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PC-9800シリーズはどうあるべきか?(月刊ASCII 1990年3月号4) [月刊アスキー廃棄(スクラップ)]

特集'90年代のPC-9800シリーズはどうあるべきか?をスクラップする。
PC-9801について当時の人たちがどんな考えを持っていたのか、どんな未来を予測していたのか、それはどう外れたのかを検証するためにスクラップしておく。
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リード文
 パーソナルコンピュータを買おうという人は,まず,PC-9800シリーズを念頭に置くだろう.避けて通る人は,マシンの使用目的や嗜好がはっきりしている人に違いない。32bitバス規格NESAの発表とともに'90年代を迎えたPC-9800シリーズ。ベストセラーマシンとしての地位を固めながらも、その将来像は今一つ不明確だ。本特集では,現状の問題点を検証しつつ、日電へのインタビューを交えて,32bit時代のPC-9800シリーズの姿を考えてみる.
そうだった。性能の比較等を抜きにしてとにかく98にあらずばパソコンにあらずという思いを持っている人たちがいた。98という名前に価値を見出していたとしか思えない。いつまでこんな時代が続くのだろうかと悶々としていた。くたばれBASIC、8086だけは許せない、9801なんて売れなければいいのにと心の中は真っ黒なパソコンライフだった。人の98の悪口をいうわけにはいかない、98のせいで知人と疎遠になるのは避けたいという思いもありPC-9801VX2を買ってどんなに私が外れマシンを買ったのかと知人にアピールして98の悪口をいうというひねくれた人間だった。CPUを呪わば穴二つという状態だった。
“キュウハチ”というキーワードが多様化している
 70種類。これは,8年前の誕生から現在までに日本電気がリリースしたPC-9800シリーズのバリエーションの数だ。当初,128KbytesのメインメモリとROM BASICを搭載していた16bitマシンは,MS-DOSを採用して,徐々にファミリーを形成し,年平均8機種という開発・リリースサイクルを経て累計265万台を販売している。セイコーエプソンの互換機を加えると,その数は300万台に手が届こうとしている.普及のペースも加速している.今年度だけでもシリーズで100万台近い販売が見込まれている。某社のコマーシャルにならえば,まさに“国民機”と呼ぶにふさわしい量だ。
 量の充実にともなって,質も向上している。デスクトップ型,ラップトップ型,ノート型というボディ形状の展開によって,使用できるシーンが広がっている.将来的には,これにフロアスタンド型がラインナップされるだろう.これに加えて,各形状ごとにCPUやメモリ,外部ディスクのバリエーションが形成されており,同じボディ形状でもマシンはさらに細分化される.対応するオペレーティングシステムは,MS-DOS(Windows),OS/2,PC/UXの3本柱を中心に,CP/M86や毛色は違うがDISK BASICもある.サードパーティ製品を加えると,サポートしていない環境は数えるほどしかない。これに,ディスプレイ,プリン夕,外部記憶装置,拡張ボード,メモリボード,モデム,スキャナといった約100種類以上の純正・サードパーティ製周辺機器群が加わって、分厚い製品ラインを築いている.
 過去の遺産の継承”を前面に据えた戦略によって,アプリケーションソフトの数は1万種類に達しようとしている.各国語ワープロ,表計算,グラフィック,データベース,人工知能,ゲーム,計測・制御,CAD/CAM,CAI,ユーティリティー星の数ほどある。
 こうした背景は別にして,とりあえず,あなたは最適と思うPC-9800の世界を一つ,ないしは複数選ぼうとする.『将来を考えて386マシンがいい,クロックは遅くても低価格にしよう,持ち運びたいな,でも見やすいCRTかな,待てよ5インチディスクも使うかな,EMSだって必要だし,いいやマテマテ予算はそれほどないゾ,でもOS/2が動くベースは考慮したいし,Windowsでもいいか,デスクトップも捨て難いな,だったらNESAバスはポイントか,まずはワープロが使いたいだけだからなー,やっぱりラップトップだろうか……』
 こうした悩みは,予算や用途が決まっていても抱くだろう。過去と未来のはざまで,どんな仕様のハードウェアとソフトウェアを選択するか.購入者が抱える命題は大きい
 すると,一口に“キュウハチ”といっても,バリエーションによってはまったく違う世界が広がっていることに気付く。もはや一つの言葉ではくくれない多様化がシリーズ内に起こっていると考えても間違いではない.デスクトップ型とラップトップ型,5インチタイプと3.5インチタイプ,386マシンと286マシン,MS-DOSとOS/2など,縦糸と横糸が交差するポイントによって,PC-9800シリーズの多様化はますます顕著になっていきそうだ.
 そして,多様化の最も大きなポイントは,32bitバスアーキテクチャであるNESAだろう.NESAは,単なるバス規格とは違う.BIOSを拡張しただけではなく,21世紀に向けたPC-9800シリーズのアーキテクチャそのものと見なすべきだろう.NESAによって,PC-9800シリーズの一部はまったく違うマシンに変貌しようとしている。その原型は,H98model70に見て取れるだろう.現行の16bitバスにも対応しているとはいえ,徐々に32bitバス対応ボードが普及していけば、2つのアーキテクチャはある期間において併存することになる.すると,同じ“キュウハチ”とはいっても、現在以上にさまざまな選択肢が出現するだろう.その併存期間が始まるのは、間違いなく今年からである.

