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パワーグローブ,日ペンの美子ちゃん他(月刊ASCII 1990年10月号5) [月刊アスキー廃棄(スクラップ)]

パワーグローブという面白いコントローラがあった。
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 天本英夫(死神博士もしくはプロフェッサ-K)演じるマッドサイエンティストの指揮のもと、子供たちが進み出る。その右手には未来的なデザインのグローブが……
 すでにTVのCMなどでご存じの方も多いだろう.今回はこのファミコン用コントローラの新製品,パワーグローブを紹介しよう.
 このパワーグローブの本家(?)ともいえるのは,このコーナーでも何度か取り上げたデータグローブだ.データグローブのほうはVPLリサーチ社をはじめNASAのエイムズ研究センターで研究開発が進められる仮想環境システムで使われている.データグローブを3次元表示ゴーグルであるアイフォンと組み合わせあたかも操作者がコンピュータ内に構築された世界にいるように体感する仮想現実(Virtual Reality)を実現する.
 データグローブはポマレスセンサと呼ばれるセンサを内蔵し、磁界の検出によって手の位置と向きをモニターしている.指の関節には光ファイバーが付いており,曲げによる透過光の減衰によって指の角度をモニターする.パワーグローブは,データグローブの機能を非常に安価に実現したコンシューマ向けの製品といえる。アイフォンに相当する画像出力装置は現在のところ 家庭用テレビだが,3次元表示が可能なゴーグルも商品化が企画されているので期待したい。

パワーグローブの構造は?
 では,パワーグローブの構造を解説しよう.パワーグローブはグローブ本体と音波センサの2つによって構成される.グローブの手の甲には発振器と操作パネルが付いている.この発振器から発せられた超音波をテレビなどにセットした3つの音波センサが捉え,グローブが中心位置から上下左右前後どちらの方向にあるかをモニターする.発振器は2つ並んでいるので手の傾きを検出することも可能だ。
 指関節の曲がり具合をモニターするのは,小指を除く各指に取り付けられたベンドセンサだ。これは電導体を印刷したフィルム状のセンサで,電気抵抗によって曲げを感知する.指の曲がり具合は4段階の信号として出力される.
 これらのセンサにより,パワーグローブは各指4つと上下左右前後の計10個のスイッチを持っていることになる。通常,ファミリーコンピュータ本体に付属するコントロールパッドは十字ボタンとABボタンで操作する.グローブ本体の手首にある操作パネルには14種のプログラムが内蔵されており,グローブの動きをどのスイッチに対応させるかを選ぶことができる.標準ではグローブの上下左右の動きが十字ボタン,親指と人差し指がABボタンとなっている.ゲームによっては前後左右の動きを十字ボタンに対応させたり,手の回転や握り込みをABボタンに割り振ったりして操作する.手を握り込んで上下左右に拳を繰り出す(ボタンを押しながら十字ボタンを押す動作に相当する)という設定もあり,ボクシングゲームのような操作をより体感的に楽しむことができる.
 同時発売のゲーム「SUPER GLOVE BALL」を操作してみる。画面内を飛び跳ねるボールを画面上の手を動かして打ち返し,上下左右の壁面のあるタイルを消すブロック崩しのようなゲームだ.手は画面内を上下左右前後に動き,ボールをつかんだり弾丸を発射する.パワーグローブを装着した手の動きが,じかに画面内の手の動きと連動した感じがあり,コントロールパッドやジョイスティックにない面白さがある.
 アイフォンに表示されるのが視界のすべてである仮想現実と比べれば「没入」感覚は少ないが,家庭で気軽に仮想現実を楽しんでみるのも一興だろう.臨場感を増すために液晶プロジェクタ(囲み記事参照)を導入すれば,あなたの部屋が電脳空間化することは間違いない。  (行正)
PAX POWER GLOVE
(株)パックス・コーポレーション
1万9800円


