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VR、MMO、その他、業界(月刊ASCII 1991年10月号3) [月刊アスキー廃棄(スクラップ)]

ASCII EXPRESSをスクラップする。

SICGRAPH'91の記事からVR関連写真をスクラップする。
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VR用のヘルメット。ごついけど今でもこのサイズはありそう。

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なぜこんな中途半端なものを作ろうと思ったのか。

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ソニーのNews用ディスプレイはそんなに良かったのか。トリニトロンだったか。

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NASAのシステム。ステレオ画面で立体的に見えるということか。

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仮想サーフィン。なんでも仮想化すればいいというものでもない。

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当時3次元スキャナもあった。

アスキー,パソコン通信による多人数ゲームを開始
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もうMMO(Massively Multiplayer Online)があった。

日本コンピュータ囲碁大会開催
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コンピュータによる囲碁対戦は30年以上も前から行われていた。

ハードディスクのインストールサービス
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アプリ3~4本で1万5000円からだった。確かに私も職場の人のパソコンにインストールしてやった。一般ユーザにとって当時どれだけパソコンが難しいものだったかが分かる。

Adobe社,Apple社とフォント技術で協力
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Borland社がdBASEの存続についてコメント
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当時dBASEも終わりだなと感じた。

COMPAQ社が日本法人を設立
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この後DOS/Vで日本市場に食い込んだ。

「米国ハイテク産業の動向」をスクラップする。

いつ終わるのかコンピュータ不況
 日本の証券業界の話も米国に入ってきているが,なにかちょっとピントが外れているような気がする.非難の矛先が,そもそも不必要な規制はするがちゃんとした法律を作らないし運用しない政府に向かわずに,大手証券や大口顧客に拡散してきている点だ。これに乗じた米国の対応も,お家の事情を棚にあげ,それ見たことかと日本市場の問題にすり替える.最近ではOh-No-Wayさん(こちらの新聞にこう発音するとでていた)による天文学的不正融資事件,日本市場の閉鎖性をどうのこうのといちゃもんをつけていた米国政府も,これにはさすがに言葉もでないらしい。
 米国はというと,いつもどおりの不況の話。ここ数年間,不況不況となんとなく騒がれてきたが,いったいこれがもう終わったのかどうかがよく分からない.大手企業を中心にした1社あたり1000人単位の人員整理も一段落した感じがするし,不況を脱出したかのようなインデクスも毎日のように発表されている。確かにインデクスだけを見ているとそうした感じはないわけではない。ただし先週悪かった指標が今週は多少改善されただけの話も多く、逆に先週よかった指標が今週は悪化していたりして,一概にインデクスだけで判断できないところが苦しい。結局のところ,だらだらと不況が続いているという状態なのだ。
 また今回のそれは,そもそも始まりからしてはっきりしない(不況とはそんなものなのかもしれないが)。2年前の政府発表では「不況などない」ということだったが,これが1年前には「産業の一部には確かに不況が存在する」というニュアンスに変わった.もちろんコンピュータ産業もそのひとつというわけだ。さらに今回の不況には地域的な色彩も強いと言われている。つまりコンピュータ産業では西海岸と東海岸を中心に不況にみまわれているというのだ(ちょっとまてよ.アメリカの西と東が不況ならコンピュータ産業のほぼ全体ではないか?).
 しかし,こうした不況感の浸透は,企業を経営する役員たちにとって全面的に悪いというわけではない.株主に対しては「不況ですから」と業績の悪化をなんとか言い訳できるし、この際不況にかこつけて一挙に人員整理をやってしまったところも多かったに違いない。自らの責任で業績が悪化したり,マネージメントの不手際で余剰人員を抱えてしまったところにとっては,今回の不況(あるいは不況感の浸透)は絶好の言い訳材料になっているはずだ.ひところ,ベイエリアの企業の言い訳は「地震のために」というのがあったが,それが「不況のために」となっただけかもしれない.
 それでもメインフレームをやっている会社はかなり深刻。IBMを筆頭に軒並み減益,赤字計上という事態になっている。ところがこれにしても「不況」と一言で片づけられる問題ではないだろう.メインフレームの売り上げが伸び悩んできたのは,何も昨日今日始まった話ではない.
 ここ10年間「メインフレームは伸びない」は常に支配的な意見であり続けた。メインフレームの需要がワークステーションなどの,より小型で安い機種に食われているのは明白で,今日の事態は十分に予測できたはずである。現に,Sun Microsystems社は会社始まって以来の売り上げと純益を計上したし,HPにしてもこの四半期の利益は前期に比べて8%増、儲かっているところはちゃんと儲けているのだ。ソフトウェア業界にしても全般的には悪くない.Microsoft社はDOS5,Win3の出荷も依然順調。SIBの調べによると,ソフトウェア業界63社の上半期の雇用の伸び率は11.6%。年率に換算すると23.2%。そんなに悪い数字ではない。
 最近,Borland社によるAshton-Tateの吸収,Novell社のDRI吸収など大型合併があいついだが,これらはもともと不況とはなんら関係がない.経営に行きづまった会社が他の優良会社に買われただけのことで,むしろコンピュータ業界の再編成という面からとらえられるべき話だ。結局,不況不況と騒いでいるところほど,案外別なところに問題を抱えているのかもしれない。
 今度はSymantec社がZortech社を吸収すると発表した.Zortech社は,DOS,Mac,UNIXプラットフォーム向けにC++を開発販売する会社。昨年度の売り上げは約500万ドル程度とこぶりな会社だが,C++は最近はやりのオブジェクト指向プログラミングの中核をなしており、今後絶対的に必要な技術のひとつといえるもの.
 Symantec社は,これまでにMac用にThinkPASCAL,ThinkCなどいわゆる開発言語を中心に急成長を遂げてきたが,Nortonの吸収合併でDOSへの進出をはたした。そして今後は,将来的にC++が不可欠であるとの判断で今回の吸収に踏み切ったようだ。現時点でのPC版C++の分野はBorland社が圧倒的にリードしている.この吸収でSymantec社は,ZortecC++でBorlandに対抗していくつもりだ。ところでこのSymantec社は,Borland社によるAshton-Tate吸収のときにも,Ashton-Tateを買い取るのではないかとの噂が出るほど,他社吸収に熱心な会社。まだまだ現金はうなっていると見られており,今後第2,第3の吸収を計画していると言われている.

ソフトメーカーも第3世代へ
 先にNovellとの合併話が失敗したLotus社も,cc:Mail社吸収後,引き続き食欲は旺盛。吸収する相手としてはネットワーク関連,データベース関連などがターゲットと言われている(実はAshton-TateはこのLotus社にも品定めを受けたという噂もあった).
 Lotus社が現在物色中との噂のある会社としてはQuickenのIntuit社,ネットワークのBanyan社などがある.一方,Lotus社との合併に失敗したNovell社は,DRIを吸収したばかりだが,ここもこれだけで終わってしまうことはないはずだ.ひょっとするとBorlandと合併するかもしれないという噂もある。ソフトウェアの大御所Microsoft社は,他社との対等合併という線はないが,他社吸収は大いにあり得るところ。データベース関連,ネットワーク関連は同社が特に欲しがっている分野だ。
 このようにソフト業界の吸収合併劇は,今後もますます加速されていくものと思われる.よくもまあこんなに吸収合併が盛んだと思われるかもしれないが,これにはちゃんと理由があって,しかもある方向性を持った動きなのだ。
 理由の第1点目は,アプリケーションの高速化への対応,あるいは開発の効率化がある。今やパーソナルコンピュータのソフトウェア産業も第3世代に突入し,今後ますます高度なアプリケーションを開発していかないと戦争に生き残れないという事実だ。ご存じのとおり,パーソナルコンピュータの第1期には,ある程度プログラムができれば,すぐにでも製品化(とはいってもまともなマニュアルもなくフロッピーだけを渡すといった程度のものだったが)が可能であった。この時期には、開発に1名,マーケティングに1名といった,いわゆるガレージカンパニーがどんどんできたのだが,これが第2期になって,ビジネスなどの分野への普及とともに製品もより高度になってきた(高度なものでないと売れなくなってきた)。現在見られるソフトウェア企業のほとんどは,この第2期で急成長した会社だ。そして現在はこの第2期の最後にあたるといってよい。今後は今まで以上に,ソフトウェア自身の高機能化,マルチプラットフォームへの対応,ネットワークへの対応,マルチメディア対応などが期待されており,どうしても企業自身が大規模化していく必要があるのだ。
 次の点は,市場の拡大に伴う企業の拡大傾向があげられる。市場がより大規模になってきているのに,企業が小規模のままだと有効なマーケティング活動ができにくくなるのだ。製品のプロモーション,宣伝,流通,販売,サポート体制など,スケールメリットを発揮できるところでないと有効な販売が難しくなってきている点がそれだ。
 最後に企業の体質強化という点も見逃せない。1社1製品といったこれまでの虚弱体質を,複数の製品をラインに持つことで企業の体質を強化しなければならなくなってきている。1社で複数の分野の製品を持つとなると当然会社の規模は大きくなる必要があり,そのために最も手っとり早い方法が企業の吸収合併なのだ。
 米国のソフトウェア企業は,日本に比べて一般に小規模なところが多い。これは日本のほうが構造的に進んでいるわけでは全然なくて,単に流通その他の制約が少なく,小規模でも会社をスタートアップできる(できた)からだ。ただこうした業界の構造も,すでに述べたような理由で徐々になくなりつつある。ちょっと前まではガレージカンパニーもよく見かけたものだが、現在はスタートアップ時から,かなりの資金を調達してかからないとうまくいかなくなってきている。業界再編の動きはアプリケーションの高度化という恩恵を与えてくれるが,逆に昔ながらのアメリカンドリームが少なくなってきているといえるのかもしれない。

Mac新製品の全貌
 Apple社がこの秋に新製品を発表するという噂は,以前から少しずつリークされていたが,このほどその全貌がほぼ明らかにされた.正式な発表は、10月21日からラスベガスで行なわれるComdex/Fall'91.今までApple社はComdexなどの肥大化したショウでの新製品発表は控えていたが,今回はApple社がClassicの発表以来,より一般への普及に力を入れているのを背景に,異例の発表となる見込みだ。
 今回発表される予定の機種は6機種Classicの上位機種となるMacClassicII,タワータイプのMacQuadra700と900,ノートタイプは3モデルでMacPowerBook100/140/170.
 ClassicIIはビルトインモニタータイプ,16MHzの030を搭載。2MbytesRAM,40MbytesHDDモデルで1900ドル。SE/30は同時に生産中止の可能性大.
 Quadra700はIIciを縦においた格好で25MHz040を搭載,4MbytesRAM,80MbytesHDDモデルで6500ドル。現行のIIfxより40から50%程度高速で,しかも価格的にはIIfxよりも1500ドル程度安くなるのでIIfxは生産中止,あるいは大幅な値下げが行なわれる予定.Quadra900は最強のモデルで25MHzの040,4MbytesRAM,160MbytesHDD搭載で8700ドル.Quadra両モデルはいずれもイーサネット搭載,および旧タイプに比べて約2倍の速度を持つと言われている新SCSIコントローラが搭載されている.
 PowerBookは,話題の中心になるであろうノートタイプ,低価格のモデル100は16MHz68000を搭載。CPUはMacPortableと同じローパワーバージョン,2MbytesRAM,20MbytesHDDで2300ドルで,FDDは外付けオプションで200ドル。140は16MHzの030を搭載.2MbytesRAM,20MbytesHDDで2900ドル。ノートブック中最高のモデルである170は,25MHzの030+68882,4MbytesRAM,40MbytesHDD搭載で4600ドル。140および170はFDDが標準で付く。全モデルともバッテリでの動作時間は2時間以上 本号が発売されて1カ月後に発表されるわけで,正式な仕様,価格は改めて報告されると思うが,少なくともComdex/Fallの中心的な話題になることは必至だろう.
(ザイロンコーポレーション代表 脇山弘敏)

 この時代米国の不況とかは記憶にない。日本のバブル崩壊が強烈に残っている。

「Miscellaneous :bihind the news」をスクラップする。

IBM PCから10年
 1991年8月12日,IBM PCは満10歳の誕生日を迎えた。発表直前には「IBMがパソコン市場に正統派として殴り込みをかける」という大きな報道が行なわれた.スペックを見た人たちは,そのころ市場を支配していたApple,Tandy,Commodore,Atariなどのマシンと比べて「特に目新しいものはない」などとと陰口をたたいたものだ.
 しかし,ユーザーはIBMのブランドを信頼し,IBMは何百万というPCを投入して業界スタンダードの地位を築いた。執拗なクローンメーカーのゲリラ的侵略にも関わらず,IBMはその地位をなんとか維持。過去10年で7000万台のPCが販売され1000億ドル市場にまで成長した。1990年のIBMアーキテクチャマシンは,米国内のパソコン売り上げの84%を占めている(Macは10.8%).
 最初のIBM PCのメモリはたった64Kbytesだったが,現在のIBM PS/2 Model95は8Mbytesのメモリを搭載。米国のビジネス誌「FORTUNE」も特集記事を組み「当時,IBM PCは2665ドルだったが,現在ならば同じ金額で(インフレを考慮に入れたとしても),35倍の処理能力と1200倍のディスク容量,それにカラーCRTまで買えるようになった」と解説している。同記事では,SteveJobsとBillGatesが対談しており,ともに「IBMがPCに参入したとき,あまり真剣に競争相手とは考えていなかった」と告白.2人の意見はけっこう合っていて、先のIBMとAppleの提携に関しても「IBMにはいい話だが,Apple側がなぜ同意したのか分からない」と口を揃えている.
 さて,IBMは,10周年に合わせてPS/2 Model90や95XP486を50MHzにするアップグレードキット「PS/2 Processor Upgrade Option」を発売した。33MHzシステムからは3695ドル,25MHzからは5345ドル,20MHzの486SXからは7245ドルである.さらに新製品も出てきた。携帯電話のネットワークを使って通信できる「PCradio」である.サービス業,販売業,警察業務など,移動中にホストコンピュータからの情報を必要とする業務に携わっている人たちをターゲットにしたもの。同社は,連邦通信委員会(Federal Communications Commision)に承認を交渉中だ。
 モデルは3種類で,通常の電話に接続するもの,IBMとMotorolaが持っている「ARDIS」というラジオネットを介するもの,セルラー回線を利用するものである.3モデルともに有線・無線兼用の2400/4800bpsモデムと,ファクス機能を内蔵している.
 共通の仕様は,CPUが5/10MHzの80C186で,メモリは640Kbytes.JEIDA(PCMCIA)仕様のICカードスロットを持ち,サイズは267(W)×213(D)×66(H)mmと,床面積はA4ジャストサイズより小さいが,厚みがやや気になる.重さはモデルにより異なり,2.3~3kgオプションとして通常の会話用のハンドセットと、合体型の熱転写プリンタ(紙幅は8cm)がある。さらにスペックには,防塵,防水と書いてあるが,どの程度なのかは不明.温度に関しても強化していて,0~50℃で動作を保証している(98のノート型は10~35℃).日本でも98のRCに続く製品が早く出てほしいものだ.
 小型のものでは,HPの95LXが売れているという.同社では,需要が供給を大きく上回っており,新しい生産ラインを作るとまでいう.現在までの需要は同社の供給能力を完全に超えているようだ。699ドルの95LXは,Lotus1-2-3のほか,計算機,ワープロ,電話帳やスケジュール帳などといった機能を搭載するが,売れ行きを聞いて,200近いソフト会社が,対応のソフト開発に興味を示しているという.HPはさらに2匹目を狙っているが,今はやりの手書き入力には否定的で,キーボード搭載の小型マシンを開発中という.
 ちなみに編集部でも,ET,OASYS POCKETに続き,95LXを衝動買いした者がおり,すでにVZとJGAWKを入れて愛用している(1ヵ月入荷を待った)。先行商品としては,Poqet社のPCとAtariのPortfolioがあったが,機能・価格ともにそのちょうど中間でニーズにピッタリと合ったということか.