PC-9801が成功したのはPC-8801のN88-BASICがあったからだ。BASICの互換性があったからPC-8801からPC-9801への乗り換えユーザがいた。そのPC-8801もPC-8001のBASICプログラムの移植が簡単だったから売れた。こうした互換性重視の姿勢がPC-9801が天下をとることになった。だから、BASICが嫌いだった。もう一度アルゴリズムを見直しプログラムを作り直せばいいではないかと思っていた。あんたらの作ったプログラムはそんなに立派なものでないだろうとリストを見て思ったりもした。なぜ、BASICプログラマは過去のプログラムに固執するのか。もっといいものを作ろうとしないのか。くたばれBASICだった。BASICだけでは関数とか再帰とか構造体とかの概念を身につけることはできないのに。

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 PC-9800シリーズが,世に出てからすでに8年が経とうとしているパーソナルコンピュータの代名詞にまでなった「きゅうはちシリーズ」.最近では,初代PC-9801からのアーキテクチャを継承しているがゆえの問題点も目立つようになってきた。
 ここでは、6つの異なった角度(ラインナップ,CPU、メモリ、外部記憶装置,表示装置,拡張バス)からPC-9800シリーズを眺め、その現状を確認しつつ、将来を展望してみよう.


ラインナップ
省スペース・小型化が進むか?
 PC-9800シリーズを使用場所別に単純に分類してみると,(1)常時固定した環境で使うデスクトップ型,(2)設置スペースが小さくてすむディスプレイ一体のデスクトップ型,(3)持ち運びを考慮したラップトップ型,(4)ラップトップ型の携帯性をより高めたノート型――となる(写真1).

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■ラップトップがデスクトップにとって代わるのか?
 最近まで,パーソナルコンピュータといえば、真っ先に思い浮かぶのはデスクトップ型のマシンの姿であった.それが変化しだしたのは,東芝のJ-3100シリーズのヒットあたりからであろうか.前後してPC-9800シリーズにも続々とラップトップマシンが登場することになる(これ以前にもPC-98LTがあったが,デスクトップとの互換性が完全ではなかった)。ラップトップ型マシンが急激に普及した要因には,その携帯性とともに省スペース性のメリットがあげられる.これは,デスクトップの代替としてのラップトップという位置付けだ.
 ラップトップの携帯性を一歩進めたのが,昨年夏からブームになったノート型。その価格と携帯性から,パソコン初心者の入門用マシンとして,またデスクトップ所有者のサブマシンとして,好評を博している(図1).
 ラップトップの高性能化は日々進んでおり,将来的にはカラー液晶の搭載や、長時間のバッテリ駆動も可能になるだろう.ラップトップの高機能化がこのまま進めば,市場比率がデスクトップと逆転する可能性すらある.


図1 外観・メディアサイズで分類したPC-9800シリーズ(縦横交換した)
デスクトップ
5inch
デスクトップ
3.5inch
一体型ラップトップノートタイプ
2kg台PC-9801N
3kg台PC-98LT
5kg台PC-9801UV11PC-9801LV21
6kg台PC-9801LV22
7kg台PC-9801EX2
PC-9801ES2
PC-9801LX2
8kg台PC-9801DO
PC-9801VM11
PC-9801LS2
9kg台PC-9801RA/
RS/RX21
12kg台PC-98RL
13kgPC-H98PC-9801CV21