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ファミコンでVRというのが面白い。33年前にVRがあった。33年かかって今どうだろうか。年数に見合った進歩があったとは思えない。なぜだ。昔から思ってたことはゲームはなぜ手に持つコントローラボタンをピコピコしなければならないのか。全身を使って遊べないのか。ガチャでアイテムを得るのではなく、武器、防具等にセンサーを付けて売ればいいのではないか。実際に剣を振り回し遊べば楽しくないか。指先でピコピコがどうして根強い人気なのか。
ゲームを発売後にこれを付ければレベルアップできる、高度な技を出せるというオプションとして販売できないのかとずっと思っている。

ポータブルプロジェクター 01・Pro
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 液晶プロジェクタは液晶シャッタの映像をスクリーンに投影し,迫力ある大画面を楽しむことができるAV機器だ.
 松下の「01・Pro」は10万円という低価格と2.7kgという軽量・コンパクトさが特徴の液晶プロジェクタだ。スクリーンとの距離により,14~70インチの映写画面サイズを得ることができる.スクリーン(白い壁や天井でも可能)さえあれば手軽にホームシアターが楽しめる。液晶は縦220×横252ドット構成なので,パソコンの表示では粗くて見にくくなるのが少々残念だ。
 持ち運びやすいのでビデオパーティやサークル活動,プレゼンテーションなどに活用ができそうだ。


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安いが画面が縦220×横252ドットでは使用に耐えなかったろう。

パソコン、ワープロが普及しても手書き文字は求められていた。
日ペンの美子ちゃん
日本ペン習字研究会訪問記
 ワープロの普及で一番恩恵を受けたのは悪筆,くせ字に悩む人たちだ.ワープロが身近になったおかげで救われた人も多いだろう.しかし,ワープロがビデオデッキ並みの勢いで各家庭に普及した現在,こんどは「ワープロの字には心がこもっていない」「冷たい感じがする」などの批判もよく聞くようになった。ワープロはやはり「美しい手書きの文字」にはかなうべくもないのだろうか?そんな疑問をとく鍵を求めて僕は「日本ペン「習字研究会」におじゃますることにした.
 「日ペンの美子ちゃん」でおなじみの日本ペン習字研究会の母体である学文教育センターは東京・早稲田にある.質問に応じてくれたのは課長の四条さん.
根岸「このペン習字の講座はいったいいつ頃からあるのでしょうか?」
四条「わたくしどもは大正の頃から通信教育の事業をしておりますが,ペン習字は昭和のはじめからやっていまして,すでに60年以上の歴史があります。現在は毛筆の書道や英会話,パソコンやワープロなど20以上の講座を持っています」
根岸「受講者は年間どのくらいですか?」
四条「創立から現在まで延べ200万人以上が受けていますが,最近は女子中高生を中心に年間1~2万人というところです.パソコンやワープロが普及するにつれてペン習字を習う人は減っていますね」
根岸「ペン習字の将来についてですが,ワープロの普及に反比例して減っていってしまうと思いますか?」
四条「いえ。商売の上ではワープロが普及すればワープロの講座の受講者が増えるので、ワープロの時代がきてもいいのですが,私は最終的には手書きに戻ってくると思います。例の「日ペンの美子ちゃん」でワープロより手書きがいいという意味の原作を書いたこともありますが……」
根岸「四条さんが原作者だったんですか?」
四条「いや、原作者はほかにキチンといたのですが,都合で私が書くこともありまして」
根岸「四条さんが原作を書いたということは内緒なのですか?」
四条「いや、うーん。まあいいでしょう」
根岸「美子ちゃんのシリーズって今までにどのくらい描かれたんですか?」
四条「現在,月2本のペースですから15年としても360本ぐらいでしょうか……」
根岸「膨大な数ですね。とにかく,ペン習字と言えば日ペンの美子ちゃんというイメージが定着していますものね」
四条「ええ、こういう業界では,類似品というか,似たような公告漫画はいくらでもあるのですが,やはり我々のノウハウに匹敵するものはないですね.1ページの漫画の中で必要なコピーをすべて入れたうえでさらに起承転結がきちんとあって落ちがなければならない。たとえば,コマ割りひとつにしても、この9コマ割りが最も最適であるというのが結論です」
根岸「つまり、読ませるための技術というわけですね。ところでこの美子ちゃんは,僕が高校生ぐらいの頃と随分違いますね」
四条「それは3代目の矢吹さんのことでしょう。今の彼は4代目です」
根岸「美子ちゃんの単行本の噂が昔ありましたが……」
四条「いや,出しても売れないでしょう.編集者さんとかライターさんなどの職業の方には熱狂的なマニアがいるみたいですが.実は昔,Tシャツを作ったんですが人気はさっぱりでした」

 結局,「美しい文書」のヒントはペン習字よりも「美子ちゃん」の中にあったようだ。確かに.15年にもわたって同じテーマで描かれ読まれ続けているということはすごいことかもしれない.


