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米国ハイテク産業,その他,松下電工のVR(月刊ASCII 1990年12月号4) [月刊アスキー廃棄(スクラップ)]

ASCII EXPRESSをスクラップする。

「米国ハイテク産業の動向」をスクラップする。
Seybold DTPコンファレンス
 米国ではDTPはもうすっかり定着した感がある。業界紙のほとんどは入力,編集から最終フィルムの作成まで,すべてデスクトップで行なう体制ができているし,この傾向は今や業界外のあらゆる職種における小規模印刷にまで波及する勢いである。もちろん,従来の写植方法による出版物がまったくなくなったわけではないが,こうした出版物がほとんど皆無になることもそう遠い話ではなくなってきている.
 こうした世の中のDTPブームの最大の立て役者は,もちろんApple社とAdobe社.Apple社のMacintoshはDTPプラットフォームの代名詞にもなっているし,Adobe社のPostScriptはDTPの代表的プロトコルと考えられている。
 先頃,筆者のいるカリフォルニア州San Joseで「SeyboldDTPコンファレンス」が開かれた.Jonathan Seyboldが1986年に始めたこのコンファレンスも今年で4年目,5回目を数える.
 先に,米国におけるDTPの急速な発展は,Apple社とAdobe社によるところが大きいと述べたが,このコンファレンスも忘れてはならない。いわばDTPのプロパガンダとして,中心的役割を果たしてきたのだ。今年の参加企業は約250社,2万5000人を超える参加者が詰めかけた.

Macを脅かすUNIXマシン
 今年の特徴は,DTPの新たなプラットフォームが登場してきた点に集約されるだろう.まず会場で特に目立ったのは,何と言ってもSunの「SPARCstationIPC」Sunは先頃ビジネス部門へのマーケティング強化を発表したばかりで,低価格なIPCを中心にMacに挑戦する。また,Sun用プリンタとしては,今までApple社のレーザーライタのOEMを受けていたが,今回,自社のSPARCprinterを発表。同時にNeWSprintというプリント用ソフトを開発,ワークグループ内でのプリント作業をより効率的に,高速に行なうことができるようにした.
 NeWSprintはSPARCprinterだけでなく,HP,Seikoなどのプリンタにも対応している.Sunが提唱するNeWSprintのモデルでは,PostScriptなどの計算集約型の処理はSPARCstation上で実現される.NeXTと同様のアプローチだが,その分プリンタ側の負荷が軽くなる.今回発表されたSPARCprinterも中身はダムプリンタ,12ページ分,400ドット/インチで2695ドルという低価格を実現している.Sunによると,たしかにPCクラスのマシンではPostScript処理は分散させたほうが賢明だが,SPARCクラスのマシンになると,むしろCPU側ですべての処理を行なったほうがシステム全体として効率がよい,とのことだ。
 NeXT社も特に人気を集めていたブースのひとつ。もちろん,注目の的は,先頃発表されたばかりのNeXTstationおよびNeXTcubeColor.4995ドルのNeXTstationはMacIIfxやSPARCと比べたら半分以下の値段で一応のDTPシステムが構成できる点が魅力Jobsの期待するとおり,このマシンは今後話題を集めそうだ。
 NeXTcubeにフルカラーを実現するNeXTdimensionボードはすでに先月号で報告したが,このボードの特徴のひとつにJPEG圧縮チップがある。今日のように,DTPにもカラーの波が押し寄せてくると、そのデータ量は以前と比較にならないほど大きくなる。単純に計算しても,24ビットイメージは1ビットモノクロイメージに比べて、実に24倍のデータ量になるからだ。
 SuperMac社はJPEG圧縮ソフト,SuperSqueezeを開発。このソフトは今後,同社のMac用グラフィックスボードおよびハードディスクにバンドルされる.また,同社はNeXTと同様,C-Cube社のJPEGチップを搭載したデータ圧縮ボックスを開発している.正式な発表は来年になりそうだが,スチルイメージの圧縮方法としてJPEGが一挙に市民権を得たようだ。

