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UNIXとOS/2前編1(月刊ASCII 1991年2月号7) [月刊アスキー廃棄(スクラップ)]

ずっと分からなかったことがこの「ビジネス分野」だった。事業所のOA化つまりオフィス分野とは違うのかということだった。オフィスユースのパソコンは想像がつくが、ビジネス分野となると分からない。コンピュータをどのように使うのがビジネス分野なのか。ワープロ、表計算、データベース、お絵かきならオフィス分野で使うが、ビジネス分野では何を使うのか。MS-DOSのアプリじゃだめなのか。分からなかった。
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ビジネスUNIXの時代だ!メインフレーマーの宣戦布告
 エンジニアリング市場で築いた基盤をバネにUNIXがビジネス市場でも主役に躍り出ようとしてきた。以前から非メインフレーマー,外資系メーカーなどはビジネス市場への進出を果たすため,その武器としてUNIXマシンを続々と投入している.
 オフコン対抗のUNIXマシンを投入している日本ユニシスや,UNIXを売りものにしたWSでコンピュータ分野に再参入した松下電器産業,エンジニアリング市場で積み上げた実績を基に打って出たソニーなどである。そうした背景を踏まえ、メインフレーマー各社も最近になっていっせいに重い腰を上げ始めた。
 象徴的なのが、昨年9月の「IBMと日立製作所がUNIXで提携」とのニュース。翌日には富士通,さらにその翌日にはIBMがメインフレームの新機種を発表しているが,その直前のタイミングに発表されたIBMと日立の提携は,これからのUNIXを占う業界に強烈な印象を残した.今のところ両社の提携がどの程度根深いものなのかは不明だが,ビジネスUNIX市場の開拓にこの巨大なメインフレーマ-2社がいよいよ本格的に乗り出してきたと見て間違いない。UNIXの普及を図る実験時代は終わりを告げ,商業レベルでの活発な販売戦争が始まろうとしているのだ。

 大型コンピューターを使うような大企業ではなくオフコンを使って総務・人事・営業管理等を行っている事業所がターゲットなのか。

1990年はUNIXブーム到来の年
 1990年を振り返れば、動きは遅かったもののメインフレーマー各社のUNIXシフトは年初から雪崩を打って始まっていたようにも見える.
 日本アイ・ビー・エムが昨年1月にIBM版UNIXのAIXの営業戦略部門としてAIXセンターを新 設,これに続き日立,富士通,日本電気の国産メインフレーマー3社も相次いでUNIX専門の組織を作り,UNIX製品の開発・販売体制の強化に乗り出している.日本IBMや日電はディーラー網の整備にもいち早く着手。なかでも日本IBMは「1990年末までにUNIX WSの販売店を100社に増やす」と意欲を見せた。日本ユニシスや日本エヌ・シー・アールも,国産メインフレーマーの従来からのオフコン・ディーラーをUNIX製品の販売代理店として取り込みつつある.
 UNIXシフトの動きはメインフレーマーや,UNIXビジネスでは先行した非メインフレーマー,外資系メーカーだけにとどまらず,オフコンディーラーやソフト・ベンダーにも波及している。オフコン・ディーラーでは日本電子計算や大塚商会,ソフト・ベンダーではSRAやアスキーが先頭を切ってビジネスUNIXの開拓に取り組んできた.「日本のビジネス市場でUNIXが果たして普及するのか」と言われて久しいが,各社の動きはそれを否定し,ビジネスUNIXの市場の拡大を告げているようだ。