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確かに手紙で本文はワープロでも宛名は手書きで、差出人は自書でが礼儀というような雰囲気があった。特に頼み事、依頼文はそうでなければ「失礼な奴だ。断ろう」ということがあったと思う。

PRODUCTS SHOWCASEからソニーのQuarterL PCX-700をスクラップする。
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486のキャッシュについての解説をスクラップする。
33MHz486と後付けキャッシュで高速処理を実現
 486CPUは,386CPUに8Kbytesのキャッシュメモリ(コントローラも含む)と数値演算コプロセッサを付け加えた構成をとっている.ソフト的には386とほぼ同じだが,キャッシュメモリや命令サイクルの短縮などの効果により、同クロック周波数の386より高速な処理が期待できる。ベンチマークテストの結果(表1)をみると,PCX-300(16MHz386SX)との比較では,クロック周波数の比率(2.06倍)以上の約4倍という結果になっている。メモリの読み書き(mem_w16k,mem_r16k)では,書き込みの場合がほぼクロック比程度の差しかないのに対し,読み込みでは6倍近く高速になっている.これは,CPU内蔵のキャッシュメモリの効果が出ていることを表わす.PC-H98(33MHz386)との比較でも,命令実行速度では平均2倍以上の差がある.
 実際にソフトを使ってみると,画面出力の速度はあまり変わっていないため,第一印象としてはそれほど速度が速いとは感じない.しかし,MS-Windowsなどの画面書き換え速度が速くなる.また,表計算ソフトでの再計算やグラフ作成の速度はかなり速い.PageMakerなどのレイアウトソフトでテキストの割り付けをする場合など,PCX-300ではストレスを感じるほど遅かったが,PCX-700ではかなり快適になる.ユーザーからみたソフトのレスポンスは,ワークステーション以上といえるだろう.
 486の大きな特徴に,外付けキャッシュメモリのサポートがある.Turbocache486と呼ばれるキャッシュユニットは,2ウェイセットアソシアティブ方式(図1)のライトスルーキャッシュで,64K bytesまたは128KbytesのSRAMをCPUとメインメモリの間に持たせるものだ。486内部にもともとある8Kbytesのキャッシュメモリに加えて,メモリアクセスの速度を改善する効果を持つ。今回,実際に使ってみることはできなかったが,Intel社の資料によれば,5~30%(平均15%)アクセス速度が上がることになっている.


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 メインメモリをキャッシュメモリの容量と同じサイズのブロック(セクタ)に分割し、そのブロック内のXbytes目のデータを,キャッシュメモリ内のXbytes目に置くようにする.片方のキャッシュメモリのXbytes目がすでに利用されている場合は,もう一方のキャッシュメモリを利用する。両方とも使われていたら,LRU(Least Recently Used)アルゴリズムで利使用されていないものを追い出して格納する.
 アドレスが決まるとそのデータが存在する可能性のあるキャッシュメモリ内の位置が特定されるので,あとはブロック番号が一致しているかどうかだけを確認するだけで,キャッシュヒットの検査ができる.キャッシュメモリの容量を大きくしても検査のためのオーバーヘッドが増えない。なお,486内部にある8Kbytesのキャッシュメモリは,2Kbytesずつ4組に分けた「4ウェイセットアソシアティブ方式」の形をとっている.

