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ハビタット、FMR-CARD(月刊ASCII 1991年10月号10) [月刊アスキー廃棄(スクラップ)]

 繰り返し書いているが、私はメタバースなんて新しいものではない。セカンドライフの焼き直しどころか、その起源は30年も前のハビタットにある。全然進歩していないと書いている。それを知らないふりをしてメタバースだなんて売り込んでいるザッカーバーグに苛だつ。厚顔無恥というか恥知らずだと思う。
ハビタットの記事を以下スクラップする。
Habitat基礎知識
 Habitat国が正式に建国されたのは,1990年2月.それ以前に3ヵ月間ほど,「富士通ビジュアル通信モニターテスト」として100人のモニターによる通信実験が行なわれたそうだ.NIFTY-ServeのTOWNSフォーラムに「モニター会議室」という場所が設けられ、いろいろな意見が飛び交った様子が,『Habitat創世記』としてCD-ROM(Habitat専用ソフト「富士通HabitatV2.1L11」)に収録されている(写真1)。面倒だからほとんど読んでいないけれど,面白い試みだと思う(CD-ROMだから余裕?)ユーザーが盛り立てているという雰囲気が伝わってくるし,メーカーの開発者との距離も近く感じられるような気がする.

ASCII1991(10)h05ハビタット写真1_W345.jpg
 Habitat国の住人(アバタ)は,現在約3800人(そんなにいるにしては,街角で全然会わないけど……)アバタが住む居住区は全部で6つ,マンションは各居住区に3つずつある.最初にアクセスした段階で,どのマンションに住むのかが決まるが,これは“神のみぞ知る”ことで自分では選択できない.Habitatの神はオラクルと呼ばれる.オラクルもアバタとしてよく街を歩いている.気軽に声をかけられる神様なのである.
 街は広い。居住区のほかに,店が並ぶダウンタウン(閉店中の店もある),森や平原,公園,野原などいろいろな場所があって,何日も歩いて家に帰れないときもある(別に家に帰らなければならないこともないのだが)。歩いて移動する以外の交通手段は、テレポートという乗り物で,全国13カ所(+α)に設置されたテレポートブース間を行き来できる.
 今年7月,FM TOWNS(以下TOWNSと略)以外のコンピューター富士通FMRシリーズおよび松下PanacomMシリーズ――ユーザーもHabitatの住人になれるようになった。発売されたソフトでは,TOWNSに比べて機能の制限があるものの(表1参照),これを機に仲間が増えるのは嬉しいこと.PC-9801シリーズ用のソフトが完成する日も近いといううわさである.

7月19日 謎の神殿を探索
 マンションへ帰る時間が惜しいので,野宿ばかりしている今日この頃。迷いの森では,いろいろな動物に出会える.アライグマやリス,ミミズクなどの鳥たち.しかし残念なことに鳥が鳴いてくれるわけでもなく,動物がしゃべったり動いたりするわけでもない。画面にいろいろな隠しコマンドがあったら面白いのに。ただ,ひとりぽつねんと立っているお地蔵さまが「この森には神殿があって,巨大な迷宮になっている」と教えてくれた。
 森の奥へ進んで行くとだんだんあたりが暗くなり、夜の静けさの中に不気味な建物が浮かび上がった.現在地を知りたいときには地面をHLP(すると番地などが表示される)「レムリア神殿遺跡」.例の神殿だ。とりあえず入ろう,とGO.
 ところが入ってみたら,右へ進んで左に戻っているのに同じ場所に帰れない.「川口宏探検跡」なんていう部屋が何度も何度も出てくるから,そう広いわけではないだろうに出口に戻ってこれない。こういうのって,ゲームで訓練している人ならたやすいのだろうが、慣れない私は中でうろうろするばかり(実は,前回マップをダウンロードしていたにもかかわらず,あることを忘れて使わなかった)。ようやく外へ出たのは1時間後だった.疲れた。けれど今度はマップを持ってまた行こう.

7月25日 便利ソフト2種
 Habitatで不便を感じるのは,会話の表示部分が狭いこと.人と話していてスクロールアップするのが早すぎるのだ。しかも,BBSでいうところのプロフィールを登録する場所がないので,必要とあれば相手のIDを聞いて,すぐメモしないと分からなくなってしまう。そこでログを取るソフト(Yasu.Hara.氏作)をNIFTY-Serveからダウンロードしてインストールした。誰が話したのかは記録されないが便利に使っている.
 ほかにダウンロードした面白いプログラムは,CD-ROMに収録されている1100種類のヘッドを表示して見せるもの(Yasu.Hara.氏作)見てみると変わったヘッドがいっぱいある(写真2)ヘッドショップはダウンタウンに3軒あるが(あっ。神殿の中にも販売機が1台あった),どこも常時置いてあるのは5種類ほどなので、まだ気に入るヘッドにめぐり会えないのだ。これであたりを付けて,欲しいヘッドをじっと待つかな.


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8月5日 画像があると遊べるね
 遊びの材料として重宝するのが「サイコロ機能」だ.ポケットからお金を出してDOするとがいくつか表示される(写真3)。そこで思い付きでTYさんが作った遊びは,画面の中の人がいっせいに右端に並び,サイコロをふって出た目の数だけ歩く。最後までその画面に留まっていた人の勝ち!というもの。単純だけどいろいろな遊びが考えられるもんだね。それでけっこう面白い.
 ちなみに今日,初めてハングアップした.リージョンチェンジの画面からどこへも行けなくなってしまって,音楽がなりっぱなし.お金を持ったままだったので,引ったくりにあいはしないかと心配したが,再度ログインしたらしっかり手に握っていた.落ちるのもこれくらいの頻度なら許せるかな.

8月6日 マップも作ったしい,
8月10日 イベントにも参加したしい

 夜の11時頃はアクセスする人が急に増えるのか,その頃に入ろうとすると10回くらいリダイアルしてようやくつながったりする.
 第3居住区と第4居住区の西に広がる大平原は,番地がないので自分のいる場所を把握しにくい草原だ。そこでひとつ,私もマップを作ろうととりかかった.北へ1画面行っては戻り,西へ1画面行っては戻り……,少しずつ確かめながら記録していった(あーっ,背景は違うけれど森の中とまったく同じ形の動物もいる手抜きだな!>富士通の方).
 そこで納得したことは,大平原を西へ西へと行くと第5/第6居住区域につながっていて,そこを西へ行くとダウンタウン。また西へ行くと第3/第4居住区域にたどりつく。また,ダウンタウンを南へ行くと第1/第2居住区域,それを南へ行くと森や野原,そして公園さらに南へ行くとダウンタウンつまりHabitatの世界も地球のように丸くつながっているわけだ(ただし変形していて,穴がポコポコ空いていそうだけど)。もうこれで,地理は完璧である。
 8月10日は株式会社イベント(社長はプレセペ氏)主催によるウルトラクイズに参加。参加者は25人ほどだった。優勝者に贈られる賞金(1200トークン)と豪華賞品が目あてだったわけだが,結果は見事に予選通過ならず残念無念。1カ所に多くの人が集まったのでシステムが重く、またテレポートも間隔をあけずに使ったので,とうとう故障! というハプニングはあったものの,約3時間を費やして,ゴーストが次々に姿を現わしては回答して消える……という目まぐるしい状況が楽しかった.次の機会には頑張るぞ。

8月16日 ひとまず考察と検討
 さてと、前回の締め日から昨日まで,22日間のアクセス時間は1208分だった.利用料金の上限(3600円)はとっくに超えている…….そこでこれまでの感想を一言でまとめるなら,やっぱり「Habitatは面白い」となる。パソコン通信の「チャット」にユーザーの動作が加わるから,遊びの世界がぐんと広がる感じ。ただし,ここはあくまで趣味の世界だ。時間をかけても生産的なことはあまりない.時間制限を設けられる強い意志がなければ,費用はかなり覚悟しておいたほうがよいだろう.ちなみに1208分の費用は,NIFTY-Serveの基本料金(12080円)+Habitat利用料金(3600円)+住民税(300円)+3分10円としたときの通話料(4030円)=20010円!である.
 Habitatの宣伝ではよく,「仮想の世界があなたを待っている」とか「サイバースペースでもう1人の人生を体験」という言葉が使われている.私などは最初これらの言葉から,自分の影がCGみたいに計算されて表現されるのだろうかとか、時間とともに風景が夜になるのだろうかとか想像してしまったが,それは考えすぎだった。単に平面的に続く背景画面の世界なのだ。参加しないうちからあまりイメージを膨らませるのは禁物だ。
 それに「もう1人の自分を体験」できるといっても,なかなか自分の性格までは変えられないものだ。やり慣れないことをするのも大変.またいちばん大事なのは人とのコミュニケーションだから,相手に不快感を与えるような言動はつつしまなければならない(当然ですが)。まず,出会ったらあいさつ。アバタとのお付き合いは気持ちよく.世界は違っても生活の基本は変わらないのである。この心構えで今後も楽しいアバタ生活を送っていこうと思う.


 当時パソコン通信は金がかかる趣味だった。今はスマホでギガが足りないと言う時代だから何も変わっていないというべきか。とはいえ30年以上も前で2万円もかかるのはどうか。

長期ロードテストから単三乾電池2本で動くという驚きのパソコンFMR-CARD(FMR-NBC1B)の記事「第2回:カードとノートの違い」」をスクラップする。
バッテリ駆動時間を検証する
 軽さ(990g)と小ささ(というよりも26.5mmという薄さ)とともに,FMR-CARD以外のノート型パソコンにない魅力がバッテリ駆動時間,つまり,AC電源のないところでどれだけ長時間にわたって使用できるかという点だ.
 一般的なノート型パソコンとFMR-CARDの大きな違いは,FMR-CARDが,いわゆる専用のバッテリパックを使用せず,アルカリ単三乾電池を使用するという点である.また,一般的なノート型パソコンでは,バッテリ駆動時間が2時間程度.セカンドバッテリを装着すれば,長く使えるがその分重くなる.これに対して,FMR-CARDは,カタログ値で8時間の長時間使用が可能となっている点である.しかも,予備の単三乾電池2本(約42g)を用意しておけば,そこからままた、8時間の連続使用が可能ということになる.
 J-3100SSがデビューして以来,ノート型パソコンを持ち替えながら使ってきた担当者としては,長い会議の最中に,何度かバッテリの「鳴き」(たいていのノート型パソコンでは,バッテリの交換をうながすビープ音が鳴る)に泣かされたことがある。また,バッテリをフル充電にしておくのに気を使ったり,バッテリの消耗(ニッカドバッテリは,十分放電しないうちに再充電を繰り返すと性能が低下するなど)が気になったりしたものである.そうした問題が,FMR-CARDでは,一挙に解消したというわけだ。
 気になるところがあるとすれば,アルカリ乾電池2本で300円程度というランニングコストと,使用ずみ乾電池の処分だろう.コストについては,他のノート型パソコンと比較した場合,図1のような計算が可能だろう.一般的なノート型パソコンの場合,概算で1時間0.5円程度となった。大きく見積もっても1円程度となるものと思われる。それに対してFMR-CARDは,アルカリ単三乾電池2本を300円で購入したとして,1時間37.5円となってしまう。また,ノート型パソコンの場合には,最初からバッテリパックが付属してくるわけだが,FMR-CARDには,アルカリ単三乾電池2本が付属するだけである。もっとも,1時間37.5円程度と計算すると,1日1時間使用するとして,まったくACアダプタを使わずに乾電池だけで使ったとして,1年間で1万円強というところである。自動二輪のガソリン代よりは,少なくてすみそうだ.


