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第三世代のカメラ、デジカメに非ず(月刊ASCII 1991年9月号9) [月刊アスキー廃棄(スクラップ)]

TBNをスクラップする。
デジカメかと思ったら違った。
「近未来商品解剖学
第2回第三世代のAF一眼レフカメラ」
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 その昔,カメラは一部の人だけが使いこなせる機械だった。露出計を使って露出を測り、シャッター速度と絞りを決めるには,それなりの経験とカンが必要とされた.その後,露出は自動化され(AE),ピントさえ合わせれば誰にでも写真が撮れるようになった。今ではオートフォーカス(AF)も当たり前になってきている。そして,より使う人間の手間を省こうと、カメラの自動化はさらに進んでいる。カメラはメカニカルなものから電池なしでは動かない電子機器に変化し,コンピュータとは切っても切れない存在になった.
 そうした中で、自動化をよりいっそう進めた「第三世代のAF一眼レフカメラ」,α-7xiがミノルタカメラ(株)から発売された.はやりのファジィ制御を採用し、複雑な撮影状況を判断して適切なシャッター速度や絞りを決定するという.近未来商品解剖学の第2回では,このカメラにスポットを当ててみた.


構えただけで撮影準備を完了する新世代誕生
 ミノルタαシリーズの第1弾は,1985年2月に発売されたα-7000である.本格的なAF機構を導入したはじめての一眼レフカメラとして,当時の話題を独占した。
 次いで1988年5月,動体予測AFを装備した第二世代のAF一眼レフカメラとしてα-7700iが登場した。最後の「i」は「Intelligence」,「Innovation」,「Identity」の頭文字からとったという。その名のとおり,被写体の状況(位置や動き,背景との輝度差)に応じたAF/AE制御を行なうインテリジェントなカメラとして開発された.
 そして1991年6月.ファジィ制御を用いて撮影状況の判断を行なう「新世代α」,α-7xi(写真1)が発売された。カメラを構えただけで撮影準備を完了する「ゼロタイムオート」システムと,ファインダ内に各種撮影情報を液晶表示する「コミュニケーションファインダ」を採用し,よりカメラと撮影者の距離を縮める意図で開発されたという.名前の「xi」は「Expert Interaction」を表わしている.

<CPU>
 処理すべき情報量の増大にともなって,カメラに搭載されたCPUもパワーアップしてきた。
 α-7000では8bitCPU(クロック周波数4MHz)が2個使われ,それぞれAF制御と露出制御を行なっていた。それに対して,α-7700iでは8bitCPU(同10MHz)1個でAF制御と露出制御を統合して処理を行なっている.
 そしてα-7xiではついに16bitCPU(同20MHz)が搭載された.αシリーズ専用のカスタムCPUなので,本誌読者にお馴染みの86系CPUとの単純な比較は無意味だが,組み込みCPUとしてはトップクラスの処理能力である.α-7700iとα-7xiのCPUの処理能力の比較を表1に示す.処理内容によってばらつきはあるが,平均するとα-7xiのCPUはα-7700iのCPUの約10倍の処理能力があるという.
 ただし、このCPUはハードウェアでファジィ演算を行なう「ファジィチップ」ではない。ファジィ演算は,あくまでソフトウェアで行なっているという。


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この当時でさえ、カメラの内部にさえ16bitCPUそれも20MHzで動かすという時代とは思わなかった。趣味外なので記憶に残っていない。

〈AFユニット〉
 α-7xiでは,従来のα-7700iに比べて約3倍広いフォーカスエリア(ピントを合わせる範囲)を持つ.AFセンサは4個で,図1aのように配置される.このAFセンサ上には全部で有効600画素のCCDセンサが並んでいるという。
 また,α-7xiはカメラを縦に構えているか横に構えているかを検知する「縦横構図検知センサ」を持っていて,カメラを縦に構えた場合は図1bのように3個のAFセンサを使って制御を行なう。特に,人を撮る場合は顔と思われる位置にピントが合うようにしている.写真2α-7xiのAFユニットである.


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〈AEユニット〉
 α-7xiのAEユニットは,写真3のような「14分割ハニカムパターン」と呼ばれるものである.
 従来の分割測光のパターンは,画面中央に重点があり,それを取り囲むような形をしていた。このため,被写体が画面中央にある場合と端にある場合とで露出が変わってしまうことがあった.
 それに対して,この14分割ハニカムパターン測光は,測光素子が画面に均等に配置されているため,被写体が画面のどこにあってもその位置に合った素子を使って同じように測光することができる(図2).


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〈パワーズーム〉
 α-7xiに対応して,新たにレンズ内にズーム用モーターを内蔵したパワーズームレンズが開発された(写真4)。ちょうどビデオデッキに付いているシャトルリングのように,ズームリングをひねる角度によってズームのスピードを5段階に変えることができるものだ.
 さらに,α-7xiではカメラからの制御によって,
・被写体が適切な大きさになるようにズームする「オートスタンバイズーム」。たとえば被写体が人のとき,近くで撮る場合はバストサイズになるように,離れて撮る場合は全身が入るようにズームを調節する.
・被写体との距離が変化しても,常に同じ大きさで写るようにズームを調節する「イメージサイズロック」.
・広角側にズームして撮影画面の外を状況を確認しておき,シャッターを押した瞬間に本来のズーム位置にもどる「ワイドビューファインダ」.
などのオートズーム(AZ)機能を実現している.

