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3.5インチ光磁気ディスク(月刊ASCII 1992年4月号6) [月刊アスキー廃棄(スクラップ)]

「特集II 大容量 高速アクセス リムーバブル 3.5インチ光磁気ディスク」
をスクラップする。
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 「3.5インチ光磁気ディスク(MO)」は,HDDライクな高速アクセスと大容量,フロッピーディスクのような記憶メディアを手軽に扱えるという、両者の利点を集約した新しい外部記憶媒体だ。
 従来,光磁気ディスクといえば5インチが主流であった.3.5インチMOディスクは,1991年春にIBMがパーソナルユース向けに発売したのが初登場になる。続いて,ナカミチ(株)もPC-9801シリーズ用のドライブを発表したが,当時はドライブが高額であることや,メディアの互換性などの問題を残したため,爆発的普及には至らなかった。
 しかし,1992年冬.(株)アイシーエムの「MO-3120」がドライブ価格19万8000円という戦略的価格で登場した.ほかのHDDメーカーもこぞって3.5インチMOドライブの開発発売に参入するようになり、ここにきて一気に普及の兆しを見せる.ISO(国際標準化機構)によって,3.5インチMOメディアの物理フォーマットが定められたこと.論理フォーマットは,3.5インチMOで先行したIBMのフォーマット*「が事実上の標準としてMS-DOS Ver.5に採用されたこと.さらには,SCSIデバイスとしてハードディスクなどとデイジーチェーン接続できるようになったこと.これらは,ドライブの低価格化と合わせて,3.5インチMOディスク普及の理由だ.
 「大容量・メディア交換可能・高速アクセス」は,外部記憶装置の3大要求ポイントである.すべてをクリアする3.5インチMOは,今後どのような展開を見せるのだろうか?今回の特集では,実際に発売されているいくつかのドライブを紹介するとともに,アクセス速度の測定,光磁気ディスクの原理,運用面での注意点,その将来性をレポートする.

*1:メディア1枚のフォーマット後容量が128Mbytesで,ハーティションの設定はできないが,MOドライブからの起動が可能なフォーマット仕様

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 「光磁気ディスク」は,光を利用するメディア(光ディスク)の一種である。光ディスクには,LD(レーザーディスク)や音楽用のCD(コンパクトディスク)なども含まれている。このうち,ISOが定めたデータカートリッジに収められたものを「OD(オプティカルディスク)」と呼ぶ(図1).

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 ODは,さらに,1回だけ書き込みが可能な「追記型」何度も書き換えが可能な「書き換え型」,読み出し専用の「ROM型」の3種類に分けることができる.光磁気ディスク(MO)は,書き換え型であり,データの書き換えに光と磁気の両方を用いている光ディスクだ。
 光を用いる記憶メディアの代表格であるCD-ROMは,細いレーザー光線をメディア上の反射層に当て,光の反射/非反射をデータとして読みとる.また,磁気メディアのフロッピーディスクやハードディスクでは,磁性体のS極/N極の違いを,微細なコイル(磁気ヘッド)に流れる電流として捉える。それでは「光磁気ディスク」は,どのように情報の読み書きを行なっているのだろう.

磁界の向きによって偏光方向が変わる
 光磁気メディアには,あらかじめ作られたトラックの上に,磁界の向き(S/N)によって反射光の偏光方向が変化する磁性膜が形成されている(図2).情報の読み出しの際には,この磁性膜に弱いレーザー光を当て、磁界の向きに応じて変化した反射光の偏光方向(右回転/左回転)の違いを,受光器で1か0かの情報として読み取る.レーザー光による読み出しのため,ヘッドとメディアが非接触であり,1000万回以上の繰り返し読み出しが可能だ。