ASCII1991(10)h01FMR-CARD図1_W520.jpg
 今なら1本100円以下だから2本で200円以下となる。この30年で大して値下がりしていないようだ。しかし、8時間使って300円は少々痛い。ただし、バッテリだって高い。私はダイナブックで3本買って回し回し使っていた。バッテリは性能が落ちてくるので一番新しいバッテリをここぞというときに装着して使うようにしていた。
バッテリの持ちは使い方で大きく違う
 それでは,ちゃんとカタログ値どおりのバッテリ駆動が可能なのかどうか?簡単なテストを行なってみたのでレポートしたいと思う.
 まず,行なったのが,普段の使用(1日平均1時間程度の使用)でのバッテリの「持ち」についてである.新しいアルカリ単三乾電池に入れ替えてから,使用中にバッテリの警告(画面右下に電池のマークが現われると同時に警告ブザーが鳴る)が出るまでの時間の合計を計測してみることにした.なお,使用電池は,三洋のEXCELである.
 FMR-CARDには,本体左側のメインスイッチと,キーボード右上のPOWERスイッチの2つがある。POWERスイッチのOFFでは,レジュームが効くようになっており,ふたたびPOWERスイッチをONすると,直前に使用していたアプリケーションの状態から使い始めることができるようになっている.メインスイッチをON/OFFした場合と,POWERスイッチをON/OFFした場合について集計してみた.
 これが,予想外の結果となった.バッテリ駆動時間の合計は,どちらも5時間余りと,カタログによる連続使用時間よりも3時間も短い結果となった.レジュームしてもしなくても、結果がほぼ同じというのは,やはり,今回のテストが実際に使いながら行なったもので,実行したプログラムの内容などが異なるためではないかと思われる.また,この間,ICカード上でファイルの整理を続けていたため,ほとんどRAM上で動く一般のアプリケーションよりも消費電力が大きめだったのかもしれない。
 さて,バッテリによる連続使用もテストしてみたいと思ったが,なかなか8時間にわたってFMR-CARDを使い続けるという機会は作れない。会議や打ち合わせで3時間程度の連続使用はすることがあるのだが,このような場合には,
CPUの自動停止時間 :1秒
自動パワーオフ時間 :3分
低消費電力 :アリ
などというふうに設定しておくので,ちょっとキーボードから手を離していると,FMR-CARDは,すぐにほとんどOFFの状態となってしまうのである.
 そこで,CPUが止まったり自動パワーオフにならないように,無限ループで画面に文字を表示し続けるプログラムを作り,キーボードの実行キーをセロテープで貼って固定して,実行してみることにした.
 このテストでは,ちょうど8時間程度でバッテリの警告が出るという結果となった.また,バッテリの警告が出てからどのくらいの時間でシャットオフするかと注目していたが,なんと1時間も警告ブザーが鳴り続け,それでもシャットオフしなかった。この警告ブザーは,SHIFT-ALT-PF11で鳴らないようにもできるので,少しの時間なら,警告を無視して使い続けることもできそうだ。ただし,運が悪いとエディタの終了時などにシステムエラーが出てしまうこともあるので,すみやかにバッテリを入れ替えるにこしたことはない.
 このテストでは,CPUの自動停止や自動パワーオフにならないように設定したので、通常の会議などで議事録をとるなどの用途では,8時間以上使用できるように思われる。
 いずれにしろ,FMR-CARDでは,使用条件によってバッテリの駆動時間は,大きく異なってくる。もっともシンプルな使用では,従来のノート型パソコンでは,およぞ考えられなかった長時間の使用が可能であり,通信や連続的なICカードのアクセスなどでは,あっというまにバッテリの警告が出てしまう。
 バッテリ関連については,今後もレポートしたいと思う.

NBリンク98とケーブルが届いた
 先月のレポートでもお知らせしたように,FMR-CARDを購入したのは,この夏の富士通のキャンペーン期間中だった.この期間中にFMR-CARDを購入すると,NBリンク98とNBリンク用のケーブルがもらえるという特典がある.
 NBリンク98は,いわゆるファイル転送ソフトの一種で,PC-9801シリーズのあるドライブをFMR-CARDのドライブとして扱うことができるようにするというユーティリティである.(株)テス・インターナショナルから1万5000円で売られている商品だ。ケーブルのほうは,いわゆるクロス(リバース)のRS-232Cケーブルを使うものだ(写真1).


ASCII1991(10)h02FMR-CARD写真1_W515.jpg
 このNBリンク98とケーブルをもらうためには,ショップに置いてあるシールをユーザー登録はがきに貼って送ることになっている.ところが,ちょっとした間違いで本物のシールではなく,キャンペーンのお知らせのチラシのシールの写真(!)を貼って送ってしまったのだ。なんとも間抜けな話だが,そのときはショップでも分からず,そのチラシの写真も本物ソックリなのである.それでもショップのほうで富士通と連絡をとってくれたりして、あのはがきでも特典を受けることができるようになったのだった。どうもお騒がせしました.
 そんなこともあってか,私のところにNBリンク98とケーブルが届いたのは,購入してからほぼ1カ月後のこととなってしまった。

98とFMR-CARDが合体した
 NBリンク98は,PC-9801とケーブルで接続して,PC-9801側のドライブを,あたかもFMR-CARD自身のドライブであるかのように扱えるというソフトである.この種のソフトとしては,IBM PCやPC-9801,J-3100でもいくつかのソフトが発売されており,複数マシンを所有するユーザーに重宝されている(興味のある人は、本誌'91年8月号257ページの「データ転送ソフト」についての記事を参照のこと).また,今回は,単純にPC-9801とFMR-CARDをケーブルで繋ぐことだけしか試みていないが,NBリンク98の機能としては,電話回線を使って、会社のPC-9801のドライブを自宅のFMR-CARDからアクセスするといったこともできるようだ(図2)NBSHELLと呼ばれるファイル操作ユーティリティも付属している(画面1).

ASCII1991(10)h03FMR-CARD図2_W520.jpg
ASCII1991(10)h03FMR-CARD画面1_W482.jpg
 さて,NBリンク98のセッティングは,比較的シンプルである.マニュアルにしたがってPC-9801DAのハードディスクにインストール。インストールといってもディレクトリを切って,ファイル3本をコピーするだけである.FMR-CARD側は,ROMディスクに入っているnblnkws.exeとnblnkint.exeをICカード上に移す。もちろん,PC-9801DAとFMR-CARDのRS-232Cをケーブルで接続する.
 「入門操作・NBリンク98を体験する」という章にしたがってやってみると,あっけないほど簡単に動かすことができた.FMR-CARDのEドライブを98のどれかのトライブとして扱うことができるようになった。つまり,FMR-CARDのドライブは,
A:ICカードスロット0
B:ICカードスロット1
C:ROMディスク
D:内蔵RAMディスク
E:NBリンクの仮想ドライブ
となる.FMR-CARDとPC-9801DAのど のドライブを対応させるかは,初期設定ファイル作成プログラムで行なう.設定の手順を図3(スクラップ略)に示した.
 担当者の場合,データのバックアップが目的なので,1ドライブしか使わないのだが,PC-9801DA側のドライブをすべて割り当てて,使用することもできるようだ。なお,担当者は,MEMORY-PRO386とそのEMSの一部をRAMディスクとして使用しているのだが,とくに問題はないようだ。
 これで,MS-DOSのコマンドでも,先月インストールしたVZエディターでも,ほとんどFMR-CARDのドライブが増えたかのようにPC-9801のドライブを使えるようになる。気になる点といえば,アクセスしてから実際に転送されるまでのレスポンスである。初期設定ファイル作成プログラムでは,最高速の9600bpsを指定しているのだが,VZエディターでファイルを開こうとしたりすると,数秒のインターバルがある。この種のソフトとしては,かなり遅い部類に入る.もっとも、ファイルのバックアップという目的では,copyコマンドをワイルドカード付きで実行できるだけで,十分に意味がある。電話回線を介したアクセスなど,NBリンク98のより進んだ使い方について は,また機会をみてチャレンジしたいと思う.

ちょっとしたトラブル
 さて,順調にFMR-CARDを使い始めて,もはや生活の一部といっても大げさではないくらいなのだが,問題がまったくないわけではない.いちばん気になるのがキーボードである.ひとことでいうとタッチがお世辞にもよくない。親指シフト配列のおかげで,150字/分程度の入力はなんとか確保できるが,ほかのマシンを使ったあとで触ると,キーストロークの浅さとキーの堅さ(というよりもストロークの途中になにか引っかかりのようなものがあるように感じる)のために,キーをこぼしてしまうことがある.
 もうひとつ、これはぜひとも富士通に改善してほしいのは,「かな」の状態で自動パワーオフとなって,POWERスイッチをONするとレジュームが効くのはよいのだが,一時的に,クロスシフトの濁音が正しく入力できなくなってしまう。英字キーなどを一度押してふたたび「かな」状態にすれば,正しい入力ができるようになるので,慣れてしまえば,作業上はほとんど支障はないのだが.
 ところで,先月号のPRODUCTS SHOWCASEをお読みの方は,ご存じと思うが,PC-9801シリーズ用のJEIDAVer.4対応ICカードドライブがある。(株)アドテックの「らむ蔵(AMI-1)」である.これが,少し使ってみて感想を教えてほしいということで,担当者の机の上にやってきた.ちょっと反則技ではあるが、来月は,このらむ蔵の使用感などについてもレポートしたいと思う.
(遠藤)



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第三世代のカメラ、デジカメに非ず(月刊ASCII 1991年9月号9) [月刊アスキー廃棄(スクラップ)]

TBNをスクラップする。
デジカメかと思ったら違った。
「近未来商品解剖学
第2回第三世代のAF一眼レフカメラ」
ASCII1991(10)g01デジカメに非ず写真1_W520.jpg
 その昔,カメラは一部の人だけが使いこなせる機械だった。露出計を使って露出を測り、シャッター速度と絞りを決めるには,それなりの経験とカンが必要とされた.その後,露出は自動化され(AE),ピントさえ合わせれば誰にでも写真が撮れるようになった。今ではオートフォーカス(AF)も当たり前になってきている。そして,より使う人間の手間を省こうと、カメラの自動化はさらに進んでいる。カメラはメカニカルなものから電池なしでは動かない電子機器に変化し,コンピュータとは切っても切れない存在になった.
 そうした中で、自動化をよりいっそう進めた「第三世代のAF一眼レフカメラ」,α-7xiがミノルタカメラ(株)から発売された.はやりのファジィ制御を採用し、複雑な撮影状況を判断して適切なシャッター速度や絞りを決定するという.近未来商品解剖学の第2回では,このカメラにスポットを当ててみた.


構えただけで撮影準備を完了する新世代誕生
 ミノルタαシリーズの第1弾は,1985年2月に発売されたα-7000である.本格的なAF機構を導入したはじめての一眼レフカメラとして,当時の話題を独占した。
 次いで1988年5月,動体予測AFを装備した第二世代のAF一眼レフカメラとしてα-7700iが登場した。最後の「i」は「Intelligence」,「Innovation」,「Identity」の頭文字からとったという。その名のとおり,被写体の状況(位置や動き,背景との輝度差)に応じたAF/AE制御を行なうインテリジェントなカメラとして開発された.
 そして1991年6月.ファジィ制御を用いて撮影状況の判断を行なう「新世代α」,α-7xi(写真1)が発売された。カメラを構えただけで撮影準備を完了する「ゼロタイムオート」システムと,ファインダ内に各種撮影情報を液晶表示する「コミュニケーションファインダ」を採用し,よりカメラと撮影者の距離を縮める意図で開発されたという.名前の「xi」は「Expert Interaction」を表わしている.