 中規模の事業所に専用アプリを入れたシステムを導入することがビジネス用コンピュータの役目なのか。そのシステム開発にUNIXを使うということなのか。よく分からない。
ハードウエアの進化がUNIXを呼ぶ
 昨年、急速にUNIX市場が盛り上がったのは,コンピュータのハードウェアが大きな転換期を迎えたことに密接な関係がある.
 このうちのひとつが「ダウンサイジング(小型化)」の流れだ。従来の大型メインフレームに代わり、性能向上が著しい中小型コンピュータで業務処理を実行しようとするユーザーが日本でも増えている。使い勝手が良くコストも安くすむからだ。メインフレームとローエンド・パーソナルコンピュータの間に位置する、いわゆるワークステーションの領域ではUNIX以外に標準になるOS(オペレーティング・システム)は見当たらないとも言える.
 2番目が「RISC(縮小命令セットコンピュータ)マシン」の普及である。高性能のRISCチップの登場でWSタイプの製品でもメインフレーム並みの処理能力を持ち始めた。今後,小型化がますます活発になると,カスタム化が容易なRISCマシンの市場が急速に拡大すると予想される。この分野でも,OSは移植性の高いUNIXの独壇場だろう(写真1).
 最後の要因は「オープン・システム」の広がりだ。日本市場は欧米に比べればまだ遅れているが,官公庁を中心に特定メーカーの製品に依存しないオープンシステムを構築する動きが数多く見られる.さまざまなメーカーから自由に製品を選べる点はOS/2でも同じだが、実際のシステム導入数を見ると、現状ではUNIXの優位が目立つ。
 転換期を迎えたコンピュータ市場の動向を見通すと,どのキーワードにもUNIXが関係している.だからこそ,OS/2を含めた独自の製品体系で強固な世界を築いてきたIBMでさえ,新市場開拓に当たってはUNIXに本腰を入れざるを得なくなってきたのだ。「どのメーカーもUNIXを無視できなくなった」と,メインフレーマーの幹部は声をそろえてUNIXの重要性を強調する。特に影響を受けそうなのが,先に触れたようなオフコン・ワークステーションを中心にしたビジネス用途のミッドレンジ領域だ。
 オフコンを商品に持たない非メインフレーマーも「パソコンより少し上のオフィスWSやオフコンの代替機(松下電器)」,「当面のターゲットはサーバーやDTPといった新しい市場(ソニー)」などの分野をビジネスUNIXの目標にすると述べる。これらの言葉からは,ミッドレンジ領域にハイエンド・パーソナルコンピュータ自体も含めると言っているように感じられる。 これに比べてメインフレームやローエンド・パーソナルコンピュータの領域は当面UNIXが広く浸透する状況にはなく,メーカー各社も力を入れているようには見えない(図1)。しかし,ミッドレンジ領域にUNIXがどう広がるかによって事態一変の可能性も残っている.この数年の「ハイレンジ→ミッドレンジ」の流れを拡大すれば,「今後の2~3年でローレンジ領域にUNIXが広がることはない」との断言もできないからだ。

 「官公庁を中心に」ってそこは大型コンピューター(メインフレーム)の世界だと思ってた。官公庁のシステムがオフコン並みの性能で大丈夫なのか。
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図1 今後,力を入れたいOSの支持推移(ソフトウェア研究所調べ複数解答),
 パーソナルマシン用アプリケーション開発を主とするソフトハウスに,各年ごとの考えを求めた.UNIXへの偏重が若干感じられるが,MS-DOS/Windowsも伸びている.
 なるほど、ビジネスとはソフトハウスの業務のことだったのか。
PMの登場により活路を開くOS/2
 ビジネスUNIXのこうした狙いが順風満帆に実を結ぶかといえばそうでもない。もうひとつのオープン・システムである強力なライバル「OS/2」の存在を忘れることはできない。UNIXがメインフレームという上からの展開を促進するならば,OS/2はハイエンド・パーソナルコンピュータという下方からミッドレンジ領域に挑む.パーソナルコンピュータ市場でのOS/2の健闘ぶりも見てみよう.従来,OS/2に関しては「普及のピッチが遅すぎる」、「今のままマイナーなOSとして消え去っていくのでは」といった声が大きかった.しかし,ビジネスUNIXと同様に発表から3年が経過し,1990年に入って日本でもようやく立ち上がってきた。これを裏付けているのがメインフレーマー各社のOS/2出荷本数だ。
 たとえば,日本IBMの昨年5月末までの累計出荷本数は約4万本1989年の5月時点では1万本程度の出荷であり,最近1年間で3万本出荷したことになる.富士通でも昨年4月末時点で合計約2万システムの受注があった.この前後の数カ月に受注が急増したため,出荷できたのは5000本ほどだったという.日本IBM,富士通のOS/2ユーザーは両社のメインフレーム・ユーザーと同様,大手企業が多いことが特徴だ。日電の場合は昨年4月時点で受注・出荷とも1万2000本とやや少なかった.しかし,出荷本数のうち,1989年11月に出荷開始したOS/2 Ver.1.1が4500本もあり,やはり最近の急増が目立つ。
 OS/2 Ver.1.1にはグラフィカルユーザーインターフェイス(GUI)を実現するプレゼンテーションマネージャ(PM)が含まれている.このPMこそ,OS/2の普及の鍵とも言えるだろう。従来,ユーザーから難解と言われてきたOS/2の操作環境が,PM登場によって一変したからだ。