〈コミュニケーションファインダ〉
 ファインダをのぞいたまま,さまざまな撮影状況を把握できるよう,ファインダ内にフォーカスエリア,動感インジケータ,背景インジケータなどの各種情報を液晶表示する.
 動感インジケータとは,被写体の動きとシャッター速度から,被写体がどの程度ぶれるかを5段階で示すもの。また,背景インジケータは,被写体および背景の距離と絞りのデータから,背景がどの程度ボケるかを同じく5段階で示すものである.


ファジィでAF/AE/AZ
 α-7xiの最大の特徴は,前述した「ゼロタイムオート」と呼ばれるシステムである.
 従来の7700iでは,写真を撮る際にカメラを構え、画角を決め(ズーミング),シャッターを押すという3段階の動作が必要だった。さらに,AF(オートフォーカス)やAE(自動露出)はシャッターボタンを半押しにしてから動作するため,一瞬のシャッターチャンスにはどうしてもタイムラグが生じがちだった.
 それに対してα-7xiでは,カメラを構えただけでAF/AEに加えてズームまでが自動的にスタートする(専用パワーズームレンズ使用時)。そして常に被写体を追い続け,シャッターを押すときにはいつでも撮影準備ができているというシステムなのだ。
 シャッターボタンを押さなくてもカメラが動き出す秘密は,「グリップセンサ」(写真5)と「アイセンサ」(写真6)という2つのセンサにある。グリップセンサはタッチセンサになっていて,撮影者がカメラのグリップを握っているかどうかを判定する.そしてグリップを握ると,アイセンサがスタートする.アイセンサは赤外線センサで,ファインダをのぞくと前を物体が遮ると)カメラが動きだす仕掛けだ。
 カメラが動きだすと,縦横構図検知センサ,AFセンサ,AEセンサなど,各種センサが機能を始める。しかし,AFセンサはAFだけ,AEセンサはAEだけ制御するという単純なものではない(図3).


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ASCII1991(10)g03デジカメに非ず図3_W520.jpg
主要被写体の判別
 AFセンサの距離情報は,レンズ情報,縦横構図検知センサの情報と合わせて主要被写体の位置や大きさを判別するのに使われる.
露出計算
 被写体の情報とAEセンサの測光値から,どの程度順光/逆光なのかを判断し,適切な露出を計算する.
 順光と逆光とで場合分けするのではなく,その「度合い」によってファジィ制御で露出を決めるのが特徴だ。
エキスパートプログラム
 プログラムといっても,コンピュータのプログラムではない。カメラの場合のプログラムというのは,露出に対するシャッター速度と絞りの組み合わせを決めたものである.
 α-7xiでは,被写体との距離や被写体の動き,さらにレンズの焦点距離や撮影倍率から,クローズアップ/ポートレート/スナップ/風景といった撮影状況を判断し,適切なシャッター速度と絞りを設定している.
 撮影状況の判断は,「ここからここまでは風「景写真」のようにはっきりした境界線を決めるのではなく,「被写体が全体的に遠い場合は「風景写真」のようなあいまいな条件をもとにファジィ制御で決めている.したがって,α-7xiのプログラムは個々の状況に応じた「プログラムライン」ではなく,連続的に変化する「プログラムエリア」となっている(図4)。


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3次元動体検知
 連続的にAFセンサの情報を調べ,被写体までの距離の変化から光軸(Z軸)方向の速度と加速度を,AFセンサ上のパターンの変化(移動)からフィルム面に平行な(X,Y軸)方向の速度を検出する(図5)。これによって,被写体が複雑な動きをする場合でも正確に動体予測ができる「マルチ動体予測」や,被写体のぶれ量を評価する「動感インジケータ」を実現している.

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 以上のように,各種センサからの情報を組み合わせて複合的な判断をしているのだ。さらにこの中で,主要被写体の判別,測光,エキスパートプログラムにはファジィ制御が使われている.さまざまな条件を逐次判断していく従来の方法に比べ,ファジィ制御は単純なルールの組み合わせなので,より短時間で処理を行なうことができるという.
 また,従来の方法では条件判断の境界の部分で不連続点が生じる。このため,たとえば順光か逆光かの判断が微妙な状態で何枚か写真を撮ると,あるものは順光として処理され,あるものは逆光で処理されるなど,動作が安定しなかった。これに対して,ファジィを用いると不連続点のないなめらかな制御が可能だ。
 さらに,ピント合わせ(フォーカシング)とズームの制御にもファジィ制御を用い,高速でなめらかな処理を実現している.

 実際にα-7xiを使ってみると,構えただけでカメラが被写体を追ってズームやフォーカスを調節し続けるのが,実に面白く,また不思議でもある。道具としてのカメラというより,それ自身独立した「思考物体」といった感触なのである.
 「カメラの自動化もここまでいくとやりすぎ」との声も一部にはあるが,今後カメラがどこまで賢くなっていくのか注目していきたい.


こうしてデジカメへの準備機能が開発されているということか。
デジカメに至るまでの記事が楽しみである。
コラム記事をスクラップする。
普及版α-3xiも登場
 この原稿を作成している間に,α-7xiの下位機種に当たる「α-3xi」が発表された(写真)。1991年8月7日現在,フラッシュ内蔵AF一眼レフカメラとしては世界最小・最軽量である。
 α-7xiと比較すると,AFセンサが1個のみ、測光は8分割ハニカムパターン、「イメージサイズロック」や「ワイドビューファインダ」ができない,などの制限がある.しかし,「ゼロタイムオート」システムは搭載しているし,測光モードもプログラムオート/シャッター速度優先/絞り優先/マニュアルのすべてをサポートしている。単なる入門機で終わらない、コストパフォーマンスの高いカメラといえるだろう.


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