宇宙飛行士もスパイもパソコン通信
 スペースシャトルのAtlantis号で,電子メールでのコミュニケーションがテストされた.つまり,地上管制局や宇宙船間のコミュニケートが電子メールで可能かどうかを調べるもの。満足のいく結果が出た場合、今まで使用していたファクスに代わって電子メールを導入,宇宙ステーション「Freedom」における初のコミュニケーション手段になるだろうという.SF映画を見なれた者には,今までファクスを使っていたというのも意外だが、そのうち公衆BBSと繋いで,「宇宙飛行士とチャットできます」という有料サービスでもやれば儲かるのではないだろうか.ちなみにシャトル側の使用機種はMacである.
 ドイツ当局は,スイス銀行のコンピュータに侵入しようとしていたフィリピンの情報エージェントを逮捕した。犯人はチューリッヒで3名の共犯者とともに「経済的スパイ活動」を行なったという。目的は,フィリピンのマルコス前大統領の秘密資産の探索ということだ。検察側によると,スイスのコンピュータに侵入しようとした一味のリーダーはReiner Jacobiというオーストラリア人で,フィリピン政府のヨーロッパ代表や保安知的活動のコンサルタント.マルコス預金の存在とその残高を確認するよう命じられていた.犯人たちは,「銀行のコンピュータ侵入のスペシャリスト」と名乗る者から得たデータをもとにハッキングを目論んだようだが,どうやらデータは偽物だったという.
 コンピュータ犯罪といえるのかどうか分からないが,部品の窃盗団11人が逮捕された。彼らは1989年4月~90年2月にマサチューセッツのDEC倉庫から盗み出した部品を売って640万ドルあまりを稼いだという.犯人の中にはDEC社員の名前もあるというが,百万ドル単位の部品を盗まれて,気づかないものなのだろうか.
 SPA(Software Publishers Association)は,海賊版や違法コピーなどの著作権侵害によって,1990年だけでに24億ドルの損失を被ったと推測している。コンピュータ利用者のプログラムの平均使用数調査と,ソフトおよびハードウェアの売上高とを比較したデータに基づいて,SPAとDataquestがこのような結果を出した。ただし,過去4年間(1987年~1990年)に購入されたビジネスソフトは,DOSマシン1台あたり1.31から1.78本に,2台のMacあたりでは2.03が2.55本にそれぞれ増加している。とはいっても,この数字は新規に購入されたパソコンの数で計算しており,稼動台数ではないので,あまり信じることはできまい.それにしても,この数字,Macユーザーのほうがモラルが上なのか,購入すべきソフトが多いのか、周りにコピーさせてくれる人が少ないのか,なぜなんだろうか.

シリコンバレー観光ポイント
 歴史を作るのが好きなアメリカ人だが,PaloAltoにあるIC発明の地が,カリフォルニアのOffice of Historical Preservationによって「史跡」として登録された.これは,1959年,故Robert N.Noyce博士がFairchild社で開発したICに対するもの。彼はトランジスタやダイオードといった部品の接続に,酸化シリコンの窓からアルミニウムを蒸着する方法を開発した.「ICは私の怠慢な性格から生まれたものだ。トランジスタはシリコンの上に作られ,切り出され,また回路として組まれる。ならば,途中を省いてシリコンの上に組んでしまえ、というわけでICができた」と,生前Noyceは語った。
 史跡を記念する銘板はPaloAltoのEastCharleston街844番地に建てられる.シリコンバレーでのこのような記念碑はこれが2つ目で,最初のものはBill HewlettとDavid Packardが会社を起こしたガレージに建てられている.旅行する人はぜひ行って写真を撮ってこよう.
 ちなみに,Appleは,Motorolaの広い敷地を買いとって,一気に本社建設を始めている。まだ造成の途中だが,新社屋も観光ポイントのひとつになるだろう。対してSunはシリコンバレーから他の場所に従業員を異動すると発表.自主異動契約条項を提示し,Milpitasの製造工場で働く従業員らに提供している。その数は750~1000名程度とみられ,異動希望者には2ヵ月分の給料・手当に加え,雇用期間に応じて給料の最高6ヵ月分までの特別手当が与えられる。他のWSメーカーが効率を上げ価格を下げている時期ではあるが,Sunはこの異動が必ずしも金の節約になるわけではないし,経営状況を反映したものでもないと語る.HPは2000名を解雇する予定といい,Appleは1200名を,DECは9000名を解雇している状態だが,Sunでは来年も従業員を追加する予定と強気だ。

ロシアはどうなるんだっ
 ゴルバチョフが行方不明になっていたが,その前に出た話.AppleはRussianLanguageSoftwareを搭載したMacを,ソ連国内で販売開始した.Apple社はモスクワを本拠にしたIntermicro社(ソ連各都市にオフィスを持つソ連/オーストリアの合弁会社)を通じて販売していく。1988年に創立されたIntermicro社は,IBMマシンや他のパソコンを販売する大企業。同社はアップル総代理店になり,販売やアフターサービスをする販売店ネットワークを広げるつもりのようで,日本におけるキヤノン販売のような感覚だ。価格はMacClassicが951ドル,ロシア語のキーボードが92ドルである。ブッシュ大統領もゴルビーとの会談の後、西側諸国ハイテク商品のソ連への輸出規制に関するCocomの方針を見直すと発表したが,これからどうなるのだろうか.

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 IBMがパソコン市場に参入してわずか10年で大変化した。私は1979年からMZ-80C,X1,PC9801VX2,Dynabookと4台もパソコン(マイコン)を買った。周辺装置を含めるとどれだけお金を使ったことやら。当時、私たちパソコンマニアが市場を支えていたんだと同好の士と語り合っていた。

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パソコン、ソフト、その他ハード(月刊ASCII 1991年10月号2) [月刊アスキー廃棄(スクラップ)]

ASCII EXPRESSをスクラップする。

まだ生きていたトロン
ASCII EXPRESSの扉はBTRONのノートパソコンだった。
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BTRON仕様のノートマシン発売
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パーソナルメディア(株)が1B/noteを発売すると発表した。価格は48万5000円。

トロン協会,米国でのリエゾンオフィスを設置
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残念だったトロン。ガラパゴス化すらできなかった。実験的なマシンに終わってしまった。
「リエゾンオフィス」という言葉は今初めて知った。

エプソンが低価格の16bitデスクトップマシン「PC-286VJ」を発売
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価格はPC-286VJ-5で22万8000円

松下,ノート型パソコンを発売
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Panacom PRO NOTE M10N。これも富士通のと同じく単三乾電池2本で動く。価格は23万8000円

日本サンがSPARCstationのラインナップを強化
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価格は89万1000円とパーソナルコンピュータ並み。

IRISの低価格新モデル「Indigo」が発売
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ジャストシステム,DOS/V版一太郎 Ver.4を発売
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ジャストシステム,AX版花子 Ver.2を発売
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ロータスがSPARCstarion対応の日本語版Lotus1-2-3を発表
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ティアック,HDD,MOディスクを発売
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100MのHDDが12万8000円

ロジテック,HDD,小型プリンタバッファを発売
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50MのHDDが11万5000円

緑電子,HDDの新シリーズを発売
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40Mで8万8000円

オリンパス,MOディスクドライブを発売
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三菱,3.5インチMOディスクドライブを発売
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日本パーソナルコンピューターが相変化方式採用の5インチ光ディスクサブシステムを発売
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内蔵5インチFDDを3.5インチに交換するキットを発売
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6万8000円。需要はどれだけあったのだろうか。

コーラル,PC-386NOTE用のカーバッテリアダプタを発売
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価格は2万9800円

LSIロジックがACE対応の「MipSET」を販売
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ACE(Advanced Computing Environment)。なんでも規格を作ればいいというものでもないことはACEが消えたことが示している。

アスキーがICメモリカード用インタフェースLSIを開発
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システム・マーケティングがUS83C87/S87の販売を開始
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松下電器産業が3次元モデルベース画像合成技術を開発
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当時からこういった技術は開発されていた。

日立が磁性流体を軸受に採用した情報機器用モーターを開発
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パソコン広告(月刊ASCII 1991年10月号1) [月刊アスキー廃棄(スクラップ)]

この号の後ろの方の広告には日立のとんでもないボリュームの広告があった。14ページにもわたる広告で一瞬普通の記事なのかと思ってしまった。
最初から順番にスクラップする。

ASCII1991(10)表裏_W520.jpg
裏表紙が新しくなった。

表紙見返し
ASCII1991(10)見開_W520.jpg
この号もWindowsだった。

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PC-H98Smodel8/U8他

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左頁はPC-9801T
右頁はMacintosh Classic

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TOWNS

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左頁はIBMのDOS/Vノート。PS/55モデル5523S
右頁はPS/55モデル5510Z

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X68000

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PancomMサーバーシステムは前号の使いまわし。

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左頁はRupoで前号の使いまわし。
右頁は関西電機のDOS/Vマシンで前々の使いまわし。

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エプソンのPC-386GSとPC-386GE。PC-386GSはハイレゾが売り。

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右頁はPC-286VJ

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アップルコンピュータとキヤノンによるMacintoshとAldus PageMakerの広告

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キヤノンのレーザーショットは前号の使いまわし。

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左頁はキヤノンのAXiとBJ-プリンタは前号の使いまわし。

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左頁は横河・ヒューレットパッカードのHP 48SとHP 95LX

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三洋電機のAXAGE(エクサージュ) NOTE 386SX。AX-VGA/SであってDOS/Vではない。往生際の悪いことだ。

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NeXT

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従量制の長距離電話が高かった。やっとパケットというものが出てきた。

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沖電気のifNOTEは前々号の使いまわし。

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SONYのNEWS

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SONYのQuterL

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スター精密のプリンタのイメージキャラクターは松本典子。

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マイクロデータのエコロジー、オーシャノグラフィ、ノストラダムス、コロボックルの広告。

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コロボックルの広告だが、いつまでたっても出てこないアストロノミー。お前の近日とは近月どころか遠月ではないか。いい加減にしろと思う。

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一太郎の広告が出なくなったと思ったらロータス1-2-3と組んだHARMONYが出た。一太郎と1-2-3をバンドルしたWin3.1機も出たのにそのうちExcelとWordのバンドル製品に駆逐された。

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dBASEも結局はDOSのソフトでWindowsでは生き残れなかった。

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ExcelとWord。このころはいつになったら使えるようになるのかと思ってた。結局Win95になってからだった。

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右頁はVZ EDITORの広告で前号の使いまわし。

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パソコンショップでカラーページに広告をだしているのはツクモだけだった。

ここから日立の14ページにもわたり一瞬普通の記事なのかと思うような広告でが続く。
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扉の後はSpecial Report
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インタビュー部分をスクラップする。
従来のラインナップに新たにAXマシンFLORAを投入した意義や戦略などについて、日立製作所情報事業本部OA事業部パーソナルコンピュータ部部長の木村政孝氏に聞いた。
――FLORAシリーズの新規発売の目的はどのあたりにあるのでしょうか。
木村――大きく分けて3つあります。まず、流通プロダクトの世界を、お客様に提供したかったことです。プロダクトというのは、アプリケーションソフトもありますが、周辺機器各種のボードのことですね。B16シリーズも、ソフトウェアに関しては、主だったものは揃っています。けれど、パソコンというのは単体で使うものじゃない、いろいろな入出力機器やハードディスクをつなげたり、いろいろなボードを差して拡張して使うものです。そういう点では、率直に申し上げて独自アーキテクチャのB16用のものはバリエーションに限界がありました。
 FLORAでは世界標準機のアーキテクチャを採用することで、お客様が利用できる周辺機器のラインナップがぐっと増えることになります。これが第1の狙いです。
 次に、海外の優れたソフトウェアを容易に取り込めるようになったこと。FLORAシリーズは世界的な標準機と言われているPC/ATと互換ですから、英語モードでならAT用ソフトが走りますしね。
 3点目は、これは2点目と多少重なるのですが、新しい「インフラウェア」を、非常に容易に利用できることです。インフラウェアというのは、たとえばNetwareみたいな、システム環境のベースになるようなソフトのことですが、そういうソフトをオリジナルと別のアーキテクチャのマシンに移植するのはずいぶん大変みたいですよね?その点でも、世界標準のアーキテクチャを採用するメリットは非常に大きいわけです。つまり、こういう先進のインフラウェアを 先取りしてゆくことが、お客様にとっても大事だと考えます。
――AXマシンなど、PCアーキテクチャのマシンは普通のお店ではなかなか売っていないのですが、FLORAについてはどうでしょうか。
木村――現時点ではやはり、システム販売やVARを中心に展開しています。ただうちは家電メーカーでもあって、販売ルートは持っているわけですね。パーソナルワープロの「with me」は、このルートを利用してシェアアップに成功しましたので、FLORAについても同じことができれば、とは思っています。まあ、ワープロとパソコンは違いますけど、ターゲットとしては似たようなところがありますからね。
――FLORAはVGAのハードウェアを持っていますから、DOS/Vが動作することになるわけですが、DOS/Vへの対応の御予定などは?
木村――FLORAは、AXのMS-DOSをメインのOSとして採用していますが、DOS/Vについては、いわばゲストOSとして、サポートする方向で検討しています。ただ、今ちょうどMS-DOS V5.0が出ようとしていますから、対応するならDOSV 5.0をサポートする形で行ないたいのです。DOS/Vをサポートすることで、ユーザーの利用できるアプリケーションのラインナップが増えること自体はいいことですから。
――今後の販売戦略についてお聞かせください。
木村――私の所属するパーソナルコンピュータ部には、今回新たに流通プロダクト推進グループというのを設けました。これまでハードウェアメーカーというのは、ソフトの数を増やすことには熱心ですが、残念ながら、それをどうユーザーの手に届けるかということについては、あまり情熱を注いでいなかった、というのが実態だと思います。日立は、そういう中でパソコンメーカーとして唯一アプリケーションソフトを専門に流通させる日立ハイソフトという関連会社をもっておりますが…。たとえば、AT用にいいソフトがあるいいカードがあるといっても、じゃあそれをどうやって入手するかというと、仲々そのサポートが難しいわけですよね。
 そこで、ユーザーにどういう形で流通プロダクツの豊富さがご理解頂くか、あるいはユーザーが欲しいといったソフトや周辺機器を、1週間なり2週間で届けられるというためには、どうするかなど体系的に行なうグループを設けたのです。これは、ハードメーカーとしてはたぶん初めてではないでしょうか。
 これ以外にも、お客様に安心して日立のパソコンを使って頂けるための仕掛けづくりに注力していきたいと考えております。