<CPU>
 処理すべき情報量の増大にともなって,カメラに搭載されたCPUもパワーアップしてきた。
 α-7000では8bitCPU(クロック周波数4MHz)が2個使われ,それぞれAF制御と露出制御を行なっていた。それに対して,α-7700iでは8bitCPU(同10MHz)1個でAF制御と露出制御を統合して処理を行なっている.
 そしてα-7xiではついに16bitCPU(同20MHz)が搭載された.αシリーズ専用のカスタムCPUなので,本誌読者にお馴染みの86系CPUとの単純な比較は無意味だが,組み込みCPUとしてはトップクラスの処理能力である.α-7700iとα-7xiのCPUの処理能力の比較を表1に示す.処理内容によってばらつきはあるが,平均するとα-7xiのCPUはα-7700iのCPUの約10倍の処理能力があるという.
 ただし、このCPUはハードウェアでファジィ演算を行なう「ファジィチップ」ではない。ファジィ演算は,あくまでソフトウェアで行なっているという。


ASCII1991(10)g01デジカメに非ず表1_W344.jpg
この当時でさえ、カメラの内部にさえ16bitCPUそれも20MHzで動かすという時代とは思わなかった。趣味外なので記憶に残っていない。

〈AFユニット〉
 α-7xiでは,従来のα-7700iに比べて約3倍広いフォーカスエリア(ピントを合わせる範囲)を持つ.AFセンサは4個で,図1aのように配置される.このAFセンサ上には全部で有効600画素のCCDセンサが並んでいるという。
 また,α-7xiはカメラを縦に構えているか横に構えているかを検知する「縦横構図検知センサ」を持っていて,カメラを縦に構えた場合は図1bのように3個のAFセンサを使って制御を行なう。特に,人を撮る場合は顔と思われる位置にピントが合うようにしている.写真2α-7xiのAFユニットである.


ASCII1991(10)g02デジカメに非ず図1_W507.jpg
ASCII1991(10)g02デジカメに非ず写真2-4_W321.jpg
〈AEユニット〉
 α-7xiのAEユニットは,写真3のような「14分割ハニカムパターン」と呼ばれるものである.
 従来の分割測光のパターンは,画面中央に重点があり,それを取り囲むような形をしていた。このため,被写体が画面中央にある場合と端にある場合とで露出が変わってしまうことがあった.
 それに対して,この14分割ハニカムパターン測光は,測光素子が画面に均等に配置されているため,被写体が画面のどこにあってもその位置に合った素子を使って同じように測光することができる(図2).


ASCII1991(10)g02デジカメに非ず図2_W403.jpg
〈パワーズーム〉
 α-7xiに対応して,新たにレンズ内にズーム用モーターを内蔵したパワーズームレンズが開発された(写真4)。ちょうどビデオデッキに付いているシャトルリングのように,ズームリングをひねる角度によってズームのスピードを5段階に変えることができるものだ.
 さらに,α-7xiではカメラからの制御によって,
・被写体が適切な大きさになるようにズームする「オートスタンバイズーム」。たとえば被写体が人のとき,近くで撮る場合はバストサイズになるように,離れて撮る場合は全身が入るようにズームを調節する.
・被写体との距離が変化しても,常に同じ大きさで写るようにズームを調節する「イメージサイズロック」.
・広角側にズームして撮影画面の外を状況を確認しておき,シャッターを押した瞬間に本来のズーム位置にもどる「ワイドビューファインダ」.
などのオートズーム(AZ)機能を実現している.

〈コミュニケーションファインダ〉
 ファインダをのぞいたまま,さまざまな撮影状況を把握できるよう,ファインダ内にフォーカスエリア,動感インジケータ,背景インジケータなどの各種情報を液晶表示する.
 動感インジケータとは,被写体の動きとシャッター速度から,被写体がどの程度ぶれるかを5段階で示すもの。また,背景インジケータは,被写体および背景の距離と絞りのデータから,背景がどの程度ボケるかを同じく5段階で示すものである.


ファジィでAF/AE/AZ
 α-7xiの最大の特徴は,前述した「ゼロタイムオート」と呼ばれるシステムである.
 従来の7700iでは,写真を撮る際にカメラを構え、画角を決め(ズーミング),シャッターを押すという3段階の動作が必要だった。さらに,AF(オートフォーカス)やAE(自動露出)はシャッターボタンを半押しにしてから動作するため,一瞬のシャッターチャンスにはどうしてもタイムラグが生じがちだった.
 それに対してα-7xiでは,カメラを構えただけでAF/AEに加えてズームまでが自動的にスタートする(専用パワーズームレンズ使用時)。そして常に被写体を追い続け,シャッターを押すときにはいつでも撮影準備ができているというシステムなのだ。
 シャッターボタンを押さなくてもカメラが動き出す秘密は,「グリップセンサ」(写真5)と「アイセンサ」(写真6)という2つのセンサにある。グリップセンサはタッチセンサになっていて,撮影者がカメラのグリップを握っているかどうかを判定する.そしてグリップを握ると,アイセンサがスタートする.アイセンサは赤外線センサで,ファインダをのぞくと前を物体が遮ると)カメラが動きだす仕掛けだ。
 カメラが動きだすと,縦横構図検知センサ,AFセンサ,AEセンサなど,各種センサが機能を始める。しかし,AFセンサはAFだけ,AEセンサはAEだけ制御するという単純なものではない(図3).


ASCII1991(10)g02デジカメに非ず写真5-6_W275.jpg
ASCII1991(10)g03デジカメに非ず図3_W520.jpg
主要被写体の判別
 AFセンサの距離情報は,レンズ情報,縦横構図検知センサの情報と合わせて主要被写体の位置や大きさを判別するのに使われる.
露出計算
 被写体の情報とAEセンサの測光値から,どの程度順光/逆光なのかを判断し,適切な露出を計算する.
 順光と逆光とで場合分けするのではなく,その「度合い」によってファジィ制御で露出を決めるのが特徴だ。
エキスパートプログラム
 プログラムといっても,コンピュータのプログラムではない。カメラの場合のプログラムというのは,露出に対するシャッター速度と絞りの組み合わせを決めたものである.
 α-7xiでは,被写体との距離や被写体の動き,さらにレンズの焦点距離や撮影倍率から,クローズアップ/ポートレート/スナップ/風景といった撮影状況を判断し,適切なシャッター速度と絞りを設定している.
 撮影状況の判断は,「ここからここまでは風「景写真」のようにはっきりした境界線を決めるのではなく,「被写体が全体的に遠い場合は「風景写真」のようなあいまいな条件をもとにファジィ制御で決めている.したがって,α-7xiのプログラムは個々の状況に応じた「プログラムライン」ではなく,連続的に変化する「プログラムエリア」となっている(図4)。


ASCII1991(10)g03デジカメに非ず図4_W410.jpg
3次元動体検知
 連続的にAFセンサの情報を調べ,被写体までの距離の変化から光軸(Z軸)方向の速度と加速度を,AFセンサ上のパターンの変化(移動)からフィルム面に平行な(X,Y軸)方向の速度を検出する(図5)。これによって,被写体が複雑な動きをする場合でも正確に動体予測ができる「マルチ動体予測」や,被写体のぶれ量を評価する「動感インジケータ」を実現している.

ASCII1991(10)g03デジカメに非ず図5_W250.jpg
 以上のように,各種センサからの情報を組み合わせて複合的な判断をしているのだ。さらにこの中で,主要被写体の判別,測光,エキスパートプログラムにはファジィ制御が使われている.さまざまな条件を逐次判断していく従来の方法に比べ,ファジィ制御は単純なルールの組み合わせなので,より短時間で処理を行なうことができるという.
 また,従来の方法では条件判断の境界の部分で不連続点が生じる。このため,たとえば順光か逆光かの判断が微妙な状態で何枚か写真を撮ると,あるものは順光として処理され,あるものは逆光で処理されるなど,動作が安定しなかった。これに対して,ファジィを用いると不連続点のないなめらかな制御が可能だ。
 さらに,ピント合わせ(フォーカシング)とズームの制御にもファジィ制御を用い,高速でなめらかな処理を実現している.

 実際にα-7xiを使ってみると,構えただけでカメラが被写体を追ってズームやフォーカスを調節し続けるのが,実に面白く,また不思議でもある。道具としてのカメラというより,それ自身独立した「思考物体」といった感触なのである.
 「カメラの自動化もここまでいくとやりすぎ」との声も一部にはあるが,今後カメラがどこまで賢くなっていくのか注目していきたい.


こうしてデジカメへの準備機能が開発されているということか。
デジカメに至るまでの記事が楽しみである。
コラム記事をスクラップする。
普及版α-3xiも登場
 この原稿を作成している間に,α-7xiの下位機種に当たる「α-3xi」が発表された(写真)。1991年8月7日現在,フラッシュ内蔵AF一眼レフカメラとしては世界最小・最軽量である。
 α-7xiと比較すると,AFセンサが1個のみ、測光は8分割ハニカムパターン、「イメージサイズロック」や「ワイドビューファインダ」ができない,などの制限がある.しかし,「ゼロタイムオート」システムは搭載しているし,測光モードもプログラムオート/シャッター速度優先/絞り優先/マニュアルのすべてをサポートしている。単なる入門機で終わらない、コストパフォーマンスの高いカメラといえるだろう.


ASCII1991(10)g03デジカメに非ず写真7_W365.jpg

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宇宙の旅第8話銀河テレビ衝突(月刊ASCII 1991年9月号8) [月刊アスキー廃棄(スクラップ)]

「パソコンで体験する天文学 宇宙の旅」の第4回、第8話銀河テレビ衝突をスクラップする。

銀河テレビ衝突
京都市立芸術大学 助教授
藤原 隆男


銀河系の運命は?
 松本零士の「1000年女王」という物語をご存じだろうか?周期1000年の楕円軌道を持つ第10惑星「ラーメタル」が,1999年に地球に接近し、地球はラーメタルの潮汐力で壊滅的な被害を受ける。やがて1000年女王が地球に送り込まれて…….というものだ。10年ほど前にアニメーション化されているが,そのラストシーンが印象的だった。大きな銀河が銀河系の目の前まで近づき,いまにも衝突しようとしているのだ。至近距離から見る銀河の美しさとともに,その設定の現実性にはハッとさせられたものだ。
 なにを隠そう,わが銀河系には実際に,この映画のラストシーンと同じような運命が待ち受けている。1000年女王のストーリーのように、1999年というわけではないのだが……。

銀河の衝突
奇妙な銀河

 銀河は,直径10万光年程度の大きさで,1000億個ほどの星と,大量のガスが詰まったものである.こんなに星の数が多いとぶつからないかと心配にもなるが,星々の大きさが十分小さいため,星同士が衝突することはめったにない(注7).

注7 銀河の中の星の密度は、円盤の平面に集中しており,また中心にいくほど高く、周縁部では低い。銀河系の太陽付近の星の平均密度は,1辺が1パーセク(3.262光年=30兆8567億7600万km)の立方空間に約0.13個となる.これでは、1つの恒星をパチンコ玉にたとえてみても、おおよそ2000~3000kmは離れている計算になる.

 それでは,銀河と銀河の場合はどうだろう。銀河の多くは集団を作っている.集団のサイズは1000万光年程度,その中の銀河の個数は多いもので数千個といったところだ。
 個数の多い集団は銀河団,100個以下の貧弱なものは銀河群とよばれる.単純に数字だけを見れば,銀河団では,直径1000万光年の球状の空間に,直径10万光年の銀河が100個も詰まっていることになる。実際には,こんなに詰まっていることはないが,この密度では,ぶつからないほうがおかしい。銀河集団の中では,銀河同士が衝突したり,異常接近したりという事件が頻繁に起こっているのだ。
 銀河の衝突を証明するのは,銀河団の中にある,ゆがんだ銀河や,尻尾が生えたような奇妙な形をした銀河の存在である。これらは,銀河同士が接近遭遇,あるいは衝突した結果だと考えられてる.また、実際に衝突している最中の銀河も数多く見つかっている(写真2).


