マスクを作るときに今までは点で打っていたんだな。それを縦と横から矩形の断面積の電子ビームをあてて打つという方法でさ,作業が断然速くなるんだよ。今,日本電子なんかで使用されててさ。実用化されたってことで科学賞とか紫綬褒章なんかをもらったんだ。紫綬褒章の賞状に,“永年にわたり半導体の製造技術に貢献され”なんて書いてあったな。半導体のために仕事をしてきたつもりはないんだけどさ(笑)」

●テラフロップスマシンに向け,蘇ったパラメトロン
 1986年,後藤氏はパラメトロン技術とジョセフソン素子の結合による超高速電算機用素子「磁束量子パラメトロン」の開発に成功する.
 ジョセフソンによって1962年に理論的に予言され,1963年にアメリカのベル研究所で実証されたジョセフソン効果を利用したジョセフソン素子。これは電子などの超微細な粒子が,通常では通り抜けることのできない壁をある確率で通り抜けてしまうというトンネル効果を利用した素子だ.
 具体的には,薄い絶縁体を2つの超伝導体(鉄やニオブなど)でサンドイッチのようにはさみ,電流を流す.すると,トンネル効果により,一定値までは電圧を発生しない電子の流れが絶縁体を通り抜ける。そして電流が一定値を超えた段階で,突然一定の電圧が発生する。この電圧状態が一気に切り替わる特性を0と1の状態に対応させて素子として使おうというのである。
 「磁束量子パラメトロン」は,絶対零度(摂氏-273度)近くの,電気抵抗がほとんどない超伝導状態で動作する12層の金属膜と絶縁体で構成されている.大雑把に言うと,パラメトロン素子においてフェライトコアを使用していた部分に,超伝導ループを持つ回路を使用したものだ。スイッチ速度はシリコン半導体素子の10倍以上の10ピコ(1000億分の1)/秒,消費電力はシリコンの約100万分の1の約1ナノ(10億分の1)ワットとなる.この素子の利用で,マシンのクロックはテラ(1兆)ヘルツまで上昇するという.
「ジョセフソン素子についてはよく勉強したね。原理をとにかく勉強して、逆に現在コンピュータにどのように応用されているかはいっさい学ばなかった.先入観を持っちまったら,オリジナルな発想は望めないからね。原理がパラメトロンと似ているっていうのはさ,まぁ、同じ人間が考えると同じようなものができるっていうことでね」
――現在のシリコンという素材では,処理速度の限界が見えてきていますから、まさに未来のコンピュータというわけですね。
「たださ,原理的,技術的にうまくいくのが分かってても,実現化する産業が発達するかどうかは別だから.パラメトロンコンピュータは手で作っていたから,うまくいかなきゃハンダをとかして付け替えりゃすんだんだけど、今は超LSI技術が必要でさ。これが非常に金がかかるし,1つでも間違えると直すのに3~6カ月も待たなきゃならねぇんだ.とにか<試作に時間と金がかかるのが現状なんだな」
――現在のシリコンチップでも,全部焼き直すとたいへんだから、できたシリコンチップに外科手術をほどこして直してしまうなんて話がありますね。
「ジョセフソン素子の外科手術技術を開発するとしたらまた1~2年かかるし,商売にもなりそうにないからな。とにかく世の中でジョセフソン素子がもっと使われるような道を拓くしかないんでね。そうすれば,その利用技術も進歩するし,コストも安くなる.ジョセフソン素子でなきゃできないことはいっぱいあるんだ。たとえば脳波の微妙な磁気を計測するとかね。これがどの病院でも、今の血圧を計る感覚で計れるようになればいいんだけど,今ジョセフソン素子を利用するために必要な液体ヘリウムを作る装置は安くても1000万円もするんだよ」

●テラフロップスマシン実現のために冷蔵庫を作る
――それでは手軽には利用できませんよね。
「量子コンピュータを実現化するには,ジョセフソン素子がスーパーコンピュータにしか使えないってんじゃ,ダメなんだよ。そこで,今凝ってるのが,液体ヘリウムの冷蔵庫の研究なんだ。熱機関の勉強をするとね,フロンの代わりに炭酸ガスを使おうが,ヘリウムを使おうが,冷蔵庫は作れるんだ。ただ,商品としての冷蔵庫ということになるとさ,安くて長持ち,メンテナンスフリーになるように作らなきゃならない。私が『液体ヘリウム装置は,家庭用冷蔵庫のフロンをヘリウムに変えてちょっと改造しただけなのに,冷蔵庫の数百倍も値段が高いのはおかしい』って専門家に言ったら,『あんたは素人だからそう思うんですよ』って言われたんだけどね。難しいとは思うけど,これができたら,冷蔵庫を改造してすぐに液体ヘリウム装置ができるんだけどな」
――量子コンピュータへの道を切り拓くために冷蔵庫を作るというのは凄いですね。
「普通の冷蔵庫の2倍くらいの値段でヘリウム冷蔵庫ができたら,もっと超伝導が大きく利用できる世の中になるよ.常温超伝導はいつ見つかるか分からないけど,液体ヘリウム冷蔵庫は現実に開発にとりかかれるんだよ.フロンを使わない冷蔵庫ができたら,環境問題にも役立つだろ。熱機関の勉強をしたり環境問題のことが気になってきたんで,ディーゼルエンジンの無公害化なんかも考えてるんだけどね」

●日本のコンピュータ状況について
 日本のコンピュータの歴史と一緒に歩まれてきたわけですが…….
「やっぱり日本人はオリジナリティには乏しいけど,デベロップメントしてバーッと売るのは得意だよな。いいものを安く売るっていうのは大切でさ,このメリットをわざわざ改める必要はないね。せっかくうまくいってんのに,角をためて牛を殺すことになる.国民性はそうすぐには変わらないよ。私はたまたま自分で何でもこしらえるのが好きだっただけでさ」
――最後に、今のパーソナルコンピュータ状況については,どうお考えなのでしょう?
「教育の現場にもコンピュータが活用されているけどさ.1+1が2だって教えるのは,何も速く計算ができるようになるためじゃなくて,論理的思考を養うためなんだな。これが,パッとコンピュータで計算してすましたらさ,みんな頭を使わなくなるよ。今大学の研究なんかでも,他人の作ったデータをコンピュータで検索して調査するなんていうところから始めるのがあるけど,他人がしたことから始めちゃオリジナリティはでないよ。作家の曽野綾子さんは自分では原稿を書くのにワープロが必須だけど,小学生の孫には決して使わせないんだってさ.漢字を覚えなくなるからね。頭を使うべき時期にそれを省くようなコンピュータ操作は,危険だと思うな」