「これ以前にもPC-98LTがあったが,デスクトップとの互換性が完全ではなかった」
これだよね。互換性重視の98の呪い。例えNECが98という数字をパソコンに付けても売れなかった。性能以前の問題だった。PC-9801という機械はN88-BASICの互換性が必要で、V-RAMの互換性が必要でその他IOポートの互換性が必要でと初期のマシンにがんじがらめになっていた。性能を上げるのは容易ではなかった。日本のパソコンの不幸はそんな98を買い支えてきた私を含めたユーザのせいだ。その根源はBASICだと思っていた。
■5インチから3.5インチへの移行は?
 今後,FDDのメディアサイズはどうなっていくだろうか.5インチディスクよりも3.5インチディスクのほうが携帯性やメンテナンスの面で優れているのは事実だ。信頼性の面ではほとんど差はない.過去には,3.5インチFDのほうが5インチFDよりもはるかに高価な時期もあったが,現在のFD実売価格では以前ほどの差はなくなってきている.ラップトップやノート型がFDDを内蔵しようとする場合,搭載スペースの問題から3.5インチ以下のドライブしか選択は許されないわけで,これに引きずられる形で今後デスクトップ型でも3.5インチ搭載マシンの比率が高まっていくと思われる.
 しかし,PC-9800の次世代スペックを搭載したといえるH98は,5インチFDDタイプのみ。日本電気としては,5インチFDD搭載機種の充実に現在も力を入れているようだ。いつH98モデルの3.5インチFDD搭載型が発表されるのかを注目したい。いずれにしても,5インチFDDマシンは,今後しばらくは生き残るだろう。5インチユーザーにとっては,現在までの資産を切り捨ててまで,いきなり3.5インチに切り替えるのは容易でないからだ.また,長いスパンで見れば,新たに2インチFDDなどの5/3.5インチ以外のメディアの登場もありうるだろう.

「5インチユーザーにとっては,現在までの資産を切り捨ててまで」これはコピーツールにも原因があった。5インチユーザーが多いのでコピーソフトを貰うには5インチマシンを買う必要があった。コピーユーザが駆逐されて初めて3.5インチユーザが増えた。

■ユーザーが仕様を選べたらいい…
 価格に関するラインナップでは,機能を削っても安くするのか,ぎっしり機能を詰め込んで高価格にするのか,という問題がある.パソコン入門ユーザーが気軽に購入でき,かつパソコンに対する熟練度が増すにつれて本体の機能拡張も行なえるマシンであればいうことはないのだが…….今のところ,ユーザーのパソコン熟練に伴う抜本的なグレードアップは,マシンを買い換えることしかない.オーディオ製品がコンポーネント指向で発展してきたように,PC-9800シリーズもCPUやFDDなどの各パーツをコンポーネント化することは考えられないのだろうか?このあたり,CPUをボードとして供給することも容易なNESAバスの登場に可能性が示唆されているともいえる.
 デザイン面でのブレイクスルーが起きないのも気になる.デスクトップは箱型のままであり,ラップトップはどれも似たような形状,ノート型にいたっては,先行した東芝のDynaBookと見分けがつかないこともあるほど。従来の堅苦しいパソコンのイメージから脱却した,家庭の中のPC-9800,ファッションとしてのPC-9800が登場してもいい頃だ。ハデなワインレッドカラーのPC-9800があってもいいのではないだろうか.

「ユーザーが仕様を選べたらいい…」はNECが提示する機種の仕様の中から購入者が選ぶ、それが仕様を選ぶということだった。何を文句言っているんだという感じだ。嫌なら買うなだ。私のように嫌々買って泣くといい。「グレードアップは,マシンを買い換えることしかない」「CPUやFDDなどの各パーツをコンポーネント化」。PC-9801は中古でも人気があるから、下取り価格が高かった。新機種を使いたいときは旧機種を下取りに出して買っていた。ちょうど車の買い替えのような感じだった。FDDは無印のPC-9801のとき8インチを買い足した人はPC-9801VM2の買い替えのとき8インチFDDも下取りに出していた。PC-9801の場合CPUを乗せ替えても動かないソフトがあるためそんなことはできなかった。PC-9801という機械はそういうものだった。

CPU
上位CPUへの移行と従来との互換性
 PC-9800シリーズでは,今までに8086,80286,80386,80386SX,V30,V50をそれぞれCPUとして使用している.初代PC-9801の8086(クロック周波数5MHz)と最新のH98の80386(同33MHz)を比べると,PC-9800シリーズがわずか8年で演算速度では約60倍の性能にまでなったことが分かる(図2).