Apple社,Mac新ラインを発表
 SeyboldのDTPショーが終わって間もなく,今度は10月15日にApple社がMac新製品3機種を発表した.発表会場はカリフォルニア州フリーモントにある同社工場.サンノゼからは車で約10分.すぐ目と鼻の先だ.フリーモントは,どちらかというと開発部門より生産部門が集まっている地域。今回発表が行なわれたApple社の工場のすぐ近くには,SunやNeXTなどの工場も並んでいる。今回発表されたのは,Classic,LC,IIsiの3機種(いずれもその内容が事前リークされていた)。仕様などは本誌別項に詳しいと思うので,ここでは簡単に述べるにとどめる.
 ClassicはSE/plusの後継機種.ハードウェア的にはSEを継承し,8MHzの68000を搭載。長い間待たれていた1000ドルMacの登場である。もちろん,エントリーレベルの個人ユーザーや学校関係などがメインのターゲットである。ちなみに,plusの製造中止を受けて,某スーパーマーケットでは、領収書を集めれば学校等にplusを提供するといったキャンペーンを始めた。たぶん製造中止になったplusを安値で仕入れたに違いない.
 LCは低価格カラーモデルで16MHzの68020を登載。IIシリーズとはNuBUSスロットがないなどの点で異なり,まったく新しいモデルと言える。形状もどちらかと言えばピザボックスタイプ.オプションのIIeエミュレーションボードを付けることでIleのソフトが動作可能となる(LCだけがサポート)。学校関係,個人ユーザー,小規模ビジネスユーザーがターゲットで価格はモニタ別で 約2500ドル。
 IIsiはIIcxの後継機種20MHzの68030を搭載したこのモデルは,IIシリーズ中最低価格の機種となる。価格は,2MbytesRAM,40MbytesHDDの構成でモニタを別にして3800ドル。企業向け用途がターゲットとされている。

LCとIsiに装備されたオーディオポート
 LCとIIsiには,今回初めてオーディオ入力ポートが装備された.8ビットデジタルサンプリングを行なうもので,22KHzでサンプル可能(システム的には44KHzまで可能と言われる)。機能的にはFarallonのMacRecorderとほとんど同じもの。
 このオーディオサンプリングは,NeXTの登場で一段と有名になった機能だ。ボイスメールやリップサービスなどの利用で,ドキュメントオンリーのものに比べ表現力は一段とアップする.Jobsはこの機能とネットワークを結び付けて,マルチメディアネットワークなどと呼んでいる(さらにそうした環境全体のコンセプトのことをInter Personal Computingと言っている)。悪く言えば,オーディオサンプリング機能を付加しただけでマルチメディアというのはおこがましいが,使ってみればそれなりに楽しめる機能であることには違いない。IBMとMicrosoftが密かに開発していると言われる新しいマルチメディアマシンにも当然こうした機能が具備されるはずだ.

Apple社のシェア拡大路線
 Apple社CEO,John Sculleyによれば「Apple史上、最もアグレッシブな価格設定」を行なったという今回の新製品発表.DTPでその独占的地位を脅かされていることは先に述べたが,今回発表された製品は,どちらかと言えばDTPよりも一ランク下の層を狙ったもの。いずれも「パーソナルコンピュータ」を強く意識したものだ。昨年にApple社が行なった「パーソナルコンピュータメーカー宣言」がここにきてやっと実現した.
 Apple社は利益率は確かに好調なのだが,パーソナルコンピュータとしてのマーケットシェアは、年々低下の一途をたどっている。一頃14%あったシェアは今では11%程度.IBM,IBMクローンなどのDOSマシンにじわじわと侵食されている格好だ。
 その原因は、もちろんApple社独占による高値政策。いくらSculleyがアグレッシブな価格設定といっても,「今までが高すぎただけだ」という反応は根強い。Windows3.0の発表以後低価格なDOSマシンが再び注目され始めている現状で,Apple社はその失地回復の意味で今回の新製品はどうしても必要だったようだ。
 理由はともかく,今回発表された新製品は、価格的には大幅な値下げが行なわれている。また旧ラインについてもIIfxを除き1000ドルから2000ドルの値下げも同時に発表された.ローエンドモデルに手をつけた今回の発表は,現在までのところ,Apple社の期待どおり,ほとんどのユーザー,業界関係者に好意的に受けとられているようだ。  (ザイロンコーポレーション代表 脇山弘敏)