 「累計出荷本数は約4万本」とか「4500本もあり」とか市場が狭すぎる。「今のままマイナーなOSとして消え去っていくのでは」そのとおりだった。だが、ASCIIの記事はOS/2への身びいきがすぎる。こういうことをしているから未来を見誤るということの実例である。失敗の歴史を知ることは大事だ。
OS/2普及はMS-DOSの展開に比べて遅かったのか?
 とは言うものの,日本IBM,富士通,日電の3社を合計しても7万2000本。1989年度の32ビットマシンの出荷台数47万7000台(日本電子工業振興協会調べ)に比べると,わずか15%のシェアしか獲得していない。日本市場で80%のシェアを誇るMS-DOSと比較すれば,OS/2の普及はまだまだの感がある.しかし,OS/2普及のスピードはMS-DOSに比べ,それほど遅いとは言えない.1982年10月にPC-9801を発表した日電がMS-DOSを出荷開始したのが翌年1月,3年後の1986年9月でもまだBASICアプリケーションのほうがMS-DOSのそれより多かったのである.
 MS-DOSとOS/2では機能やユーザ一層,競合するOSが異なり,しかもOS/2はMS-DOSのリプレースではない.それだけに単純な比較は禁物だが,UNIXやMS-DOSに携わってきたメーカー関係者は経験上OS/2の立ち上がりは早いと指摘している.
 MS-DOSがローエンド・パソコンの標準OSになった時代との比較をもうすこし続けると,たとえば,富士通が主力OSをCP/M-86からMS-DOSに切り替えると表明したのは1985年夏.日電がMS-DOSを出荷してから2年半後に富士通もようやくMS-DOSを実質的な標準OSと認めたわけだ。ところが,今回のOS/2の場合はメーカー各社の足並みがそろっている.

 不都合な事実から目をそむけているとこうなる。つまり、結論ありきで考察を加えるから「メーカー関係者は経験上OS/2の立ち上がりは早いと指摘している」というように自分の都合の良いことだけをピックアップしている。
OS/2導入はシステム強化のため
最近になってOS/2市場が立ち上がってきたのには,次のような背景がある.ひとつは企業間競争の激化に対処するため,ユーザーがシステム基盤を早急に強化する必要に迫られていること.MS- DOSには管理できる主記憶が1Mbytes以下という制約がある.MS-DOSは'90年代に通用するSIS(戦略情報システム)に役不足であるというのだ。16Mbytesの広大なメモリ空間利用や,マルチタスク処理が可能なOS/2はSIS運用に不可欠だ。
 2番目はメーカー側のサポート体制が整ってきたことである。1989年末から1990年前半にかけて各社ともOS/2の本命と言われるVer.1.1の出荷を開始した.メーカー各社はこれと並行して社内のSE(システムエンジニア)に対するOS/2教育を強化し,ユーザーサポートを積極的に展開した。これまでは独自OSを搭載して販売を行なってきた富士通や日電などが「今後はOS/2を主力にする」と表明し始めたのも,OS/2導入意欲を刺激している.
 また,OS/2はビジネスUNIXがターゲットにするミッドレンジ領域の中核主力市場も狙える立場にある。
 1989年11月,OS/2開発者のIBMとMicrosoft社が「32ビット対応のOS/2を1990年度中に出荷。これをベースにRISCチップ用,マルチプロセッサ用のOS/2を開発する」と共同発表した.MS-DOSの後継(上位)OSという立場から一転し、OS/2はUNIXと張り合えるOSに進化したのだ。
 32ビット対応OS/2の対象マイクロプロセッサ(MPU)は演算速度8MIPS(1MIPS=100万命令/秒)の「80386」か同18MIPSの「80486」UNIXのようにスーパーコンピュータやメインフレームで動くことはないが,80386や80486を複数個動かすマルチプロセッサマシンの性能はメインフレームに匹敵するともいう.この上でOS/2が走るならば,パーソナルマシンからオフコンまでを同じOS/2で統一できる.
 しかもOS/2は、IBMのSAA(システム・アプリケーション体系)の基本になっていることからも分かるように,既存システムとの親和性が高い。各メーカ一のマシンで動くオープン性もUNIXとほとんど変わらないし,アプリケーションも1990年になってからかなり出そろってきた.

 Windowsでいいと思う。Windows NTが登場するとOS/2はいらないのではないか。OS/2はそんなに市場で歓迎されていたのか?
UNIXとOS/2ビジネス分野を制覇するのは
 1989年11月に行なわれた「32ビット対応OS/2,RISCチップ用OS/2,マルチプロセッサ用OS/2の開発・出荷」に関する発表は,「UNIX普及に危機感を抱いたIBM,Microsoftが新OS/2でUNIXに対抗することを表明したもの」と言われている。両社の積極的な戦略から見ても,ビジネスUNIXとOS/2がいずれ真正面から競合するようになることは確実だ。果たしてUNIXとOS/2のどちらがビジネス市場での地位を確立できるのだろうか.
 「この2つのオープンシステムはどちらもそれなりに市場を分け合って普及していく。どちらを選ぶかはユーザーの趣味の問題」と多くのメーカーは見るが,本当にそうなるのか?UNIX,OS/2それぞれのメーカー,ディーラー,ソフトベンダー各社の動きを通して'90年代の主流OSを占ってみたい。

 だからビジネス分野というのは「ソフトベンダー」などシステムやソフトを開発する会社の業務分野ということでいいのか。

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