 何を考えていたのかがインタビュー形式をとってメーカーが語ったという記事は好感を持てる。しかし、旧機種のユーザに配慮するというのはかなり大変なことだったようだ。新シリーズのパソコンとしてDOS/Vにシフトすればよかったのにと思う。AXのグループだからこうなったのだろうが、AXがかえって足を引っ張っていた。
 日立のDOS/V機思い出せない。残念マシンだったのだろう。

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裏表紙裏はFUJI FILMのFD。
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キャラクタが森口博子になった。

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ハビタット、FMR-CARD(月刊ASCII 1991年9月号11) [月刊アスキー廃棄(スクラップ)]

私がメタバースなんて新しいものではない。セカンドライフの焼き直しどころか、その起源は30年も前のハビタットにある。全然進歩していないと言っているがそのハビタットの記事が長期ロードテストにあった。以下スクラップする。

前回までのあらすじ
 「富士通Habitat」は,NIFTY-Serveの通信網を利用して行なうビジュアルパソコン通信。ポピュロポリスという街の住人になって,街を探索したり、出会った人とおしゃべりをしたり、イベントに参加したりして「もう1人の自分の人生を楽しむ」というものだ。アクセスできるコンピュータは,FMTOWNS(以下TOWNSと略)だけそこで私もHabitat国の住人になってポピュロポリスをのぞいてみることにした.
 必要なものはパソコン通信のできる環境とNIFTY-ServeのID,専用ソフトの「富士通Habitat(V2.1L11)」(写真1)だ。ソフトのパッケージの中には,チュートリアルディスクが入っているので,まずこれで概要を把握。次に各種の設定を行なって(画面1),あとはアクセスあるのみ。ちなみにハンドルネームは“しおりあん”です.よろしく.


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6月10日 あっという間の30分
 ソフトを起動して「富士通Habitatへ」をクリックすると,設定したアクセスポイントへ自動的に電話をかけてくれる.接続に成功すると最初のリージョン(=移動できる範囲の画面)が表示された(画面2)ここは私のターフ(=部屋).外へ出るまでにちょっとコマンドなどの復習をしてみよう.
 入ったばかりのときはいつもゴーストという状態になっているので,まず“デゴースト”してアバタに戻る。アバタとはHabitatの中の人物のこと.いろいろな操作はすべてマウスを使って,画面右側に並んだファンクションコマンドやリージョン内に表示されるマウスコマンドで行なう.移動するときは,移動したい場所にマウスを持ってきて左ボタンを押しながら"GO",椅子に座りたいときは,椅子を指して“DO”.マウスコマンドで,GET,DO,HLP(help),WSP(whisper),GO,PUTの6つのコマンドが使えるのだが,これですべての動作ができてしまうのだから不思議だ(画面3).残念ながら,左上にある窓を“DO"しても窓を開けることはできなかった.

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 ドアをDOして外へ出た。画面を移ることをリージョンチェンジといい,そのときだけ音楽が入る(5秒ほど).実際,音が出るのはリージョンチェンジのときだけのようで少々淋しい.Habitatの世界は,360個のリージョンで構成されているそうだ。行けない方向もあるが,上下左右のリージョンにどんどん移動できる.
 とりあえず,自分の住所だけは覚えて,手当たり次第に歩いていった.少し行ったところに町内の掲示板があったので,自己紹介を一言書き込む.……ところで歩けど歩けど全然人に会わない.いろいろな店が点在しているのだが、入っても誰もいない。どうやら物を売る店は,みんな自動販売機のようだ。喫茶店に入っても人はなし。何か不気味だなあ。つまらない。そのうえ,さまよい歩いたすえに入ったヘッドショップ(頭を売る店)で,操作を間違えて不要なヘッドを買ってしまった。取り消しはできず,何とこれが140トークン(トークンは通貨単位).あと手持ちは80トークンしかない.ああ、いきなり貧乏だ.
 この国の住人には、最初に200トークン,1日アクセスするごとに20トークンが支給されることになっている.もっとお金持ちになるために商売をしているアバタもいるとか.おーい,そんな人はどこにいるんだ?
 ここはどこ?何か楽しいことはないの?とうろうろしているうちに30分が過ぎて,今日は面白くも何ともなかった.無駄遣いしてしまったし。テレポートブレースを探し回ってようやく見つけ,唯一の公共交通機関であるテレポート(運賃は2トークン)で私の住む第一居住区,パールマンションへ戻ってきた.

6月13日 マップをウンロードする
 チュートリアルの練習だけでは心もとないし,情報不足であることが前回のアクセスで分かった.たとえば,掲示板などで利用するエディタの操作方法は,通信上で練習するしかないのだ.遊びつつ慣れるしかないのか.ソフトに付属する地図(鳥瞰図)は大まかすぎてあまり参考にならないし,ガイドブックにも必要最低限のことしか書いていないので,最初はいろいろと人に教えてもらうのが得策のようだ。
 今日はNIFTY-ServeのTOWNSフォーラムに何か情報がないか見てみた.TOWNSフォーラムは2つのフォーラムから構成されていて,その1つはビジュアル通信(Habitatの話題が大半)専用のフォーラムになっている.
 電子会議室の「FreeTalk・ポピュロポリス」では,会員同士の連絡や会員企画のイベントのお知らせ,Habitatの世界のできごとや情報を書いた新聞などがポストされていた。ただ同じような掲示板機能がHabitatの中にもあるせいか,それほどメッセージがいっぱい書かれているわけではない.「データライブラリ」も量的には多くなかった(結局,TOWNSユーザーでしかもHabitatをしている人しか関係ないもんね)。
 さて,ライブラリでお目当てのマップをダウンロードした.Habitatの中を探索してマップを自分で作っていくのも楽しいだろうが,今はその余裕はない。これで少しは行動範囲が広がるかな.

7月1日 久しぶりにアクセス
 一度やって気落ちしてから,しばらく休んでしまっていたのだが,今日はマップ(千里氏作)を持って再度アクセス.リージョンを1つずつ確認するように歩いて,アバタが最も集まるという「オラクルの泉」まで行った。そうしたら4人ものアバタがいて,初めて人に出会って少々緊張した.
 キーボードから打ち込んだメッセージは,自分のいる位置の上に吹き出しのようにして表示される(画面4)そこにいたアバタに質問ぜめをしてしまったが,親切に答えてくれた.初心者が主にやることは,スプレーを買って服の色を変えるとか,ヘッドを変えるとかだそうだ。私はまったくノーマルなヘッドをつけているが,みんなそれぞれにいろんなヘッドをつけていて面白い。毎日取り替えたりするんだろうか.


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 「株を買いません?」とのお誘いに,お金がないので丁重にお断わりした.このオラクルの泉がやはり一番人気の場所のようで,ひっきりなしにアバタがやってくる。1つのリージョンに同時に表示されるアバタは6人まで,入りきれないとゴースト状態になって見ているだけになる。ゴーストさんもけっこういて、にぎやかなひとときだった.
 30分は短すぎる.

7月3日 もうかっちゃった
 どうも最近は,建国当時ほどさかんにイベントが行なわれていない模様。どこへ行けば盛り上がっているんだろう?今日は何か面白いものでも買ってみようと、マジックショップへ入っていった。すると,今私がつけてるのと同じヘッドがショップの中に落ちているではないか。これは交番に届けるべきか……と思いつつもポケットにしまって、誰かに話してみようとオラクルの泉へ行った.
 「拾ったんですけど,どうしましょ?」「私にちょうだい!」「1トークンで売って!」「金をくれー」という皆さんの反応に,これは我がものにしてもいいんだと納得(つまりねこばばだ)。そこで,関西人らしくその場で商売することにした。基本のヘッド価格(50トークン)よりも高く55トークンで売却。買ってくれたぶるるさん,ありがとう.
 というわけでラッキーな今日は,サービス終了時間(午前3時)まで1時間45分もアクセスしてしまった。1回30分という方針を前回決めたが,それを遂行するのはちょっと難しい。また,公園や迷いの森,迷宮のような神殿などがあって,1人で散策するのも面白いと思うようになった。「昔はばんばんシステムがダウンした」という話から察すれば,今はいたって安定したサービスが行なわれているといえる。あとはもっと住人が増えれば…….少々おたくノリ日記は来月号に続<.   (増田)


 メタバースの基本形は30年以上も前のハビタットにある。

長期ロードテストにFMR-CARD(FMR-NBC1B)が登場した。
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FMR-CARDは単三乾電池2本で動くというとんでもない機体だった。残念ながら動いているところは見たことがなかったが、こうしてスクラップして楽しむ。
ノートとは根本的に違う
 本誌の大きさはA4判の変型(俗に「アスキーサイズ」という!),厚さは'91年7月号で13mm重さは約1kgである.FMR-CARDは,ほぼ同じA4サイズ,重さは本誌よりも軽い990gである。持った感触では,FMR-CARDのほうが剛性が高いためか、実際の重量差よりもかなり軽いように感じてしまう.
 読者の方々から「FMR-CARDをぜひ長期ロードテストに」というお便りを何通もいただいていた。パーソナルコンピュータのひとつの目標点は,
個人といつも一緒にあって,その人の能力を増幅する
ということである.つまり,小さく,携帯して歩けることが,条件になるはずだ.その意味で,FMR-CARDは,文字どおり「個人のコンピュータ」を求めるユーザーには,気になる存在だったのだろう.
 486や68040などのパワフルなCPU,MacintoshやMS-Windowsの優れたユーザーインターフェイス,より表現力の高いサウンドやビジュアルの環境いずれも目をみはるものがあるが,小さいマシンが提供する「いつでも開いて使える」というファンクションに比べれば,取るに足らないものという見方だってできる.より優れた環境を求めていくことももちろん重要だが,安定したMS-DOSの世界で,パーソナルコンピュータの目標点をめざすのもひとつの方向だろう.


「個人といつも一緒にあって,その人の能力を増幅する」

同意する。昔FMR-CARDよりはるかに重いダイナブックを「私の外部記憶だ!」と知人に言ってネットワーカーと会うときは必ず持っていった。パソコンが一人一台ではなかった時代私の職場の机にはダイナブックが常に置いてあり、家に持ち帰るのは土日等の休日だけだった。家に帰ればPC-9801VX2があったのでこの当時流石に2台同時には使えなかった。今でこそ複数台を同時に使っているが当時は無理だった。
スマホとか無い時代軽いパソコンは私にとって重要度が高かった。
1kgは臨界点ではないか
 テスト担当者は,'89年7月に東芝がJ-3100SS,いわゆる初代DynaBookを発売してから1年余りの間これを使ってきた。この間,PC-286NOT Eexecutive(発表はこちらのほうが早かったのだが発売はDynaBookのほうが先である),その後,PC-286NOTE F,MAXYNOTE286,J-3100SX021,PC-386NOTE Aをそれぞれ数週間から数カ月ずつ試用してきた.現在は,IBMのPS/55noteの環境をいじっている。いわばノートパソコンのマニアである.
 FMR-CARDは,まだ使い始めてちょうど1週間というところではあるが,明確に,これら「ノートマシンとは違うものである」と感じている.
 その秘密はなんといっても,コンパクトさと軽さだろう。担当が試用させてもらってきたノートパソコンでは,最も軽いMAXYNOTE286でもA4レターサイズで2kg,他のマシンはA4ファイルサイズで重いものは3kgにもなる。特に重量ではFMR-CARDとMAXYNOTE286とPC-386NOTE Aの比率が,実に明快に1:2:3になる!
 正直なところ三菱のMAXYNOTE286(シャープのAll in Noteと同じ内容のマシン)は,携帯して歩けるマシンとしては,かなり高い完成度だった.このマシンは,米国ではシャープがPC-6220,TIがTravelMate2000というほぼ同等のスペックのマシンを出荷しており,人気モデルになっている。バックライト付きで大きな640×480ドットの液晶ディスプレイ,ハードディスク内蔵,メモリカードやモデムを本体内に増設可能など,おまけにAXながらDOS/Vもなんとか起動できるという噂もあり、いまでもテストマシンとしてそちらを選んでもよかったかなと思ったりするほどである.
 FMR-CARDをテストマシンに選んだ理由を整理してみると次のようになる。
1.重量1kgという軽さ,本体のコンパクトさは,携帯して歩ける範囲のものだ.これは,体で判断するしかないのだが,フル装備の一眼レフカメラや教科書2~3冊とノートくらいの重さである.
2.編集部では,PC-9801DA/U7を仕事に使用しているので,これとFMRのアーキテクチャは異なる.セカンドマシンとしては,当然のことながら同じアーキテクチャが望ましいが,データレベルでの互換性は確保される.
3.バッテリ駆動時間が8時間(カタログスペック)と,一連のノートパソコンに比べると格段に長い.ACアダプタと入手しやすい単三乾電池2本で使える.
4.ブラインドタッチ可能なキーボードである.ストロークはかなり浅いが,高効率な日本語入力が可能な親指シフトキーボードモデルがある.
 軽さと大きさについては,参考までに図1に,主なノートパソコンとFMR-CARDについてグラフにしてみた。電池駆動時間は,富士通が70%の株を所有する米PogetComputer社のPoqetPCにはおよばないが,1時間2時間の範囲で気を使っていた従来のノートパソコンとはまったく別次元だ.
 フロッピーディスクドライブがないことが気になるという向きもあるかもしれないが,外付けや後述のNB-LINKで対処できると考えた.