486のキャッシュは体感速度が上がった。PageMakerが使い物になったのは486からだった。

33年後から見ると笑ってしまうのがHDDのこと。
サーバーマシンに不可欠な大容量HDDを内蔵
 PCX-700シリーズには,基本モデルであるHDDなしのDR1,250MbytesHDD内蔵のDR5,670MbytesHDD内蔵のDR7の3つのモデルがある(HDDの容量はアンフォーマット時)。このような大容量HDDは,LAN上でのファイルサーバーとしての利用を想定した結果だ。スタンドアロンで使う限りは,これほどの大容量を必要とすることはまずないだろう.
 AXのMS-DOS(Ver.3.21)では,33Mbytes以上のHDDは直接取り扱えない.このため,33Mbytesを超える領域については,“余剰エリア”としてデバイスドライバを使ってアクセスするようになっている。従来のQuarterLシリーズでは,余剰エリアはひとつしか使えなかったが,大容量HDDに対応するために、PCX-700に付属する余剰エリアドライバでは,1ドライブあたり最大66Mbytesの余剰エリアを4つ持たせることができるようになった.これにより,250Mbytesの内蔵HDDは,起動用の33Mbytesパーティションひとつ、余剰エリアとして登録した66Mbytesのパーティションが3つ、これらの残りにあたるパーティションの合計5つの領域に分けて管理される(図2).


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33年後670Mbytesなんて動画、画像であっという間に使ってしまう。ストレージをこんな無駄遣いするなんて酷い時代になったものだ。
HDDの容量にはさまざまな壁があった。MS-DOS 3.21は33Mbytesまでだったのか。HDDのパーティション分割は長い間やっていた。Windowsになってもやっていた。システムはC:ドライブに、アプリケーションのインストールはD:ドライブに、データはE:ドライブにというように使っていた。OSの再インストールはよくやったのでアプリケーションはOSとは別ドライブにインストールしていた。頻繁にバックアップするデータは別ドライブにするのも基本技だった。

機械はPC-9801Nだがお気に入りだったMAXLINKの記事を長期ロードテストからスクラップする。
フロッピーを使わないデータ交換
 以前にも述べたように,私は編集部でエプソンのPC-386Mをメインに使っている。このマシンは,3.5インチのフロッピーディスクドライブを内蔵しているので,98NOTEとは直接フロッピーでデータのやり取りができる.しかし,5インチのフロッピーディスクドライブを内蔵したマシンの場合には,どうやって98NOTEとデータをやり取りするかが問題となる.
 ひとつの方法は,外付けの3.5インチフロッピーディスクドライブを買い足すことだ.しかし,2HD専用の1ドライブの製品でも,定価で4万円程度と比較的高価だ。そこで浮上してくるのが,シリアルインターフェイスを使ったデータ交換である.ただし,マシン同士を直結してデータをやり取りするには,「クロスケーブル」という特別のケーブルが必要となる.モデムなどに単に「RS-232Cケーブル」として付いてくるのは「ストレートケーブル」と呼ばれるタイプで、マシン同士を直結する場合には使用できない.以前,98NOTEを自宅に持ち帰った際,必要なファイルをLHarcでアーカイブしたものの,LHarc自身をフロッピーに入れ忘れてしまったことがあった(LHarcというのは,複数のファイルをひとつにまとめて管理するユーティリティである).自宅にはPC-286M 0があるのだが,このマシンは5インチのフロッピーディスクドライブしかつながっておらず,クロスケーブルも持っていなかった.そのため,目の前にはLHarcがインストールされたマシンがあるのに,どうすることもできない,という状況に陥ってしまったのだ。結局このときは,通信ソフトは持っていたので,アスキーネットPCSからLHarcをダウンロードし直すことにした.しかし,LHarcは,ishというユーティリティで変換して登録されているので,そのishからダウンロードしなくてはならない。パソコン通信を始めたばかりのころに戻ったような気分だった。
 これ以外に,BBSを使ったデータ交換(一方のマシンでファイルをアップロードし,別のマシンでダウンロードする)もできないことはない.しかし,いかんせん2400bpsでは効率が悪い.これはあくまで最後の手段といったところだろう.