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 一方,メディアの磁性膜の磁界の向きを反転させれば,情報を書き込むことになる.ところが,長期間情報を保持するためには,磁性体の抗磁力を高めて磁気が自然消滅しないようにしなければならない.そうなると,大きな磁気ヘッドが必要になり、記憶の最小単位である1bitの面積が20μm2程度になってしまう。高密度記録ができないのだ。
 読み出しを細いレーザー光で行なうMOメディアの1bitの範囲は,1μm2程度である。ここだけに磁界を作用させるにはどうすればいいのか?そこで、磁性体の持つ「加熱すると,ある温度(キューリ温度)で,その物質の磁気が消える(すなわち,磁界反転が容易になる)」という物理的な特性が注目された。磁気ヘッドが大きくても、ある領域だけの温度を上昇させることができればとなりの磁性膜の磁界の向きを変えず,目的の1bitだけを反転できることになる.
 狭い領域の温度を上げるためには,読み出し時よりも強いレーザー光を照射し、磁性膜をキューリ温度(摂氏180度)にする。同時にメディアの裏側から磁気ヘッドで,磁界反転を行なう(図3)。これが MOディスクの「熱磁気書き込み」と呼ばれる方式だ。


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 熱磁気書き込みは,追記型メディアのような破壊的(穴をあける)な情報記録ではなく,磁気の可逆性質を利用したものだ。磁性膜は、繰り返しの加熱によって徐々に磁性を失うものの,それでも100万回以上の繰り返し書き込みが可能である。また,室温では磁性膜の抗磁力が高いので,文房具磁石の磁力程度ではメディアに影響はなく,いったん記録した情報は10年間保持できるという.
読み出しは高速だが,書き込みは遅い
MOディスクにおける情報の読み書きの手順を整理してみよう.
読み出し時
 光を当て,反射光を読み取る
書き込み時
 (1)光で磁性体を加熱
 (2)磁気ヘッドで磁界反転
これはMOメディアとしての過程である。ところが,MOドライブを含めた書き込み手順は、もう少しややこしく,
書き込み時
 (1)消去(磁界の向きをそろえる)
 (2)書き込み(加熱および磁界反転)
 (3)ベリファイ
の3過程となっている
 このためMOディスクは,読み出し速度はハードディスクなみだが,書き込み速度が遅くなると言われているのだ。

IBMフォーマットが標準に
 1枚で最大128Mbytesの記憶容量を持つ光磁気メディアは,現在,いろいろなフォーマットが混在している.もちろんメディアの仕様が確定しなければ,ドライブの仕様も決定できないのだが,ISOが決定したのは,メディアの厚みや直径,カートリッジの仕様,セクタ/トラックなどの物理フォーマットである(図4)。容量やパーティション情報に関する論理フォーマットは,今年6月ごろにならなければ確定しないという.

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 そのため、現状では各メーカーの独自の仕様でMOドライブが作られ,出荷されているのだが,ほとんどのメーカーで,3.5インチMOディスクをパーソナルユース向けとしていち早く製品化したIBMの仕様に合わせようとする動きがある.
 たとえば,MS-DOS Ver.5のFORMAT.EXEもIBMフォーマットに準拠しているし,サードパーティなどでも,独自の120Mbytesフォーマットと,IBMのMOメディアとの互換性を持つ128Mbytesフォーマットの2つをサポートしているところが多い.
 ちなみに,3.5インチMOディスクの場セクタ数の制限の関係でMS-DOS Ver.3.xでは使えないのだが,MOディスクをHDDのように認識させる(パーティションの設定やMOからの起動が可能)オプションのデバイスドライバを用いて,Ver.3.xでも使えるようにしているメーカーもある。
 ユーザーとして心配なのは,この先,仕様が変わっても、現存のメディアやドライブが使えるかということだろう。幸い,ISOでもIBMフォーマットを規定として考えている。とりあえずは,IBMフォーマットをサポートしているMOメディア/ドライブを選べばまちがいないだろう.