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1分間に150字は入力したい
 携帯できるマシンとして問題になりやすいのが,キーボードである.コンピュータのほとんどの部分は、おおむね小さくなればそれだけ好ましいのだが,人間が見る部分や直接触る部分は,そう簡単ではない.マシンが小さくなればその分,ディスプレイやキーボードに割り当てられる面積や厚さは小さくなってしまう.
 FMR-CARDの液晶は、いまでは少数派になった反射型のSTN液晶であるうえに画面の対角線が7.5インチと,かなり小さめなのだが,思ったよりコントラストが確保されていると感じた.キーボードは,この重さのマシンとしては,ちゃんとしている部類と評価できる。PC-98HAなどのキーボードは,キートップが異常に小さく,使うのにコツが必要だ。ソニーのPalmTopや京セラのRefaloなどのタッチペンによる操作環境もスマートではあるが,データのビュアとしてやあらかじめ決めたアプリケーションの実行だけを考えた環境と考えたほうがよいだろう.
 個人といつも一緒にあって,その人の能力を増幅するマシンとしては,コンピュータとの活発な対話が必要になる.現在のところ最も確実で、柔軟性があり、かなり高速なコンピュータへの意志の伝達手段は「キーボード」にほかならないのだ。簡単な計測を行なったところ,担当が連続して入力すると1分間に150字程度のペースでかな漢字交じり文の入力をすることが分かった.FMR-CARDのキーボードは,ストロークがかなり浅く,ガサガサした印象だが,サイズや親指シフト配列のおかげで,これに近いペースで入力できるのではないかと思われる.

2ndマシンは少ない投資で
 さて,FMR-CARDをセカンドマシン(サードマシン?)として使うことに決めたはいいが,具体的なシステム構成を考えなければならない。少し触れたように,FMR-CARDは,フロッピードライブを内蔵していなかったり,そのくせ内蔵RAMドライブ(不揮発)が,28Kbytesと極端に小さい。一応128KbytesのICカードが1枚付属するのだが,エディタ1本入れて使うにも心もとないサイズである.
 パンフレットには,「ICカードのバックアップ用に外付けフロッピードライブをぜひご使用ください」と,わざわざ書いてある。やはり,外付けフロッピードライブがないと、かなり厳しい環境になるのか?というわけだが,ここは天野邪鬼に外付けフロッピードライブは(少なくとも最初からは)買わないことにして,デスクトップマシンがすでにある担当としては,NB-LINKに頼ってみることにした.NB-LINKは,デスクトップマシンなどとケーブルで接続して相手のドライブを容易にアクセスできるようにするソフトウェアであり,FMR用のほかPC-9801用も発売されている.
 6月26日の金曜日,別冊アスキー編集部の根岸,三尾,ネットワーカー編集部の矢作と一緒という賑やかな顔ぶれで,秋葉原に向かった.
 最初に入ったのが大型専門店.出かける前には知らなかったのだが「'91富士通電脳夏祭り」というキャンペーン期間中で,例のNB-LINK98というソフトとケーブルがもれなくプレゼントされることが分かった.ソフトだけで,1万5000円の品物である.ここでの売り値は,21万円とのことだった。次に入ったのが安売りで有名な某店である。ここではなんと先のショップより数万円も安く売ってくれるという!ところが,どうしたことか例のキャンペーンのプレゼントはできないとのこと.それから何軒かのショップをたずね,結局,秋葉原駅前のラジオ会館にあるFMTOWNSとMacintoshを中心にディスプレイしたお店で,本体18万円,アイ・オー・データ機器の512KbytesのICカードを2万4000円で購入したのだった.
 購入したのは,この2つだけである.キャンペーンのプレゼントであるケーブルとNB-LINK98は登録葉書にシールを貼って出したので,間もなく届くことになるらしい。実は,できるだけお金をかけたくないというのもセカンドマシンの条件ではないかと思う.参考までに,FMR-CARDの周辺環境,オプションを表1に示す.

ソフトはどうする?
 ICカードを512Kbytesのものにしたのは,やはり純正の1Mbytesのものが8万円もするためだ。少し使ってみてもう1枚512Kbytesか,もっと安い1Mbytesのカードが出たら買い足せばいいと思った.FMR-CARDは,JEIDA Ver.4.0対応のカードスロットであり,この規格のカードは,今回購入したアイ・オー・データ機器以外からも,アスキー,エプソン,日立マクセル,三菱,パナソニック,日本ワークシステム,東芝,住友ベークライトなどから発売,または発売が予定されている.これには,1.5Mbytesや2Mbytesのカードも含まれている.
 実は,FMR-CARDでは,読み出し専用のICカードによるソフトの提供も特徴であり,Lotus1-2-3やアシストパックTypeA,All in ONE note,The CARD3,Microsoft Works,FM-OASYS,FM秘書,Multiplan+MS Chart(1枚に収録)などが用意されるという.追って,表計算ソフトなどをこのICカードソフトで揃えたいとは思うが,まずはワープロとしての使用を考え,付属の128Kbytesと購入した512KbytesのICカードにVZエディターをインストールして使おうと考えた.
 VZエディターは,ご存じのように高機能,低価格で人気の高いスクリーンエディタであり,これを日本語の入力編集に使用している人も多い。ちゃんとした日本語ワープロのような印刷イメージを意識した編集や美しい文書を作成、印刷するための機能はないが,単純にテキストを入力・編集するにはプログラムサイズも小さく便利である.テスト担当は,J-3100シリーズでずっとこのエディタを使用していた.知的な編集作業には正規表現が使えるMIFESが向いているという人もいるだろうが,一般的な使用ではこれで十分過ぎるほどの内容である。
 とはいうものの実は、このVZエディターには,FMR用というものがない.それではどうするのかというと,パソコン通信にVZエディターをFMRシリーズで使用できるようにするパッチというものがあるのだ。長期ロードテストとしては反則技くさいが,VZエディターは,以前購入してJ-3100SSで使用していたものがある.これにパッチを当てて,FMR用のVZエディターにしてしまおうというわけだ。
 ところで,FMR-CARDには,ROMにNB-TOOLというソフトウェアが搭載されており,これの通信ターミナルソフトを使って,VZの本体や各種ユーティリティを移したり,パソコン通信からVZをFMRで使えるようにするパッチをダウンロードしたりしたのだった。

VZのインストール
 一般のソフトウェアパッケージでは,ソフトウェアが改善されてバージョンが変わると,バージョンアップサービスなどの形で、新しいソフトを入手するようになっている.ところが,VZエディターでは,少なくとも小さな単位のバージョンアップについては,以前のバージョンとの違いが特別なファイルの形(パッチデータ)でパソコン通信などで提供されている.
 ユーザーが自分でパソコン通信からその情報をダウンロードして,いわゆるパッチを当ててやれば,最新のプログラムにできるのだ。たとえば,私の購入したときのバージョンは1.5であったが,現在市販されているバージョンは1.56である.この間のバージョンアップは、日経MIXやNIFTY-Serveからパッチデータをダウンロードして行なったものなのだ。実は,VZエディターをFMR-CARDで使えるようにするための作業も、これとほぼ同じ要領で行なえばよいのである.このパッチデータも現在のところ、パソコン通信で入手することができる(入手先をリストページに示す)。
 テスト担当は,NIFTY-ServeのFFMフォーラムから,パッチデータをダウンロードした。具体的なパッチの当て方は,図2のような手順で行なう.
 こうして,VZエディターがFMR-CARDで使えるようになった。その軽快なカーソルの動きやスクロールもそのままである.20行モードも使えるし独特の常駐モードも支障なく使用できるようだ.気になるのは1点だけ「カーソル行アンダーライン」(Du+)の機能だけが,どうしても働かないのだ。これは,FMRシリーズでもFMR-CARDだけの症状なのかどうか確認中である.
 ちなみに日本語入力環境だが,ROMで搭載しているOAKを使用している。パソコン通信の書き込みなどを見るとVJE-βを使用している人もいるようだが,なにぶん128+512KbytesのICカードしかない身としては,選択の余地がない.もっとも,このOAKは,かなりクセはあるものの素性がよいというか、慣れてくるとけっこう快適な入力ができるようになりそうだ.
 次号では,より具体的な利用レポートがお届けできるはずだ。まだ使い始めて間もないため大きな問題が生じていないだけかもしれないが,ほぼデスクトップに近い日本語の入力環境ができて快適である.    (遠藤)


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パソコン通信、単語出現頻度、ASCII人事異動(月刊ASCII 1991年9月号10) [月刊アスキー廃棄(スクラップ)]

パソコン通信情報ボックスにPC-VANとNIFTY-Serveの会員数があったのでスクラップする。
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 今月号よりデータで見るパソコン通信の現状をお届けすることにした.第1回は2大サービスに成長したPC-VANとNIFTY-Serveの会員数の推移を紹介する.
 現在、国内第1位の会員数を誇るPC-VANは'86年4月から1年間の実験サービスを経て,'87年4月に有料サービスをスタート.その後,GEnieとのゲートウェイ接続などを実現、さらに24時間サービスの提供などを中心にサービスを拡大し、特定サービスにおける固定料金制の設定などで個人ユーザー層を中心に発展を遂げている.
 対するNIFTY-Serveは'87年4月のスタート当初から有料サービスを実施し,各種データベースとのゲートウェイ接続や米国最大のCompuServeとの提携など,一貫したビジネス路線でサービスを提供してきた.全会員の35%を占めるといわれる法人会員の数からもその実態がうかがえる。
 NIFTY-Serveでは,同ネットは'92年3月に会員数が33万人に到達するとの見通しを立てている.また,PC-VAN,NIFTY-Serveは共に、'93年3月には会員数がそれぞれ50万人に達するとしている.両ネットが他のBBSに比べて大きく発展を遂げているのは、サービスもさることながら日本各地に設置している100を超えるアクセスポイントの便の良さもあるだろう.今後も、国内のパソコン通信サービスの拡大において,この2大ネットが担う役割は大きいようだ.

 私は両方加入していた。PC-VANはグラフィック作品鑑賞で作者とコメントをやり取りしたりしていた。NIFTYは専門的な発言のやり取りやプログラムをダウンしたりしていた。結局PC-VANは物足りなくなり止めた。NIFTYは最後まで付き合った。プログラムやハードウエアの改造や専門的な知識を得たりと役だった。NIFTYではオフラインミーティングで実際に知り合い交流を深めることができた。距離を超えて同好の士と交流できるのがパソコン通信の良さだった。

単語の出現頻度を調べた記事があった。
ASCII1991(09)h01ことば遊び_W520.jpg
しかし、いまいちであった。もう少し突っ込んでほしいというか緻密に調べて欲しかった。

順位:出現回数(出現頻度※).
1:12399(0.932)使
2:7772(0.584)
3:7007(0.527)場合
4:6094(0.458)表示
5:5975(0.449)機能
6:5880(0.442)
7:5742(0.432)可能
8:5653(0.425)
9:5189(0.390)
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70:1872(0.141)簡単
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97:1600(0.120)発表
98:1589(0.119)移動
99:1587(0.119)方法
100:1587(0.119)
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109:1501(0.113)接続
110:1489(0.112)採用
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114:1436(0.108)
115:1403(0.106)
116:1391(0.105)メモリ
117:1389(0.104)メニュー
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119:1355(0.102)ディレクトリ
120:1355(0.102)サポート
121:1350(0.102)ハードディスク
122:1338(0.101)
123:1334(0.000)出力
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125:1325(0.100)
126:1315(0.099)
127:1310(0.099)
128:1308(0.098)MAC
129:1302(0.098)サイズ
130:1300(0.098)
131:1297(0.098)日本
132:1284(0.097)
133:1283(0.096)同樣
134:1277(0.096)
135:1272(0.096)付属
136:1265(0.095)内蔵
137:1257(0.095)
138:1255(0.094)最初
139:1253(0.094)登録
140:1252(0.094)
141:1242(0.093)従来
142:1241(0.093)キーボード
143:1235(0.093)
144:1234(0.093)
145:1230(0.092)MACINTOSH
146:1229(0.092)
147:1227(0.092)IBM
148:1226(0.092)意味
149:1204(0.091)オプション
150:1200(0.090)同時
151:1199(0.090)文字列
152:1186(0.089)
153:1178(0.089)
154:1157(0.087)
155:1154(0.087)SYS
156:1148(0.086)
157:1143(0.086)
158:1119(0.084)編集
159:1119(0.084)
160:1109(0.083)ワープロ
161:1104(0.083)
162:1100(0.083)予定
163:1097(0.082)
164:1086(0.082)関数
165:1084(0.082)
166:1079(0.081)
167:1075(0.081)マニュアル
168:1073(0.081)作業
169:1072(0.081)登場
170:1071(0.081)プログラミング
171:1068(0.080)
171:1068(0.080)名前
173:1067(0.080)
174:1066(0.008)複数
175:1062(0.080)
176:1058(0.080)検索
177:1054(0.079)プリンタ
178:1042(0.078)
179:1042(0.078)販売
180:1035(0.078)定義
181:1034(0.078)
181:1034(0.078)COM
183:1028(0.077)
184:1024(0.077)
185:1022(0.077)
186:1022(0.077)図1
187:1018(0.077)アスキー
188:1017(0.076)
189:1017(0.076)
190:1003(0.075)
191:1001(0.075)
192:1000(0.075)写真1
193:997(0.075)便利
194:994(0.075)
195:991(0.075)非常
196:982(0.074)キー
197:981(0.074)
198:973(0.073)変換
199:970(0.073)PC
200:955(0.072)製品

結果はどうなったか?
 うまく出現頻度順一覧をもとめることができただろうか?今回のテーマである本誌の記事テキストファイルにおける出現頻度順一覧もなんとかもとめることができた。
 また、本誌でも「ハッキーズ・ディッシュ」でお馴染のシェフネットジャパン(料理専門ネット)のジャンクフードボードの'91年6月までの書き込み,聖書刊行会による「改訂新訳聖書」のテキスト,小倉百人一首,筆者が'91年3月号まで本誌で連載した「近代プログラマの夕」の原稿の現存分についても集計してみた.表1では,本誌'89年2月号~'91年5月号のテキストファイルでの単語の出現順位と出現回数,出現比率をまとめてある.
 本誌の記事で注目すべきは,「使」が,出現した1329735単語,156328種類の中で,ダントツの出現頻度第1位に輝いている点だろう.今回の手順では「漢字やカタカナや英数字の連続」を単語とみなしているために1文字だけ出てきてしまったが,実際には「使う」や「使える」などだろう.上位に食い込んでいる単語は,いずれもパソコンのハード・ソフトの説明に頻繁に使われる単語だけが独占している.
 ソフト名のトップは,33位のMS-DOSの3296回ということになるが,実際には,前後に漢字やカタカナ,後ろにバージョン番号がついているケースもあるだろう。実際にMS-DOSという文字列が登場した回数は,はるかに多いと思われる.なお,ハードウェアの名前では,Macとなった.
 ところで,上位よりも泡沫の1回か2回しか登場しなかった単語も,見ているとなかなか面白い.「電動歯ブラシ」の1回は,いまはUNIXマガジンの竹田が'90年11月号のお掃除企画記事で,「踊子」という単語が2回使われていると思ったら2回とも国友正彦氏の原稿(正確には図)中だった.
 シェフネットジャパンの集計では,「食」がトップというのはさすがだが,「飯」,「納豆」,「牛乳」,「マヨネーズ」,「チーズ」あたりも結構上位に入っている.ジャンクフードボードならではというところだろう.
 「新訳聖書」では,「私」,「人」,「言」,「彼」,「イエス」,「者」,「神」までが,それ以外の単語に比べて格段に多い。ちなみに4位で1885回登場している「イエス」は,本誌では2年3カ月の間にもわずか4回しか登場していない。もっとも,それらすべてが「イエス」の「イエス」かどうか分からない.百人一首では,上位の「思」,「人」,「出」,「月」,「恋」,「夜」,「秋」,「山」,「見」……と並べただけで、雰囲気である.
 「近代プログラマの夕」では、数百年前の「百人一首」と同じように「思」がトップとなった。実は,一般的な日本語ではこのような結果になるのだという話を聞いた.
 今回は,MIFESとSORT,およびUNIQを使って,単語の出現頻度を中心にもとめてみた。もっとも、今回のような作業は,どちらかといえば本誌「AWKビレッジ」でお馴染みのjgawkなどで,スクリプト(プログラム)を書いて実行するほうが一般的かもしれない(単語の切り出しを行なうjgawkのスクリプトについてはリストページに掲載した)。
 MIFESは,日本語が使えるものでは数少ない検索・置換で正規表現が使えるエディタである.たとえば,
'麹町アジャ|AJANTA|ajanta
で検索すれば,表現の揺れを吸収して目的の単語の検索ができる.テキストファイル上でさまざまな試行錯誤的な作業を行なうのに威力を発揮するのだ。
さて、次回は,今回もとめたいくつかの出現頻度順の分析を試みることにしよう.           (Hortense Endoh)