 後藤氏には回顧趣味がないという。「昔のパラメトロンの資料なんか,もう持ってないよ」という後藤氏は,記念すべきPC-1もとうの昔にクズ屋に売り払っている(PC-2は現在上野の科学博物館に置かれている).
 インタビューを終えて、常に前を見ている人なのだなという印象が非常に強く残った.そして,「ワイヤーメモリ」を創ったときに,当時のメッキ技術に不満を感じて独自の手法を編み出し,「量子コンピュータ」のためには,冷蔵庫を研究するという,形にとらわれないオリジナリティあふれる着想でチャレンジしていくパワーが凄い。
 夏になると賑わうという江ノ島近くの海岸での撮影からお宅に戻る途中にも,現在,理研から情報処理学会に論文を出しているというsin,cosなどの初等関数を高速化する技術について楽しそうに説明していただいた。今後も我々を驚かせるような仕事をし続けていくであろう後藤英一氏だが,それらは,氏自身にとっては,あのパラメトロン素子のもとにもなったというラジオ製作の延長くらいのつもりなのかもしれない.


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写真4 後藤英一:東京大学名誉教授,神奈川大学理学部教授,理化学研究所主任研究員兼任。東京大学の大学院生時代に発明したコンピュータ素子「パラメトロン」により脚光を浴び,電子計算機国産化の騎手となる.幾多の発明とその功績により,科学技術庁長官賞科学技術功労者表彰ほか多数の賞を受賞し,1989年には紫綬褒章を叙勲されている.62歳.
 パラメトロンは論理素子で磁気コアメモリとは違うということなんだろうか。ならパラメトロンコンピュータの記憶素子はなんだったのだろうか。

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Dig-Ana Valley(月刊ASCII 1993年6月号5) [月刊アスキー廃棄(スクラップ)]

「Dig-Ana Valley」をスクラップする。
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 昔はCDを格納できるの約640MbyteのRAMがなかったからこうしていろんな思いを語ることができたのだが、いまでは数Gbyte以上のRAMやSDがあるのだからこうしたことは言われなくなったと思う。結局はDAコンバータの性能に行きつくと思う。

第8回 音のいいハードディスク,音の悪いハードディスク
 アスキーのゲームの記事を読んでいると「MIDI音源対応」とか書いてあるのがある。パソコン用のFM音源やサンプリング音源に加えて,本格的な音楽用デジタル音源ユニットに対応しているという意味だ。
 これは実際に体験すると,初めての人はきっと椅子からころがり落ちるほど驚く.こんなにもすばらしい音質でゲームのBGMが鳴るものか!フライトシミュレータのヒコーキのエンジン音が,こんなにもコワいほどリアルに重低音を響かせるものかと!と,目からウロコが20~30枚ボロボロと落ちてしまうこと請け合いだ。
 ゲームだけじゃない。ミュージシャンなら知らない人はいないMIDI規格だが,それをつくった中心人物といえば,神谷重徳氏だ。考えてみれば,Digi-Ana Valleyには音楽をつくる立場の人はまだ登場していない。
 そこで今回は,アナログからデジタルの過渡期の音楽シーンにクリエイターとして最前線で関わってこられた神谷氏にお話を伺うことにした。取材班は、都内某所のカミヤスタジオへと向かった.

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パイオニアはパーシーフェイスだ
河村 今日は,神谷さんが体験されたデジ・アナの峡谷に潜むフシギな体験を聞かせていただきたいと思います.
神谷 基本的には感覚的なことが大きいと思うんです。ぼくの経験でいうと,人間って目でも耳でも比較は強いと思うんですよね。すごく精度がいいと思ってるんです。だけど絶対値に関していうと,つまり何の比較対象物もなくて,色や音を評価すると,けっこうあいまい。でも,いわゆる聴き比べってあるでしょ?2つの音の聴き比べでは,すごく違いが分かってしまうと思うんです。差異がね.ところが,とりあえずこれはどうだっていわれたら,怪しいと思うわけ.
 あるとき,ぼくも音に関してそういう比較対象物を持つという経験をしたんです.JBLの4350だったか,でかいスピーカとラックスの真空管のアンプ。今から10年くらい前だけど,あるショーでその音を聴いたんです.初めて,いい音ってそこにあるアンプとかスピーカとかがスカーッと透明になって,みんな消えちゃうんだなって思った。すごいなってね。
河村 自分のなかでの基準ですね。神谷ぼくも電気が好きですから,村瀬さんがどんなSEPP*1(*1 SEPP:一つの入力に対して2個の増幅素子を1組として用いるプッシュプル・アンプのなかでもシングル・エンデッドプッシュプル方式のこと.)の回路作ったか知りませんが(笑),それくらいは分かるとかいってるわけですよ(笑)。タマはKT88がいいとか,6CA7はカチャカチャした音でイヤだとかね。趣味でアンプを作ってたことがあったんですよ。ところが,それ聴いた瞬間に,もう作るのやめたんです.
 そのとき,リファレンスみたいなものを持てたような気がしたんですね。すると,あれに比べてこれはこうよといえる.そこで,どこからものを見るかっていうのは決まったんだけども,でも絶対的な ものじゃない.
河村 なるほど.
神谷 昨日ね,白身の魚の味が分かるっていう達人がね,テレビに出てるのを見たんです.目隠しして食べて,何の魚か当てるというのをやってたわけ。そしたら、天ぷら屋のオヤジが出てて,もと魚屋だとかいって,分かりますよそんなもんとかいってるんだけど,1個間違えると,もうダメなの.
河村 味覚はけっこういいかげんかもしれませんね。
神谷 それでもリファレンスができちゃうとね,音はそこそこ分かる。周波数帯域でいうとね,ぼくがよく分かるのは7~8kHzのところと,3~4kHzあたりなんです。ここがないと障子紙みたいな音になるとかね,あそこがなくなるとこうなるとかね。昔のパイオニアみたいな音だとかね,パーシーフェイス・オーケストラって昔のパイオニアみたいな音だとかね(笑),パイオニアのせいじゃなくて、自分のなかで勝手に呼び名を決めてるだけだけどね(笑)。
河村 パーシーフェイスがパイオニアの音……いわれてみると,感じとしては分かります.