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無印のPC-9801から80386(33MHz)で60倍の性能アップなら今はどうなるのだろうか。ちょっと古いが2018年の「Core i7-8086K Limited Editionは50年のIntel史上最強のゲーミングCPU!?」の記事を見ると
「Intel 8086互換(Intelからライセンスを受けたセカンドソース品)のNEC μPD8086(5MHz)が搭載された初代PC-9801とCore i7-8086K Limited Edition(最大5GHz)の最新システムをベンチマークテストで比較してみた。40年の時を経て動作クロックは5MHzから5GHzへと1,000倍に高速化したわけだが、はたしてどんな結果になるだろう?」
「実機ベースの比較では『約3,858.41倍(4,745.85を1.23で割って算出)』の性能」」
凄すぎてピンとこない。歩きを時速3kmとすると、比較するとだいたい時速11,574kmとなり時速1万キロ越えとは凄い。マッハ9以上だ。とんでもない機械を今使っているのだ。逆に言えば昔は糞みたいな機械でちまちま仕事をしていたのだ。当時からパソコン環境に不満ばかりだったのは当然のことだったのだ。
 ああまた一つ思い出した。無印のPC-9801が出たときZ80のアセンブラならもっと高速なプログラムを使えると豪語していたものだ。事実BASICは論外でCでコンパイルしたものよりもZ80のアセンブラで書いたプログラムの方が高速だった。PC-9801なんて8086が低性能だったのでTEXT V-RAMやGDCで高速に見せていたマシンのくせにと悪いのは8086だと心の中で罵倒していた。


 現在では,ハイエンドの80386からローエンドのV30まで,マシンに要求されるパフォーマンスと価格に応じてCPUが用意されている.これだけのバリエーションがあるにも関わらず,V50を搭載したLTを除き,ほとんどの機種でアプリケーションの互換性があるのがPC-9800シリーズの大きなメリットだ。
 逆にいえば,互換性を保つために,上位機種ではCPUの性能を十分に引き出していないということになる.今のところ,80386本来の使い方であるネイティブモードを使用するアプリケーションはあまりなく,8086互換モードであるリアルモードを使用するソフトがほとんどだ。せっかくの32bitCPUも高速版8086としてしか使われていないというのが実情なのだ(図2)
 これは,現在最も多く使われているOSがMS-DOSであることによる.MS-DOSがそもそも16bitCPUのIBMPC用に作られたOSだからである。それにも関わらず, 32bitCPUを搭載した上位機種でも使用していることに問題があるのかもしれない(OS/2ですら、現在は80386のすべての機能を使ってはいないが)。ハードウェアの進歩に対して,ソフトウェアが追い付いていけていないのである.
 OSなどソフトウェア側の対応も必要だが、32bitCPUの能力を生かすようなハードウェア側の対応も必要なのは当然だ。PC-9800シリーズでは従来機種との互換性を保つため,大きな仕様の変更がないまま現在にいたっているが,H98ではついにマシンの基本アーキテクチャであるバスが変更された.この新バスNESAを見ると,データバスの32bit化によるデータ転送の高速化や,DMAの効率アップなど,32bitCPUの機能を有効に発揮できるアーキテクチャとなっている.将来的にも,NESAバスの出現で,80486や今後登場してくるであろう80586といったCPUへの対応の素地ができたといって差し支えない.

「高速版8086としてしか使われていない」当たりまえだ。8086が遅くてダメだから高速なCPUが欲しかった。だから「高速版8086としてしか使われていない」は当然だ。何を文句言っているのだろう。
 まだ「ハードウェアの進歩に対して,ソフトウェアが追い付いていけていないのである」はない。どこが進歩だ。遅いダメCPUを高速にしてやっと「遅い」が「やや遅い」になっただけだ。思い出してしまった。記事はユーザを怒らせるために書いているのかと。メーカ側の論理は内向きの論理なんだ。外から見ると言い訳するなと怒ってしまう。何十万円もする機械を数年で買い替えている、いわばユーザがダメ機械を買い支えているんだと思っていた。スクラップの価格を読むとよくもまあ私たちは金をつぎ込んでいたものだと感じる。いまネットでは投げ銭とかスパチャで金をつぎ込んでいるがその方がましだと思う。なぜなら、機械は捨てるとき手間がかかる分だけ面倒だ。