 気にらないのはASCII記事の集計で1文字の単語がリストアップされているところだ。私なら1文字単語を除外して集計する。
 「百人一首では,上位の「思」,「人」,「出」,「月」,「恋」,「夜」,「秋」,「山」,「見」……と並べただけで、雰囲気である」は良いと思う。

編集室からをスクラップする。
盛夏,ニュースが飛んでくる
▲この十数日の間にいくつかのニュースが入ってきた。1つは,弊社アスキーの会長、副社長の辞任。アスキーの発足メンバー3人のうち西和彦社長を残す,他の2人,郡司明朗会長と塚本慶一郎副社長が7月中旬で退社となった。この件の経緯は,これを書いている時点(7月20日)までに新聞などに書かれたものと大きくは変わらない.
 長年にわたって出版局を担当してこられ,本誌の発行人でもあった塚本慶一郎氏には,この場を借りて,深くお礼を申し上げたいと思う.また,本誌とおつき合いのある方々から,いろいろご心配をいただいていたが,今後ともいっそうの誌面の充実,発展を目指していくつもりである.
▲同じ日に飛び込んできたのがIBMとAppleの技術提携についてのニュースである。その日の深夜、通常の配信時間外に時事ファクスビープ音とともにニュースを送ってきた.コンピュータ界の巨人,パーソナルコンピュータの分野でも世界的な標準であるIBM PCを作り上げたIBM.それと真っ向から対立する図式にあったパーソナルコンピュータそのものともいえるメーカーApple.彼らが,なかよく握手することになろうとは,1年前に誰が想像しただろうか?「ASCI EXPRESS」の“Miscellaneous :behind the news"のページでも報じているが,まだ,これからどのように話が進むのか見えていないのだが.
▲IBMとAppleのニュースの数日後,『Wall Street Journal』が,日本市場での米コンピュータメーカーについてレポートしている.
 PS/55Zシリーズによるコンシューマ市場での展開をねらう日本IBM.ローエンドモデルが好調で,'95年までに10%の市場シェアをめざすアップルコンピュータジャパン,そして,IBM PC互換マシンのトップメーカーCompaqの日本法人設立へと話が続く.今後のハードウェア,とくにノートパソコンでは,完全に先行する形となった日本メーカーの本拠地としての意味や重要性,難しさも指摘する.さまざまな動きの向こうにあるのは,ワークステーション分野との接点とマルチメディアと小型化技術だが…….     (遠藤諭)

 1991年はマイコンからBasic,MS-DOSパソコンの時代に関わってきた人たちが動き出した年だった。これからはWindowsの時代になってコンピュータ環境は全く変わってしまう。一般ユーザはプリインストールマシンを買ってマウスを使ってパソコンを操作する時代になった。MS-DOSからコマンドを打ち込む必要はなくなり、ファイル名を入力する必要もなくなりパソコンの基本的知識がなくてもソフトウエアを使うことができるようになった。時代は変わる。

この漫画が面白かったのでスクラップする。
ASCII1991(09)b14キンタの大冒険_W318.jpg

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プラズマディスプレイ(月刊ASCII 1991年9月号9) [月刊アスキー廃棄(スクラップ)]

今月のキーワード「プラズマディスプレイ」をスクラップする。
プラズマディスプレイ
 プラズマディスプレイといえば,J-3100シリーズのラップトップタイプを思い浮かべる人は多いだろう.今年6月には,プラズマディスプレイを搭載したDynaBook386/20も発表されている。一時期は液晶ディスプレイの急発展に押され低迷気味だったプラズマディスプレイだが,ノートパソコンに搭載できるほどの小型軽量化,バッテリ駆動を可能にする低消費電力化を実現し,再び注目され始めた。
■開発の歴史「誕生から現在まで」
 「プラズマディスプレイ」という言葉を最初に使ったのは,米国の研究者Slottow Bitzerらである.
 彼らは,「絶縁体である気体中に,高い電圧をかけると,気体分子が電離(プラズマ化)して気体の絶縁性が破れ,電気が流れて光を出す」という放電発光の原理を利用し,文字を表示することに成功した。1964年のことだ。これは,広告などに多用されているネオン管の表示とたいして違いはなく,ただ,ネオン(Ne)などの気体を封入したガラス管を小さく作り,それを面状に並べただけであった。
 その後'70年代に入り,日本の松下電子,沖電気,富士通,NHKなどが開発に参入。2枚のガラス板の間に気体を入れ,電極をマトリクス状に配置するなどして現在のプラズマディスプレイの原型が誕生する.本格的に商品として市場に出始めるのは'80年代に入ってからで,パソコンなどの表示デバイスとして採用され始めたのは,わずか8年ほど前である.もちろん、商品化に先立つ研究開発の場面では,高解像度のもの,階調表示ができるもの,カラー表示ができるものなど,次々と新しいプラズマディスプレイが作られてはいる.しかし,それらが安定した表示デバイスとして商品化されるには,あと数年はかかるという.

■発光原理
 プラズマディスプレイの「プラズマ」という言葉だけで考えると,なにやら,たいへん電気を食いそうな高エネルギーの発光現象のように思えてしまう。
 プラズマディスプレイの発光方式には大きく分けて2つの種類がある。ひとつは,気体に200~300V程度(電流はミリA程度)の電圧をかけ,気体中に露出している陰極から,気体外部の陽極に放電を起こす「直流型」。もうひとつは,10~100kHz程度の交流電流(低電圧)を気体に与え,電極にサンドイッチ状にはさまれた領域だけを発光させる「交流型」である(図).


ASCII1991(09)b16プラズマディスプレイ図_W520.jpg
 直流型は,電圧制御の違いで数種類に分けられるが、基本的には「カラー表示,多階調表示,高コントラスト(150:1程度)」が可能で,一方の交流型には「高輝度表示,低消費電力」という利点がある.
 カラー表示の場合は,オレンジ色の発光をするネオンガスの代わりに,放電の際に目には見えない紫外線を発するキセノン(Xe)などの気体を使う青/白/赤色などの可視光を発する蛍光物質をガラスの内側に塗っておけば,紫外線を受けることでそれらが発光するわけだ。最近では,テレビ画像表示用の20インチ程度のカラー表示プラズマディスプレイも試作され,さらなる高輝度化,長寿命化のための改良が進められているという.

■液晶ディスプレイと比べると……
 プラズマディスプレイは,小型化や消費電力などで液晶ディスプレイと肩を並ベ,ノートパソコンに搭載されるようになった。プラズマディスプレイは,今後の改良しだいで,バックライトが不可欠な液晶ディスプレイよりも,消費電力を抑えられるという.また,液晶よりもプラズマのほうが製造過程が単純で,コストを下げられるという利点もある.DynaBook386/20に搭載されたプラズマディスプレイは,直流型を採用し,消費電力を数W程度にまで低下させている。また,表示部の明暗のコントラスト比も100:1と,高価なアクティブマトリクス液晶の40:1程度を上回っている。さらに,明(液暗を切り替える反応速度も2μ秒(液晶では200~250ミリ秒)と高速で,マウスカーソルを見失うようなことはない.
 DynaBookに,今,プラズマディスプレイが搭載されたのは,グラフィックユーザーインターフェイスの普及が影響しているのだろう.MS-Windows3.0など,マウスを多用するソフトウェアが注目されているからこそ,反応の速いプラズマディスプレイが搭載されたのだ。
 しかし,プラズマディスプレイはカラー対応の開発面で,液晶ディスプレイに遅れを取っている。また,最近の液晶ディスプレイは20~50年の長寿命だが(バックライトの明度低下は除く),プラズマディスプレイの寿命は比較的短く、通電時間に左右されるという弱点もある(オレンジ発光のものは1~5万時間程度,白色/カラー表示の場合は1000~2000時間ほどの通電で暗くなる)。このあたりの問題は,今後の研究開発に期待しなければならない.    (池田)

プラズマディスプレイ知人がJ-3100を持っていて見せてもらったけど格好良かった。客先で使うときプラズマディスプレイだとこちらがプロだという目で見て貰えると言っていた。やはりプロは素人が使うような機材じゃいまいち信用してもらえないのだ。




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近未来商品解剖学 超小型GPS(月刊ASCII 1991年9月号8) [月刊アスキー廃棄(スクラップ)]

一般に使えるGPSが出たのはこの頃だった。
ASCII1991(09)g01GPS_W520.jpg
 その昔,陸が見えない大洋を渡る船は「天文航法」というもので位置を測っていた.これは,時計と暦,六分儀を使った方法で、簡単にいうと太陽が最も高くなる(南中時の)角度を測って緯度を知り,その時刻で経度を知るというものだ。17~18世紀に海外覇権を争ったヨーロッパの国々ではこの測位技術にみがきをかけ,正確な天文暦の作成を競ったという。今でも標準時として有名なグリニッジ天文台も,暦を作るためチャールズII世が国運をかけて設置したともいうし,正確な時刻を刻む時計には懸賞金がかけられた。
 大戦後には,最先端の電波技術を使って航空機の測位システムが開発され,やがて人工衛星の時代がやってきた。衛星の実用での最初の目的も,航法や測位の精度向上であったという。人間は位置を知るために大きな労力をはたいてきたわけだ。
 そして,GPSの登場である.GlobalPositioningSystemの略で、「汎地球測位システム」などと訳されている.地球上ならどこでも精密な位置を出せるように考えられたシステムだ。始まりは、軍事目的からで,軍艦や戦闘機の正確な位置を即時に割り出すために考えられた.開発したのは米国の国防総省いわゆるペンタゴンで,日本でも研究所レベルでは'85年頃から話題となり,地震予知のための地殻変動や測量用としてプロが使い始めた。
 いったいどうやって位置を出すのかというと,専用の人工衛星から発射される電波を使う。従来はサテナビという米海軍が開発したシステムを利用していたが,GPSはそれを発展させたものだ。
 ここで紹介するPYXISは,GPSによる携帯型の測位マシンである。ボタンを押せば、即座に現在の経度と緯度が表示される.590gという従来マシンの半分の重さで,かつ電池で駆動するので,海や山といった地図を相手にする場所で威力を発揮する(写真1)。価格も15万8000円と従来機の半額以下となり,海や山,ドライブのお供として個人で利用してもらおうという製品である.'87年にMotorolaが発売した受信器は500万円したというが,それが今や15万円で手に入るわけである。


ASCII1991(09)g01GPS写真1_W353.jpg
複数点との距離から3次元位置を出す
 現在動作している「GPS衛星」は15個である。図1のように,6つの円形軌道にそれぞれ4個ずつの衛星が回り,合計24個にする計画だ。

ASCII1991(09)g01GPS図1_W436.jpg
 軌道は地上約2万kmで,ひとつの衛星が1周するのに約12時間かかる.今はやりの衛星放送用の衛星は高度約3万6000km,静止衛星だから24時間で1周するわけで,GPS衛星はそれよりも低い軌道を高速で回っていることになる.
 衛星の重量は約850kgで太陽パネルを持ち、その幅は約6mある。軌道の補正や精度の調整のため,世界に分布した5つの基地からコントロールされている.では,衛星は何を積んでいるのかというと、ずばり「原子時計」である。そして,準マイクロ波を使い,自分たちの軌道情報とともに,非常に正確な「時報」を送信している.軌道データは50bpsで,時刻は約1Mbpsという速度で,精度は0.1マイクロ秒(1000万分の1秒)という数字だ.
 PYXISのようなGPSの受信装置は,受信した時報と本当の時刻とのズレを計算し,衛星との距離を計算する.電波が地上に到達するまでにかかった時間に電波の速度をかけるのである.
 さて、ひとつの衛星との距離が分かっても自分の位置は分からない.そこで複数の衛星からの距離を測って,自分の位置を計算することになる.
 幾何学で考えれば分かるが,空中のある1点から等距離の点の集合というと.それは球面である。2つの球面の交点の集合は円となる。さらにもうひとつ加わって、3つの球面の交わりで1点に絞られる(図2).結局4つの衛星からの信号を同時に受信して、経度,緯度,高度,時刻という4つの「解」を求めることができるのである.


ASCII1991(09)g02GPS図2_W520.jpg
 さらにおまけとして,移動している場合はドップラー効果によって移動速度と,その方向も瞬間的に測定する.
 現在,GPS衛星からは,C/AコードとPコードという2種類の信号が発信されている。このうちPコードのほうは軍事用として一般には公開されておらず,民間が使えるのはC/Aコードのほうだ。これを使うと,誤差は±30mで測定できるという.緯度に直すと約1秒にあたる。これは,C/Aコードそのものの精度のためで,高価な受信機でも,1点での観測ではこれ以上の精度は出ないという.
 ただし、冒頭で述べたように,GPS計画はまだ進行中であり,現在の衛星の数では24時間どこででも計測できるまでには足りない(18個は必要).

PYXISのしくみ
 PYXISは,こういった高度な計測と計算をどう処理しているのだろうか.
 実物を見ると上の白い部分がアンテナで,下の四角い部分がコンピュータだと思ってしまうが,そうではない。白くて丸い部分にはもちろんアンテナも入っているが,電波を受信して位置を計算するところまでが入っている(写真2).