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潮汐作用
 銀河が遭遇すると何が起こるか考えてみよう.図3は,天体Aがもう一方の天体Bから受ける力を表わしたものだ。これは、地球が月から受けている力と同じで,地球では潮の満ち引きを起こすため「潮汐力」とよばれる.
 2つの銀河が遭遇すると,接近している間は,互いに相手の銀河から潮汐力を受けることになる(注8).
 ところで,円盤銀河の中の星々も銀河の中心のまわりを回っている。この回転方向と,遭遇する銀河の位置がくせものである.遭遇のときに銀河が受ける影響は,銀河の回転方向によって違ってくるのだ。
 いちばん影響が大きいのは,相手の銀河が回転と同じ向きに通過していく場合だ(図4)。このとき,銀河の中の星々は,相手の銀河が通過しきるまで潮汐力を受け続けることになり,星が銀河を回る軌道は大きく乱されてしまう。各々の星の秩序だった運動が崩れるため,結果として,銀河は変形してしまう.

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注8 潮汐力の大きさは相手の質量に比例し,天体間の距離の3乗に反比例する.銀河が遭遇するときは,軽い銀河のほうがより大きな潮汐力を受ける.また,潮汐力は相手が遠ざかると急に弱くなる.

 逆に、相手の銀河の通過方向が銀河回転と反対のときは,星から見れば相手の銀河がさっと通り過ぎることになるので,星の軌道の乱れが小さく,銀河もあまり変形しない.
 変形した銀河が,なぜ,そのような形になってしまったのかは,数値実験によって詳しく調べることが可能だ。相手の銀河の質量や,通過する位置,方向,速度をいろいろ変えることによって,計算結果が,実際の変形銀河の形になるように、何度も計算を繰り返せばいい.
 さらに,銀河同士が遭遇することの影響は,変形だけではない。銀河の中にあるガス雲の運動も大きく乱されるので,ガス雲同士があちこちでぶつかり,そのとき星が一気にどっと生まれることになる.一般に,変形している銀河は明るくて色が青いという傾向があるが,これは生まれたての若い星が多く含まれるためである(注9).


注9 重い量は,青白い色で明るく輝き寿命は短い(数千万年).一方,軽い星は,赤っぽい色で暗く長命だ。星が一度にたくさん生まれると、重い量が多く生まれるという.銀河も,しばらくは全体に明るく青く見えるが,重い星は銀河を1周することなく燃え尽きるため,銀河もすぐに暗くなってしまう.

 なお,複数の銀河が正面衝突したとしても,その中の星同士は,スルリと通り抜けてしまう.衝突する星はごくまれで,よほど運が悪かったというべきだろう.

衝突する銀河 NASA」で検索すると沢山の写真を見ることができる。

力学的摩擦
 ときには,銀河の遭遇が,その銀河に決定的な影響を与えることもある。それは「銀河の合併」である.
 そのプロセスは摩擦力によって説明できる。銀河の遭遇では,相手の銀河を変形させるが,その相手の変形が自分の銀河全体の運動にブレーキをかけることになってしまう。この効果は、ふつうの摩擦作用に似ているので力学的摩擦ともいう.単純に遭遇によって相手の銀河の内部運動(つまり星の運動)を乱し,エネルギーを与えるので,その分こちらの銀河の運動エネルギーが吸いとられると理解してもらってもいい。
 さて,銀河がすれ違ったときに摩擦が働くとどうなるか?ブレーキが効きすぎた場合には,銀河同士が離れられなくなって,あたかも連星のように,互いに相手のまわりを運動するようになる.
 回転して互いに影響を与えながらも、摩擦は働き続け,軌道運動のエネルギーはどんどん減ってしまう。そして、ついには銀河がひとつに合併してしまうことになる.
 密集した銀河団の中心には,巨大な楕円銀河が鎮座していることが多いこれは,中心部で銀河の合併が進んだ結果と考えられている.このように,銀河が合併によってどんどん太ることを「銀河の共食い現象」と呼んでいる.
 南半球へ行くと見える「マゼラン星雲」冒険航海で有名なマゼランが,世界一周のあと,ヨーロッパにその存在を伝えたので彼の名前がついている(もっとも,マゼランは生きて帰れなかったので伝えたのは部下である)。実は,このマゼラン星雲も銀河系に捕まってしまった子分なのである。
 大小2つのマゼラン星雲は,銀河系のまわりを数億年の周期で,楕円軌道を描きながら回っている.そして,銀河系からの摩擦を受け続けている.数値実験によれば,マゼラン雲の軌道はしだいに小さくなり、約20億年後にはバラバラに壊れ,銀河系に合併吸収される運命になる.


 観測技術の進歩によりマゼラン雲の挙動について定説が変わっていった。
最初は天の川銀河の内部にあるのか外にあるのかで議論があった。
ハーバード大学天文台で写真乾板から変光星を探していたヘンリエッタ・スワン・リービットが沢山の変光星を見つけ変光星のリストを作った。ケフェイド変光星が「変光周期が長い星ほど絶対等級が明るいという性質」があるため変光星の距離が求められる。マゼラン雲のケフェイド変光星が皆同じ明るさであるので同じ位置にあり、その距離は天の川銀河の外にあることが分かった。
 その後ハッブルがマゼラン雲は天の川銀河の周りを回ると衛星銀河だとしたことが定説となっていた。

「星好きの三大願望」-マゼラン雲は偶然通りかった銀河
以下引用
「ローランド・バンダーマレルらのグループが,ハッブル宇宙望遠鏡を用いて4年間にわたってマゼラン雲内の25か所の場所の移動速度を測定すると,その移動速度が秒速480キロメートルと算出されたのです。この速度は,あらかじめ行れていた推算値よりも数割以上も大きいもので,両銀河が天の川銀河に重力的に束縛されていない可能性を示唆しているのです。
 そこで,マゼラン雲というのはハッブル以来の定説であった「天の川銀河をまわる伴銀河」ではなく別の銀河であって,どこかから天の川銀河の近くにやってきた銀河が,今たまたま近くにあるというだけで,やがて数十億年後には天の川銀河の引力を振り切ってかなたに去ってゆき,その後 天の川銀河とマゼラン雲は再び出会うことは無いのだ,と理解されるようになりつつあるのです。」

天の川銀河の周りを回ってくれないのかと残念に思った。
と思っていたらなんと20億年後に天の川銀河と衝突するという説が発表された。
銀河系と大マゼラン雲、20億年後に「大衝突」 英研究

今後も観測精度の向上からまた違う説が登場するかもしれない。
銀河系の将来
 マゼラン星雲以外にも,銀河系に接近中の大きな銀河がある。相手の正体は,秋の夜空に肉眼でも見えるアンドロメダ座の大星雲「M31」だ(写真3).M31は,銀河系との距離220万光年,大きな渦巻き銀河で,質量は銀河系よりも大きい。かつて,銀河系とM31は宇宙の膨張に乗って離れていった.しかし,お互いの重力で引き合った結果、現在は秒速100kmほどの速度で近づいている(注10).

注10 宇宙は百数十億年前に始まり、現在も膨張を続けている。宇宙にある銀河は,宇宙膨張に乗って互いの間隔が開きつつあるが,局所的には、互いの重力で引き合って銀河集団を形作る場合もある。銀河系も,M31やマゼラン星雲など,いくつかの小銀河とともに小さな銀河群の一員である.

 重力によって加速されることを考慮して計算すると,最接近は約30億年後となる。そのころ,地球からは見事な渦巻き銀河が見えるはずだ。遠い将来、人類がまだいるのか定かではないが,激しい変形を受けて,太陽系が銀河系から放り出されることのないよう,祈りたい.


アンドロメダ銀河
は美しい。
それに比べ天の川銀河の想像図は2本腕の棒状渦巻銀河で思ったほど美しくない。
アンドロメダ銀河が天の川銀河と衝突するらしい。
アンドロメダ銀河と天の川銀河が衝突…40億年後の夜空はこう見える

まったくどうなることやら。どの説が正解なのか。

プログラムの実行
 ここで紹介するのは,銀河衝突のシミュレーションプログラムである.渦状腕の場合と同様に,テスト粒子法を用いることにしよう。この方法では,変形による銀河の重力パターンの変化(力学的摩擦の効果)を無視している.
 プログラムには2つのメニューがある.(1)銀河の遭遇と,(2)リング銀河の形成だ。
 まず,(1)を選ぶと,ぶつける銀河(摂動銀河)の位置をカーソルキーを使って決めることになる。つぎに摂動銀河の質量を入力する(画面4a).質量は,ぶつけられる銀河(主銀河)を1として答えてほしい。さらに,摂動銀河と主銀河の回転方向を,それぞれR(右まわり)/L(左まわり)のどちらかに決めよう。摂動銀河と主銀河の星は色で区別している.また,計算を簡単にするため,銀河の回転面も銀河の軌道も同じ平面上にあるとしている。さて,銀河テレビ(ディスプレイ?)衝突の始まりだ(画面4b~d).質量や通過位置によって,尻尾(テール)が出たり,銀河をつなぐ橋(ブリッジ)のようなものが見えたりする。また質量が小さいと,潮汐作用で引き延ばされバラバラになることもある。試してもらいたい。


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 (2)はリング銀河ができるシミュレーションである.摂動銀河の位置と質量,視点の位置(真上/斜め/真横)を指定すると計算が始まる(画面5a~c).ここでは,摂動銀河のまわりの星を表示しないことにする.リング銀河は,摂動銀河が主銀河の中心近くを,回転面とほぼ垂直な方向に通過するときにできる.形が車輪に似ていることから「車輪銀河」とも呼ばれ、実際に,きれいなリング状の銀河がいくつか発見されている.
 (1)と(2)のどちらの場合も,画面に時間が表示されるが,これは計算で使っている時間で,時間1は,実際に1000~2000万年を表わしている。銀河の回転面の関係,銀河の位置関係,銀河をぶつけるときの向き/速度など。銀河の遭遇実験ではパラメータは盛りだくさんだ。プログラム中のパラメータを変えて,奇妙な銀河を作ってみるのもいいだろう.


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今ではこういったシミュレーションは超高精度でできるようになった。星の数が数百万以上でシミュレーションする。

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宇宙の旅第7話グランドデザイン(月刊ASCII 1991年9月号7) [月刊アスキー廃棄(スクラップ)]

「パソコンで体験する天文学 宇宙の旅」の第4回、第7話グランドデザインをスクラップする。
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第7話 グランドデザイン 京都市立芸術大学助教授 藤原隆男
ラプラスの悪魔
 19世紀初頭に活躍した数学者ラプラスは,天体力学や確率論で活躍したことで有名だ。彼は,天体の軌道計算法を発展させて,つぎのようなことを考えた.
 「宇宙のすべての粒子の現在の運動状態を知る能力と,それらの粒子の運動方程式を解く能力を持った“英知”がいたら,その英知は,宇宙の過去から未来まですべてが見通せるはずだ……。」
 力学が,天体から原子分子にいたるまで,すべての粒子に当てはまると考えるならば,たしかにこういう結論になる.ラプラスが考えた英知は,あなたがもうすぐアクビをすることさえも知っているという,予知能力が抜群の,まさに悪魔のような存在だ。
 ラプラスの悪魔は,ニュートン力学の成功の結果によって生まれた機械的決定論の考え方を反映していた.そして,ラプラスの死後20年ほどたった1846年.海王星の発見によって「英知=悪魔」の存在が証明されることになる.
 観測された天王星の実際の軌道と,計算から得られた軌道がズレていたことから,天王星の外側に第8番目の惑星が存在することが予想されたのだ。その後,第8惑星の位置が正確に計算され,綿密な観測で,その位置に海王星が確認されたのである。いよいよ自信を得た人類は,英知になる日も近づいた,と思ったに違いない.
 しかし,ラプラスの悪魔は,1920年代に誕生した「量子力学」により,あえなく死を迎えることになる.原子などのミクロの世界では,ニュートン力学が成り立たないことが明らかになったからだ。量子力学では,ミクロの世界の物質の動きは確率的にしか記述できないという.原子の世界では確定的な予言など,不可能だったのだ(注1)。


注1 ミクロの世界では粒子は波のようにふるまう.たとえば,電子は一定の質量と電荷を持つ粒子であるが,その位置は波のようにぼやけていて確定できないし、速度も確定できない(不確定性原理).電子の運動は,このような存在確率の波として記述される.