クロスケーブルを使ったデータ交換
 クロスケーブルで2台のパソコンを接続すれば,もう少し効率良くデータをやり取りすることができる.この場合は,それぞれのパソコンで通信ソフトを起動し,一方をダウンロード状態にしておいてもう一方からファイルをアップロードすればよい.PC-9801シリーズなら,最高38400bpsまたは9600bpsでファイルが転送できる(分周比の関係で,CPUのクロックが10の倍数のマシンでは38400bps,それ以外のマシンでは9600bpsとなる.ただし,エプソンのマシンではクロックにかかわらず38400bpsまで可能。しかし,38400bpsまで出せるマシンでも,メーカーは9600bpsまでしか保証していない)。
 実際には,バイナリファイルを転送する場合にはXMODEMやZMODEMなどのプロトコルを使うため,オーバーヘッドが生じて必ずしも理論的な最高速度には達しない.n松の実行ファイルmatu.exe(278384bytes)をZMODEMで転送した場合には,所要時間が約85秒で33000bps弱だった(スタートビットとストップビットがあるため,1文字が10bitとなる).

MAXLINKを使ったデータ交換
 さて,ここでMAXLINKの登場である。この製品は,メガソフト(株)が販売しているデータ交換のためのユーティリティだ。
 MAXLINKも,基本的にはシリアルインターフェイスを使ったデータ交換である。データの圧縮を行なうことで,最高120000bpsの高速転送を可能にしているのが特徴である。また,単にファイルの転送を行なうだけでなく,接続したパソコンをあたかも外付けドライブのように扱う機能も持っている。
 早速,秋葉原へ出かけてMAXLINKを買う.店は今まで同様,本体を買った大型家電店である.定価1万8000円のところ,割引券を使って1万3770円(税別)で購入した.
 パッケージには,マニュアル1冊と5インチおよび3.5インチのフロッピー各1枚,それに専用のケーブル1本が入っている(写真1)。このケーブルで2台のパソコンを接続してデータをやり取りするわけだが,それには2種類の方法がある.
 ひとつは,max.exeという専用ユーティリティを使う方法だ。この方法では,特別な準備は必要ない。ファイル転送をする時点で2台のパソコンをケーブルで接続し,それぞれのパソコン上でmax.exeを起動すればよい。ディレクトリのツリーやファイルの一覧を画面上で確認指定しながら操作できるので,操作は簡単である(写真2).また,2台のパソコンは対等の関係で,どちらからでも操作できる.ただし,これはファイルの転送だけを目的としたユーティリティなので,それ以外の機能は持っていない(図1)。
 もうひとつは,一方のパソコンをもう一方のパソコンの外付けドライブとして扱う方法である.この場合には,あらかじめ本体として使う(ローカル)側のマシンにmaxlink.drvというデバイスドライバをインストールし,config.sysの最後に,  device=maxlink.drv
という1行を追加しておく必要がある.さらに,本体側を起動する前に,外付けとして使う(リモート)側のマシンを起動して,ケーブルで接続した後,maxlink.exeというプログラムを実行しておかなくてはならない。リモート側の準備ができていないと,写真3のようなメッセージが表示されて,デバイスドライバの組み込みが中断してしまう。もっとも,この状態になってからおもむろにリモート側の準備をしても、実際には問題ない.この方法では,本体側のマシンにとってはドライブを増設したのと同じ状態なので,リモート側のドライブをほかのドライブと同じようにアクセスできる図2).ファイルのコピーや削除はもちろん,本体側でエディタやワープロを起動して,リモート側のファイルを編集することも可能だ。一方,リモート側はmaxlink.exeが起動されている間は,ほかの処理はできなくなってしまう.しかし,一度本体側を起動してしまえば,リモート側はmaxlink.exeを終了して別の仕事をしていても、特に問題はないようだ。本体側からアクセスしたくなったときだけmaxlink.exeを起動すればよい.