MOは,CD-ROMに勝てるか?
 現存のMOドライブでは原理的に,(1)書き換え可能,(2)読み出し専用(MO-ROM),(3)書き換え領域と読み出し専用領域の混在(パーシャルROM)――の3種類のメディアが使えるという.現状では(1)の書き換え可能タイプしかないものの,将来的にはROMタイプやパーシャルROMタイプの伸びも期待できる。
 メディアメーカーの話では,「MO-ROMの場合,磁性膜が不要で反射膜だけを作ればいいので,枚数さえ出るならメディア1枚当たりのコストをCD-ROM程度に下げられる」という.また,光だけを使うCDでは,ユーザーのデータを書き込むことができない。しかし,MOのパーシャルROMではデータをROM部に,ユーザーの情報をRAM部に持てるため,電子出版やマルチメディア分野などでも注目されている.
 MOディスクのアクセス速度は,CD-ROMに比べて10倍速い。アクセス速度だけを見ればMOディスクが優っている。扱いの手軽さやデータの保管性では両者に差がなく,将来,CD-ROMとMOのどちらの光ディスクが主流になるのかは、今年のMOドライブの普及にかかっているようだ。MOディスクにはCD-ROMを凌駕する可能性がある.
取材協力:三菱化成(株)

三井石油化学工業(株)


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 大容量,高速アクセスで,交換可能なメディアの扱いが手軽。光磁気ディスクのこの特性はどのように生かせばよいのだろうか?  各ドライブメーカーが提唱する使い方には次のような事例がある.
HDDデータのバックアップ
 複数のHDDがあっても,メディアの交換によりMOドライブが1台ですむ.また複写も高速で,他のデバイスとデイジーチェーン接続すれば手順も簡単。緊急時にはHDDの復旧以前でも,MOからのブートアップが可能。しかし,HDDのようにブートアップを可能にするには,専用のフォーマッタでフォーマットするか,MS-DOS Ver.5を使うかなど制限もある。
HDDの代わりとして常時使う
 MOドライブは,SCSIデバイスであり,アクセス速度もHDDなみなので,単体を常時HDDの代用にすることができる。また,メディアの交換性を生かせば,小グループでの共用や,OSやアプリケーションごとにメディアを入れ換えることで各種設定が容易になる。300Mbytes以上のHDDが必要な場合であれば,MOメディアを数枚求めたほうが容量当たりのコストを抑えることができる.
FDDライクに使う
 大容量のメディアが簡単に扱えることから,遠隔地へデータを送る際にはメディアの郵送も可能。また,3.5インチMOメディアのカートリッジサイズは,3.5インチフロッピーディスクのそれと,ほぼ等しい(厚みが約1.5倍).同じ容量のデータを保管するならMOメディアのほうが,場所をとらず整理もしやすい。さらに,書き込んだデータは10年以上の長期保存が可能だ。
アプリケーション供給メディア
 市販されるアプリケーションの容量が増えるにしたがい,フロッピーディスク6枚組などというソフトウェアも珍しくなくなった。MO-ROMが大量にプレスされるようになれば(現在は米国で1例),フロッピーディスクよりもコストを抑えられるという試算もある。アプリケーションのインストールはMOディスクでという時代も近い。
高速アクセスを目指しディスク回転数を上げたMOドライブ
 光磁気ディスクの中心部であるドライブユニットは,精巧なサーボ機構と半導体レーザーのノウハウを手にしたメーカーしか製作できない.そのため,現在各社から発売されている3.5インチMOドライブも,採用しているドライブユニットのメーカーの違いによって,5つのグループに大別することができる.
 MOドライブのアクセス速度を決定する鍵は,光ヘッドや磁気ヘッド,それを制御するサーボ部やディスクの回転制御部にあたるユニットが握っている.同一のドライブユニットを採用していれば,外観は変わっても、さほど性能には違いがないことになる。ドライブユニットを製作し,現在,製品に採用されているメーカーは,IBM,ソニー,松下電器産業,ティアック/三菱電機(共同開発),ナカミチの6社だ(表1).


