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米国ハイテク産業の動向、その他(月刊ASCII 1992年6月号4) [月刊アスキー廃棄(スクラップ)]

「米国ハイテク産業の動向」をスクラップする。
SunWorldEXPOが開催
 4月6日から4日間,サンタクララ市のコンベンションセンターで,SunWorld誌主催によるSun/SPARCマシンのトレードショウとコンファレンス「SunWorldEXPO」が開催された.出展社数は120社程度.Apple社のプライベートショウであるMacWorldには遠く及ばないが,DEXPO(DECのショウ)やNeXTWorldなど,ほかのワークステーション系のそれから比べると,やはり遥かに大規模なショウだ(この後,同じくサンタクララのコンベンションセンターで,Silicon Graphicsのショウもある).
 近年ますます激しくなる一方のワークステーション市場,Solaris2.0,DECalpha発表およびSiliconGraphicsによるMIPS買収の陰で分裂の危機に揺れ動くACE,NeXTstepの参入でますます複雑さを極めるIntelマシン対応,そしてIBM-AppleによるTaligentの始動など,この業界を取り巻く動きは急だ. そしてその中でついに40%のマーケットシェア(台数ベース)を突破するなど破竹の勢いのSunMicrosystems社のプライベートショウということで,大きな注目を集めたようだ.

■マルチメディア,バーチャルリアリティなど多彩
 Logitech社は3次元バーチャルメガネで注目を集めた.偏向ガラスで画面が立体的に見えるうえ,メガネの動き(つまり画面に対する視線の角度)をモニタの上に置かれた光源の変化で読み取り,表示画面をインタラクティブに変えることができる.もちろんプログラムがそのように書かれている必要があるが,けっこうリアルな3次元表示が可能となる.
 Parallax社は,おなじみのXVideoボードのアプリケーションを展示.ネットワーク対応のビデオコンファレンスシステム(UDPベレース,音声はSPARCの標準オーディオポートを使用)や,統合ソフトとして売り出し中のCrarutyなどのXVideo対応版のデモを行なっていた。この手のビデオ合成ボードは,FORCE社など,すでに少なくとも7社以上から出ている.Macの例からいっても数年のうちに2~3社程度に絞られてくるはずだ.ただし,本格的な普及のためにはQuickTimeやWindowsMMEのように,Sun自身からOSとしてあるいはその一部として何らかの統一された仕様が出てこないことには難しいものがある。
 やはりマルチメディア対応というのはSunの世界でも流行になってきている.まったくうんざりしてしまうかもしれないが,ParadiseSoftware社はOpenWindows環境でハイパーテキスト,ハイパーメディアアプリケーションを開発するためのツールを展示.また,パロアルトのGAIN社も同様なオーサリングシステムを出していた.この手のオーサリングシステムはわりと早く出てくるものだが,実際のマルチメディアアプリケーションが出るのはまだまだ先のようだ.
■Sunのお祭りにNeXTが殴り込み
 以上のように,SunWorldEXPOは本来Sunのプライベートショウであるから,当然のようにSunMicrosystemsをはじめSunSoft社などのSun子会社,サードパーティ,システムインテグレータ,ディーラーなどが主役を務める.会場で見かけた出展社のほとんどが何らかの意味でSunやSPARCをもり立てる役割をしている.ところが,今回のショウでは異色ともいうべきNeXTがけっこう大きなブースを出して注目を集めた.
 NeXTはすでにご存じだと思うが,先のNeXTWorldでもStevenJobsが「NeXTにとって最大のライバルはSun!」と宣誓するなど,Sunを意識した一大キャンペーンを展開中である.会場でも特にミッションクリティカルなカスタムアプリケーション開発分野でのSunNeXTの比較を重点的に行なっていた.NeXTのオブジェクト環境がSunのものよりいかに優れているかを強調したものだ。そのために「NeXT vs. Sun:A World of Difference」といったプロモーションビデオをただで配るといった気の入れよう.まさに敵陣に乗り込んでデモンストレーションだ。
 実際,マーケットシェアから見てもNeXTの伸長ぶりはけっこう目を見張るものがある.現在台数ベースから見た米国のワークステーション分野のシェア率は4~5%程度.先にSunは40%だと述べたが,これからいくと,NeXTはSunの8~10分の1は売れていることになる.
 まだまだ少ないように見えるが,実はIBMでさえも4~5%程度なのだ.ちなみに,Sunに続く2位はHPで20%程度,3位はDECの17%.このあとIBM,NeXT,Intergraphがともに4位争いをしている.
 ちょっと見ないうちに出ているなとの印象を受ける.ブースでも展示していたが,IntelバージョンのNeXTstepも本気でやるらしい(これはまだアルファで,Ver.2.1からの移植版だ.今年後半にリリースされるという正式版はVer.3.0になる予定)これがうまくいくと,もしかしたら数年以内に10%近くまでいくことも夢ではないかもしれない.
 たしかに,Sunの開発環境であるDevguideで悩んでいるプログラマが多いのは事実だ.NeXTのプロモーションビデオではないが,Devguideはまだまだオブジェクト指向の開発ツールとはいえず,これに比べたらNeXTのインターフェイスビルダによるオブジェクト指向の開発環境のほうが開発効率的にはるかに優れている(という人が多い).「現在入手できる唯一のオブジェクト環境」といわれるNeXTがワークステーションというパイ(1990年で30億ドル)にどこまで食い込むことができるか,これは見逃せなくなってきた.
(ザイロンコーポレーション代表脇山弘敏)