■CPUの違いによる互換性の問題
 8086から80386までCPUをグレードアップして高速/高機能化してきたPC-9800シリーズ。基本的な互換性は維持しているとはいっても、厳密な互換性を保ち続けているわけではない.
 たとえば,V30は80x86の完全互換CPUではなく,一部のアプリケーションの中には80x86CPUでは使用できないものがある.このため,80386や80286を搭載しているRAやRXなどの機種では,V30も搭載して互換性を高める工夫をしている.もっとも,最近ではV30でしか動作しないアプリケーションは減りつつあるため,CPUを2個搭載する必要性は少なくなっている。実際,現在の最上位機種であるH98では,ついにV30は搭載されなかった。8086やV30(8086)を基本としてきたPC-9800シリーズも,ここにきて80286や80386を基本とする時代に転換しつつあるということかもしれない.
 同じPC-9800シリーズとはいっても,V30を搭載した98NOTEと33MHzの80386を搭載したH98では,使用される状況はまったく異なる.PC-9800シリーズに望まれるパフォーマンスも,ユーザーの拡大とともに多様化していくのは当然だ。シリーズ全体としては処理能力の底上げがなされる方向で進んでいくだろう.しかし,個々のモデルを見れば,ローエンドモデルとハイエンドモデルの差はますます広がり,幅広いバリエーションが展開されていくことになるだろう。その中で,H98でのアーキテクチャの変更は,CPUの主流を80386へ移行するための1つの布石になるともいえる.
V30の互換性が必要なのはPC-9801VM2の負の遺産のためだった。とにかく遅いダメCPUの8086ではなくV30ならプログラムの工夫次第で高速化が図れた。私の買ったPC-9801VX2の8086(8MHz)CPUはセグメントレジスタを使うときクロックがより必要でV30(10MHz)のPC-9801VM2より遅いということがGraphic V-RAMを使った動画で分かった。PC-9801VM2の寿命(PC-9801VX2が出るまで)が長かったためV30を利用して高速なゲームプログラムなどが出てきた。PC-9801を買う人はゲームもしたい人がいたためV30の互換性が必要でCPUを2個搭載するのは必要だった。NECは自分で自分の首を絞めていた。価格は高くなるがユーザは9801という名前が欲しかったので買い支えていた。機械を買うのではなく98ブランドを買っていた。

メモリ
より大容量を必要とする時代に
 PC-9800のメモリ容量は,初代では128Kbytesであったがマシンのレベルアップに伴い,640Kbytesが主流となり,現行では1.6Mbytesを標準搭載している機種もある(図3).

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 アプリケーションの機能の増大とともに,640Kbytesのメモリを搭載していても不十分になりつつある。たとえば,MS-DOSの本体に加え,日本語入力FPや常駐型アプリケーションをメモリに常駐させておくことは今では珍しくない。そういった場合ではメモリの残りは400Kbytesあるかないかという状態になってしまう.とはいっても,現在のMS-DOSは16bitCPU用に開発されたOSであるため,基本的には8086がアドレッシングできる1Mbytesまでしか扱うことができない(大部分のPC-9800では,マシンのROM領域やVRAMとの兼ね合いで640Kbytesまでしか扱えない)(図4)。これを解決するために,640Kbytes以上に拡張したメモリをMS-DOSが利用できるようにするEMSや,80386のネイティブモードを使用可能にするDOS-Extenderなどが開発されている.

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メモリを増設しないで済むのはゲーム位ではないか。事務処理に使おうと思ったらメモリの増設は必須だった。増設しないで使うのは時間の無駄でパソコンで仕事をするふりをして遊んでいると言われてもしょうがなかった。これは当時上司らの手書きで早くしろという言を支持した。

 MS-Windowsや次世代OSと目されているOS/2などでは,それ自体が大量のメモリを必要とする.こういった状況では,本体に搭載できるメモリは多ければ多いにこしたことはない。PC-9800シリーズのメモリの拡張には,本体内のメモリ増設専用スロットと,本体背面の拡張スロットが使用できる.しかし,拡張スロットを使用するとバスのウェイトの関係でデータの転送速度が極めて遅くなってしまう。これは,80386などの高速CPUを使っているときに顕著だ。
 こういった問題点を解消するため,たとえば従来のRA2ではメモリ増設専用スロットを使って内蔵できるメモリが4.6Mbytesであったのに対し,最新のRA21では11.6Mbytesにまで拡張することで対応している.
 したがって,メモリ増設の面でもNESAバスは注目される.NESAの32bitデータバスは,拡張スロットに増設した拡張メモリを高速でアクセスできるという面だけでなく,データのDMA転送が効率よく使用できるなど,メモリの使用からみても利点が大きいためだ。

本当に私たちはよくもまあ我慢してパソコンを使っていたものだった。当時640Kbytesしかないのならアプリケーションもアセンブラでゴリゴリ書けばいいのではないかと考えていた。Cで書くのはアセンブラを使えない人間をプログラマとして雇っているからではないかとCで書いている人間は怠け者だと思っていた。まあ私もCで趣味のプログラムを書いていたが高速化を図るために一部ルーチン(グラフィック)をアセンブラで書いていた。
 「NESAバスは注目される」だよね。でも使われる前に消えた。