転送速度のチェック
 ここでは、2つの方法のうち,後者のデバイスドライバを使った方法をとることにした.
 以前にも述べたように,編集部で使っている386Mにはいろいろなユーティリティがインストールされている.が,これらはとてもフロッピー1枚や2枚に入る量ではないので、特に頻繁に使うもの以外は98NOTEにインストールしていない。そこで今までは,たとえば98NOTE側のファイルをjgawkで処理したいというような場合は,jgawkをフロッピーにコピーして98NOTEに持っていったり,または98NOTEからファイルを持ってきて386M上で処理した後,再び98NOTEに戻す,というようなことをしていた.
 maxlink.drvとmaxlink.exeを使って98NOTEを386Mの外付けドライブとして扱うことができれば,わざわざファイルをコピーするまでもなく,98NOTE上のファイルを直接引数としてjgawkに渡せるわけだ。もちろん,98NOTEを本体とし,386Mをリモート側にして,98NOTEから386M側のjgawkを起動することもできる.しかし,ファイルを読み込んだ後の実際の処理は本体側のマシンで行なわれるので,本体側にCPUパワーのあるマシンを持ってきたほうがいいと考えたわけだ.
 さて,ここで気になるのが実際の転送速度である.そこで,command.comのcopyコマンドでファイルをコピーした際の転送時間と転送速度を調べてみた.ランダム内容のファイルを適当に作ることも考えたが,データを圧縮しているとなると,あまりランダムなデータでは意味がないと思い,手近なファイルの中からサイズが大きいものを3つ選んで実験してみた。実験は,98NOTEの内蔵RAMドライブと386MのRAMディスクとの間で行なった.また,参考までに98NOTEの内蔵RAMドライブと内蔵3.5インチフロッピーディスクドライブとの間の転送速度も計ってみた。結果は表1のとおりである.
 ファイルをコピーするときには,ファイル本体だけでなくFATやディレクトリにもアクセスするため,それだけ余分な時間がかかる.したがって,この表の数値は実際の転送速度より遅くなっていることに注意してほしい。特に,遅いメディアにファイルを書き込む場合には,読み出したFATとディレクトリを更新した後,再び書き込んでいるため,よりオーバーヘッドが大きくなっている.これを見ると,フロッピーの転送速度に比べれば遅いが,クロスケーブルで接続して通信ソフトでデータ交換をした場合に比べれば3倍程度速いことが分かる.さらに,フロッピーを使ってデータを交換する場合には,抜き差しの手間も考慮する必要があるだろう.そこで,前回の,
 vdisp -usg vjeb.dic | jgawk -fdic | sort -n -r +1
というコマンド列でVJE-βの辞書に含まれる品詞の頻度を調べる実験を,(1) 98NOTE上の辞書をフロッピーを介して386M上のRAMディスクにコピーして処理を行なう,(2) MAXLINKで接続して,直接98NOTE上の辞書をアクセスする,という2つの場合について行ない,時間を計ってみた。
 ちなみに,vdispはVJE-βの辞書に登録されている単語を表示するユーティリティで,VJE-βのパッケージに含まれている.jgawkは,テキスト処理をするツールでフリーウェア,sortはファイル内容を行単位で並べ替えるツールで,アスキーの「MS-DOS SOFTWARE TOOLS2」のものを使用した.
 その結果、(1) の場合,フロッピーの抜き差しを素早くしようというようなことは特に意識せずに約190秒,(2) の場合は約165秒だった.抜き差しの「手間」というものは,単純に時間の長短で比べられるものでもないが,実際の処理を考えるとMAXLINKによるデータ交換は決して遅くないと言えるだろう.
 98NOTEに標準で付属しているバッテリは,フロッピーをまったくアクセスしなければ約2時間半もつ,というのは第1回でも述べたとおりだ。しかし,この時間はちょっとひと仕事,という場合には十分だがある程度まとまった仕事をしようと思うと,やや心許ない。結局,いつもACアダプタを持ち歩くことになってしまう。しかし、このACアダプタがけっこうかさばるのだ。もっと小さいACアダプタはないだろうかと探しているのだが,なかなか適当なのが見つからない.そこで,代替案として大容量バッテリを購入して,その代わりACアダプタは持ち歩かない,という使い方を検討している.次回は、この大容量バッテリについて,持続時間や充電時間などを中心にレポートしたい.   (小日向)


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MAXLINKをDynaBookで使っていたが、だいたいこの記事通りだ。なんといってもDynaBookを外部ドライブで使えるという点が良かった。

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