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PC-9800シリーズ日電インタビュー2(月刊ASCII 1990年3月号6) [月刊アスキー廃棄(スクラップ)]

特集'90年代のPC-9800シリーズはどうあるべきか?の日本電気(株)情報処理製品計画本部第二製品部計画課長 小澤 昇 氏、第二製品部主任 依田 高志 氏、日本電気ソフトウェア(株) OAシステム事業部主任 原 豊氏のインタビュー記事をスクラップする。
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 PC-9800シリーズの商品開発を担当する小澤 課長を中心に,NESAバスとPC-H98model70の周辺状況についてインタビューした.「NESAの開発時に,MCAやEISAはほとんど参考にならなかった.最も重点を置いたのは、資産の継承というポイント」と語る.

OS/2で通信をすればNESAの威力が体感できる
――Windows386とかOS/2+PMといったプロテクトモードの環境に対応するNESAバス対応ボードには,どういったものが考えられるでしょうか?
小澤 NESAバスではバスマスターの機能をサポートできたため,インテリジェントな拡張ボードの装着が可能になりました。つまり,ボード独自の効率的な処理が可能になるわけです。たとえば,ページ記述言語とかアウトライン処理を行なうような場合に使うモニタ用ボードとか,PC-H98model70でお見せした高機能860CPUボードとか,マルチメディア対応のAVボードなどが考えられます。当然,それらは現行より使いやすくなると思います。また,ソフトウェアを作られる方にとっては,作りやすいユーザー環境になるでしょうね。
――現行のPC-9800シリーズでは,マルチメディアの条件になるようなサウンドとカラーが課題として指摘されると思うんですけれども,NESAバスはそれを向上させるポイントになります?
小澤 NESAバスを使う有効性という点では,ビデオを扱うような分野ではかなり期待ができると思います.VP-1000のようなAVボードをNESAバス対応にして,もう少しいろんな機能を入れていくということが,方向性として考えられます.それからマルチメディアということでは,オーディオも重要な要素であると思いますから,考えなければいけないでしょうね。ただ,使いやすさという条件の他に、作りやすさというまた別の条件も出てきますから,すべてをひっくるめて考えなければいけないでしょうね。通信系では,高速回線アダプタやISDN対応ボード,Ethernetボードを5月から出荷する予定です。
 この他にも,サードパーティ製のボードがいろいろと出てくるでしょうね。PC-H98mode170は,サードパーティからも高い評価を受けておりますので,各種のボードが出てくるんじゃないかと期待しています。

――ユーザーが体感できるNESAマシンの使い心地はどうでしょうか?
依田 セットアップがしやすいという点が特徴としてあるでしょうね.NESAバスはセットアップを自動的にやってくれるわけですから.現行のように,ボード上でカチャカチャとディップスイッチを設定する必要はなくなります.
 体感という点では,通信なんかやってるとメリットが一番分かるのかなと思うんですが.どんな感じかを言葉で表現するのは難しいですね(笑)。本当に体感できる環境は,OS/2やWindows386でしょうね。ある程度高度なOS環境で利用すると,より目立ちやすいということはあるでしょうね。

――やはり80386のプロテクトモード環境で使うことがお勧めでしょうか?
小澤 いや,別にそういう制約を設けているわけじゃありません。マシンに高度な使い方を求める場合は,ソフトウェアの処理がかなりヘビーになるわけですから、円滑に動かすならNESAマシンがベストということです.つまり,アプリケーション側の要求を満たそうとすれば,自ずと環境は決まると思うわけです。
――ボードメーカーやソフトメーカーの多くは,'92年くらいからNESAバスは面白くなってくると見ています.それは多分,OS/2などの普及と絡めて考えていると思うのですが,NESAマシンが本格化するのは,そのくらいからとお考えですか?
小澤 あと2年待たなければ普及しないだろうとは思っていません.もっと早く普及してもおかしくないと思います。実際には,そのつもりで製品化をしています.
――H98model70のイメージは、IBMのPS/2モデル70が出てきた時と妙に重なってしまうのです.PS/2シリーズでは,モデル70の下にラインナップがありました.それとオーバーラップして考えると,今後,40万円台のNESAバス搭載マシンが,すぐに出てくる可能性はないのでしょうか?
B>小澤 ご指摘のように,NESAバスの課題は低価格化と高機能化です。しかし、具体的に40万円か60万円かという価格のレベルは今はお答えできません(笑)。ただ低価格化というのは重要な要素です.それから,パーソナルエンジニアリングワークステーションみたいな高機能化というのも重要な要素だと思います.NESAマシンの利用形態としてまず考えられるのは,現行のPC-9800シリーズでは機能的には必ずしも満足できなかった方が,より高度な利用形態を求めるためにPC-H98model70を購入すると考えられるわけです。だから,高機能化という点ではすでに動き出しているし,それが低価格化の方向に動けば,新しい文化として開かれる可能性を持っていると思います。