「スチルイメージの圧縮方法としてJPEGが一挙に市民権を得たようだ」フリーソフトで自由に使えるようになるまでにはひと悶着あった。
「(Appleは)一頃14%あったシェアは今では11%程度」確かこの後Microsoftが支援したはずだ。IBMのクローンマシンだけになるとOSがMicrosoftだけだといわれ独占禁止法に抵触するので「Mac OSもありますよ」と言いたいがために支援した。
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スケルトンMac。iMacの原形はここにあったのか。

アップルジャパン社長の武内氏が本社副社長に就任
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米AdobeSystems社とセイコーエプソンがPostScriptについてライセンス契約を締結
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Miscellaneous :behind the newsをスクラップする。
Miscellaneous :behind the news
PalmTopはMacになりきれるか
 先月LTEシリーズのボディにひび割れという減点を食ったCompaqが,最上位機種「LTE386s/20」を発表した。その名のとおり20MHzの386SXを採用し,サイズは216×279×48mmで3.4kg価格は60MbytesHDDを搭載したモデルが6999ドル,30Mbytesモデルは6499ドルである。
 Compaqによれば,なんと「軍事産業」で培ったテクノロジーによって基板が従来の半分の大きさにたたみこめたという。これはもともとTeledyneElectroMechanisms社がミサイル誘導システムやステルス機の操縦パネルのために開発した技術「RegalFlex」である.Compaqは,このRegalFlexを使って,200×280mmのCPUボードを,重合った120×150mmのボードに作り上げたという.
 アナリストたちは、景気後退の中,他社が低価格のノートブック型パソコンを考えているこの時期に,この値段は高すぎると見ている.先月紹介したEpsonのNB3は4000ドル台で出そうなので,たしかに高い。日本でも高速のノート型が人気の中心になろうとしているが,米国でも「VGA+386SX」というマシンで競争が激化しそうだ(写真1).
 ノート型で遅れているApple社だが,「ソニーがノート型Macを製造するのではないか」という噂が流れている.John Sculleyは,来日の際「来年度末までには小型のパソコンを発売する」と述べている。Appleにはノート型のパソコンを作るノウハウ(半導体詰め込み技術など)がないことから,このギャップを埋めるため,ソニーに話を持ちかけたのではないかというのが大方の見解だ.ソニーは「現在交渉中であり,もしタイアップが実現すれば,Appleの要求どおりに製造・供給するつもり」という.さらに,Appleは東芝とも手を組もうとしているという噂がある。とはいっても,こちらはノート型の開発ではなく,光ディスクで手を組むらしい。東芝はAppleが接触してきたことを認めたうえで,まだ実際に合意に達するかどうかは分からないとコメントしている。
 ソニーの「PalmTop」はCPUが68000,液晶の解像度は512×342ドット,ポインティングデバイス付きという「Mac酷似スペック」だ。ROMを入れて,はい出来上がりになるのだったら,値段据え置きの19万8000円で発売してほしいものだ。
 Windows3.0の人気で儲かってはいるがOS/2が不安になってきたMicrosoftだが,なんと,PC用のゲームソフト「Microsoft Game Shop」を発表した.TetrisをもとにしたQBlocksなど,6種のゲームが入っており,そのままでも遊べるし,ユーザーがモディファイすることもできる。同社のゲームといえば,これまで頑固にフライトシミュレータ一本槍で,子供向けのゲームソフトは初めてである(価格は49.95ドル)。これはひょっとして,IBMのホームコンピュータ戦略と関連があるのではと思わず考え込んでしまったが,実はそうではないらしい。どうも,Microsoftのプログラマによって片手間に作られたゲームを寄せ集めたもののようである。ある日,お偉いさんがゲームで遊んでいる社員を見て「これはなんとかするべし」と口走ったのがきっかけで製品化されることになったのだという。「ゲームはとても面白いものばかりだ。一人遊びゲームとしてはビッグヒットになるはず」と社員は語っている.