ASCII1991(09)g02GPS写真2_W520.jpg
 アンテナの中の基板には,GPSのために開発したという専用のDSP(デジタルシグナルプロセッサ)と,CPU(Z80),32Kbytesのメモリ,そしてプログラムを収めた64KbytesのROMが入っている.ここで,受信した4つの電波を並列処理してデジタル信号に変換し,計算して結果を出してしまう(図3).

ASCII1991(09)g03GPS図3_W520.jpg
 結果は白いケーブルを使って液晶の付いた四角い操作部に送られ、各種演算を行なって表示される.補正が必要なのは,GPSが地球をきれいな楕円体であると仮定して設計されているためだ。地域ごとに,その楕円体との差を計算し,地図や海図と合うような経緯度を表示する必要があるからである。ちなみに,この楕円体による座標系は「WGS-84」と呼ばれ,長半径637万8137m,逆偏平率298.25…というものだ.
 さて、高度のほうも、この楕円体の表面を0として計算している.そのため,通常使われている「海抜何m」という数字より大きなものとなる。通常の平均海水面と楕円体との差は地域によって細かく異なるため,PYXISでは換算はしない。登山やグライダーで利用される場合は,地図上の基準点でその差を知っておく必要がある.

近未来パソコンに内蔵してほしい
 さて,どんな感じなのかと、編集部で電源を入れてみた。残念ながら電波は部屋の中までは届かないようで、衛星がとらえらえない(そんなときのため,アンテナ部を取り外して外に設置できるよう,延長ケーブルが付属している)。
 そこで,屋上に出て計測してみたすると,北緯35度39分26.8秒,東経139度43分04.2秒という.そんな数字を急にいわれても,合っているのかどうか分からない。立ち止まったまま受信していると,0.1秒の桁がちらちら変化し,たまに1秒の桁が変わる。確かに誤差は1秒以下のようだ。さっそく1万分の1の地形図で,当ビルの経緯度を計算してみたら,当然のようだが,1秒の単位で合っていた.PYXISが普及したら,経緯度のマス目が細かく入った地図が必要とされるかもしれない.
 PYXISには,これ以外に,観測点を記憶したり,設定した目的までの距離や方位を出すといった機能もある.ビルの谷間では計測できなかったし、衛星の数がまだ足りないので位置が悪いと計測できない時間帯もある。そんなときには,高度を計算せず,3個の衛星で経緯度と時刻のみを計測するので,1日のうちでまったく位置が出せないのは1時間ほどである.
 速度の精度は0.56km/hというから,かなり正確な速度計にもなるし,表示は1秒間隔だが,狂いのない時計としても利用できる.

 今回,PYXISとともに,汎用の部品としてアンテナ部がOEMで発売されるという。インターフェイスはRS-232Cというからコンピュータと簡単に繋がる。パイオニアがすでに車載専用としてCD-ROMの地図と合体した製品を出しているが,今後,このユニットを使った製品が出てくるだろう.できれば,ソニーからGPS内蔵のパームトップやノートパソコンを出してほしい。電源を入れれば,今地図上のどこにいるのかが表示されるというのは、方向音痴にはありがたいのだが.
 参考文献『新訂版GPS』(社)日本測量協会


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GPSは今ではカーナビで当たり前に使えかなり正確に位置を教えてくれる。凄い時代になったものだ。

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宇宙の旅第5話オカルトの星たち食連星(月刊ASCII 1991年9月号7) [月刊アスキー廃棄(スクラップ)]

ASCIIには科学雑誌に載るような記事がある。


第3回パソコンで体験する天文学 宇宙の旅
第5話 オカルトの星たち食連星
 大阪教育大学 助教授
 福江 純


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連星とは
2重星と連星

 夜空を見上げたときに,2つ(あるいはそれ以上)の星が隣り合って見えているものを「2重星」(あるいは「多重星」)と呼んでいる.2重星には,実際に2つの星が近くにあるものと,たまたま視線方向に並んでいるため、見かけ上くっついて見えるが,実際の距離は遠く離れていて物理的に無関係なもの(光学的2重星)も含まれている(図1)。

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 2重星として有名なものに,北斗七星のヒシャクの柄の部分の星,2等星ミザールと4等星アルコルがある.昔は,この2つの星が肉眼で分かれて見えるかどうかを、視力検査に使っていたこともあるという.また,小さな望遠鏡で見て,最も美しいと思うのは,夏の星座はくちょう座のβ星「アルビレオ」だろう.アルビレオははくちょうのくちばしのところにある黄色の3等星と青色の5等星からなる2重星だ.色の対比から,黄色の星が金色に輝いて見える(イラスト1)これらは,見かけの上で2つに見える星たちだ。

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 一方,2つの星の距離が近くて、相手の星と重力的に結びついているもの(すなわち,互いに相手のまわりを回っているもの)を,特に「連星(連星系)」と呼んで、光学的2重星と区別している.
 天文学として面白いのは、万有引力で結び付いた連星のほうである.なぜなら,連星の場合,詳しい観測を行なうことによって,連星を構成している星の質量を正確に計算できるからだ。逆に,単独の星の場合は,その質量を正確に決定することはできない。質量は、天体の物理量の中でも一番基本的なもので,質量を求めるのは非常に重要なことなのだ。
 もっとも、望遠鏡で見たときの美しさは、2重星でも連星でも変わらないのだが…….

連星の種類
 単なる2重星か,連星かは,星を近くから見ないと判別できないのだろうか?もちろん,いちいちそばまで行かなくても,2重星か連星かを知ることはできる。観測的にはつぎの3通りの方法で,連星であることが分かる.
 (1)まず望遠鏡で見たときに,2つの星がはっきり分かれて見える場合.それぞれの星の位置を精密に測定し,天球面上での2つの星の運動(固有運動)を追いかけていくと,お互いのまわりを回っているのが証明されることがある。図2はシリウスAとBの天球面上での動きを示したもので,明らかにお互いのまわりを回っている。このような連星を「実視連星」という.ただし実視連星は,しばしば連星間の距離が大きく(だからこそ望遠鏡で分離して見えるのだが),公転周期も長いことが多いため、数年から数十年も観測を続けなければ,連星であることが検証されないこともある.


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 (2)望遠鏡で2つの星が分離して見えないときはどうするのか? たとえば連星の軌道傾斜角が非常に大きくて,連星の軌道面をほとんど真横から見ているような場合,2つの星がお互いに相手を隠すようなことが起こる(食).そのようなとき2つの星を合わせた全体の明るさの変化を精密に測定していくと,主星の一部が伴星によって隠されたときや、逆に伴星の一部が主星によって隠されたときには,全体の明るさが暗くなる。図3はそのような明るさの変化を、横軸を時間,縦軸を明るさのグラフ上に表わしたもので「光度曲線」と呼ばれる.このような主星と伴星の食現象による変光によって連星であることが判明したものを「食連星」とか「食変光星」と呼ぶ。食連星として有名なものには,ペルセウス座β星のアルゴルがある.

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 (3)また同じく軌道傾斜角が大きい場合には,軌道運動に伴う視線速度の変化によって星から電磁スペクトル中のスペクトル線(星の場合,普通は水素原子によって引き起こされる吸収線)がドップラ偏移(注1)を起こす.すなわち軌道上を手前に近づいたときはスペクトル線の波長が実験室で測定される波長より青いほうに偏移し,逆に遠ざかる場合は赤方偏移する(図4)。天体の電磁スペクトルを解析することを天体分光というが,このようなスペクトル線のドップラー偏移の周期性から連星であることが分かるものを「分光連星」と呼ぶ
 ミザールは,まずアルコルと2重星であり,望遠鏡で分解できる実視連星A,Bからなり,さらにミザールAとミザールBは,それぞれが分光連星という,非常に複雑なシステムなのである.
 しかし,軌道傾斜角が小さい場合は,食も起こさず,ドップラー効果によるスペクトル線の偏移も分かりにくいため,連星かどうかの判別がつかない.その場合,やっぱりそばまで行ってみないことには…….


注1:水面の波や音(音波)で顕著な現象.発信源が近づく場合には、その波長が短く感じられ,逆に,遠ざかる場合には波長が長く感じられる.一番身近な例は,パトカーや救急車が目の前を通過するときにサイレンの音が変わることだろう.光は粒子と波の性質を持つので,その波の性質が生かされてドップラー偏移を起こす.

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 ここでは観測的な分類を紹介したが,連星間の距離(あるいは公転周期の大小)によっても,「遠隔連星」,「近接連星」などの分類ができる。
 遠隔連星は星の半径に比べて連星間距離が大きなもので,連星の星同士は重力的に結びついているが,それぞれの構造や進化は単独星の場合と同じである.一方,近接連星は連星間距離が小さく星の大きさとあまり変わらなくなったものである.近接連星では,潮汐力のために星の構造が球状からずれてきたり,さらには物質やエネルギーの交換が起こって,星の進化さえ単独星の場合とは違ってくる。特に天体の活動とのからみで,近接連星は非常に重要な天体である.
 なお実視連星の多くは遠隔連星であり,分光連星などは近接連星であることが多い。

連星の割合
 恒星のうちで連星をなしているものの割合はどれくらいあるのだろうか?
 たとえば太陽近傍の星で調べてみると,太陽も含め,41個のうち,実に21個もの星が2重あるいは3重の連星になっている。この観測事実を敷延しただけではないが,われわれの銀河系のおよそ2千億の恒星のうち,その半分は,別の恒星と対になって連星を形作っていると考えられている。連星というのは特殊な天体ではなく,銀河でもごくありふれた天体なのである.星を見たら連星と思え!ということだ。

連星の形成
 ではそのような連星は,どのようにして形成されるのだろうか?ひとつの考え方は,星間雲から星が誕生する際に,最初から連星として生まれるのだというものである.星間のガス雲が重力収縮して星が生まれるとき,回転していると,複数の塊に分裂して,最終的に連星あるいは多重連星になるのだろう.最近,赤外線天文学ミリ波天文学(注2)の進展により,星の誕生現場が見えてきた.生まれたばかりの星は,塵に囲まれた強い赤外線源として見えるが,分子雲の中心部に確かに複数の赤外線源が発見されることがあるようだ。

注2:光(可視光)だけを観測手段にしていた過去の天文学とは異なり,可視光以外の電磁波のうち,特に赤外線やそれよりも波長の長いミリ波(電波)を観測対象にした天文学宇宙空間には、多くの暗黒物質(ダスト)があり、これは光(可視光)を通さない。しかし,赤外線より波長の長い電磁波は通るため,そのダストの向こう側(銀河系の中心部など)が観測できる.地球上の大気は観測の邪魔になるため、気球や人工衛星から観測されることが多い.

 すなわちいくつかの誕生現場では実際に連星が生まれつつあるようである。また大型数値シミュレーションによっても,ガス雲の重力収縮の際に連星ができることは確かめられつつある。おそらく大部分の連星は,誕生時に形成されるのだろう.太陽系だって,木星を伴星とする連星と考えられなくはない
 また別の考え方としては,星が別の星の近くを通り過ぎる際に,重力によって捕獲されて連星になるという説もある。太陽系周辺のような銀河円盤部では,星と星の間隔が数光年もあるため,2つの星が連星になれるほど近くを通る可能性はほとんどない。したがって太陽近傍の普通の連星の場合には、この形成メカニズムは向かないと考えられている。しかし宇宙の中でも星の密度が非常に高い場所,たとえば太陽系近傍より1億倍も星の密集している銀河系中心部や球状星団中心部においては話は別だ。星と星は比較的頻繁に遭遇し(毎日とか毎年というほどではないが),場合によっては連星にもなるだろう.最近のX線観測によって,いろいろな球状星団中で,中性子星と普通の星からなる連星がいくつも発見されているが,これらのX線連星は,中性子星が別の星を捕獲してできたのではないかと思われている.


プログラムの実行
 以上述べたような連星について,その運動をシミュレーションしてみよう.
 プログラムをスタートさせると,最初に連星を構成する星の候補が11種類ほど表示される(画面1a).このうち0番から6番は主系列星で,7番から9番はコンパクト星,11番は降着円盤である。まず主系列星だが,これらはO型,B型,A型(血液型ではない),F型,G型,K型,M型という,いわゆるスペクトル型の順に並んでいる.つぎにコンパクト星のうち,7番のDA型は白色矮星で、8番は中性子星,9番はブラックホールの場合である。10番の降着円盤はコンパクト星の周辺に形成される天体である.それぞれの天体に関して,表面温度(絶対温度を単位),質量(太陽質量を単位),半径(太陽半径を単位)など典型的な物理量も表示される.
 このメニューから,連星の2つの星を選択すると,動画面(画面1b)に移り、リターンキーで連星は公転を開始する.動作中では,カーソルキーで軌道傾斜角を変えられ,[S/s]キーで再スタートとなっている.
 なお,連星間距離が小さい近接連星では,実際には星の形は球状ではなくなるが、プログラムでは簡単のために球としてある。同様に降着円盤は厚さの無限に薄い円盤としてある。また星の色は本当の色ではない.これについてはまた触れることもあるだろう.


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連星の仕組み
 2つの星が連星である場合,2つの星はニュートンの万有引力の法則に従って,一般には楕円軌道の「重心」のまわりを描いて運動する.ただし,楕円軌道の計算はややこしいので、ここでは簡単な円軌道の場合で考えていこう。その前に少し,連星の構成を説明する。まず,連星が運動する面を「軌道面(公転面)」といい,公転の軌道面に垂直な方向と視線の方向のなす角を「軌道傾斜角」,連星がお互いのまわりを回る周期を「公転周期」という.さらに,2つの星の間の距離が「連星間距離」であり,それぞれの星の重心からの距離を「軌「道半径」という(図A).
 2重星では明るいほうを「主星」,暗いほうを「伴星」と呼ぶ慣わしだ。また,主星と伴星の質量の比を「質量比」と呼ぶ.連星を構成している星の質量や連星間距離,公転周期などの間には,いくつかの簡単な関係が成り立つ。
 連星間距離をa,星1および星2の軌道半径をそれぞれ a1 , a2 とすれば,
a1 + a2 = a  ⋯⋯ となる。  また,星1および星2の質量をそれぞれ M1 , M2 とすれば,重心に対するテコの原理から,
a1 a2 a1 + a2 = M2 M1 M1 + M2  ⋯⋯ が成り立つ。  したがって比例式を整理すれば,星1および星2の軌道半径は、それぞれの質量や連星間距離を用いて,
a1 = a× M2 M1 + M2 , a2 = a× M1 M1 + M2  ⋯⋯ のように表される。 2の質量の星1の質量に対する比率を質量比
q = M2 / M1 ⋯⋯ とすれば, これらの式は,
  a1 a = q   1+q ,   a2 a = 1   1+q  ⋯⋯ のような式になる。  次に,連星の公転周期Pと連星間距離aの間には,ニュートンの万有引力の法則から,「一般化されたケプラーの第3法則」というものが成り立つ。この法則は、万有引力の定数Gを用いて,
  P2   a3 =   4π2   G ( M1 + M2 )  ⋯⋯ のように表される。 連星の軌道周期や連星間距離が観測から得られれば,この法則を用いて,連星の星の質量(の和)が求まる.さらに,軌道半径の比から質量の比が決まるので,最終的に連星の各星の質量が求められることになる.