カミヤ V.S. ソニー
神谷 もうちょっとシビアな話をしましょうか.PCMがカッコいいというので,βのビデオで一番最初に録音したときの話をしますね.ぼく今はデジタルのマルチチャンネルテープレコーダは使ってないんです。このスタジオで使ってるのはアナログのマルチなんです.デジタルのマルチは若干過渡期だし,圧縮して個体化しといたほうがいいだろうしとか思ってね。テープの容量が大きいのはいいけどバックアップ用だなという気もして,今はハードディスクで録音してるんです*2(*2 今はハードディスクで録音してるんです:いわゆるポピュラー系の音楽のレコーディングにおいては,A/Dコンバートした音をハードディスクに“録音”し,ハードディスク上で編集した後,プリマスター作成時にテープにコピーするというスタイルが増えているようだ.)2~3年前からね。
 アナログのマルチが初めてきたときにもいろんなトラブルがあったけれども,いずれにしても電気的なトラブルしかなかった,で,あるときデジタルのPCMがいいという噂なので,ソニーの人に聞いたらデジタルは「入った音がそのまま出る」というわけ.
 うれしくてね。しかも,それにはPCMのエンコーダーさえ買えばいいと.プロ用の16bitのやつは高いけれども,アマチュア用の安いモデルもあって,これは14bitだけど折れ線*3(*3 折れ線:A/Dコンバートを行なう際に,直線量子化の直線の傾きをもとのアナログ信号のレベルによって変化させる技法。一定レベル以上の入力信号では量子化直線の傾きがゆるやかになるようにしていおけば,同じ量子化bit数であっても単純な直線量子化よりもダイナミックレンジを広くとれる。ただし量子化ノイズが増えるというデメリットもある。)でやってるから聴感上は16bitと変わらなくて,細かいところはそこだけ後処理できるといわれてADPCMとは違うのにそんなもんかなぁとか当時思いながら導入したんです.そしたら,見事に音が違っててなんかゴボゴボなわけですよ.
河村 原音と違ってたと.
神谷 そう.とんでもないってことになってソニーに電話したら,それは,まぁ家庭用だからというレベルじゃないでしょうと.ヤバかったら業務用買いますと.買いたくないけど買いますと.でね,3/4 インチのいわゆるUマティックのVCRも持ってたんで,今度はそれで録音したんですよ.
河村 それはどうでしたか.
神谷 それがまた音が違うんですね。それで分からないから,また足しげくソニーに電話して「すいません,音違うんですけど」っていったのね。そしたら「何の話でしょうか?」っていわれて,「どうして原音と違うということが分かるんですか」っていわれたのね。ぼくは「自分の曲を録音してるから分かるんです」っていったの。そしたら「プロのミュージシャンの方もお使いですけど,そんな文句きたことないですよ」といわれた.ぼくはシンセサイザを使ってるんで音色を先に作ってるんです。だから,たとえばラッパのド,ミ,ソ,シという和音をつくったら,かっこよく一番上のシが強く出るほうがハーモニーがバランスいいだろうと思って調整したら,実は「ミ」の音が突出してしまったという場合ね。これはつくってる本人はよく分かるのね。聴いてるほうはね,「シ」が出ようが「ミ」が出ようが1秒の1/100ぐらいの時間でいっちゃうから,そんなことは気づかないかもしれませんが,つくり手側はこだわりますよね。
河村 なるほど.
神谷 でも,その時は信用されなくてね。メーカーは,そんなことはないというんです。しまいには朝と夜では耳の鼓膜の働きが違うとかいう話になちゃったわけ(笑)。私は高血圧だからとかいって,何の話してんだか(笑)。当時,ちょっと有名な論争になっちゃったんです.
 結局ね,後でエラーコレクション*4(*4 エラーコレクション:デジタル信号伝送系における符号誤り訂正.アナログ系の場合は,原信号と再生信号はFidelity(忠実度)でしか比較できないが,デジタル系の場合は両方とも数値の羅列なので完全に一致しなければ誤りであると判定できる.)の問題だと分かって,ソニーの人はえらく恐縮してました.やっぱりそうでしたと.ただね,いまだにちょっと納得しかねるのは、その1年ぐらい後で,スティービー・ワンダーが同じことをいったっていうわけ*5(*5 スティービー・ワンダーが同じことをいった:S.W.氏は「一般にマスターテープの音とCDの音には違いがある」と述べていた。月刊アスキー'92年12月号のDigi-Ana Valley参照。).どうしてオレだと信用してもらえないんだ(笑)。ブツブツいってたわけ.
河村 その話は聞いたことがあります。