 ところで,少なくとも天体のように巨大で,質量の大きな物体の運動では,まだまだ「ニュートン力学」が有効である.天体の運動方程式を解く場合ならば,コンピュータこそは,ラプラスの悪魔の再来といえるかもしれない。もちろん,コンピュータの計算能力は,万能のラプラスの悪魔にかなうはずもないのだが…….
 アスキーのこういった科学雑誌並みの記事が好きだった。
円盤銀河のグランドデザイン
数値天文学
 実験は科学研究の重要な方法である.ところが天文学での実験は不可能に近い。
 星を作って進化させてみようとか,銀河をちょっとぶつけてみたりなど,実際の宇宙ではできないし、また,仮にできたとしても、相手が進化するのを何億年も待つわけにはいかない。従来,天文学は、観測という受動的な方法に頼るしかなかった.
 ところが,近年,コンピュータを使うことにより,天文学でも実験が可能になった。コンピュータの中では,計算によって星を作ったり,ぶつけたりする数値実験ができる.たとえば,多数の星の集まりである銀河を,星の代わりに多数の粒子で表現し,その粒子1個1個の運動方程式を解いて銀河の力学を調べる.また,星のガス(気体粒子)を多数の粒子で表わして超新星爆発のようすを詳しく調べたりできるようになったのだ。
 このような数値実験を用いる天文学は,「数値天文学」と呼ばれることがある.

グランドデザイン:渦状腕
 楕円状だったり,円盤状だったり,雲のように不定型だったりと,銀河(注2)の形にもいろいろある(図1).

注2 「銀河」は星雲(星のように1点が光るのではなく,もやもやと雲のように輝く天体の総称)の一種である.星雲は大別して、「ガス状星雲」と「銀河星雲」に分けられる。ガス状星雲は,私たちの銀河系の中にあるガスの塊が光っているもので,比較的太陽に近い(距離のオーダーで10~数1000光年).一方,銀河星雲は,私たちの銀河系の外にある銀河系のこと.その位置は太陽より遙かに遠く,100万~1000万光年以上の距離にある.本誌では,「銀河系」は私たちの銀河系を,「銀河」は外部の銀河星雲を示している.

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 「銀河系」,つまりわれわれの銀河は円盤銀河のひとつで、1千億個以上の星とガスの大集団である.銀河系をその中の地球から見ると,円盤状の星の集団は,空をめぐる光の帯として見える.これが天の川だ(注3).

注3 地球からでは,はくちょう座方向の天の川が銀河系の周縁部,いて座方向が中心部を見ていることになる.しかし,天の川の方向(銀河円盤に沿う方向)には宇宙空間に大量のガスがあり,それが視界をさえぎるため光学望遠鏡では,せいぜい1万光年ぐらいまでしか見通せない.これは銀河全体(直径約10万光年)ほんの一部である.

 私たちの銀河系や,写真でよく見る「アンドロメダ星雲」のように,円盤銀河の中には,台風の雲の渦のような渦巻き模様があるものがある。これを「渦巻き銀河」といい,渦巻きのスジの1本一本を「渦状腕」という.また,渦巻き銀河に分類されるものの中にも腕がはっきりしないものや、何本にも見えるものがある.この渦状腕の数には,宇宙の物理法則が生んだ不思議が潜んでいる.腕が太く,はっきり見える典型的な渦巻き銀河では,腕の数は2本と決まっているようなのだ。このような,きれいな2本腕のパターンをもつ銀河を「グランドデザイン銀河」と呼んでいる.おおぐま座のM81(写真1)などが代表例といえるだろう.

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最近の観測結果から4本だという説が有力みたいだ。
天の川銀河の腕は何本?

日経サイエンス  2020年12月号 特集:星の地図を作る 見えてきた天の川銀河の姿
どうして天の川銀河が「渦巻銀河」だとわかるの? (2/3) 「銀河の腕が発見されると、渦の数が2つか4つかを巡っての議論が長らくされていました。その解決を見たのはNASAのWISEによって、腕の数が4つであることが確認されたときです。じょうぎ・はくちょう腕、いて腕、たて・みなみじゅうじ腕、ペルセウス腕と呼ばれる4つです。さらに、天の川銀河はただの渦巻銀河ではありません。棒渦巻銀河です。腕が伸びている中心は円ではなく、銀河の中心に横たわる長方形の短い2端の辺です。」
最新では2本だという説もある。
天の川銀河の想像図が書き換わる新発見!銀河の腕は実は2本しかなかった!?
さてどうなんだろう。大事なのは「理論と合うからこうだ」ではなく「理論と合わなくても観測結果からこうだ」である。理論はどんどん修正して真理に近づけるべきものだ。
コーヒーカップの中の銀河
 渦状腕はなぜできるのだろうか?なぜ,2本なのだろうか?
 かき回したコーヒーの中にミルクを数滴たらすと,そこには,銀河にも似た美しい渦巻き模様が現われる.2種類の液体が混ざりながら回転すれば,そこに渦巻き模様が誕生するのである.これを見ていると,銀河も同じような原理で渦巻いていると思えてしまう。ところが,星々が作る銀河では,ことはそう簡単ではない。
 銀河の中の星々は,それぞれが,銀河の中心の重力とつりあう速度で回転しながら動いている(注4).その回転速度も,中心から周縁部にかけて異なり,銀河を1回転する時間は中心に近い星ほど短い(図2)。


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注4 太陽は銀河系の中心から約2.5万光年のところにいて,2億年あまりの周期(秒速250km)で公転している.太陽は生まれてから46億年たっているので,すでに銀河系を20周もしたことになる.

 このような回転を差動回転という.コーヒーカップの中では,コーヒーが差動回転をしており,そこにミルクが白い線を引くことで,渦状の形ができている.しかし,この考え方を、そのまま銀河の渦巻きに応用すると,銀河の渦状腕も、時間が経つにつれ中心にギリギリと巻き込まれることになってしまう。蚊取り線香やバウムクーヘンのように,いくつにも重なった渦(円盤)になってしまうはずである。
 しかし,そんな銀河は,いまだに観測されていない。どうやら,銀河の渦は,コーヒーの回転とは異なる原理が働いて形成されているらしい.


密度波
 銀河の巻き込み問題を解決したのが,渦巻き模様は円盤の中を伝わる一種の波であるという考えだ。水面を伝わる波の速度が,水自体の流れの速さと同じでないように,星の波(密集部分)が銀河の回転とは別の速度で伝わっているというのだ。
 この考えによる星々の波を「密度波」という.密度波は,前記のような問題を解決するため,まず理論的に研究され,その後の数値実験によって、確かに渦状腕のような模様(波)ができることが立証されたものだ。
 話をさらにややこしくすれば,本当は,渦状腕は密度波そのものではない。銀河の中では,ガスの集合(雲)から絶えず星が生まれては死んでいる.密度波の重力によってガス雲の運動が乱され,ちょうど,密度波のあるところでガス雲同士が衝突。その場所で多くの星が生まれることになる。こうして生まれた若い星々は、年老いた星よりも明るく輝く.明るい星のあるところが渦状腕として見えているのだ.
 あたかも,夜光虫が夜の海で波に揺られる刺激で輝き,その波を不気味に浮かび上がらせるように…….


プログラムの実行
 ここで紹介するプログラムは,数値実験により,銀河の渦状腕を再現しようというものだ。
 本格的な数値実験では,数千~数十万個の粒子を使って銀河を表現し,その粒子の分布から銀河全体の重力を計算している.しかし,このような大規模な計算はパソコンには荷が重すぎる。ここでは,もっと簡単に,「テスト粒子法」を用いて計算することにする.
 テスト粒子法とは,銀河全体の重力をあらかじめ与えておいて,その中に粒子をばらまき、その運動を追いかけるというものだ。粒子同士は十分軽いとして,粒子同士の重力の影響は無視する.自分自身の重力を計算に入れないという意味では、この数値実験は,星の密度波のシミュレーションというよりも,銀河の中でのガス雲の運動シミュレーションと考えたほうがよいかもしれない(注5).


注5 銀河系のガス雲の質量を全部合わせても、星の全質量の5~10%にしかならず,ガス雲が銀河全体におよぼす重力は小さい.

 もっとも、テスト粒子がガス雲を表わしているとするなら,粒子同士が衝突したり、くっついたりする効果も計算に入れるべきである.これまた,計算が遅くなるだけなので,考えないことにしよう.
 また,あらかじめ与える銀河の重力として、最初から渦巻き状になった密度波パターンを与えてもいいのだが,これでは、パターンに対応した腕ができるだけで面白くない。ここでは銀河の中心部の密度分布が,少し楕円状に歪んでいるような重力を与えることにする(図2)。たとえ,密度分布が渦巻き状でなくても,ちゃんと渦状腕は生まれてくれるのだ。



 プログラムを実行すると,まずメニュ一画面が現われる(画面1).項目はカーソルキーの上下で選び,その項目の数値はカーソルキーの左右で増減する.


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 最初の項目は、楕円状パターンのゆがみの強さを表わすパラメータで,これを大きくすると渦状腕が早く現われる.
 2番目の項目はパターンの回転の角速度だ。すでに述べたように,粒子は差動回転をする.それに対し,パターンは形を変えずに回転(剛体回転)するので回転速度は図2のような直線になる.
 粒子とパターンの回転速度が一致するところ(画面右のグラフで2本の線が重なる点)が,「共回転半径」になる.渦状腕はこの共回転半径あたりでいちばんハッキリと現われるので,パターンスピードを変えれば,渦状腕の形も変わり、さまざまな銀河ができるはずだ.
 3番目は粒子の分布の指定で,ランダムか規則的かの2者択一(画面2).


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 4番目は座標系の指定で、観測者の視点が静止しているのか,銀河の回転とともに移動するのかを決める。静止系で見ると渦状腕のパターンは銀河の回転と同じ方向に回転する.一方,銀河円盤に乗った回転系で見ると,粒子は共回転半径の内側と外側で反対に回るように見える.一見,奇妙な動きではあるが,渦状腕の形の変化はこちらのほうが分かりやすいだろう.
 最後の項目は計算する粒子の個数だ。数を増やせば,渦状腕のパターンがきれいに見えるが,計算は遅くなる.あなたのコンピュータの能力に応じて、粒子数を調整してほしい.
★★

 リターンキーを押すと計算が始まる(画面3a~c).中央の棒は,あらかじめ与えた重力パターンの向き(楕円の長軸方向)を表わしている。

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 すべての粒子の運動方程式を解いていると非常に時間がかかるので,半分だけを計算して,あとの半分は点対称に回転投影し、時間を稼ぐことにした。
 画面の左上には銀河中心部の回転数が出る。ここでの1回転は,実際の宇宙では1億年程度に相当すると考えよう.さて,数値天文学の一端を、あなたのコンピュータで,味わっていただけただろうか?(注6)


注6 重力計算用コンピュータの開発が東京大学のグループを中心に進んでいる.本格的な数値実験を行なうためにはすべての粒子のおよぼす重力を計算する必要があるが,その部分を重力計算専用のハードウェアで高速に行なおうというものだ。「GRAPE」と名付けられ、パソコン版はすでに実用化されて大型計算機なみの計算速度を実現している。チップ化して量産しようという計画があるので,アマチュアの人でも本格的な数値天文学ができるようになるかもしれない.