■半導体記憶装置としてのメモリ
 メモリを拡張して大規模なOSやアプリケーションを実行させるといった使い方がある一方で,ディスクドライブの代替としての使用法もある。いわゆるシリコンディスクとかRAMディスクと呼ばれているものだ。
 98NOTEのような携帯性を重視したノート型マシンのような場合,FDDは搭載できてもせいぜい1台,HDDは小型のものが開発されているから搭載は可能だが,現在のところバッテリの持続時間の問題がある.
 98NOTEでは,標準でRAMディスク専用のメモリを1.25Mbytes搭載している.これがあれば,2台のFDDが必要なアプリケーションでも実行できるし,常時使うユーティリティ類をRAMディスクにコピーしておけばFDDやHDDにアクセスするよりもバッテリを長持ちさせることにもなる.
 98NOTEのようなノート型マシンが,MS-DOS専用であるとしても,デスクトップ型とはまた別の意味でメモリの大容量化が行なわれていくことになるだろう.



外部記憶装置 FDD-HDD
次にくるのは光メディアか?
 最近発表される機種には,必ずといっていいほどHDDを内蔵したモデルがある.初代PC-9801にはFDDさえ搭載されていなかったことを思うと大きくさまがわりしている.携帯性を最重視しているノート型でさえ,HDDの内蔵が望まれている.
■SCSIの登場により混乱も
 HDDのインターフェイス規格は,'88年夏まで,ほとんどがSASIと呼ばれる拡張性の乏しいものであった。その後,通称55ボードと呼ばれるSCSI拡張ボードが登場し,HDD/CD-ROM/光磁気(MO)ディスクドライブなど多様な周辺装置に対応できるようになった(図5)。発表当初は,ボードに日本電気独自の仕様があり,それが公開されていなかったため,サードパーティの周辺機器は使うことができなかった.最近になって情報が公開されたので,今後SCSI対応の周辺機器が増えていくことだろう.

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 他のマシンを見てみると,富士通のFMTOWNSも新機種ではSCSIを標準装備した.Macintoshシリーズでは,早くからSCSIインターフェイスを標準でサポートしている.国産マシンでも,HDDの設置・増設に対する配慮がなされはじめた.しかし,現行のPC-9800では拡張ボードで供給しなければならない。PC-9800シリーズでも,新たにSCSIコネクタを本体に標準で装備する試みがあってもいいだろう.LSI技術の発達でインターフェイス部分の小型化も進んでいる。ラップトップやノートタイプにもSCSIが搭載されればいうことはない。もちろんメーカー純正ドライブだけでなく,他社メーカーのドライブに対応した本来の意味でのSCSIならば、の話である.
 純正品,サードパーティ製品に限らず,HDDは低価格・大容量への道を歩んでいる(図6)100Mbytes以上のHDDも,一般ユーザーが入手できる価格帯にまでなってきている.


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HDDは容量に関わらず10万円を切ったあたりが買いだと思っていた。

11.2MbytesFDDの次は?
 本体内蔵を基本としたFDDの場合,メディアの記録容量は,320Kbytes→640Kbytes→1.2Mbytesと拡大していった.しかし,1.2Mbytesが実現されたPC-9801Mの発表から5年経った今でも,その容量は変化していない。メーカーの姿勢として,8/5/3.5インチメディアのフォーマットを1.2Mbytesに統一しているのは分かるが,新しい規格の登場はないのだろうか?
 最近のアプリケーションは,ますます大型化し,FD数枚組で構成されるものが多い。また,HDD容量の大型化に伴ってバックアップに要するディスク枚数も増加している.画像や音声など,大量のディスクスペースを必要とするデータを扱うことも,今後ますます増えていくだろう.1.2MbytesFDでは、限界に近づいたのではないかと思わせる.東芝が製品化しているような4MbytesFDなどを搭載して,1枚のディスクの容量が増加すればこれらの問題も解決するのだが.IBM PS/2やMacintoshの次世代マシンには,容量4Mbytesの3.5インチFDDが搭載される,との噂もある.国産パソコンの代表的存在であるPC-9800シリーズでは,この手の話は今のところ皆無だ。
 HDDの容量推移に代表されるように,マシンに搭載される外部記憶装置は、年々大容量化が進んでいる.磁気メディアだけでなく,CD-ROMやMOなど,光メディアの利用も気になるところだ。大容量の情報を安価に供給できるCD-ROMなどは,アプリケーションやデータの供給手段としても有効であろう.PC-9800に光メディアドライブが標準で搭載される可能性も大いにある。