ASCII1993(06)e03DigAna写真03_W500.jpg エサをやらなくても生きてるやつ
神谷 そんなことがあって,ちょっとデジタルが嫌いになった。感覚的なたとえでいうと,デジタルの音って,きんとんを作るときに,ジャガイモとかを裏ごしするでしょ,ああいう感じだと思うのね。アナログの音ってね,蒸かしたジャガイモがまんま飛んでくるようなものだと思うのね。どうしてか分からないんだけど,裏ごししてるから耳にぶつからないんですね。
 ヤマハのデジタルシンセサイザを最初に弾いたときの印象は強烈だったんです.あの類いのものを弾きますとね,音が鼓膜にぶつからないんですね.スコーンといくわけですよ.これってスカスカだなあとか思って(笑)。でも悪くない。ガンガン弾いても疲れない.これって虚像みたいでね、ガツンとこないけど,あの音をオーケストラの中に入れるとね、目立つんですよ。得なやつだなと思った.
 つまり実体がないと.実はこいつは何も餌をやらなくても生きてるやつだなと(笑)。そういう楽器があって,アナログの音はもう芯ばっかりというね。そういう感覚があって.中心はアナログに置いておこうと思ったんです。ぼくの場合は依頼されるのはほとんどシンセサイザを使った音楽なんですけど,デジタルはおいしいところだけを使おうと.
河村 デジアナの使い分けですね.
神谷 そう,なるたけ使い道を分けてきたんですけども,そのうちエフェクターなんかもだんだんデジタル化してきますよね。ここでね,耳に関して新しいことが分かったんです.デジタルのリバーブ*6(*6 デジタルのリバーブ:アコースティク楽器の音には通常演奏する室内の反響残響が含まれている.電子楽器の場合は,その音楽信号に遅延回路で残響成分を付加する.デジタル楽器の場合は当然リバーブもデジタル回路のほうが整合性がよい。)を作ることになったんです。メーカ一のアドバイザーを頼まれたの.私はこういう音になればいいということをいうだけなんだけどね.
 メーカーのエンジニアは,入ったものがそのまま出るのがいいと思うだろうけども,ぼくは多少歪んでも音の力が落ちないほうがいんだよねっていったの。具体的にはね「パンッ」っていったら「パンッ」という音で出てきてほしいと.それだけだよと,で,設計されてきたのが,極端にいうと「パン」が「ポン」になってる。  そこで,「じゃ,お願いだからさ,パンツはボンッにしてくれる?」っていったら,エンジニアはすぐにしてくれるのね.で,量産試作機ができてきた.もう駆け引きみたいなもんで,「パンッ」が「ベェェェーン!」ぐらいになってるわけですよ。こうすれば神谷はきっと,やりすぎだから下げろっていうだろうというわけですよ。やりやがったなと思って,ぼくはほんのちょっと戻してくれるっていったの。そしたら,分かりましたと.やっぱりそういうよねと.
 できあがった量産モデルを聴いたら,パンがポンになってるわけですよ。こいつはダマされたと.あんまりじゃないかっていったの。そしたら,いわれたとおりしたよっておっしゃるわけで,じゃあ調べようという話になって16bitの測定器で調べたんですけども、何も出ないんですよ.試作機と量産機を比べると,音もデータも同じだった。でも、2つ比較して聴いちゃったらなおさら分かるわけですよ。最初の話と同じでね。でも数字では出ないと.
 結局ね,1ヵ月くらいたっていつもそうなんだけど,そのときは突き止められない),24bitの測定器で調べたら,ちょこっと出たっていうわけ。完全に波形パターンを調べたら,1カ所だけ原音では曲がってるのがまっすぐになっていた.もういちど試聴したら,やっぱり違ってた.ざまぁ見ろということになって,すごく耳がいいねっていわれたんだけど,普通の人でも分かると思う。
河村 今いろんなミュージシャンが使ってるデジタル・リバーブは,神谷さんの耳でチューニングされたものということになりますね。

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オーディオ“虎屋の羊羹”説
神谷 今の話は5年くらい前の話ですけど,聞こえちゃった場合の耳の精度はね、16bitなんかはるかに超えてて24bit以上じゃないかなって思ってるんですよ.そういう意味では,音っていうのは嗜好品 だと思うんですね。村瀬さんなんかのシステムはいい例だと思う。あれはほとんど虎屋の羊羹だと思う(笑).
河村 まぁそうですね(笑).
神谷 うん、黒砂糖でね。豊川稲荷の前まで買いに行く価値はあるわけ.三笠屋も好きですけど.一方,映像に関していえば,つまりビデオなどはまだどれだけ本物に近づけるかっていう段階だと思います。でも音は嗜好品の域に入ってきた。もとからそういうものだということもあるでしょうが,ステレオになってからはそこそこのことができるようになってしまった。
 たとえば,このスタジオで作ってる音は、ドキっとしなくてもいいから長い時間聴いていたいなぁというのがあって,普通にしたいのね。自分の音楽的なことというとカッコよすぎるけど,音楽家としてじゃなくて単にオーディオリスナーとしてね。
 昔シナトラとかのことを,ぼくの年代では舶来と呼んでましたから、舶来の音楽を聴いているときに,LP1枚全部聴いてられるスピーカというのが「アシダボックス-6PHF1」とかだった.糸釣りスピーカなんていうのが昔あって,反対側にもう1個スピーカをマイクみたいに付けてNFB*7(*7 NFB:NegativeFeedback(負帰還)もともとアンプの回路技術.)のバケモノみたいなのとか,いろいろやりました(笑)。
河村 何かで見た記憶があります。
神谷 でもやっぱりアシダボックスに戻ってきて,それだとシナトラの裏表が聴いてられるし,ほかのだとなんかスピーカが気になってね。そういうふうに考えると,今は少なくなってきたけど,ぼくはずっとコマーシャルの音楽つくってましたから,CMの曲というのは,たとえば15秒のCMでもアテションプリーズですから,ひっぱたいても視聴者の顔をそっちへ向けさせなきゃいけないわけですよね。なにも無理やり自分の音楽に顔を向けさせなくてもいいやと思うけど,でもうまくいけばね,芸術ってそうだと思うけど,こうやってお話しててもね、いい絵がモニタにフッと出るとね、そっち見ちゃうという暴力的なところってあると思うんですね。そういうこともあるんで,音に関してはごく自然にしたいと思うんですね。