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降着円盤
 近接連星では,互いの質量の交換などにより,しばしば激しい活動が生じるが,その主役を演ずるのが「降着円盤」と呼ばれる代物である.
 近接連星,片方の星は普通の星で相手の星が白色矮星や中性子星などいわゆるコンパクト星(ブラックホールも含む)の場合、普通の星とコンパクト星の質量はあまり変わらないので,重力圏の大きさも同じくらいである.ところが,コンパクト星の半径は非常に小さく,その重力圏内はほとんどからっぽの状態にある.相手の星がコンパクト星との重力圏境界まで膨らんでいると、普通の星のガレスは連星系の星の重力圏の境目である「ラグランジュ点」を越えて,コンパクト星の重力圏に流入する.
 流入したガスは,星の自転のためにコンパクト星のまわりに渦巻いて集まり,ガスの円盤を形成することになる.これが降着円盤だ(イラストのオレンジ色の部分).
 円盤とはいっても、円盤投げの円盤やCDのような一枚の板ではない.硬い実体があるわけではなく,ガスでできているのだから,割とふわふわしたものである(と思う)。降着円盤の中では,中心の星からの重力とガスの回転による遠心力がほぼ釣り合っており,長時間円盤状のまま維持される.そして,その回転速度も中心部と円周部では異なり,コーヒーにミルクを入れてかき混ぜたときのように,中心に近いほど速く回っている(CDのような回転を「剛体回転」,降着円盤のような回転を「差動回転」という).
 降着円盤内を回転するガスは,半径が少し違うと回転の角速度が異なり、隣り合ったがス同士でも遅いものと速いものがある,そのため、ガス層の間で摩擦が働き,ガス同士がこすれ合って熱が生まれる。高温になったガスは,ついには強力な光や電波を放射して輝き始め,光学望遠鏡や電波望遠鏡で観測できるようになるのである.光では見えないブラックホールも,その周囲の降着円盤から放射されるX線で見ることができる.
 降着円盤の内部でのエネルギーの流れを見てみれば、以上のことは,中心の天体に対してガスが持っていた重力の位置エネルギーが,摩擦を通して熱エネルギーに変わり,さらに,輻射(光や電波)エネルギーに変わったと考えることができる。すなわち降着円盤は,ガスの重力エネルギーを効率よく光(電波)エネルギーに変える転換炉なのである.


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Windows 3.0(月刊ASCII 1991年9月号6) [月刊アスキー廃棄(スクラップ)]

村瀬康治氏のWindows 3.0の解説が提灯記事ではないので好感が持てた。
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傍観は損!MS-DOSアプリこそWin3上で
 Win3は実にありがたい。パソコンを自由奔放に利用できる。またそのことによる一種の安心感は、従来のMS-DOSでは得られない.Win3は「大船に乗ったつもりで…」の「大船」に近い.それも大きいだけでなく柔軟である.「縦横無尽」という形容がWin3マシンの動作にはピッタリかもしれない。単機能で実直なMS-DOSマシンが,Win3によって,各種のアプリケーションを文字どおり「縦横」に操れるようになる。「無機的」なMS-DOSマシンが「有機的」なWindowsマシンに進化するのである.Win3の本質は,「各種アプリケーションの有機的活用を可能にする」
ことにある。この「有機的活用」のありがたさや安心感を経験した人は,もうWin3を手放すことはできない。抽象的ではあるが,とりあえずWin3をこのように表現しておきたい。
 さて,日本におけるWin3はまずPC-9801シリーズ用のものが今年の2月に発売され,予想をはるかに上回る売れ行きが続いている.現在では,主要各社のWin3がほぼ出そろった。登場以来,そのあらましについては,各種の雑誌などで盛んに取り上げられているので,ここでは話を先に進めることにしたい。
 日本より丸1年先行している米国でのWin3人気は絶大であり,驚異的な普及カーブを描きつつ完全に定着した。そのことからもWin3は「好感度」が高く,一般ユーザーに愛される要素を強く持ったOSであることがうかがえる。事実、筆者のまわりを見ても、条件の完備したパソコンシステムにおけるWin3を体験した人は、全員がファンになっている.Win3には、条件の完備したマシンを使うことが重要である。注目しなければならないのは,286マシンや、メモリの足りない386マシンなどで体験した人のほとんど全員が「アンチWindows派」になってしまうことである。両者のWin3には,それほどの差がある。この事実をしっかり認識しておいてほしい。
 日本でのWin3は,米国に1年遅れてスタートしたとはいえ,もはや「新製品紹介」の段階は過ぎ「実用の季節」を迎えている.「Win3対応アプリケーションが出そろうまでは様子を見たほうが...」などの発言は,おそらくWin3をちゃんと体験したことのない人が憶測で言っているに違いない。当を得ていないだけでなく,Win3の本質的な機能を理解していない。従来のMS-DOS用のアプリケーションでも,Win3上で実行することによるメリットはたいへん大きいのである.それだけでもWin3を購入する価値は十分にある。Win3はMS-DOSアプリケーションの実行にも,投資以上の利益を私たちユーザーに与えてくれるWin3によってもたらされる「柔軟で有機的な環境」「大船の安心感」は,どんどん利用しなければ損である.当面,
「パソコンの操作環境,およびMS-DOSアプリケーション活用の基盤(プラットフォーム)としてWindowsを使う」
だけでよい。それだけでも,日常のパソコンワークが実に快適になる.Win3という新しいプラットフォーム上で、従来のMS-DOS用アプリケーションを縦横かつ柔軟に活用できるようになる.それが可能になるWin3のありがたさは,いままでパソコンを有効に活用してきたユーザーであればあるほどよく分かる.Win3とは「アプリケーションを有効かつ効果的に実行するための新しい環境」にほかならないからである(図1).
 ソフトウェアの構造的には,Win3はMS-DOS上の一種のアプリケーションであるが,その機能は「MS-DOS+Windows」で新しい基本ソフトウェア(OS)と見なければならない。386/486マシンと5Mbytesのメモリがあれば,Win3はMS-DOSとは比較にならないほど快適な操作環境と,アプリケーションの実行環境を提供してくれる。とにかくまずWin3をインストールし,各自が日常使っている各種のMS-DOSアプリケーションをWin3上へ移すことから始めてほしい。格段に進化した設備・機能・生活環境が整った「新居」に引っ越すことにより、従来の環境では望めなかったMS- DOSアプリケーションの縦横の活用が可能になる(画面1).


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 記事を読むとWindows3.0はMS-DOS上のメニューソフトの1種でしかない。どうしてそんなに褒めるのか分からない。日本語を使っているとTEXT VRAMがあるからDOSソフトが使い物になるのになぜWindowsでDOSソフトを制御しなければならないのか。MS-DOS上のメニュー切り替えソフトならもっと高速で安定したソフトが欲しかった。Windows3は良く落ちた。Windows 3.1でも良く落ちた。こんなに落ちるソフトを勧めるとはとんでもない。
「「MS-DOS+Windows」で新しい基本ソフトウェア(OS)と見なければならない」何を言っているのだ。WindowsはMS-DOS上のアプリケーションでそれもメニュー形式のアプリケーション切り替えソフトじゃないか。何が新しいOSだ。騙されないぞというか私は騙されなかった。Windowsである必要はなかった。
過渡現象
 いつのときも,何事も、新しい思想や先進的なものが出現したときには「流言飛語」のたぐいが飛び交うものである.10年前にMS-DOSが登場したときもそうであった.一般ユーザーは,MS-DOSに付属の各種のコマンドやユーティリティプログラムを触り,たとえばCOPYコマンドがCP/Mのそれ(PIPコマンド)より貧弱であるといった皮相的なことを取り上げ,MS-DOSそのものを批判していた.またCP/Mプログラマーの中には,MS-DOSのUNIXライクな設計思想や内部機能の応用のしかたを理解せず,的外れな批判をする人も多かった。
 MS-DOSの中身と本当の実力がソフトウェアの開発者に広く理解されるようになったのは,おそらくMS-DOSが登場して4~5年が経過してからだと思う.そのあたりから,ようやくMS-DOSならではの機能を活用した,優れたアプリケーションが登場し始めた。それ以前は,CP/Mの延長線上のような形態の古いアプリケーションが多かった.
 MS-DOSの登場から10年、いま一般のユーザーで,MS-DOSのCOPYコマンドの機能が貧弱だからといって,MS-DOSそのものを批判する人はいない。付属のコマンドやプログラムなど,MS-DOS本来の機能とは関係ないことぐらい分かっている.COPYコマンドで用が足りなければ、別売のたとえば「エコロジー」とか,フリーウェアの「FD」といった強力なツールを使えばよいのである(画面2).
 MS-DOSもWin3も,その評価の最も重要なポイントは,
『それらのOSを利用して,プログラマーがいかに優れたアプリケーションを作成できるか』
ということにある。付属のCOPYコマンドは貧弱でも,エコロジーやFDなどのすぐれたアプリケーションが作成でき,それが活用できる.「基盤」でありさえすればよいのである。つまり、パソコンシステムの総合的な「基盤」としての「器量」こそが問題なのである.
 いま、プログラマーたちは必死でWin3のプログラミングに挑戦している.ソフトメーカーにとって,Win3アプリケーションの開発に遅れることは死活問題になりかねない。その昔,BASICからCP/Mへ,CP/MからMS-DOSへの移行につまずいたソフトメーカーが姿を消していったように.
 さてそのような,10年前にMS-DOSが登場したときと同じような「過渡現象」が、いまWin3でも繰り返されている.私たちは,Win3に関するさまざまな意見の中で,どうでもよい皮相的なことと,Win3の本質にかかわる重要なこととの切り分けが必要である.
 たとえば,Win3に付属のファイルマネージャは,確かに使いやすいとはいえない。そういった意見はどんどんMicrosoftに言うべきである.Microsoft自身もそう思っているかもしれない。ここで大切なことは,ファイルマネージャが使いにくいということと,Win3の本質とは関係ないことである。付属のファイルマネージャなど,MS-DOSでいえば,先ほどから話題にしているCOPYコマンドと同じである.MS-DOSにおいて,ファイル操作に関するより高い機能や操作性を望むユーザーが,エコロジーやFDを使うように,Win3においても,Winエコロジー」とか「WinFD」などといったものを使えばよいのである。ソフトメーカーやフリーウェアから,遠からずそういった「出来のよい」ユーティリティが登場するに違いない。そうなれば,付属のファイルマネージャなどは放り出して,代わりにそれらを組み込めばよいのである(図2)。
 問題にすべきは,「Winエコロジー」や「WinFD」などを作成する際に,それをプログラミングする優秀なプログラマーたちの腕に十分応えられるOSであるかどうかである。そのことは,MS-DOSのエコロジーやFDの例からもすでにお分かりのことと思う.Win3に付属の「おまけアプリケーション」を取り上げてWin3を評価してはならない。付属のアプリケーションなど,極端にいえば「どうでもよい」のである.Win3の評価は,各ソフトメーカーが,それぞれの分野ですばらしい製品を生み出し,それをユーザーが十二分に生かせる「基盤」であるかどうかを問題にしていただきたい。つまり,Win3の基本思想,基本機能,ソフトウェアの開発環境などが優れていれば、結果として私たち一般ユーザーが歓迎する機能や操作性を備えたアプリケーションが生まれ,それを活用できるわけである.
 各ソフトメーカーのプログラマーの技術力も,10年前のMS-DOSへの移行時にくらべて格段に高くなっている.MS-DOSの場合は,その基本思想や基本機能が広く理解されるには3~4年以上を必要としたが(話題にしているエコロジーFDの登場時期もその参考になる),Win3の場合は1~2年でかなりのレベルに達するのではないかと思っている.そうなったときのアプリケーション群を実行するWin3の実力がどれほどすばらしいものであるか,いまから楽しみである.


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だから焦ってWin3を導入する必要はないということだ。アプリが出そろってからでいい。OSを使いたいのではなく、OSで動くソフトウェアを使いたのであるから使いたいアプリが出たらOSを買えばよい。今使っているマシンはたいてい新しいOSにとっては非力であるから、時間をおいてからマシンを用意した方がいい。タイトルを「買うのは今でなく、アプリが出てから」が適当ではないか。
アンチWin3派にならないために「メモリ5Mbytes以上の386/486マシン」が前提条件
386/486マシン
 Win3の実用には,5Mbytes以上のメインメモリを装備した386/486マシンが前提条件である。286マシンは,軽快なMS-DOSマシンとして活用するのが賢明であり,Win3マシンとしては考えないほうがよい。まして今回のテーマである「MS-DOSアプリケーションの実行」など,286マシンのWin3上で行なうメリットはほとんどない.したがって,当記事では286マシンは対象にしていない(図 3).
 ただし286マシンでも、一部の機能や動作に制約があるもののWin3は動作する.そのうえこともあろうに,286マシンにおけるWin3の動作モードは「スタンダードモード」と呼ばれている.さも286マシン上での実行が「Win3の標準的な動作モード」であるかのように錯覚しかねない.ちなみに,386/486マシンにおけるWin3の動作モードは「エンハンスドモード」という.つまり「スタンダードモード」に対して「機能アップモード」なのである.
 しかしWin3の動作モードを,この「スタンダードモード」/「エンハンスドモード」という名前どおりに受け取ってはならない.Win3が登場する以前にも,8086マシンや286マシンに対応した旧バージョンのWindowsが使われてきた歴史がある米国においては(日本ではほとんど使われなかった),新しいWin3を「エンハンスド」と呼んでも成り行き上しかたがない。ところが新時代のWin3は,386/486マシンによってはじめてその真価を発揮する.
 Win3は,386/486マシンを主ターゲットとすることによって過去のWindowsと決別し,生まれ変わった.286マシン上で実行する場合と,386/486マシン上で実行する場合との違いは,単にスピードが速い遅いの問題ではない.メモリ操作に関する重要な部分(それらは,Win3の本質的な機能にかかわっているの動作の仕組みがまるで違うのである。言い換えればWin3は,286CPUでは実現できない386/486CPUならではのメモリ操作機能を有効に利用したからこそ,過去のWindowsとは「まったく別物」といってよいほどの進化を遂げることができたのである.
 たいていの文献には,「Win3は,基本的には,8086/286/386/486の各CPUを持ったパソコンに対応し,その動作モードは,リアルモード,スタンダードモード,386エンハンスドモードがあり…」などと解説されているが,これを真に受けてはならない。8086は問題外としても,
『286マシンでのWin3と,386/486マシンでのWin3とは別物』 と考えていただきたい。先に述べたように,内部の動作がまるで違うのである。そして,その違いの部分こそが,Win3の真価が発揮される部分なのである。