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既にGRAPE-1はできていた。

「1989年9月に最初の GRAPE-1 が完成した」

世界最高速のGRAPE-DRの完成記者会見はこの記事の15年後だった。
記者会見「世界最高速のスーパーコンピュータ用プロセッサ チップ開発に成功 - ペタフロップス実現へ大きな一歩 - 」 発表日時:2006年11月6日(月)15:30~16:30

世界一の電力効率をもつスーパーコンピュータを完成

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PC-386GS,PC-9801T,インタビュー(月刊ASCII 1991年10月号6) [月刊アスキー廃棄(スクラップ)]

NEW MODEL IMPRESSIONをスクラップする。

PC-386GS
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以下写真をスクラップする。
ASCII1991(10)d02PC-386GS写真1_W520.jpg
ASCII1991(10)d02PC-386GS写真2_W520.jpg
ASCII1991(10)d02PC-386GS写真3_W361.jpg
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まとめ部分をスクラップする。
 ハイレゾ表示可能な機種の価格を見てみると,PC-9801RL(386CPU/20MHz)は70万円,PC-H98model60(386CPU/25MHz)83万5000円(いずれもFDDモデル)なのに対し,GSが39万8000円となっている.Windows3.0やCADアプリケーションなど,ハイレゾ表示を必要とする用途には最も導入が容易なマシンと言える.
 GSはPC-9801DA(386CPU/20MHz)と,GEはPC-9801DS(386SX/16MHz)とCPUスペックでは同じだ.GSはDAに比べて5万円安く,GEはDSに比べて4万円低い価格設定になっている。
 GEはエントリーマシンの色合いの強PC-9801DX(80286/12MHz)に比べても2万円安価で,後からハイレゾボードを追加してハイレゾ対応にできることを考えると将来的にも有利といえる.Windows3.0を導入してみようと考えている人には手頃なマシンといえるだろう.
(行正)

 妥当な評価だと思う。この記事には丸や線が引いてあり当時DAとGSの比較検討をしていたようだ。全く記憶に残っていない。買ったのはPC-486GR5PC-486GR3だったから、このときは検討にとどまった。

PC-9801T F51/71
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「身近になったカラー液晶」とあるが、まだまだだった。
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CRTなみの発色と追従性
 TFの特徴はなんといっても4096色を表示できるTFT型カラー液晶である.TFTは「Thin Film Transistor(薄膜ランジスタ)」のことで,画面上の各ドットにトランジスタを配置する方式を指す。各ドットを独立して制御できる(アクティブドットマトリクス方式)ため、鮮明で高速な表示が得られるが,PC-9801の解像度で少なくとも約77万個(640×400×3(RGBの各ドット))ものトランジスタを集積する際の歩留まりの問題などで,これまでは高嶺の花だった.
 TFの前身にあたるPC-9801TF5もTFT液晶を採用していたが,40MbytesHDD内蔵モデルが115万円で,しかも表示はデジタル8色のみであった.
 TFでは,640×400ドットの解像度で4096色中16色の表示を実現し,PC-9801で実現可能なすべてのグラフィックスを表示可能にした(スキャン周波数を変更するような一部のフリーソフトウェアは例外)。ゲームやペイントソフト,Windows3.0などパレットをサポートするソフトウェアが,CRTと同じ環境で利用できるようになるわけだ(画面1).
 ノートパソコンなどのディスプレイを見たことがある方は,画面の表示速度,発色,視野角などについて懐疑的になるかもしれない。が,TFT液晶ではそのような液晶の悪い特徴はほとんど見られない。液晶という言葉が浮かんでこないほど,異なった表示装置に見える.
 まず発色は,CRTの「光る」感じはないものの,色表現はごく自然で,塗りつぶしても色ムラが出ない.CRTはともすれば目につきささる感じがあるが,TFT液晶はそれを感じないだけ,長時間見ていても疲れにくいような気がする。追従性もCRTと比べて劣るところはない。マウスを大きく動かしてもぴたりとついてくる.視野角もかなり改善されているが,まだCRTほどではないようだ。左右に振ると白黒に近い色に見えるし,光の具合によっては液晶パネルの表面が光る(画面2)さらに,上下方向から見ると色が変わって見える。TFの場合は,上から覗きこむと明るく,下から見ると暗くなる(日立のFLORAのカラー液晶と逆なのがおもしろい)。
 CRTとの最大の違いは、各ドットが非常に鮮明であるということだろう.CRTを近くで眺めると分かるが,コンピュータにとっての1ドットも,CRT上では複数の光の点の集合である.そのため,文字や線の輪郭はどうしてもにじんでしまう.ところが,カラー液晶では1つのドットは正確に1つの点で表わされるため,輪郭が非常にシャープで,ちょうど印刷物を見ているような感じになる。このあたりは好き嫌いの問題だが,CRTよりくっきりしているのは確かだ(画面3).CRTなみの表示ができるようになったにもかかわらず,文字フォントは相変わらず「ラップトップ/ノート用」の,斜めが強調されたものをそのまま採用しているのは残念だ。視認性の低い液晶ならともかく,TFに採用する必要は感じられない(画面4).
 なお,カラー液晶はデジタルモードにすれば8色表示が可能であるほか,この状態では白と黒を反転させることもできる.

カラー液晶は白黒液晶に取って代わるか
 TFは,40MbytesHDD内蔵モデルで85万円,100Mbytes内蔵でも95万円であり,TF5と比べて30万円(26%)も低価格になった。プラズマディスプレイのPC-9801LS5や,モノクロ液晶のPC-9801TW5よりも安い。カラー液晶の価格が,ひとむかし前の液晶と同じところにまで降りてきたのである。この調子で量産が進めば,98NOTEにカラー液晶が載る日も遠くないだろう.
 重量と厚みのほうは,PC-9801Tシリーズに限って言えばモノクロとカラーとで差はない。ノート化を考えた場合,W7より15W多い消費電力のほうが問題かもしれない.
 現時点のTFは,CRTに比べるとかなり割高ということもあり,カラー環境を比較的頻繁に移動させる必要のあるところでないと導入は難しいだろう.ほぼ同機能のPC-9801DA5にCRTをつけても65万円程度ですむのだ。しかしこれは,20万円の追加投資でCRTをTFT液晶にすることができるようになったということでもある.   (野口)

 残念ながらまだ趣味でパソコンを買っている一般ユーザの手に届く機械ではなかった。

エコロジーとノートン・コマンダーの発売元へのインタビュー記事をスクラップする。
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マイクロデータの代表取締役の丸田陽一郎氏へのインタビュー記事をスクラップする。
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インタビューアメリカで見たツリー構造をビジュアル化するプログラムがヒントです
 本誌のソフトウェアランキングでも,ユーティリティ部門で常に上位を占めているエコロジーII.そのメーカーであるマイクロデータの代表取締役の丸田陽一郎氏にお話をうかがった.
――エコロジーの最初のバージョンを発売されたのはいつですか。また,エコロジーを企画された動機あるいはきっかけについて聞かせてください。
丸田 1985年にアメリカへ行きまして,ディレクトリを簡単なツリーチャートにしてビジュアル化するプログラムを見たんです。そのとき,日本でもこういうものが必要だなと感じたというわけです。というのは、日本もいずれアメリカのようにハードディスクが普通に使われるようになると思ったからです.エコロジーを企画したのはその年で,最初のバージョンを発売したのは1年後の1986年ですから5年ほど前になりますね。
――ユーザーの方のプロフィールについて教えてください.
丸田 法人ユーザーが90パーセント以上です.年齢は,平均すると30歳台ということになるでしょうか。ただ法人の場合,担当者で登録されますから,あまり年齢は意味ないかもしれませんが。
――開発にあたって特に苦労された点,エピソードなどがありましたら、ぜひ聞かせください。
丸田 1985年当時は,MS-DOSのアンドキュメンテッド(未定義)ファンクション関係の資料がまったくなかったんです.それで直接MS-DOSを解析したりアメリカでMS-DOS関係の資料などをあちこち調べまくったりして作ったというのが実情です.
――苦労されたようですね。
丸田 最近は詳しい資料がいろいろあって、作りやすい環境だと思うんですが,当時は非常に苦労しました.
――ユーザーから寄せられる,エコロジーへの要望にはどんなものがありますか.
丸田 ユーザーの方からの具体的な要望は,ありとあらゆるものがあって、あまりにも多岐にわたってますが,エディタを付けてほしいという要望が一番多いようです。
――今後のバージョンアップの予定,あるいは新製品の企画がありましたら教えてください.
丸田 今おもしろいと思ってるのは,簡易LAN,小規模なLANですね。ただ,当社の場合,発表が先行しまして、開発から出荷までいろいろ紆余曲折がありがちですので(笑),出荷体制が整ってからまたお話しするということで勘弁してください。
――ありがとうございました。



次にノートン・コマンダー
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「ノートン・コマンダーは『舵取り』です」
 PC-9801版ノートン・コマンダーの発売元であるソフトウェアジャパンの営業推進部PN課の安田道雄氏,同課杉山博章氏,ユーザーサポート担当の花岡正倫氏にお話をうかがった.
――ノートン・コマンダーのユーザー層について教えてください.
花岡 DOSのユーティリティとしてノートン・ユーティリティがよく知られていて、関連書籍も出てますから,それでビジュアルシェルもノートン製品をということでお買い求めいただいている方が多いようです.意外とエコロジーなどをすでに使っているというユーザーさんが多いようですね。
――法人ユーザーと個人ユーザーの比率はどうですか.
安田 ユーザー登録はがきを見てますと,法人ユーザーのほうが多いですね。
――そうですか.ユーザーのノートン・コマンダーへの評価,あるいはこんな機能を追加してほしいという要望が寄せられると思いますが,そのへんはどうですか.
花岡 機能追加のご要望は少ないですね.エコロジーにはこういう機能があるんだがということで言ってこられるケースがたまにあります。そういう場合,ノートン・コマンダーがノートン・ユーティリティを併用することを想定して作られてますので,その点を説明してご納得いただいています。
安田 反響が大きかったのは,2台のコンピュータをクロスケーブルで接続してデータ転送するリンク機能ですね。これの最大転送速度などについてお問い合わせをかなりお受けしました。あと,ノートン・コマンダーの場合、ビュアー機能を重視してますので,その点も好評のようです.
――Lotus1-2-3やMS-Excelのデータにカーソルを合わせてビュアーを起動すると,画面に表がそのまま出て、カーソルをセル単位で動かして横スクロールさせたりできますね。
安田 Lotus1-2-3で,小さいデータをたくさん作ってハードディスクに置いてるという方がけっこう多いようで,そういう場合これは便利だと思うんです。ファイルのコピーや移動は,まぁできて当然ですが,それがデータの中身を見た後でできるかどうかというのは大きな違いだと思いますよ。
――今後のバージョンアップや,新製品の予定があれば聞かせてください。
安田 IBMPC版がすでにVer.6まで出てますので,いずれ98版もバージョンアップはすることになると思いますが,まだ企画段階で具体的なスケジュールは決まっていません.新しいものとしては,9月か10月にノートン・バックアップという製品を発売する予定です。これはバックアップ専用のユーティリティです。
――ところで,ノートンユーティリティのパッケージは浮き輪でしたが,あれはやはりレスキューということで…。
安田 そうです。「救済」の意味ですね。ノートン・コマンダーのパッケージは,「取り」なんです.ノートン・バックアップをどうするかですね(笑)これはノートンさんのアイデアなの?
杉山 はい。ノートン氏自身がファイルを誤って消してしまって,それが動機で作ったのがノートンシリーズなんです。すべての人をトラブルから救おうという意味がこめられているわけです.
 やはり開発者の発言は参考になる。

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Windows 3.0(月刊ASCII 1991年10月号5) [月刊アスキー廃棄(スクラップ)]

特集の「Windows 3 本番」をスクラップする。
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図をいくつか抜粋スクラップする。

Win 3はメモリの壁を破る
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感想は、はいはい。そうですか。

図 Windows進化の系譜
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こう予想されていた。
Windows 3.0 → Windows3.1 → Windows 3.2 → Windows 4.0
Windows 4.0 はWindows95のことか?しかしWindows 3.2とはいったい何をしようと思っていたのだ。MME 2.0?