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テープヒスはエフェクターである
神谷 デジタルって音違うなぁって思ってるときに,たまたま自分の曲をCDに焼いてみたんです。でもCDにもいろんな問題ありましてね,実をいうと今でも本当はCDは出したくないんです.
 それは単純な理由なんです.レコードになる前に,シンセサイザの場合はテープのヒスを計算すると,テープのヒスってノイズでしょうけど,あれは残響に聞こえますからね、ものすごくいいリバーブに聞こえるんです.ない音まであるように耳が補完してしまう。
 で,レコードをカッティングすると,あれ12kHzぐらいだと思うけど、あのいいあたりがスコっと落ちるから困るんですよね。だからあの辺の帯域をバーッと上げて,カッティングの段階で落ちても勝てるくらいにしてたんですよね。全部デジタルにしても,最後にヒスとか入れるといいんですよね。
 最終的なメディアにいく前に,そこまではなるたけフラットにしたいと.そういうもので最後に味付けしてしまいたい。エフェクターみたいなもんですよ,シンセから見たらね。それをデジタルで全部やってしまうと,ないものはないから,今まで300人いたオーケストラはやっぱり3人だったかってバレるのはイヤだなとか思うわけ.
河村 そうですか。それは,けっこうすごい話ですね。そういうことというか,そういうテクニックがあるとは知りませんでした.
神谷 そうはいっても、自分でCD-ROMをつくるようになったりして,興味がでてきて,まぁ別の楽しみかただと思ってCDをつくってみたんですが,音が非常にこもってた.
 ぼくはあんまり情報を持ってないので,もしかすると間違ってるかもしれないんですけど,CDの音が悪いのは,あのプラスティックが安物だからだと思ってるんです。もっと透明度の高い,いい素材を使わなければダメだと思う.
河村 普通のCDはディスク基板にポリカーボネイトを使ってますが、最近は三井石油化学工業のAPO*8(*8 APO:アモルファス・ポリオレフィン.光学特性,比重,表面硬度,吸水率においてポリカーボネイトより格段に優れているという.),また日本合成ゴムの開発したARTONという新素材を使ったCDをポリドールが「Super Sound Series」と題してグラモフォンとロンドンの両レーベルから限定プレス盤として出すとかいう動きがありますね(コラム参照)。いずれもポリカーボネイトより光学特性が優れていて,音質もノーマル盤より優れているそうです.APOは,スティービー・ワンダーも絶賛したそうです.

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COLUMN
 ドイツ・グラモフォンのCD「カヴァレリア・ルスティカーナ」(G・シノーポリ指揮/フィルハーモニア管弦楽団,A・バルツァ,プラシド・ドミンゴほか).左が新素材ARTONを使ったSuperSoundSeries盤(POCG-9319),右がノーマル盤(POCG-1046).ARTONは光の透過率が高く,変形しにくく、硬度が高くて傷がつきにくいという.サウンドは,普通のポリカーボネイト盤に比べて周波数レンジが広く,音場の奥行きが増し、音像定位も安定しているそうだ.
 演奏時間が1時間と少々とこじんまりしていて美しい旋律に満ちたこのマスカーニのオペラは好きな曲のひとつ。結論めいたことをいうつもりはないが,聴き比べてみるとARTON盤は鐘の音などがオケに埋もれずに響き,情報量が増えているように思う.

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神谷 その話,すごく興味あるな.ぼくも,おカネ持ちだっら温度や湿気に強い透明度の高いディスク素材をつくりますね。ぼく化学科だから*9(*9 ぼく化学科だから:神谷氏は青山学院大学工学部化学科のご出身である.),ポリカーボネイトってきくと,つい乾水性かなぁとか思ってしまうんです.
CDのエッジを斜めにカットすると音がよくなる
神谷 CDのマスターは,レーザーでブチブチ穴を開けて,後で現像するとピットが残るというやり方だから,その段階では光学的な問題じゃあないわけですよね。あるとき,ふとCDプレーヤで再生するときにレーザーが乱反射してるんじゃないかと思ってね,CDプレーヤを黒く塗ってみたわけです。レーザー光が壁に当たって,それがピックアップに戻ってきたら攪乱要因になるなと考えたわけ.
 見かけ上黒ければレーザーは吸収されるだろうと思ったのね,で,CDプレーヤの回りを全部塗ったんだけど、そしたら音が力強くなったんですね。これはパテントだって騒いでたら,友達が何かの雑誌の広告で,そういう塗料を売ってるというのが載ってるよっていわれてね、「おまえ,ちっとも早くないよ」っていわれた(笑)。別に早くなくてもいんだけど…….
河村 それはCDプレーヤのボディを黒く塗るんですか.
神谷 そう.音は変わるよ.同じことを考える人はいるんだね。そこでまた別のことを考えた。反射したレーザーが戻ってこないようにすればいいなら,CDのディスクのエッジに角度がついてればいいわけです。いろいろ調べたら,CDの外側の1mmくらいは余裕がある.で,削った.
河村 どうやって削ったんですか?
神谷 これも友達に頼んで機械でやってもらたんですけど、実物を見せますよ(といって,神谷氏,後ろのキャビネットからCDを探し出してくる)。ここが斜めにカットされてるの.
河村 こうすると,音がどういうふうに変わりますか。
神谷 あのね、音が厚くなります。ドラムとかがドシっとなる.ほかにもいろいろやってみたの。この内側のエッジを斜めにカットしてみたりね。量産しようかなんて話もあったんだけど,成形機なんてこんな形には対応してないし(笑)。
 ところが,すごくがっかりしたのはね,同じことをCD-ROMでやってみたんですよ。このスタジオでつくったCD-ROMなんですけど,ROMデータを読み込ませて,エッジを45度にカットしたディスクがリードエラーが少ないとすれば,アクセスが速いはずだという話になったのね.やってみたら,変わらないんだよね(笑)。
河村 でしょうね。それはオーディオメーカーの人たちに話を聞いても,エラーコレクションの問題に関しては,測定器で計測すると補間に入るようなエラーはまったく起こっていない,にもかかわらずディスクの駆動系を変えると音が変わるそうです。アナログ系を内蔵しないCDトランスポートでも.
神谷 ああ、そう.いま一番困ってるのは,これは削ったほうだなとぼくは分かるんだけど(自分の曲だしね),でもそんなレベルはまったく意味のないことで,やっぱり膜が1枚はがれたぐらい変わらなきゃつまんないじゃない?で,このエッジ45度カットはもう個人レベルの趣味になっちゃたんだけど,でも今の話のように完全にCIRC*10(*10 CIRCCDに採用されている符号誤り訂正方式Cross Interleave Reed-Solomon Codeの略。)で元の音に訂正されるとなると,それが耳では確実に違うということは、もうちょっと別の精度レベルの問題とか,エラーコレクションすること自体が間違いなのかなぁとか思えるんですね.
河村 その問題に関しては一部のオーディオメーカーは意識し始めているようです。CDプレーヤを黒く塗るという話に戻りますが,CDプレーヤのメーカーによっては,CDのディスク面を圧着するクランパーを鮮やかなグリーンに塗ったり,ディスクドライブ内にグリーンのランプを付けているものもあると聞いています。
神谷 じゃあ,ぼくがいってることもデタラメでもなさそうだね.CDのレーベルは必ず緑にするということをレッドブックの規格で決めておけばいいのかもね。最近はね,自分のCDのレーベルのデザインを全面に色をベタで塗ってくださいと頼んでるんです。昔は虹色に光ってるのを生かしてくださいなんていってたんだけどね。
河村 それは神谷さんのご要望で…….
神谷 そう.全部ブラックにしてくれといおうかと思ったけど,そこまでは自信ないから.