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こうはっきり書いている点が村瀬康治氏に好感を持てる点だ。つまりは、PC-9801VMとかPC-9801VX,PC-9801RX等を使っているユーザはおよびでないということだ。
メモリ5Mbytes以上
 386/486マシンであっても,メインメモリの容量が少なければ「エンハンスドモード」にはならない。たとえばPC-9801シリーズにおいては,640Kbytesのほかに3Mbytesが必要とされている(640×400ドットのディスプレイの場合)640Kbytesのほかに1Mbytesのメモリが標準装備されているマシンの場合は,最低でも4Mbytesの増設メモリを追加する必要があると考えていただきたい.
 386/486マシンの活用には大容量のメインメモリが必要である.386/486CPUの威力は,広大なメモリに複数のプログラムや大量のデータを展開し,それを386/486CPUならではのメモリ操作機能を使って,自由にアクセス(読み/書き)できることから発生する.メモリの少ない386/486マシンでは(つまり,プログラムやデータをメモリ上に用意できないのでは),386/486マシン本来のパワーの出しようがない.386/486マシンに大容量のメインメモリが要求されるのは当然なのである。
 MS-DOSが登場したころの16bitマシンのユーザーメモリは,たいてい128Kbytesが装備されているにすぎなかった。また初期のアプリケーションのほとんどは,その128Kbytes以下で実行できた.しばらくしてアプリケーションが発展し,実行するには256や384Kbytes程度のメモリが必要になってきた。そのときにも,「近頃は384Kbytesものメモリが必要なアプリケーションが増えてきた。むやみにメモリを食うのは問題である」などと言われたものである.いま,MS-DOSマシンは640Kbytesのフルメモリを装備することは常識以前であり,さらに1Mや2MbytesのEMSメモリを装備することも当然のこととなった.またそのことを非難する人もいない.
 いま,Win3のメモリに関しても10年前のそれと同じようなことが言われている。より快適な環境,より高い機能を実現するには,その負荷を賄えるだけのマシンパワーが必要であることは言うまでもない.Win3の重い負荷に耐えられる強力エンジンの条件が「386/486マシンと,640Kbytes+5Mbytes以上のメインメモリ」なのである.

 全くその通りだった。初期のPC-9801はBASICで使うことが前提だったので127Kbytesで良かった。BASICだけでは使いきることができなかったから。メモリ640Kbytesで足りないという時代になったのは一太郎や1-2-3で仕事をするようになってからだ。
動作モードは「エンハンスドモード」が前提条件
 いままでの話は「386/486マシンでのWin3=エンハンスドモード」として述べている。ただし386/486マシンにおいても、必要であれば「リアルモード」や「スタンダードモード」で実行することができる。とはいえ,その必要も過去のWindows用のアプリケーション(IBM PCにはたくさんある)を実行するなどの特別な場合に限られる。結局一般的には,リアルモードやスタンダードモードで実行することはまずない。
 動作モード別のベンチマークテストの記事などにも惑わされてはならない。リアル/スタンダード/エンハンスドモードにおけるベンチマークテストの結果は,全体的にスタンダードモードのほうが少し速い。先ほども述べたように,OSの機能が高度になればなるほど,オーバーヘッド(目的の処理を行なうために付随する処理の部分)は大きくなる。エンハンスドモードとその他のモードとは,同じWin3であっても、動作や機能は「まったく別物」である.より高度な機能を備えたエンハンスドモードが,単純な機能の動作モードにくらべ,いわゆる「ベンチマークテスト」で劣るのは当然といえる(図4).
 だからといって,Win3をリアルモードやスタンダードモードで実行するのはばかげている.ある仕事の高速処理だけが目的ならば,そもそもWin3などを使わずに,MS-DOSマシンのままのほうがよほど速い.Win3対応アプリケーションでなく,MS-DOSアプリケーションでよいのである.先ほどから繰り返しているように,Win3はエンハンスドモードで実行してこそ,パソコン新時代を拓く総合環境を備えたプラットフォームといえる。オーバーヘッドの負荷は,マシンのパワーで補えばよいのである。
 この「OSパワーvs.マシンパワー」の戦いはWin3に始まったわけではなく,図5のように8bitマシンの時代から延々と続いている.
 こういった過去の推移からも,マシンとOSの歴史は「抜きつ抜かれつ」のパワー競争であったことが分かる。このことを考えると,動作モード別のベンチマークテストを行なうこと自体はよいとしても、その結果に大きな意味はないことに気付く。このようなテストが行なわれることは,先ほどから話題にしている「過渡現象」のひとつとして別に悪いことではないが,「高度な機能を実現するには,より多くのパワーを消費する」(つまり,マシンパワーが同じなら処理速度が低下する)という大原則を忘れてはならない.いずれにしてもWin3はエンハンスドモードで実行しなければ,わざわざ利用する意味はない。したがって,当記事におけるWin3は,「エンハンスドモード」での動作を前提にしていることをあらかじめお断わりしておきたい.


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 この辺も同意する。Win3が使いものにならないのではなく、マシンスペックが低いのでWin3が使えないだけだった。CPUだけではなく640×400ドットではあまりにウインドウが狭く使いづらい。Win3でワープロ、表計算をやっていようものなら「なぜそんな貧弱な環境で仕事をしているのか」と責められても仕方がないことだった。
筆者も体験前はWin3懐疑派だった
 昨年の初夏であったか,米国で登場したWin3が爆発的に普及し始めたという噂が聞こえたころ,筆者はときどきアスキーのスタッフから新しいWin3について教えてもらったり,なんだかんだと議論したりしていた。そのころの筆者はWin3について肯定的ではなかった。マルチタスクやスイッチングの機能も,一般的にはそれほど必要かつ有用とは考えていなかった.いま考えれば,要するに最初に述べた「Win3の本質」を理解していなかったのである。自分自身の経験から、頭の中だけや話としては分かっていても,実際に体験してみないことには本当は理解できなかったと言わざるを得ない。
 夏が終わったころ,自分の机の上でもIBM PC用のWin3を東芝J-3100上で動かして遊べるようになった.少しずつWin3の姿が見えてきた。やがて,98用Win3のテストバージョンができあがり,98RA上でも動くようになった。そして常用のMS-DOSアプリケーションであるワープロソフト「新松」,エディタ「MIFES」,通信ソフト「まいと~く」,CADソフト「CANDY4」などをWin3上から実行できるようにした.
 Win3の操作に慣れ,Win3が次第に分かってくると,それらのアプリケーションは常にWin3上で実行するようになっていた。もちろんMS-DOS上での実行は従来どおり可能であるが,それはまったく行なわなくなった。とにかくWin3上で実行するほうが快適であり,さまざまな状況に柔軟に対応できる安心感がある。たとえばワープロ作業をやりかけのままにして通信ソフトを起動してネットにアクセスができる。同様にエディタも使え、ゲームもできる。また逆に通信しながらワープロが使える。こういったWin3の「なんでもこい」といった安心感が実にうれしい.文字どおり「大船に乗れる」のである.
 やっとWin3の真の姿が見えてきた.GUI(グラフィカル・ユーザーインターフェイス)は「脇役」であり,Win3の「主役」は,アプリケーションの実行機能を中心とする「パソコンシステムの有効利用を可能にする環境」であることが分かってきた。そして今年の春,Win3は正式に発売された.
 それ以来筆者は,周りの人を捕まえては,早くWin3に乗り移ることを勧めている。昨年の夏ごろは乗り気でなかったアスキー・ラーニングシステムのWindows三部作の話も,書かなければならない義務感に変わり,すでに『入門MS-Windows』は半年以上かかって書き上げた.8月下旬には店頭に並ぶと思うので,ぜひ手に取って中身を確かめてみてほしい。
 事実,MS-DOS用のアプリケーションを実行するだけでも,Win3によって得られる総合環境は感激ものである.Win3対応アプリケーションであれば,その数倍の御利益がある。これをきっかけに,みなさんもぜひWin3の「大船」に乗り移ることを検討してみてはどうであろうか。次回は,Win3のインストールを実際に行ない,Win3の操作の基本や,MS-DOS用アプリケーションのWin3上での実行などについて具体的に解説する.


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 それはない。Windows 3.1から本格的に使い始めたが、良く落ちた。安定性が悪かった。PageMakerで仕事をしているときは1ページ作るたびに保存していた。またDOS窓も安定してなかった。怖くて使えなかった。1台のマシンで○○をしながら○○をするというにはハードもソフトもまだまだだった。DOSのソフトをWindowsから不安定な状態で動かすなんてとんでもない。WindowsをかませずDOSでやれよと思う。文書はこまめに保存しろよと思う。DOSのソフトが安定してきたからこまめに保存することを怠るようになった人たちがいるということだ。

AV STRASSEにTOWNSのWindowsが紹介されていた。
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640×480ドット,1677万色中256色の表示が特徴のFM TOWNS用MS-Windows
日本語Microsoft Windows V3.0
 富士通からFM TOWNS対応のウィンドウシステム「日本語Microsoft Windows V3.0 L12」が発売された(写真1).
 本誌にはMS-Windowsに関して「Win3 SIG」という連載があるので,MS-Windowsやその上のアプリケーションに興味のある方はそちらをご覧いただくことにして,ここではFM TOWNS版の特徴を挙げてみよう。
 FM TOWNS版は,640×480ドットの画面表示に加え,1677万色中256色を使ったグラフィックスを表示できる(写真2).つまりIBM PCのVGA以上の表示が可能であるため,IBM PC用のアプリケーションを利用する場合でも、画面に同時に表示できるグラフィックスの色数が16色に制限されたり,400ラインしか表示できないためアプリケーションのウィンドウなどが画面の外にはみ出してしまったりというハードウェアによる制限はない.
 また,MS-DOS上のソフトウェアを同時に複数実行できる“386拡張モード”が標準でサポートされているが,これは全モデルが32bitのi386を搭載したFM TOWNSならではといえるだろう.
 日本語Microsoft Windows V3.0 L12を動かすためのハードウェアとしては,メインメモリ2Mbytes以上,ハードディスクに7.5Mbytes以上の空きが必要とされている。実際にインストールして使ってみた感じでは,2Mbytesでは頻繁にディスクアクセスを行なうので、ぜひとも4Mbytes以上のメモリがほしいところだ。拡張RAMに関してはアイ・オー・データ機器のFMTOWNS用2MbytesSIMメモリ「FJ-SIM32-2MA」の価格が4万5000円から2万7000円に改訂されたことでもあり,快適な環境を作るためには予算が許す限りメモリの増設をお勧めする.
 ソフトウェアとしては別売の「日本語MS-DOSV3.1 L31」(1万8000円)が別途必要となる.パッケージはFMRと共通で価格が2万5000円。したがってメインメモリを2Mbytes搭載したFM TOWNSのハードウェアモデルなら計4万3000円あれば最小構成のシステムが構築できるわけだ.FM TOWNSユーザーならMS-Windowsを買わない手はないFM TOWNSの世界が一挙に広がること請け合いだ。


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同意する。FM TOWNSは金はかかるがWindowsがそこそこ使えるマシンだった。PC-9801はTOWNSに劣る。





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アミューズメント(月刊ASCII 1991年9月号5) [月刊アスキー廃棄(スクラップ)]

アミューズメント関係をスクラップする。

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記事をスクラップする。
 今年の6月,ゲーム業界大手の(株)ナムコがイギリスのW・Industries社の開発した業務用ゲーム機「Virtuality 1000SD」を導入し,同社の直営店に設置した。このゲーム機はイギリスの垂直離着陸ジェット戦闘機ハリアーを操縦して空中戦を行なうものだが,従来とは大きく異なるのが,業務用ゲーム機としてはじめてヴァーチャルリアリティ(仮想現実)の技術を取り入れた点だ.
 プレイヤーはヘッドマウントディスプレイを装着し,左右にあるコントローラを使ってハリアーを操縦する.このヘッドマウントデディスプレイが頭の動きに連動して360度の視界を三次元映像としてプレイヤーに見せることになる.
 ヴァーチャルリアリティは,このVirtuality 1000SDをきっかけにして,ようやく本格的にアミューズメントに入り込んできたといえるが,ヴァーチャルリアリティに特に力を入れているナムコがこれを基に今後どんな方向に進んでいくのかは非常に興味深いところだ。
(綾丸)


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ナムコ担当者のインタビューをスクラップする。
Why now?
☆なぜ今「Virtuality1000SD」を導入したのかをナムコの担当者にうかがった.
★業務用のゲームには最初からヴァーチャルリアリティの要素があるが,プレイヤーがデディスプレイに向かって操作パネルが置かれているというマシンのスタイルは変わっていないソフトの中身も,体感ゲームが現われたといってもほとんど変わっていなかった.
 ヴァーチャルリアリティに関しては,ソフト的にアミューズメントの概念を変えるということで以前から注目していて,今回,市場調査の目的、たとえば装着感や不潔感はどうかといった点,あるいは一般にどの程度受け入れられるかといったことを調査するために購入した.
 今後は,ヘッドマウントディスプレイからプライベートアイのような装置を使うようになり,より皮膚に密着した“皮膚感覚”が重要になってくるだろう.匂いや風といったものだけでなく、特に3Dサウンドシステムには注目できる.
 ヴァーチャルリアリティは架空の世界に現実感を持たせるための技術だが,高品位の画像データや音響効果を使うとどうしても受身になる傾向があるので、俳句のように想像力を刺激する手法,つまりイマジネーション・パフォーマンスの方面にも力を入れていきたいと考えている.


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 このヘッドマウントディスプレイが30年以上もたっても進歩していない。何をしているのかと腹立たしくなる。30年も経てばブラウン管のCRTは消え液晶ディスプレイになった。CPUはクロックが数百倍速くなり、マルチコアになり当時のスパコンを超えた。メモリだって千倍大容量になった。HDDだって数千倍大容量だ。このように各分野は30年で数千倍に相当する進歩をしたのにヘッドマウントディスプレイはなにをしているんだと説教したいほどだ。

レミングスというゲームが懐かしい。
ASCII1991(09)d02レミングス_W520.jpg
ASCII1991(09)d02レミングス説明_W362.jpg
ASCII1991(09)d02レミングスキャラ紹介_W345.jpg
ASCII1991(09)d02レミングス面紹介_W357.jpg
ASCII1991(09)d03レミングス画面説明_W413.jpg

映画ターミネータ2はもう30年以上も前の作品か。
ASCII1991(09)d04ターミネータ2_W520.jpg
ASCII1991(09)d04ターミネータ2キャラ_W385.jpg

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