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MOをハードディスクの代わりに使うことはなかった。HDDのバックアップにも使ったが、作業用ディスクとして使っていた。HDDはまだまだ高かったのでHDDの容量が少なくなったといって大容量のHDDを買うとか増設する経済的余裕はなかった。作業分野ごとにMOメディアを替えて使っていた。
 これら6社のドライブユニットには,大きな違いがある。IBM製ドライブのディスク回転数が1800rpmなのに対して,ソニーやティアック/三菱電機などではアクセス速度を高速にするために回転数を3000rpmにしている。実は、この回転数の違いがデータの書き込みの際に問題になるのだ。
 書き込み時には,レーザー光で磁性膜を過熱し、磁界を反転させるのだが,回転数が高速だとレーザー光が当たる時間も短くなる。よって,低速回転のドライブよりも強いレーザー光の照射が必要になり,メディア自体が過熱され,ソリが発生したりすることもあるという。最近では、磁性膜の温度特性が改善されたこともあり,低速/高速回転ドライブの双方で使えるMOメディアも出回っている.しかし,「基本的に回転数の異なるドライブでは,メディアの互換性は保証されない」というメディアメーカーもある.編集部でのテスト結果も,ドライブメーカー指定外のメディアを使った場合,正常にフォーマットできないなどの障害も発生した.
 完全互換を保証したはずの3.5インチMOメディアとはいっても,それはデータ読み込みに関してである。各々のMOドライブには,適応メディアが明記されている.トラブル防止のためにも書き込みの際には,メディアが対応しているかどうかもチェックしておこう。
 さらに,高速回転タイプのドライブでは,ベリファイの過程を省略して,高速書き込みが行なえるようにしたものもある。MOドライブを選ぶときには,価格やデザインだけでなく、安全性についても考慮しておきたい.


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5インチ/3.5インチMOの棲み分け
 光磁気ディスクは,現在のところ5インチMOディスクが主流である(写真A).5インチ(正確には5.25インチ)MOメディアは,3.5インチメディアに比べて,面積当たりの情報密度は変わらないものの,ディスク面積が約2倍で,両面張り合わせ構造のため,容量は約4倍になっている。コストパフォーマンスを見ても,5インチメディアが2万6000~3万円,3.5インチメディアが7000円前後と,容量当たりの単価はさほど変わらないのだ.いままで,5インチMOドライブがエンドユーザーにそれほど普及しなかったのは、やはりドライブの価格が45万円前後していたことが要因だろう.しかし,3.5インチMOドライブの登場と時期を同じくして,40万円を切った5インチMOドライブも発売されるようになってきた.
 3.5インチと5インチでは利用される分野もおのずと異なるのだが,ここでは,ハードウェアのスペックであるアクセス速度に注目して,両者の差を調べてみた(図A).今回比較したのはソニー製のRMO-S350(3.5インチ)と同S550(5インチ)だが,結果的に5インチMOは,3.5インチMOより1.2倍程度遅いことになる.このくらいの差なら,3.5と5インチMOドライブの両者の差は解消されつつあるといえる。大量の記憶容量が必要な場合は,5インチMOを求めるのもいいかもしれない.


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2.5インチMO(ミニディスク)
 昨年、ソニー(株)は「2.5インチのMOディスク(ミニディスク)」の仕様を発表した。ミニディスクは,光磁気ディスクの原理はそのままで,さらに小型化したものだ(写真B).2.5インチMOメディア1枚には,音楽なら最76分(現在の12cmCDと同等)が録音でき,コンピュータの外部記憶装置としてなら,64Mbytesのデータが書き込みできる。商品化の時期は,音楽用が1992年末,コンピュータ用1993年春の予定だという.
 ミニディスクは,ドライブの大きさをノート型コンピュータに内蔵できるほど小型化できる.また,光ディスクの弱点である振動対策として,容量1MbytesのDRAMを,読み出しバッファとして搭載する。さらには,データの消去と書き込みを同時に行なう(上書きする)ことで書き込み時間を短縮している.ノート型コンピュータにとっては,HDDやFDDの代わりとして十分通用する記憶メディアとなるはずだ.
 しかしミニディスクには,メディアの低価格化をどうするかなど,まだ問題も残っている。とはいうものの,3.5インチMOのメーカーもミニディスクの動向から目が離せないという。もしかしたら,3.5インチMOが本格普及する前に2.5インチMO(ミニディスク)の時代が来るかもしれないからだ.


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これは流石になかった。3.5インチが適切なサイズだった。小さければ良いというものではない。
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