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「Miscellaneous :behind the news」をスクラップする。
■MicrosoftとIBMはまだ仲がいいよ,Bill Gates
 Microsoft社はデータベースソフトのディベロッパーとして業界トップのFox Software社を合併すると発表した.F社の社長David Fultonは,MSが新設するデータベース部門に参加.合併によって得た技術は,CirrusというコードネームのWindows用SQL ServerとOpen Database Connectivity(ODBC)テクノロジーに取り入れられる予定.
 春のCOMDEXで「OS/2Ver.2 vs. Windows3.1」という報道が行なわれるなか,Bill Gatesは「我が社はIBMの多くのグループと良い仕事関係にある」と主張.グループとはIBMの教育販売部門や中型機AS/400および大型機部門のことで,Windowsパソコンとの接続性を確認するため,MSと協力関係にあるということらしい.
 話は変わるが,作家James WallaceとJim EricksonはGatesの自伝を出版しようとしていたが,関係者とのインタビューを妨害したとしてGatesを訴えた.6月1日の発売を前に「Hard Drive : Bill Gates and the Making of Microsoft」は,評価版が出回っており,「MSは政府が作った機会均等ガイドラインに従うため2人の女性を幹部として採用したが,待遇は最低だった」とか、「従業員の労働態度を密かに監視するために電子メールシステムを使用している」など,MSを刺激する内容ではある.
 こうした話題のなかで,IBMとMSの幹部2人が,高度情報システムのR&D会社を創設した.カリフォルニア州Palo Altoに本拠を置く「Interval Research」で,会長のPaul AllenはMSの重役であり,かつAsymetrix社の会長でEgghead Discount Softwareの重役,社長となるDavid LiddleはPalo AltoでEthernetやStarの開発に携わった人で,Metaphor社を起こし,IBM副社長としてPersonal Systemや新製品の開発を担当していたという大物の2人である。
 同社は,他の研究機関・大学とも協力して「pre-competitive(競争以前の段階にある)」テクノロジーに焦点を当てる。研究テーマの範囲は,現在ハイテク企業が開発中の次世代プロジェクトをも凌ぐだろうといい,「面白そうな技術はたくさん見えはじめているのだが,通常の2年間の製品サイクルでは使いものにはならない」とAllen氏はコメントしている.

■そしてAppleは?
 シャープと手を組んで,PDA(Personal Degital Assignment)を開発すると発表したAppleだが,何人かのヒューマンインターフェイスデザインの技術者がSunに移った模様だ.
 また,AppleはPowerBook用バッテリパックのケースを無料で配布する.同社では,このバッテリパックを本体から外した状態で,不注意にも金属物に接触しショートしてしまった場合,発火したり焦げ付いたりする恐れがあるが,このケースによって接触を避けることができると述べている.5月以降には,リチャージャブルバッテリをケース付きで販売する予定.
 さらに,MicrosoftとHPに対して起こしていたGUIの特許権裁判の判決が出て,どうやらAppleに勝ち目はなくなったようだ.弱り目にたたり目といったところか.