――現行シリーズの中心をNESAマシンに移行する.長期的にはそうだと思うのですが,短期的にはどうでしょうか.
小澤 短期的には,たとえばノート型マシンがNESAバス対応になるかというと,それは現実的ではないでしょうね。そういう意味では,現行のPC-9800シリーズのアーキテクチャとNESAバスアーキテクチャとは併存するというのが事実だと思います.ある日突然に,NESAでPC-9800シリーズを固めて,アーキテクチャをつぶしちゃうなんてことはあり得ません(笑)。
――NESAマシンを次々に発表していくという計画はあるわけですよね。
小澤 もちろんどんどん発表していきます.H98model70だけで止めるつもりはまったくありません.それは,発表時から申し上げていますよ(笑)。もちろん,下方展開があることは明らかです.ただし,下方展開と言っても,性能を示す時の下方と,価格を示す時の下方という2つの意味があるわけです.これらの要素を考えると,少なくとも80286マシンでNESAバスに対応するということは,要求される性能レベルでは難しいでしょうね。じゃ,価格ではどうですかというと,これは,現時点では申し上げられないというのが実情です.ただ,NESAバスが普及するためには,価格は大きな要素でしょうね。それは認めます。
NESAが「あと2年待たなければ普及しないだろうとは思っていません.」と書いてあるが、NESAマシンは実機を触ったことも見たこともない。だいたいどんな製品が発売されたのかも覚えていない。
前のインタビューで「PC-9800シリーズだけで300万台近く普及しているわけですから」とあるがNESAマシンはその何%出たのだろうか。1%の3万台でたのか。
高額なNESAマシンはUNIXマシンに対してアドバンテージがあるのだろうか。98のソフトの一部が使えるなんてアドバンテージにならないと思うのだが。
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NESAバスのコンセプト作りでは資産の継承を第一義に考えた
――MCAとかEISAとNESAバスを比較した場合,明らかに違う点はどのような点でしょうか?
原 MCAと比較すると、互換性が最大のポイントですね.現行シリーズの資産をそのまま継承しているわけですから.また,データバスやアドレスバスという点で見ると,MCAはデータバスが16bitでした。そのあとで32bitバスも発表しましたけれども.一方のNESAバスは,最初から32bitバスを採用しています。転送能力は,MCAが20Mbytes/秒ですが,NESAバスは33Mbytes/秒と高速ですね.
――コネクタの形状は,MCAやEISAと比べてどうでしょうか?
依田 現行シリーズとの互換性ということを考えてボードの大きさを変えていません.MCAでは,ボードのサイズやコネクタの形状も完全に変えていますので,開発側からすれば,最初からやり直すという感じになると思いますよ。
――NESAバスを企画する際に,EISAのコネクタ形状とかを参考にしましたか?
小澤 EISAのことはあまり考えませんでした。我々は,PC-9800シリーズの資産を継承することを第一義的に考えますから,コンセプトとしてのMCAやEISAはほとんど見ていないのです。でも,偶然の所産としてスペック的に似ている部分は多少あるかもしれませんけれども。EISAのポイントになっているPC ATバス(ISA)のボードを継承するというコンセプトは,PC-9800シリーズでも同じように重要であると考えていますから.
――80386CPUを搭載したPC-9800シリーズにNESAバスを搭載して発売するとしたら,価格を含めて整備していかなければいけない問題はどのあたりにあるでしょうか?
小澤 当然ですが,安くするという路線はあります。メーカーとしては生産性の効率化がとても重要ですから.それと,トータルのサポート体制の充実,これをとにかく考えるということが必要なんじゃないかと思います。
――将来的に,現行シリーズのBIOSまわりはどういう形になっていくんでしょうか.NESAバスとOS/2の環境になった場合は,ダイレクトにハードウェアにアクセスするということがなくなるわけですよね。そうなってくるとBIOSの中身がどうかという話とは別に,BIOS自体を根本的に書き換えてしまうという発想もあると思うのですが.
原 NESAバスの性能を生かすために書き直すということはあり得ます.ただ,その場合にも資産の継承性と連続性ということがポイントになるわけですから,過去のシステムコールとNESA固有のシステムコールのどちらかを選ばなければいけないというケースが,今後は出てくるかもしれません。しかし,あくまで継承という第一義があるわけですから,それは当然,両方残すということになると思います.
――たとえば,現行シリーズから完全にNESAシリーズに移行した時に,BIOSをガチャンと変えてしまうという計画はないのですか?
原 そうですねぇ.例を言いますと,現行の16bitバスに対してNESAバスではDMAのチャネルが拡張されているわけですが,実際にはそのあたりのBIOSを直接使ったアプリケーションが世の中にいくつかあるわけです。だから,NESAマシンには従来のインターフェイスをそのまま残してあります.その上で,DMAを8チャネルに拡張して,それに対応するインターフェイスもわざわざ用意しています.あとは,サードパーティの方々に,できるだけBIOSを直接コールするのは止めてくださいとお願いしているんです.そういう方法で少しずつ変わっていかないとダメでしょうね。だから,現状では大きくガラッと変えることは考えておりません。将来的にシリーズがNESAマシンになってしまうとしたら,それまで徐々に徐々に変えていこうというわけです.つまり,NESAバスもあるけど,16bitバスもずっとあり続けるという感じでしょうか。たとえば,ノート型マシンではNESAバスはなかなか難しいわけですから.
 それよりも,OS/2+PMとかWindows386によって吸収される部分もそうとうにあるでしょうし,結局,NESAバスはそれらとの組み合わせが重要になってくると思うわけです。