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速いハードディスクは音もいい
神谷 CDを聴く人間の耳がリンギングしてるんじゃないかって思うときがあるんです.昔ね,CDの音がイヤだってことをいいたいがためにね,「CDって2万Hzまでフラットなんだって?じゃあ、2万100Hzって出ないんだぁ。アナログって出ちゃうんだよな」とか(笑),イヤミな皮肉をいったりしてたんですけど.スパっと20kHzで切ると耳がヘンになるんじゃないかという気がするんですね.ところが,昔のNECのCDプレーヤってね、そういうヘンな感じが絶対しなかったのね。だから好きだったの.
河村 ぼくが最初に買ったCDプレーヤもNECでした。6万円クラスでいろいろ試聴して,いちばん音が良かったのがNECだったんです。
神谷 NECのが一番よくて,ほかのメーカーのだと,なんかペコペコした音に聴こえた。聞いてみたら,NECのだけ最初のころアナログ・フィルターが入ってたんだってね。
河村 いえ、逆にデジタル・フィルターを使い始めたのは,日本のメーカーではNECが一番早いほうだったと思いますが.
神谷 そうなの?じゃ,ぜんんぜん話が後へつながらなくなちゃったな(笑).ほかのメーカーはアナログ・フィルターだったの?
河村 CD初期においては,そうだったと思います.
神谷 じゃあ、上のほうが漏れてたんだ*11(*11 上のほうが漏れてたんだ:十分にシャープな遮断特性を持たないアナログ・フィルターの場合,再生時にサンプリング周波数の2倍の帯域を中心とするPAM波(パルス振幅変調波)下側波帯がまぎれ込む可能性がある.),アナログ・フィルターだったら40dB以上落ちないもんね。そうか,だとするとアヤシいな。ぼく,聴いてる人の耳がリンギングしちゃっててギンギンしてるのかと思ってたの.あてにならないな.あてにならないのはMacintoshなどで使ってるハードディスクも同じで,メーカーが変わると音が違ってきちゃうんですよ。
河村 本当ですか!
神谷 変わる.でも,今のところ原因はエラーのせいにするしかないから,音のいいほうのハードディスクと悪いハードディスクをフォーマットからやり直してMac用のソフトSpeedMeterで計測してみた.きっと音のいいほうはエラーが少ないからアクセススピードが速いだろうって思ってね。ところが,一緒だった.
 また結論の出ない話になるかもしれないけど,ぼくは一般にアクセスの速い新しいハードディスクのほうが音がいいと思うんです。10msくらいのを使ってるんですがね。もちろんライトワンスのCDに書き込む際に速いやつでないとエラーを起こしちゃうとか、そういう問題もありますけど,どうもそこが引っかかる…….
河村 それは,デジタルでハードディスクにダイレクトに録音したものをプレイバックするときに,アクセスタイムの速いハードディスクのほうが音がいいと…….
神 谷そうです.ただし,いろんなものを試したわけではなくて,たとえば富士通製ともう1個某社のがあった場合,より新しくて速い富士通のほうが音がよかったとか、そういうことですけどね。今のデジタルレコーディングの方法は,単純に16bitのA/Dコンバータがあって,デジタルデータをそのままハードディスクに送ってるわけですね。デジタルオーディオデータの送受信をするときのインターフェイスは,AES/EBUというアメリカとヨーロッパの音響放送協会が決めた規格に則ったやつ,あるいはソニー/フィリップスのSP/DIFのケーブルのフォーマットで出入力する。あとはインターフェイスカードに高速なDSPが付いてて,イコライズなどがハードウェアでできるということです.
 それ以外のことに関しては,入ったデータを未処理であれば,そのまま流してハードディスクに入れてます。
 今のところそういうものまでわれわれがハードをつくる技術を持っていませんから,われわれが自分でいじれるのはトランジスタ止まりですからね(笑)みんなプラックボックスなので,すげ替えがきくのはハードディスクだけなんですね。で,ハードディスクを変えると音が変わると.これもDSPとの相性とか,いろいろな問題要素はあると思うんですが,CDが登場して10年たって,今ごろこんなことをいってるぐらいだから,はっきりしたことはあと10年くらいしないと分からないよね.

 もと電気工作少年で、年季の入ったコンピュータ・ユーザーでもある神谷氏は,現在の音楽家という仕事に関して「人間,ほんとうにどうなるか分からないね」という.しかし,そんな氏の口からは氏ならではの「電気と音楽」の興味深い話,フシギな話がとめどなく流れ出る.
 気がつくと,われわれは2時間以上もお話を聞いていた。最後にスタジオの2階に置かれているアナログシンセサイザ('70年代初頭に,わざわざアメリカまで買いに行ったという)の写真などを撮らせていただいて取材を終えた.