ハッキングして世界旅行しよう
 米国では,過去6カ月でオンラインサービスに加入している世帯数が10%増加し,約190万世帯になったという.この伸びは5大ネットで特に著しく,Bell社が運営しているゲートウエイの「渋滞」も報告されている.
 今回の調査によると,第1位がCompuServeで62万5000世帯,2位がProdigyの30万,3位がGEnieの21万5000,AmericaOnlineが14万5000,Delphiが8万という.どうやって調査したのか不明だが,Delphiがベスト3から落ちて,Prodigyが上昇しているのは本当なのだろうか。とにかく,この5大ネットがマーケットの71%を占め、他の50数社は残りの3分の1のユーザーを分けあっているにすぎない。データによれば,トータルで191万件の家庭が加入していることになるが,15%のユーザーは2つ以上のサービスに加入しているので,実際には160万世帯になるという.
 このデータをややこしくするのは,GEnieやCSに加入している約4%の国外居住者=我々である.CSはNIFTYが,GEnieはPC-VANが,Delphiはアスキーネットが提携しているので残るはあと2つだ.ProdigyとAmericaOnlineはそれぞれIBM PCとMac用の専用ソフトでアクセスするという「特殊性」が災いしているのだろう.どこかががんばって専用回線でも設置してくれれば入りやすくなるのだが.
 ネットワークといえばハッキングだが,米国では,自社の実力を示すために,ハッカーに挑戦状をたたきつけている会社がある(そういえばNTTの暗号懸賞もあったね).LeeMah DataCom Securityという会社で,その名も「LeeMah Hacker Challenge」というコンテスト.今回で2年目だが,同社の2台のコンピュータに隠された秘密のメッセージを検索させるもので,1等賞は世界旅行.コンテスト期間の2週間で2000人以上の「参加者」があったが,同社のセキュリティシステムはそのすべてを返り討ちにしたという.
 同社ではDES(Data Encryption Standard)アルゴリズムを使っているそうで,3階層のシステムセキュリティを破ろうとする参加者のハッキング成功率は「7万2000兆分の1よりは良い」という(どういう数字なんだっ!)。関係者の中には、「このコンテストはコンピュータ犯罪を助長するものだ」という意見もあるが,同社は「ハッキングには防止法があることを示す利点がある」と主張する.
 かくして,7万2000兆分の1の偶然で侵入に成功した者が読んだであろう秘密のメッセージは「しつこくハッキングするものは,遅かれ早かれ追われるものとなるだろう」という怖い文句だったそうだ。
 こちらは本物のハッキング事件.NewJersey州議会では数カ月にわたって「ComputerGate」事件が取りざたされている.中身は,共和党員が民主党のコンピュータに侵入し,選挙戦で優位に立とうとしたというもの。操作されたファイルの内容が選挙キャンペーンへの寄付者リストや、選挙戦略を記したものだけに,犯罪の詳細はほとんど明らかにされていない。ネットワーク先進国ならではの犯罪だが,やることはWaterGate(盗聴)と変わっていない.