――そうなると,差別化という問題が出てきますよね。基本的には,すべてのコンピュータで同じソフトが走るというわけですから.そこで,日電が差別化をしようと思えば,たとえばOS/2とPMの環境で日電固有のシステムコールを用意することが考えられるわけです。NESA対応のモニタボードがあるとしたら,それをコントロールするドライバを付け加えて,そのモニタをフルに使うためには,ドライバを使うほうがいいということにする。そういうことでハードウェア側から差別化してしまうと,日電のOS/2マニュアルを読んでいるだけではどこが差別化されてるか分からないわけですよね。そういう点は,どう考えられますか.
小澤 基本的には,共通基盤が増えれば増えるほど,メーカー各社はカスタムLSIのレベルでソフトウェアを高速化しようとします。まったく共通基盤になったら,メーカーとしての商品の独自性というのは何もないということになってしまいますから.処理能力の向上を目的にしてハードウェアまわりで頑張るということですね。それは別に否定するものではありません。ただ,OS/2にしろ,Windows386にしろ,UNIXにしろ,プラットホームというところを逸脱してまで曲げようとは考えていません。
――次世代のPC-9800シリーズはこういうものにしたいと,NESAバスによって暗黙のうちに語っていると思うのです。実際的には,よりコンパクトなボディにしていくとか,よりカスタマイズして基板をシンプルにしていくとか,供給するOSをより効率的に動かせるようにしていくとか,いろいろなタームがあると思うんですけれども,その中で特に重点を置きたいというポイントは何ですか?
小澤 それ全部(笑)。
――イヤー,プライオリティーを付けるというのは、なかなか難しいというのは分かりますが(笑).
小澤 答を先に言われちゃって,さあどうだと言われてもそうですとしか,ネェ(笑)。
依田 そのためにNESAで基盤を整えたということなんで,分離して進むものじゃないわけですよ(笑)。


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多機能マシンやマルチメディアは現行のPC-9800シリーズでも可能だ
――NESAバスをきっかけにして,たとえば多機能マシンのような方向性は考えられませんか?電話とかファクスとかいろいろなものを装備して,マルチメディアの環境も取り込んでいくような.
小澤 うーん。電話とパソコンを物理的に組み合わせて多機能ナニガシというコンセプトと,マルチメディアというのは本来違いますからね。
 マルチメディアというのは,少なくとも我々の認識では,複数のメディアをお互いに関連付けて取り扱えるものだと思うのですよ。ただ、ある時は電話が使えます,ある時はファクスですというのでは,それは機能が合体しただけですからね。
 ただ,多機能ナニガシにNESAバスが必要かといったら,どうも必要なさそうだという感じがします。つまり,独立したコンポーネントが組み合わさればいいという話だったらNESAバスの必然性はあまりないですからね.
 一方のマルチメディアについては,現行のPC-9800シリーズでもアクセスができるかもしれないし,よりパフォーマンスが求められるようであれば,NESAバスが登場するかもしれない.そのあたりの判断は,マルチメディア自体がどこまでやるのかというレベルになると思いますよ.しかし,正直に申し上げれば,現行のPC-9800のアーキテクチャでマルチメディアができないとは,我々は決して考えていません。PC-9800のアーキテクチャが古くなってるとか,陳腐化したとは思っていませんから。
 マルチメディアが,すべてNESAバスでなければ実現できないということはないでしょう.ただ,NESAバスが,そういう事象に対応できる可能性を十分に秘めているのは確かです。逆に,NESAバスでマルチメディアをどのように具現化するのかという課題はあります.

――たとえば,サンプリングもできるようなサウンド機能と動画を含めたビジュアル関係が全部処理できるAVボードや通信関係をほとんどサポートしたコミュニケーションボードがNESAバスにささったマシンと,それに対応するハイパーテキスト風のソフトウェアがPM上で動いていて,その他にハード的に留守番電話やファクスなんかも付いているとすると,ホームユースではけっこう面白いのではないかと思うのですが.
小澤 そういう製品は面白いですね。ただ、我々はそこに1つの状況負荷を入れたい。ああ、やっぱりPC-9800のソフトを使っていたんだというのをね。結局のところ,マルチメディアにしても多機能ナニガシにしても、現在の豊富な資産の延長線上にあるものだと思うわけです。決して,降って湧いたものではない.今,描かれた世界は確かに素晴らしいでしょうが,PC-9800の資産は,そこに当然吸収されているべきだと思うんですよね。そういう点では,シリーズで蓄積した資産をベースにしてそこまでいかなければどうしようもないと考えます.
結局NESAによるパソコンの未来は無かった。

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