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新機種PCX-500VF,PRONOTE V,XANAX他(月刊ASCII 1993年6月号4) [月刊アスキー廃棄(スクラップ)]

「NEW MODEL IMPRESSION」をスクラップする。

SONYのPCX-500V
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 価格的には,VF3(120MbytesHDD搭載)に別売りのキーボードとDOS/Vを加えると、同じCPUのIBM PS/V Model2410-NVB(170MbytesHDD搭載,DOS/V添付モデル)より3万円弱高くなるが,画面表示能力の差(PS/VはET4000)を考慮すれば,十分許容できる価格差である.
 さらにいえば,PCX-500のポイントとして,生産がすべて国内のSONY関連工場で行なわれている事実を指摘できる.純SONY製,純国産マシンであるため,修理などのサポートも全国津々浦々にあるSONYサービスステーションで受け付けてくれる.Windows3.1日本語版のドライバが標準添付されていることと合わせて,特に地方在住のユーザーにとってはなによりも心強いところだ.
(野島)



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松下電器のPanacom PRONOTE V
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 バッテリパックはニッケル水素電池を採用している.現在一般的なニッケルーカドミウム電池よりも体積あたりの電力が高く,カドミウムを利用しないことから低公害なのが特徴だ。
 バッテリパックでの使用時間は白黒液晶モデルで約3時間,カラー液晶モデルで約2時間で(いずれもカタログ値),充電は電源OFF時で2時間,使用しながらでは5時間必要となる.
 白黒液晶モデルを実際にフル充電の状態から電源を入れたままにしておくと,約2時間30分でシャットダウンとなった.スタンバイモードやサスペンド,各種のパワーセーブ機能をうまく使うのがポイントとなるだろう.
 価格は,白黒液晶モデルで44万8000円であり,25MHzの386SLCを搭載するPC-6700(白黒液晶:メモリ2Mbytes)が63万円であることを考えれば低価格。ただし、IBMの「ThinkPad 550BJ」はIBM-486SLC(25MHz)を採用して小型プリンタまで搭載して45万4000円に収まっており,COMPAQの「CONTURA 3/25」は386SX(25MHz)を採用して標準で4Mbytesメモリを搭載するにもかかわらず39万8000円となっている.
 TFTカラー液晶モデルは68万3000円と,COMPAQの「LTE Lite/25c」(386SL:25MHz)よりも15万5000円安価だ。ただし,同価格の製品にIBMのPS/55note C23V(386SX25MHz)があり,こちらは120MbytesのHDDとPCMCIAスロットが付属する.
 PRONOTEは,白黒液晶モデルでは割高感は残るものの,カラー液晶を搭載した機種では比較的リーズナブルな価格となっている。海外製DOS/Vマシンの国内市場参入があいつぐなか,国内メーカーの戦略製品が注目される.
(行正)



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 ニッカド電池が広く使われているこの時点で「ニッケル水素電池を採用している」がポイント高いか。


XANAX NOTE 486DX/2-668W
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 こんなCPUを載せると,大きく重くなりそうな予感がするが,XANAX NOTEを見ると拍子抜けする.ちょっと奥行きがあるが,大きさも普通のノートパソコンだし,重量も2.9kgしかない.
 キーボードのストロークはDynaBook並みに深く,長時間のタイピングでも指に負担がかからないように思う.
 ただ,これだけのCPUを載せたため,バッテリ駆動は1.5時間となっている。システムスタンバイ時間,HDDの自動停止時間を設定できるので,携帯時にはこれらを短めにしておくなどして対応する必要がある.
 XANAX NOTEは120MbytesHDDみで46万8000円と、価格も手頃である.机の上でも携帯時にも最高性能を求める方に最適のマシンのひとつといえる。
(野口)



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Bravo,Premmia,PowerExec
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 Bravoシリーズは,米国ではすでに昨年末から販売されていた同社のエントリーモデル。最大の特徴はやはり,486DX-33MHzのCPUを搭載しながら14万9000円という低価格を実現したことだ.大手メーカーとしては従来最も低価格だったデルコンピュータの433/Lは19万2000円なので4万3000円も安い。メインメモリが2Mbytes少ないことを差し引いてもおつりが来るだろう。旧ラインナップ「PCvision 4/33」と比べれば実に半値以下となり,しかも同社製品は通常の流通ルートを通して販売されるため,店頭ではもっと安くなることも期待できる.
 ちなみにBravo 4/66dの価格は23万2000円と,これはDELL 466/Lと同じである.4/33ほどの価格面でのインパクトはないが,それでも実売価格でいえばこれも最も低価格の66MHzマシンになりそうだ。4/33はオプションの「486DX2/66MHzアップグレード」を利用すれば,あとから4/66d相当に変身させることもできるが,これは19万9000円と,アップグレードにしてはちょっと高価だ(写真1).
 PowerExecは3kgのボディにデスクトップ機なみの機能が詰め込まれた,名前のとおりエグゼクティブ向けの頼もしいマシンである。
(野口)



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Proside MPC
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 ProsideMPCは,66MHzプラットフォームに8MbytesRAM,210MbytesHDD,Creative Lab社のマルチメディアキットを加えて,わずか45万1800円である.PC-9821AsのFDDモデルとほぼ同じ値段でずっと高速で大量の付加機能付きのマシンが手に入ることになる.DOS/Vマシンの面白さを買ったその日から楽しめビジネス用にもトップクラスの性能を保証するProsideMPCは,よくばりなあなたにもお勧めできる楽しいマシンだ。
(野口)