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DDEは使い物にならなかった。理想はいいがWin3.1でもこれは鬼門だった。人間が手作業で差し替えた方が確実だった。

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OLEはもっと酷い。理想の世界だった。

村瀬康治氏の記事が気に入っているのでスクラップする。
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要はWin3が動くではなく使えるマシンとメモリを選べということだ。古い機種を使ってWin3を使ってみようとしてはダメだということ。Win3がダメだという人はマシンがダメだということ。古い機械に新しいソフトを入れては使いにくいものになるのはWin3でなくても経験済みだった。ソフトは発売時のパソコン環境に合わせて作っていない。将来の環境に合わせて作っていた。
結論的にはWin3は機械面でもアプリでも時期尚早であったということだ。そういうものを買っても文句を言うだけだ。Win3は言うに及ばずWin3.1になっても良く落ちた。こまめにセーブをしていた。DOS窓を開くときは祈っていた。
メモリボードでスピードダウンはつまらない――メインメモリ(RAM)の準備
 ここではPC-9801シリーズを例に話を進めるが,その他の機種においても状況はほぼ同じなので参考にしていただきたい。
 前回にも述べたが,Windows 3.0(以下Win3と略す)の実用には、最低限「640Kbytes+5Mbytes」以上のメインメモリが必要である.むろんマシンは386,486マシン,そしてWin3の動作モードは「エンハンスドモード」が大前提である.そうでなければWin3を利用する意味はない。したがって,PC-9801RAやDAといった,640Kbytes以外に1Mbytesのメモリを内蔵しているマシンでは,4Mbytes以上のRAMを増設することになる.つまり98の場合,「4MbytesのRAMを増設する」これがメモリに関する最低限の条件である.さらに本格的な実用マシンとしての利用には、できれば8Mbytes程度は装備したい.
 なお増設メモリに関しては,CPUに直結した「内部バス」上に設けられた「メモリ専用スロット」(CPUのすぐそばにある)に装着するタイプのRAMボードをお勧めする(写真1)。マシン背面の「拡張スロット」に装着したRAMボードに比べ,動作がはるかに高速である(つまりプログラムの実行速度が上がる)。この違いは想像以上である。たとえば両者のRAMボードを混用して,下位2Mbytesをメモリ専用スロット,上位2Mbytesを汎用拡張スロットとしている場合など,マシン起動時のメモリチェックのカウントアップのスピードを観察すれば,そのスピードの差を簡単に確認することができる。その境目からガックリとスピードダウンすることが分かる.
 Win3には,とにかく速いマシンが望まれるのだから,メモリボードなどでせっかくの386/486のスピードにブレーキをかけるのは実につまらない。ぜひともメモリ専用スロット用のRAMボードを使いたいものである.いずれにしてもメモリを増設した場合には,マシン起動時のメモリチェックのカウントアップの値をよく観察し,増設したメモリがちゃんとコンピュータに認識されているかどうかを確認する必要がある.

旧型の増設メモリボードに要注意
 拡張スロットに装着するメモリボードの中で,旧型のボードをWin3に流用する場合は要注意である.MS-DOS上で,RAMディスクやEMSメモリなどとして問題なく動作していても,Win3のエンハンスドモードでは利用できないボードがある.Win3においては,MS-DOSの各種プログラムでは用いられなかった,386/486CPU独自のメモリアクセス法を使用する。そのアクセス法に対応できないメモリボードが過去の製品にはある.つまり,386/486マシンに“完全対応"ではなかったわけである。
 このようなメモリボードをWin3マシンに流用して,やれWin3には大きなバグがあるだの,Win3の動作は不安定だのと“他人(スクラップ時補足。ルビで「ヒト」)のせい”にしてはいけない.旧型のメモリボードを使っているマシンで,Win3がうまく動作しない場合は,一度そのボードメーカーにWin3に完全対応するかどうかを確認したほうがよい.“他人のせい現象”はメモリボードだけではない.DOSアプリケーション(MS-DOS用のアプリケーションのこと)の実行や日本語入力システムについてもいろいろな噂が飛び交っている.しかしその多くは、Win3上での正しい実行のしかたを理解していないための問題や、DOSアプリケーション側のプログラムの問題であることが多い。このような責任のないことまでWin3のせいにされるのも、前回述べた「過渡現象」のひとつである.
 Win3はたいへん大きいシステムである。すべてのソフトウェアについて言えることであるが,初期バージョンにおけるバグのいくつかはあるだろう.しかし筆者がWin3を“本番”に使い始めて数カ月になるが,一般的な市販のビジネスソフト(通信ソフトやグラフィックソフトも含めて)を,エンハンスドモードで利用する限り,大きな問題は起こっていない(ただしいくつかのバグには気が付いている)、
 いちおうテクニカルライターなるものを仕事のひとつにしている人間にとって,ワープロを中心に各種のソフトによって構築された自分のパソコンシステムの環境は“仕事道具”そのものであり,そう簡単に変えられるものではない(「仕事」に使う場合は,誰もがそうであると思うが)。その面で筆者は,自分が使うソフトに関しては人一倍保守的であり慎重である。そういう人間が“本番”に使い,それが手放せなくなったという意味を理解していただきたい.
 特殊な作りのDOSアプリケーションやMS-DOSのプログラミング作法を逸脱した,いわゆる“行儀の悪い”アプリケーションなどの場合は,まともに動作するかどうかは保証の限りではない。今後のDOSアプリケーションは,従来のように,「ただMS-DOS上で走りさえすれば何をやってもいい(どのような作りでもいい)」というのでは通用しない.Win3上でも正しく動作することが要求される.現在,Win3上で実行することに問題がある製品は(そのようなアプリケーションは少ないが),各メーカーで早急に対策していただきたい。逆にいえば,Win3上でちゃんと実行できる製品が正しいMS-DOSアプリケーションなのである.つまり今後のDOSアプリケーションは,MS-DOS上でもWin3上でも動作する,いわば,
「Windows対応MS-DOSアプリケーション」でなければならない。念のために繰り返すが,現在市販のアプリケーションのほとんどは,そのままWin3上で完全に動作する.


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 Win3のときは、Win3でなければならないソフトがなかった。DOSのソフトでもいいではないか。無理してWin3を使う必要がない。私がWin3.1を使ったのはPageMakerで仕事をしたかったから。それまではWord?一太郎の方がいいではないか。Excel?1-2-3の方がいいではないか。マクロだって作っていたし。何もExcelに移行する必要はない。
だからいかに村瀬康治氏が勧めようともWin3に移行しようとは全く思っていなかった。
Win3で動かす必要があるDOSソフトとは一体何を考えているのか。Win3で動かす必要はないではないか。DOSで高速に動く使えるソフトを何が悲しくて速度を遅くしてWin3で動かさねばならないのか。

Win3環境とMS-DOS環境をパーティションで使い分ける――ハードディスクの準備
 PC-9801シリーズのWin3をインストールする場合,Win3のプログラムを収容するだけで約7Mbytes,さらにWin3が動作する際に数Mbytesが使用されるため(この容量は使用状況により増減する),Windowsを動作させるだけで10数Mbytesのディスク容量が必要である.Win3のセットアップディスクは4枚組のフロッピーディスクで提供されているが,4枚だからせいぜい5Mbytesまでだろうと思ってはならない。セットアップディスクには各種のファイルが圧縮して収められているため,インストール後には全体が7Mbytesほどに展開される.
 Win3をインストールするディスクは,最低限でも20Mbytesの空きがなければならない。ただし20Mbytesというのは,Win3のみが動作するだけのギリギリの容量であり,各種のアプリケーションを収容する余裕はほとんどない.したがって実用的なディスク全体の容量は,最低限40Mbytesは必要である.
 Win3は,20Mbytesの空きがあれば,現在使用中のディスクやパーティションにインストールすることができるが,Win3におけるMS-DOSシステムの環境と,従来のMS-DOSの環境とを同じ設定にすることはできないと思ったほうがよい。したがって,従来のMS-DOSの環境をそのまま残したい場合は,Win3環境と従来のMS-DOS環境とをパーティションで分けることをお勧めする。たとえば80Mbytesのディスクであれば「40M+40M」などに分割し,最初の40MbytesのパーティションをWin3の環境,後の40MbytesのパーティションをMS-DOSの環境にして、従来のMS-DOSの環境を後者のパーティションにそのまま移し替えておけばよい。そうすれば,従来のMS-DOSの環境を利用したい場合があれば,マシンの起動時にそちらのパーティションを選択すればよい(図1).ただし前回にも述べたが,Win3上でDOSアプリケーションを実行できるようになれば,従来のMS-DOSに戻ることはほとんどない.
 さて,ここではWin3をインストールする最初の40Mbytesのパーティションに注目しよう。ディスクのフォーマット形式は必然的に「拡張フォーマット」であるが,インターフェイス規格のSASI/SCSIの違いはWin3には関係しない。Win3用のパーティションの領域を確保する際に,MS-DOSのVer.3.3以上のシステムを転送しておく(もちろん後からコピーしてもよいが).Win3には,Ver.3.3以上のMS-DOSシステムが必要である.
「Ver.3.3以上のMS-DOSシステムがコピーされた空のパーティションを準備する」  これがWin3をインストールするためのハードディスクの基礎準備に当たる.次に「FILES=30」の1行を登録したCONFIG.SYSファイルを作成する.PC-9801シリーズのWin3のインストールには,「FILES=30」を設定しておかなければならない。この時点におけるディスクの状態は,MS-DOSシステムのほかに,COMMAND.COMとCONFIG.SYS2つのファイルが存在していることになる(写真2).
 この状態でリセットボタンを押し,このパーティションからMS-DOSを起動し直せば(「FILES=30」を有効にするために),Win3をインストールする準備は整ったことになる.