■SPAがソフトウェア大賞を発表
 SPA(Software Publishers Association)が1991年度のソフトウェア大賞を発表した.ノミネートされた330のソフトウェアの中で,23本が受賞した.
 2つ以上の賞を受賞したのは,「Quicken 5.0:Intuit社」,「SimAnt:Maxis社」,「Sid Meier's Civilization:MicroProse社」,「Lemmings:Psygnosis社」,「KidPix:Broderbund社」で,2つ以上の製品が受賞したのは,「System Software7.0とQuickTime:Apple社」,「ObjectVision 2.0 for WindowsとBorlandC++:Borland社」,「Martian MemorandumとLinks Championship Courses:Access社」,「Kid PixとWhere in America'sPastisCarmen Sandiego?:Broderbund社」,「Bank Street Writer for MacintoshとInteractive NOVA The Miracle of Life:Scholastic社」となっている。またプレス関係者による賞は,「Visual Basic 1.0:Microsoft社」,「Secret Weapons of the Luftwaffe:Lucasfilm Games社」,「The Geometer's Sketchpad:Key Curriculum Press社」などが受賞した.
 SPAによるソフトウェアの不法コピー摘発は毎月報道されているが,今度は,マンハッタンのGrand Central Camerasを訴えた.Lotus, MS, WordPerfectなど大手ソフトメーカーがSPAに訴えたもので,違法に複製したソフトをコンピュータに付けて販売することで不当な利益を上げていた疑い.
 当局側は、違法コピーされたソフトウェアが含まれている3台のデスクトップマシンと2台のラップトップマシンを押収している.加えて,店内にあったコンピュータを調べたところ,25台のディスクから違法コピーされたソフトが発見され,これがコピーをする際のマスターとして使用されていたため,証拠品としてこれらのディスクと売り上げ記録も押収された.

■Playmateを勝手にBBSに上げるな
 スペースシャトルの飛行中に行なう実験の一部として,NASAが全米の学生とBBSでデータを交換する. このプロジェクトはINSPIRE(Interactive NASA Space Physics Ionosphere Radio Experiment)と呼ばれ,シャトルに積まれたコンピュータが,送信機のオンオフや周波数の変更を一定の時間で行ない約2万の学生がグループを作り,それぞれの受信機で音声信号を受信する.そして,レポートをNASAに送るというもので,宇宙から送信される電波と大気の関係を調べることが目的だ.NASAがシャトルのフライトの最新情報をBBSに送るので,学生は送信開始時間などを正確に知ることができ,レポートも簡単に発送できる仕組みという.
 Playboy誌は,Playmateの写真をコンピュータに取り込んでBBSで提供していたオレゴン州の会社Event Horizensを訴えた.画像ファイルの入ったFDも販売していたという.Playboy側は「Event社は複製・出版許可を受けていないし,賠償することも決してなかった.再三,複製を止めるよう指示したのだが,聞き入れなかったので裁判を起こした」と語っている.

■シェークスピアの肖像はエリザベス1世がモデル?
 ニュージャージー州に住むコンピュータ専門家が,有名なシェークスピアの肖像はエリザベス1世の肖像画をもとにして描いたものだと結論を出した.AT&TBell研の顧問を務めるLillian Schwartz女史がその人で,コンピュータアートでオスカーおよびエミー賞を受賞しており、1986年にはダビンチ本人がモナリザのモデルであるとの研究結果も発表している。
 彼女は,コンピュータを使ってシェークスピア全集の初版と,他のシェークスピアとエリザベス女王の肖像と比較した.すると,1588年に宮廷画家George Gowerが描いたエリザベス1世の肖像画とシェークスピアの目,鼻,頬が一致し,さらに目の間隔も同じであることが判明した.
 2人の肖像における違いは、より男性らしく見せるために髭,顎の線,額を上描きしたものだという.
 一方,シェークスピアの専門家はこの研究に納得してはいない.Rutgers大学のPaul Bertramはこの発見について,「まったくくだらない。目に見えないものがコンピュータには見えるというのだから参ってしまう」と憤慨しているという。

■ありがとう,アシモフ博士
 SF作家Isaac Asimovが4月6日心臓と腎臓不全のため死去した。72歳だった。今年初めから健康の不調でAsimovは執筆活動に支障をきたしており,さらに彼が33年間にわたって約400回寄稿したFantasy and Science Fiction誌のコラムも休載していた。彼の著した本は,500近くに上るが,遺作となったForward the Foundationは数ヵ月前に執筆を終えており,今年中にBantam Booksから出版される.
 CompuServeのSF and Fantasy Forumのメンバーは,Asimovの病状が悪化して以来数カ月にわたって,Mike Kube McDowellやDavid Gerroldといった作家仲間が,彼の様子をポストしてきた.亡くなった後のメッセージには,AsimovのSFだけでなく,彼の科学記事への賞賛も多い.特に,F&SF誌のファンからは,SFの陰に潜む科学に対する興味をそそってくれた彼のコラムに感謝が捧げられている.
 冥福を祈りつつ,彼が創造したロボットや銀河帝国の話を読み返そう.


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