「最近のアプリケーションは,ますます大型化し,FD数枚組で構成されるものが多い」何を言っているのか。高々数枚だと。Windows 3.1、Windows 95、Turbo Cとかは十数枚だ。それでもインストールしていた。大容量FDDなんて必要なかった。FDDからCD-ROMというような大幅な大容量化が必要だった。だいたいFDはエラーが怖いだろう。そんななかで大容量化はデータ保存用としても使いたくなかった。

表示装置
時代は,ハイレゾとカラー液晶
 グラフィック機能は,初代より漢字表示を意識した設計となっている.それは,16×16ドットの漢字を40字×25行表示するために640×400ドットという解像度が決められたことで分かる.また,漢字ROMをオプション(PC-9801Fより標準)にし,テキスト表示専用のテキストVRAMを搭載したことにもうかがえる.
 ハイレゾリューションモデルがあるものの,このスペックは初代からRA21までほとんど変化がない.変化らしい変化といえば,途中からVRAMが2枚となり,アナログRGBが標準となった程度である.果たして現在でも,このスペックは妥当なのだろうか?

■デスクトップはハイレゾがいい
図7の機種構成比率を見ても分かるように,PC-9800シリーズのメイン機種はCRTをディスプレイとするデスクトップのノーマルモデルである.
 しかし,MS-Windowsなどのウィンドウ環境では,ノーマルモデルの640×400ドットという解像度は十分とはいえない.特に,漢字を日常使う日本語の表示には,24×24ドットの文字を表示できる解像度がぜひとも欲しい(写真2).


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これには激しく同意する。640×400ドットで満足している人間はゲームで遊んで入ればいいとまで思っていた。よくもま16×16ドットで耐え忍んでいるものだと。640×400ドットでWindowsだと何を考えているんだと思っていた。

 PC-9800シリーズには,RLなどのハイレゾマシンもあるわけだが,現状ではマシン本体の価格と対応アプリケーションの量が問題である。マシン本体の価格が高い割には,ハイレゾに対応しているアプリケーションが,MS-WindowsやCADソフトなどの一部に限られている.つまり,多くのソフトでせっかくの解像度を生かせず,ハイレゾである意味がないわけだ。ハイレゾモデルの普及には,アプリケーションの充実と廉価版ハイレゾマシンの登場が必要だ。
 今後使用目的により,一方では色数を一方では解像度をますます要求するようになるだろう.そのため,すべての要求をはじめからマシン本体で満たすことは難しい.それでなくても,ノーマルモデルのユーザーは,ハイレゾが必要になればマシンを買い換えなければならない.つまり,PC-9800シリーズはグラフィック機能に拡張性がないわけだ.
 次世代マシンともいえるH98は,ノーマル,ハイレゾに関わらず1670万色中16色の同時表示が可能だ。そのうえ,ボードの追加により1600万色中256色表示もできる。この仕様は,今後登場するマシンの標準となる可能性もある。また,NESAバスの標準化などにより,状況が変わることも考えられる.しかし,さらなる解像度と多色表示の要求には応えることができない仕様だ.IBM PS/2のように高グラフィック機能をボードとして独立させることで,拡張性を持たせることも必要ではないだろうか.

これも同意する。私がハイレゾマシンを買ったのはエプソンのPC-486GR3(48万3000円)だからまだまだ先のことだった。

■液晶ディスプレイもカラー化へ
では,ラップトップマシンに採用されている液晶ディスプレイの問題点は何だろうか?液晶ディスプレイは,年々性能が向上しており,表示は見やすくなっている.しかし,モノクロの階調表現ということもあり,黄色と水色の違いをはっきり認識できないといった不満がある.ほとんどのアプリケーションがカラー表示を前提として作成されており,PC-9800シリーズが互換性を“売り”にしている以上,液晶ディスプレイのカラー化は必須である.
 すでに,PC-9800シリーズにはLX5Cというカラー液晶モデルも発売されており、着実に液晶モデルはカラー化に向かっている.しかし,LX5Cは2層STN方式であり,見やすさという点ではまだまだCRTにはかなわない.LX5とLX5Cの価格差の11万円を高いととるか安いととるか,意見の分かれるところだTFT方式のカラー液晶を採用したモデルが登場すれば,CRTと同様の使い心地をえられるが,最初は非常に高価なものとなるだろう.
 カラー液晶は,価格や視認性,多色表示などにまだまだ多くの問題を残している。PC-9800シリーズのすべてのラップトップがカラー化されるにはかなりの時間が必要だろう.
 一足飛びにカラー化とはいかないまでも、モノクロ液晶でも解像度,反応速度,コントラストなどといった点で進歩が望まれている.