卍に注意っ!!
 日本の大臣の差別発言が問題視されているが,米国ではNECとNintendoの両社が,ADL(差別を監視する団体)から訴えられた。というのも,両社のゲームマシン用のゲームが「ナチスのカギ十字」と「ダビデの星」を使っているためという.
 NECは「SyberCorp」というゲーム。アクションシーンの中で「ナチスのカギ十字」を武器として扱っているうえ,そのゲームの目的が「胸にダビデの星を付けた敵」を倒すことにあるという.Nintendoのほうは,「ゼルダの伝説」のマニュアルに出てくるらしい。
 「両社とも,そのシンボルを攻撃の対象として扱っているため削除すべき」というのがADLの意見.NEC側は「このゲームを開発したソフトハウスの人間に責任がある」と主張。さらに「このソフトを購入した消費者にこそ問題がある」と消費者の選択の問題(責任)にすり替えてしまっている.Nintendoは「ゼルダの伝説で使っているシンボルは「まんじ」であり,ナチスとは向きが逆だ」と反論。「うちはソフトウェア開発に関してきわめて厳しい基準を設けているため,宗教団体などからクレームをつけられるようなものはない」と述べているが,両社とも,どうやらキャラクタを削除する意向のようだ。米国へ進出する予定のソフトメーカー各位は十分注意されたし.
 最近,営業成績はあまり良くないDECだが,米国の雑誌「Working Mother」の10月号で表彰された.「Working Mother's 75 Best」と題された会社の一覧表は,賃金,昇進の機会,育児手当てなどから順位が付けられている。同誌によると,優秀な会社は、仕事と家庭を両立させるため,会社もその一端を担わなければならないことを強く意識しているという.
 家庭の話題をもう1つ。Arizona州Phoenixでは,コンピュータと衛星を利用した,初の在宅成人教育プロジェクトがはじまった.SALSA(Southwest Advanced Learning System for Adult)呼ばれるこのプロジェクトは,家庭にあるパソコンをIllinois大学にある図書館と接続して,読書してもらおうというもの。SALSAは同州のTempeとMesaにあるMotorolaの半導体工場の従業員から50名のボランティアを募ってテストが行なわれている.研究者は,「家庭での教育がどのように仕事上有効となるかを調査したい」という.日本で成人教育というと,仕事と離れた知識の拡大のように感じられるが,あちらでは違うらしい。生徒にはApple社からMac SE,Motorola社から2400pbsのモデムが贈られるそうだが,君ならどうする.

「Windows3.0の人気で儲かってはいるがOS/2が不安になってきた」やっとだ。
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この号の「日本パソコン百景」が松下電工・住空間シミュレーションシステムの巻ということで33年前のヴァーチャルリアリティの記事だった。
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 先頃オープンした「松下電工ナイスプラザしんじゅく」は,サニタリー(バス,トイレ)収納システム,照明といった,住居の総合展示場だ.この展示場の中に,国内で唯一商用レベルで実用化されたバーチャルリアリティシステムが稼働しているという。「なんでそんな所に?」と,思わないでもないが,それにはふかーい理由があったのだった。
ふたたび来たぞ,新宿副都心
 6月号で取材したパソコンメーカーのショウルームが集合しているNSビルの隣,新宿モノリスビルに「ナイスプラザしんじゅく」がある.3~5階のフロアを使い,数トンはありそうなシャンデリアなど,幻想的な照明器具,バスユニット,小物などが展示されている.最新のホームエレクトロニクスから気持ちのよさそうなシャワーまで,きっと女のコを連れてきたら話題はつきない。冗談抜きで自信を持ってデートスポットとしてお勧めできるほどだ。そんなおしゃれなショウルームの一画,システムキッチンの展示に囲まれて松下電工「住空間シミュレーションシステム」がある。キッチンの展示場にあるのは,このシステムが「実際にでき上がったキッチンを,疑似的に体験できる」ものであるからだ。
 キッチンなんて,できあいのものを選ぶだけかと思っていたら、さにあらず。最近では図面を工場に送ることで,1mm単位での加工が可能なんだそうだ。既製品というと,サイズが合わない代名詞のように思われているけれど,技術の進歩には目をみはるものがある.ところが,それとはうらはらに,実際にでき上がったキッチンの使い心地はというと「こんなはずじゃなかった」という場合も多いそうだ。もちろん,ユーザーの意見はプランナーが数度にわたって聞き,図面も見られるのだけれど,素人に図面のでき上がりを想像しろというのが無理。そこで生まれたのがバーチャルリアリティを応用したキッチンシミュレーションシステムというわけだ。