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(株)オーテックの韋駄天486DX2
価格 17万6000円 (486DX2-66MHz版)
対応機種 PC-9801RA,DA,PC-H98model60,model70
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RAやDAでは「倍2速」になる
 韋駄天486DX2-66MHzは,名前のとおり66MHzの486DX2が小ボード上に搭載されている(写真1).ボード上の回路は386から486へとピン配置を変換しているだけでなく,本体のクロック周波数を2倍にアップする機能を持っている.RAやDAでは,この倍速化回路を利用した「倍2速」(4倍速)モードが利用できる.ジャンパスイッチで「ノーマルクロックモード」か「倍速クロックモード」かを指定するのだが,ノーマルクロックモードの場合は通常の486DX2と同様に,内部クロックだけが2倍の40MHzになる.一方,倍速クロックモードでは,ボード上でまず本体クロックが2倍になり,CPUの内部でさらに2倍になるため,結果として4倍速が実現できるわけだ。
 これにより,RAやDAでは最高64MHz(4倍速モード時は,本体クロックの設定を16MHzにしなければならない)まで,本体クロック25MHzのPC-H98model60や33MHzのmodel70では,それぞれ倍速の50MHz,66MHzまで高速化が可能である.ただし,CPU以外の周辺回路は従来の本体クロックで動作しているわけなので,総合的パフォーマンスでは,PC-9821Apのような本来の486DX2搭載マシンとして設計された機種には及ばない.具体的な装着作業としては,CPUソケットのレバーを上げて386DXを外したあと,RAやDAではPGAソケットを間に入れて韋駄天のボードを差し込む.H98ではCPUボード上に直接ボードを差し込むだけだ。
 ボード装着後,486の内部キャッシュを有効にするためのドライバを設定するが,その方法としては,CONFIG.SYSで組み込むデバイスドライバ形式,コマンドラインからON/OFFできるプログラム形式,付属のディスクから起動してキャッシュをONにしたのち,ほかのディスク(ゲームなど,DOS以外のOSを含む)に入れ替えができるIPL形式の3通りから選択できる.
 また,実際のマシン使用時における指標としてExcelマクロでもテストしてみたが、こちらはノーマル,倍速の差がまったく現われなかった。もちろん386搭載時よりは2.5倍以上高速になっており,体感的には効果を十分に感じることができる.
 同種の4倍速アクセラレータとしては,すでに京都マイクロコンピュータ(株)や(株)ケーエスピーの製品があるが,これらとほとんど同じスピードが,約8万円安く実現できるのも魅力だ。手っ取り早く現有マシンのパワーアップを図りたいユーザーにとっては,購入を検討する価値があるだろう.
(野島)




Adobe Photoshop Version 2.5
価格 13万5000円
対応機種 Macintosh(II以上)
Windows 3.0/3.1(386以上)
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 今回のバージョンアップは、表面的には細かい機能追加が中心だが,全体的には複雑な機能体系がすっきりしたことで,操作感は飛躍的に向上している.同時に,長らく待たれていたWindows 3.0/3.1対応版PSもリリースされるなど今後の展開が楽しみなソフトである.
(篠田)



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Mac版のPhotoshopにはお世話になった。Windowsでも使ったがWindows2000からだっただろうか?記憶があやふやだ。

(株)エフ・アイ・ティ Virtual-DOS
価格 3万3000円
対応機種 PC-9801シリーズ
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 ワープロを使いながら,ちょっとBBSにアクセスして情報を得たいとかスプレッドシート上のデータを参照したいというときには,一度今使っているアプリケーションを終了させなくてはならない。これは,MS-DOSを使っていて最も不満に感じる点のひとつだろう.
 DOS5なら,付属のDOS SHELLを使って「タスクスワップ」を行なうことができるが,スワップ時にいちいち情報をディスクに書きにいくため,切り替えるのに時間がかかる.RAMディスクを使えば多少改善されるが,それでもちょっと間があるしメモリももったいない.Windows 3.0をエンハンスドモードで使ってタスクスワッパ代わりに使う手もあるが,Windowsを使うには相当なハードディスク容量も要るし,EMSエミュレーションの速度が大きく低下するという問題もある。
 Virtual-DOSは,これ単体でMS-DOSをマルチタスク化するシステムである.

EMSもXMSも提供する
 Virtual-DOS自体は新種のOSではなくひとつのプログラムで,最初は普通にMS-DOSを起動してからVirtual-DOSを実行する.ただ,Virtual-DOSは仮想86モードを利用して動作するので,最初にDOSを起動する際にはメモリマネージャのたぐいはいっさい組み込んではならない.
 Virtual-DOSを起動すると,メッセージを表示したうえでまたプロンプトに戻ってしまうが,実はこれはすでにVirtual-DOS上のひとつのタスクになっている(図1)。この状態では,(1)普通にアプリケーションを起動,(2)別タスクを起動,(3)起動したタスクを切り替える,という作業が可能になる。この際,タスクごとに利用可能なEMS,XMS,HMAメモリのサイズを指定できる。また,全タスク共通に使えるディスクキャッシュ用のメモリも指定できる.
 ワープロと表計算と通信ソフトを同時に使うのなら,まずはVirtual-DOSを起動し,続いてLOADというコマンドを使って、2つのタスク分のメモリを確保する.これで,3つのタスクが実行可能になる(画面1).タスク1つにつき1Mbytesのメモリが必要で,プログラムがEMSなどを使うのなら,さらにその分のメモリの確保が必要だ。メモリ3.6Mbytesのシステムの場合,最初の640KbytesはVirtualの動作に使われるので,各タスクが使えるのは計3Mbytes.EMSなどいっさいなしの状態で3タスク,FEPをEMSに逃がすなどするなら2タスクしか起動できない。本格的に使うには,メインメモリは5.6Mbytesくらいはほしいところだ。その次に,各タスク上で順番にプログラムを実行していく.FEPが必要ならADDDRVなどを使って登録してからアプリ本体を起動する.ワープロが起動できたら,VFキーまたはCTRL-ESCキーでタスクを切り替えていき,表計算や通信ソフトなどを順次起動していく.
 すべてをオンメモリで行なっているため,タスクの切り替えは非常に高速だ.VFキーを押した瞬間に切り替わってくれる.ワープロに印字させながら表計算をするとか,ダウンロードさせながら企画書を書く,なんてことも可能だ。EMSとXMS,ディスクキャッシュがあるから,ほとんどのアプリケーションが正常に動作する(もちろん,同じファイルを複数のタスクからアクセスしたりすれば危険だが).EMSの速度も,Windows 3.0のDOSプロンプト上の4倍ほど高速(MELWAREの半分くらい)で,遅さを意識しないですむ.ただ,VCPIやDPMIには対応していないので,一太郎Ver.5は動作しない.
 Virtual-DOSは,多少のプロテクトメモリさえあればDOS環境をぐっと使いやすくしてくれる。3万3000円と,Windowsより高い価格はちょっと気になるが,多数のアプリを使い分けているユーザーに便利な存在といえる。
(野口)



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 この製品は売れなかったに違いない。これを使うならWindows 3.1のDOS窓を使えばいい。まあ、DOS窓はよく落ちたけど。
 「3万3000円と,Windowsより高い価格はちょっと気になる」ちょっとではない。致命的な価格だ。

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