カラー液晶はまだまだ先だった。このスクラップではいつ売れたカラー液晶のラップトップが登場するだろうか。


拡張バス

NESAバスの登場で,新たなるステップへ
 PC-9800シリーズがここまでシェアを伸ばした要因の1つに,拡張インターフェイスボードが豊富にあるという点があげられる。背面の拡張スロットにボードを装着することによって,マシンの能力を拡張・向上させ,さまざまな用途に使うことができるようになるわけだ。現在,拡張インターフェイスボードは約600種が市場に出回っているといわれている.
■マシンのスペックを左右する拡張バス
 マシンの筐体の小型化が要望される中、最もマシンのサイズを規定する要素となるのが拡張スロットだろう.メインボードや電源ユニット,FDD,HDDなどの個々の部品は小型化してきているが,スロットに関してはその数を減らす以外小型化することはできない。極端な話,拡張スロットをなくしてしまえば,筐体サイズが非常に小さいマシンを開発できるわけだ。しかし,それではメリットである拡張性を奪ってしまうことにもなる.同じPC-9800といっても,拡張スロットの使い方次第で,あたかもまったく別の機種であるかのように使える。ビジネスからホビーまで,PC-9800の利用範囲が非常に広がっている現在では,拡張性は絶対に必要だ。魅力的な周辺機器もどんどん増えてきており,拡張スロットは多ければ多いにこしたことはないというのが現状である.
 ここ当分,マシンの筐体サイズと拡張スロット数の間で,綱引きが行なわれていくことになるだろう.

■ラップトップマシンの拡張バス
 さて,ラップトップ型マシンの拡張バスはどうなっているだろうか.今のところ,PC-9800シリーズでは標準で拡張スロットを装備している機種はない。ボードを使うためには,オプションのI/O拡張ユニットか専用拡張アダプタが必要となる.I/O拡張ユニットは,デスクトップマシンと同じサイズのボード3枚を使えるようにするもの。専用拡張アダプタは,デスクトップマシンの拡張スロットとは互換性のないラップトップ専用ボードを2枚まで装着できるもの。同アダプタは,マシン本体と一体化して持ち運べるというメリットがある.
 98NOTEのような携帯を第一としたマシンシンの場合、拡張スロットは必ずしも本体内に必要ではないだろう.一方,デスクトップの代替となるような省スペース型ラップトップマシンでは,拡張スロットも一体化されていたほうが便利だろう.セイコーエプソンのPC-386LSのような拡張スロット搭載モデルの登場が待たれるところだ.

■限界にきた現行バス
 現行バスの最大の欠点は,その転送速度の遅さだ.CPUの処理速度は年々向上の一途をたどっており,すでに現行バスの転送速度では処理が追い付かなくなってきている.そこで,本体CPU側でウェイトを入れ,バスの速度に合わせているというのが現状なのである.これは,メモリのアクセス時などに顕著に現われる.拡張スロットでEMSボードなどを使っているユーザーなら,その速度低下を身をもって体験していることだろう.
 また,本体CPUが16bitのV30や80286から32bitの80386にシフトしてきている点も見逃せない.データ・アドレスともバス幅の32bit対応が望まれているわけである.
 このような問題が起きているのは,何もPC-9800シリーズに限ったことではない.米IBM社は,いちはやく高性能のMCAバスを開発し,従来機との互換性を切り捨ててまでも新バスに移行した。米Compaq社を中心とするIBMコンパチメーカーは,従来機との互換性を主張し,IBM PC/ATバスとの互換性を保ったEISAバスを別途開発した.現在米国のPC業界では,MCAとEISAのどちらが標準 バスとなるか予断を許さない.
 こういった状況の中、日本電気は'89年10月,新バスアーキテクチャ「NESA」を発表した(図8)同バスは,EISAと同じく,現行バスとの互換性を保ちつつ、高性能化を実現したものだ。主な特徴は,132bitのデータ・アドレスバス幅,2現行バスに比べて約3.3倍の転送速度を実現,3複数のボードからのバス利用要求を調整するアービトレーション機能を装備などだ。同バスは,登場すべくして登場してきたバスといえる。今後,このバスがスタンダードとなるかどうかは,普及価格帯マシンへの搭載が鍵となる.


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NECもIBMも互換性重視でユーザにアピールしてきたから自業自得というか自分で自分の首を絞めるというか互換性を無くした製品を出しても成功しなかった。互換性重視という呪いをユーザにかけたのが悪い。目先の利益に目がくらんでなばかりの新製品を出し続けてきた報いだ。アップルのように互換性を捨てて行けばよかったのだ。

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