インストール作業の後半はすでにWin3の世界
 ここでは,Win3をインストールするために用意したハードディスクのパーティションをドライブA,フロッピーディスクをドライブC,Dとして話を進めよう(ドライブ名は、実際にはどのような割り当てでもかまわない).
 Win3のインストール作業は,セットアップディスクの#1に含まれている自動インストールプログラムの「SETUP.EXE」を実行することにより,画面との対話形式で進行していく。画面の指示に従ってセットアップディスクを交換したり,問い合わせに答えていけばよいのであるが,問題なのは,「後半の作業画面がWin3の世界になってしまう」ことである.Win3の操作に経験がある人にはよいが,その経験がまったくない人にはギブアップの可能性すらある.
 そこでマウスの基本操作だけを,ごく簡単に解説しておきたい。もちろんマウスはインストール作業の前に接続しておく.Windowsにおけるマウスの操作は,「クリック」,「ダブルクリック」,「ドラッグ」の3つが基本である.インストールには「クリック」と「ダブルクリック」を使う.「クリック」という操作は,マウスカーソルを目的の場所に移動し,マウスの左ボタンをカチッと押して離す。Windowsのすべての操作において,マウスボタンは左しか使わない.
 「ダブルクリック」という操作は,クリック操作を間隔を置かずに2度繰り返す。0.5秒ほどの間に,カチカチッと2度のクリックを行なうわけである。インストール作業の後半には,このクリックとダブルクリックの操作を行なう個所がある.
 ではさっそくWin3のインストールを開始しよう.PC-9801シリーズ用のWin3のセットアップディスクは4枚組だが,まずその#1のディスクをドライブCに,セットする(他のドライブでもよい)。次に,カレントドライブを,セットアップディスクをセットしたドライブCに,忘れずに切り替えておく.
 次はSETUPプログラムを実行する.SETUPプログラムは,「SETUP」とキ一入力することにより実行されるSETUPプログラムが起動したら,あとは表示される画面の指示どおりに,セットアップディスクを交換したり,問い合わせに答えたりして作業を進めていく.それらの画面の中には,意味が分からない個所もあると思う。特に日本語入力システムや、プリンタの設定などの個所は分かりにくい。しかしそれらは,インストールの作業が終了したあとからでも自由に変更や設定ができる。インストール時に分からなければ“適当にやっておけばよい”のである.

 Win3のインストールは,筆者も最初の頃,何度やり直したか分からない。おそらく読者の方々も,何度かやり直すことになると思う。結局Win3のインストールは,Win3を実際に使いだし,いろいろなことが分かってこなければ“分からない”のである。ニワトリと卵の話のようであるが,まあ納得できなくてもインストールはできる.“分からないまま”とにかく作業を進めよう.
 写真3に示したとおりに操作していけばインストール作業は完了する.ここに示した画面が,インストール時に表示されるすべての画面ではないが,つまずきやすい要所要所の画面が示されている.日本語入力システムやプリンタの設定も、とりあえずは写真のとおりにインストールしておけばよい.セットアップディスクに付属のもの以外を組み込む場合は,Win3が無事起動した後,その基本操作に慣れてから行なえばよい.
 なお,インストール作業をやり直す場合は,すでにインストールされているディスク上の各種のファイルを気にする必要はなく,再度同じインストール作業を繰り返せば、新しくWin3がインストールし直される.つまり,先にインストールされている各種のファイルを事前に削除しなくてもよいわけである(自動的に削除される).ただし,Win3がインストールされていたディレクトリ上のすべてのファイルが削除されてしまうため,ユーザーが独自にコピーしたその他のファイルが存在する場合には注意が必要である.立ち上がればいい


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 確かにHDDの分割は常套手段だった。基本的な作業だった。ダブルクリックの説明とかもう苦笑するしかない。如何に当時Win3のインストールのハードルが高かったのか記憶ははるか彼方消え去っている。Windowsの再インストール作業は何度もした。Win3.1,Win95,Win98,Win98(SE),WinXpと使っていてシステムがおかしくなるのでそういうときの解決策は再インストールだった。よく付き合ってきたものだ。
 それにつけてもCOPYコマンドでCONFIG.SYSを作成する説明とは何年前の話だ。エディタ位もってるだろう。エディタもない人間にWindowsを使わせようというのが変だ。

立ち上がればいいわけではないWindowsの起動と動作モードの確認
 Win3のインストール作業は無事終了しただろうか。ディレクトリ「WINDOWS」の中にはWin3の各種のファイルがコピーされ,ルートディレクトリにはWin3用のMS-DOS環境を設定するためのCONFIG.SYSとAUTOEXEC.BATの2つのファイルが作成されている.Win3を立ち上げるには,まずリセットボタンを押し,Win3をインストールしたドライブ(パーティション)からシステムを再起動しなければならない(Win3用のMS-DOS環境を設定するため)。システムが起動したらさっそくWin3を立ち上げ,その動作モードが「エンハンスドモード」であることを確認してみよう.
 Win3を立ち上げるには,MS-DOSのプロンプトに対して「WIN」と入力するだけでよい。十分な容量のメインメモリが装備された386/486マシンであれば,Win3はエンハンスドモードで立ち上がる。286マシンや,メインメモリの容量の少ない386/486マシンでは,「スタンダードモード」で立ち上がる.「WIN」と入力した場合,Win3はマシンの状況を自動的に認識し,それぞれのマシンに適した動作モードで立ち上がるようになっている。ただしここではWin3の動作モードは「エンハンスドモード」以外は考えていない。その理由は前回述べた。
 Win3の最初の起動時の画面を写真4に示す.ただしこの画面は,次に立ち上げたときには変わっているかもしれない.Win3には,Win3の終了時の状態を記憶し,次に立ち上げるときにそっくり同じ状態を再現する機能がある(その機能をOFFにすることもできるが).
 起動したWin3の動作モードは,プログラムマネージャのメニューバーの「ヘルプ」で知ることができる(写真5).4Mbytes以上のRAMボードを増設したマシンで,そのメモリが正しく動作していれば,386エンハンスドモード」になっているはずである。2MbytesのRAMボードでは,内蔵の1Mbytesを加えて「3M+640K」bytesにはなるが,エンハンスドモードでは立ち上がらない.CONFIG.SYSファイルに登録されている,ディスクキャッシュのSMARTDRV.SYS用にメモリの一部が割り当てられるためである.先に述べたようにPC-9801シリーズの場合,Win3の実用には最低限4MbytesのRAMボードの増設が必須である(本体に1.6Mbytesしか標準装備されてないため)。ただし2MbytesのRAMボードでもSMARTDRVの容量さえ縮小すれば“実験的”にはエンハンスドモードで立ち上げることができる.CONFIG.SYSファイルに登録されている次の行, device=A:\WINDOWS\smartdrv.sys 2048 1024
(末尾の2つの数値は,装備されているメインメモリの容量によって異なる)

 この末尾の2つの数値を“申し訳程度”に縮小(キャッシュの効果はないが,「64 64」以下)にするか,あるいはいっそのこと,この行を削除してしまえばエンハンスドモードで起動できる(ちなみに,この右側の数値がエンハンスドモードにおけるディスクキャッシュの容量になる).さて次回は,写真6に示すような各ユーザーが日常使う各種アプリケーションを集めた「グループ」を作成し,そこに一太郎やMIFES,エコロジーといった常用のDOSアプリケーションを登録して実行するまでを解説する.また,日本語入力システムについても具体的に解説する.次回までに,できればWin3の基本操作を学んでおいていただきたい。拙著『入門MS-Windows』(3部作の入門編。アスキー出版局から8月末発売)では,特にWin3の基本操作について詳しく書かれているので参考にしていただければ幸いである.


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 おかしいだろう。なぜ「一太郎やMIFES,エコロジーといった常用のDOSアプリケーションを登録」をWin3で使うのか。それはアプリを使いたいのでなく。OSを使いたいだけではないか。

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JPEG(月刊ASCII 1991年10月号4) [月刊アスキー廃棄(スクラップ)]

ASCII EXPRESSの「今月のキーワード」をスクラップする。

当時のパソコン環境では画像1枚を処理するのも大変だった。

JPEG(ジェイペグ)
 画像・文字・音声を自由に扱うマルチメディアの到来が待ち遠しいが,パーソナルコンピュータではなかなか実現されそうもない.画像にしても、音声にしても,人間が満足できるレベルのものは,文字に比べて莫大な情報量を含んでいるからだ。情報量がありすぎては,データを手軽に扱うことができないし,通信などでの交換もたいへんである。
 音声に関して特に人間の会話などは,電話の場合でも分かるとおり情報量を減らしても意味が失われるということは少ない。しかし、画像では,情報量を減らすと品質も劣化し,重要な部分がボケてしまったり,カケてしまったりすることもある。
 画像の場合,品質を落とすことなく情報量だけを減らす(圧縮する)ことはできないのだろうか?この問題を解決するために,1986年にISOとCCITTが共同で委員会を組織した.それが「JPEG(Joint Photographic Experts Groupe)」である.そして,この組織が策定し,この夏にも正式な国際標準となる“静止画像の品質をほとんど落とさないで,データ量だけを減らす画像圧縮の方式”を「JPEG方式の圧縮」と呼ぶ.

ハフマン符号化によるJPEG圧縮
 JPEG方式の圧縮には、大きく分けて2つの方法がある.
 ひとつは、画像の品質をまったく劣化させないで圧縮する方法で,これは,画像の冗長性をなくす処理である。パソコン通信の際によく用いられるPKarcやLHarc,LHAの基本部分と同じ「ハフマン符号化」によって,同じデータの繰り返し部分を1つにまとめてしまうやり方だ。たとえば“1114222255"という10個の数字の配列を,"13412452"のように8個の数字に置き換える.
 10個から8個というように80%に圧縮されたこの例の場合,最初の1は数字,次の3は前の数字が3回繰り返されている,次の4は数字,その次の1は繰り返し回数と,データとその繰り返し回数を定義していくのである.この方式を画像に応用すると,複雑な自然画像は70~80%に,単純なCG画像などでは20~50%に,画像の品質を劣化させないで圧縮できる(画面1).

色間引きとDCTによる圧縮
 もうひとつの方式は,人間の目が持つ,「画像の明るさ(輝度)の変化には敏感だが,色の変化には鈍感」という特質を利用する。具体的には,ある画像の小領域からデータを取るときに,輝度データ4点分に対し,色データを1~2点分にする,というものだ。これだけでは圧縮率が上がらないので,色が間引きされたデータに対して,「DCT(Discrete Cosaine Transformation)」と呼ばれる変換を行なう.
 DCT変換は,画像を横方向の細かさと縦方向の細かさに分解するものだ.DCT変換で得られる細かさの値は,ある画像の細かな模様(変化)では0に近くなり,大きな模様(変化)では大きな値になる.
 JPEG方式では,この[0に近い変化]を,最終的に[0]に置き換えてしまう.自然画像では細かな模様が多いため,DCT処理されて得られたデータには0に近い値が多く含まれることになる.これらを0にしてしまうことで画像の細かな変化はならされてしまうが、大きな変化は残る。画像の品質は低下するのだが,その画像の持つ意味までは失われないというわけだ.また,あらかじめ圧縮後のサイズを指定し,そこまで落すこともできる.さらに,DCT変換されて0が多く並ぶようになった画像データをハフマン符号化で圧縮する。これらの一連の処理によって、画像の品質をほとんど変化させることなく画像データを高圧縮するのである.
 これを使えば,複雑な自然画像でも,人間の目では見分けが付かない程度の変化で,オリジナルの10%(1/10)程度にまで画像のファイルサイズを低減できる(画面2,3).

難点は時間がかかること
 ここまで見てきたように,画像データのサイズを小さくするためには,いく通りもの処理を行なわなければならない.JPEG方式の画像圧縮には,かなりの時間がかかってしまい,動画には使えない。
 そこで,これらの処理に必要な命令をチップ化しようとする動きもある.米C-Cube社は,JPEG方式専用のチップ「CL550」を昨年発売し,MacintoshシリーズやNeXT向けには,このチップを採用したカラー圧縮ボードなども複数のメーカーから発表されている.また,動画に関しても,JPEGを拡張した「MPEG(Motion Picture Experts Groupe)」も組織され,現在,基準を定めようと開発段階に入っている.
 1/10の圧縮でも,人間の目ではオリジナル画像と判別できないJPEG.これからのマルチメディア時代,ネットワーク時代に欠かせないものとして注目される.
(池田)


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ASCIIのこういう記事が好きだった。

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