バーチャルリアリティって何だ
 すでにご存じかもしれないが,バーチャルリアリティは,NASAなどで研究されている「仮想現実感」システムである.もともとはロボトロニクス技術から発展したもので,「人間が行くことのできない世界で,あたかも人間が行っているように作業を行なう」ことができるシステムだ。「ライディーン」とか「ジャンボーグA」といった巨大ロボット番組では,乗り込んだ主人公の身体の動きと連動してロボットの手足が動くというものがあったが,これならロボットの操作を知らない人でもロボットを操れる.しかも,遠隔操作にしてしまえば,「主人公,絶体絶命の危機!つづく」なんてこともなくなるわけだ。さらにこれを一歩進めて,コンピュータの中の想像の世界と融合させたものがバーチャルリアリティである.
 このキッチンシミュレーションシステムでは,お客さんの持ってきた図面を基に,3次元のキッチンをコンピュータ上に作成。お客さんは身体中にセンサをつけ,キッチンの中を歩き回ることができるのだ。もちろんそれだけではない.仮想のキッチンの水を出したり,皿を取ったり,収納することもできる。これにより,お客さんは、自分の家に入れるキッチンの棚に本当に手が届くのか,頭をぶつけそうな所はないか、通路の幅は大丈夫かといった確認を,仮想世界で体験することができる。子供の身長になってキッチンを体験するといったことも可能で,子供の視点から危ない場所はないか、などとありとあらゆるトラブル出しが行なわれる.
 お客さんが持ち込んだ図面情報は,松下のキッチンデータベースの情報とリンクされ,1~2カ月で3次元化される.その場ですぐ3次元化してくれればいいのにと思ったら「可能ですが,高い買い物ですから,少し冷却期間があったほうがいいんですよ」とのこと.なるほど,お客さんが冷静でなければ,出せるトラブルも出せない。
 ちなみにこの展示場では,デモが行なわれていて,誰でもシステムを体験できるようになっている.

砂の上のロビンソン
 さて,実際に体験してみると,首をひねったときの景色の動きがまだまだぎこちなかったりするが,とりあえずキッチンのシミュレートという目的には十分のようだ。けれど,お客さんの中には「ディズニーランドのほうがすごかった」と,ミョーな勘違いをされる方もいるとか.松下社内でも「花博の,ほれ、あれには負けている」という意味不明の感想が出たらしいから,つくづく日本人は,と,いい意味でも悪い意味でも思ってしまう。使われているコンピュータはアイリスとかいうワークステーションとMacII.ちなみに「花博みたい」に超リアルな画像で3次元を体験するためには,スパコンが10台あってもダメだそうだ。
 このキッチンシミュレーションシステムは,実は通産省の分科会の研究の一環でもある。平成7年までに,家をまるごと1軒シミュレートできるようにしたいというのが通産省の意向だという.
 ハイテク素材が軍事機密になってしまうアメリカに比べ,すぐゴルフクラブやテニスラケットを作ってしまう日本の応用上手だけれども,ロボットでも宇宙でもない,家というまこと人間的な部分に最先端のテクノロジーが向けられることは,メーカーの受け売りではないが「あったかいテクノロジー」だと思う.
 AI家電だのファジー家電だの,ハイテク家庭電化製品が流行しているけど,今度は「バーチャル家電」がはやるかもしれない。え?もうある?それは冷蔵庫でしょ.


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ヴァーチャルリアリティは33年も経ったのにあまり進歩しているとは思えない。パソコンの進歩に比べ物凄く遅れていると思う。どうしてなんだろう。

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