SSブログ

PC-9800シリーズ座談会(月刊ASCII 1990年3月号8) [月刊アスキー廃棄(スクラップ)]

特集'90年代のPC-9800シリーズはどうあるべきか?の矢部 和博氏、兵頭 喜彦氏、日笠 健氏の座談会の記事をスクラップする。
ASCII1990(03)c21_W520.jpg
ASCII1990(03)c22写真_W321.jpg
ASCII1990(03)c23写真_W326.jpg
ASCII1990(03)c24写真_W322.jpg
特集'90年代のPC-9800シリーズはどうあるべきか?の矢部 和博氏、兵頭 喜彦氏、日笠 健氏の座談会の記事をスクラップする。
パソコンはコンピュータの異端児である
――(本誌):最初に現在の98,あるいはパソコンとは何かというところから話を始めたいのですが.
矢部:よくいまのパソコンは一昔前のミニコン以上の性能を持っているといいますけど,これは少し語弊がありますよね。演算速度については,たしかにスーパーミニコンといわれたVAX-11も全然めじゃないわけです.ところが,それよりもずっと性能の低い1Mwordsしかメモリを搭載してないようなミニコンでも,端末を何台もぶらさげて動いていたわけですよね。あまりCPUパワーを要求しないようなユーザーインターフェイスがスタイルだったとかいろいろあるでしょうけど….
日笠:98などのパソコンとそうしたミニコンでは作られ方が違うということですよね。独立したアーキテクチャのマシンなら,そのときのCPUに応じたI/OやOSをバランスよく採用することができる.しかし,98などの場合は,ハードウェアもOSも10年近く前のを引きずっているわけですよ.
――: 仮想記憶や同じルーチンはメモリ上で共有化するといったことが行なわれれば,1Mwordsでもいくつものタスクが動くということですね。
矢部:CPUだけがやたらにパワフルで,やっている仕事は1人でワープロをポチポチ打っているという光景も珍しくない。
兵藤:しかし,パソコンは一般のユーザーが使い続けるものだから,それじゃというので,最高のバランスになるように,何もかも新しくしましたというわけにはいかない.
矢部:そうなんですが,そろそろ…,何らかの手を打ちたいという時期にきているわけです.

いやいや、それでも待たされることが多かった。ポチポチ入力が終わってからリターン実行とするとなかなか制御が戻ってこない。思わずハングしたのではないかとリセットボタンに手が伸びたことが何度もある。
IBMPCというよりもPC-8800の影を残す
矢部:98のアーキテクチャがなぜ,IBM PCのようにならなかったか,という点についてはどうですか。特にグラフィックスまわりは違いますよね。
兵藤:IBMPCが'81年,98のほうが'82年と後から発売されたんですよね。
日笠:その辺は,日電の場合,IBM PCというよりもPC-8800が先にあったわけです.それで,どうしても最初から高解像度のグラフィックスを標準搭載しなければならなかったと.もちろん,漢字の問題もあるでしょうね。パワーもいるので,というか漢字が16bitなのでバスも16bitのほうがよかろうということで,CPUは8088ではなく8086にしたと….
矢部:キャラクタVRAMの話ですが,画面のバックグラウンド,フォアグラウンドの色とかも88からきていて、いまの98になっているんでしょうね.漢字とか使うと(VRAM上の1文字あたりの)ビットに余裕がないんでしょ.
兵藤:空いてますよ。テキストVRAMは,漢字表示のためIBMの倍ありますから.アトリビュートも倍とれるはずなのに,半分しか使っていない。空いてるところに背景色を持たせていれば,IBMのように綺麗な画面になったのに.
日笠:FMRなんかは,完全にアドレスが分かれてますね。キャラクタ用,漢字用とアトリビュート用と...それがかえって混乱を招くこともあるけど.
――: アトリビュートについては,H98でやっと実現されましたね。
兵藤:98は,VRAM上では漢字を4bytesで表現してますよね。ところが,何か半角のデータを書き込んで半角ずれるとするでしょ。そういうときに,98はちゃんとずれてくれますよね。あの4bytesの構成がそういうふうにうまくできている.AXだとこういうことやるとドカッと化け てしまう。やっぱり,あの時点であれだけのものを出したというのは凄いと思いますね。
同感。98の悪口を書いてきたが、初期のころはそれは8086の悪口であって98のではない。8086がダメだから98はテキストVRAMやGDCを使って16bit機は8bit機より凄いんだぞと売り出した。8086ではこうまでしなければ8bit機との差別化が図れなかった。
ゆったりした大きなディスプレイが欲しい
矢部:しかし,テキストVRAMで漢字を表示するメリットはあったのかな?という気もしますが.
兵藤:いや、だって,エディタとかワープロとかを作るほうから見れば,やっぱり必要だと思いますよ。速度が全然違ってくる.
矢部:いままで日本でフルビットマップ方式を採用してメジャーになった機種はないですからね。
――: 98のようなテキストVRAMによる方式というのは特殊なのですかね.
兵藤:IBMPCは,漢字はないけど,VRAMにコードを書き込めばキャラクタジェネレータ経由でハードが表示してくれますね。モードを変えてフルグラフィックスにもできるけど,重ね合わせはできない,で,98では,それが両方できると….
日笠:単純な話,CPUのパフォーマンスがそれほど高くないときには,テキストVRAMも必要ということでしょうね。でもそれが386なみになってくると,ビットマップでもいいんじゃないか,と.ビットマップでやっているWindowsも,スクロールなんかは思ったより速く動きます.
――: CPUは,80386が当たり前になって,WindowsやOS/2のPMが普通に使われるようになったら,テキストVRAMの意味はなくなってしまう.
日笠:速度の面はいいと思うのですが,いまの98のディスプレイじゃね。漢字が16ドット表示でしょ。640×400ドットの画面ですからね。ちょっと悲しい。ハイレゾだと満足感は段違いですよ.もっとも,ハイレゾでも1画面に表示できる文字数は同じだけど.
――: ワープロの高級機なんかだとA4縦がそっくり入るようなディスプレイが付いているものがありますよね.WindowsやPMでは,そういうディスプレイも接続できるのですか?
矢部:問題ないと思います.その辺は自由ですよ。もちろん,OS側にそれをサポートするだけの機能を付加する必要はありますが….たとえば,大きなディスプレイ用のデバイスドライバなどを付加すれば,これまでのアプリケーションは,ディスプレイの大きさに関係なくそのまま動くはずです.
兵藤:大きなディスプレイを接続するという話の前に,PS/2やATで動いているWindowsやPMのソフトは,問題なく98で動くのですか.
矢部:有名なSIDEKICKという製品があるでしょ。あれのPM版を98のPMで動かしてみると、行間の設定がまずくて文字が3分の1くらい消えちゃうんですよ。あるいは,開いたウィンドウが,画面のサイズより大きかったり… 兵藤:実際には,ディスプレイに依存しちゃってるということですか。
日笠:IBMのEGAが350ラインで98が400ラインという違いのせいかな。でも,SIDEKICKがちゃんとやっていないからでしょ.行儀が悪いというか.
矢部:ドット数をちゃんと調べてから処理できるシステムコールは用意されているわけですから,お行儀が悪いのですね. ――: とすると,ソフトウェアメーカーがちゃんと作れば,WindowsやPMで機種に依存しないアプリケーションができると.
日笠:そうですね。将来的には,ユーザーは好みで,というか予算に合わせた大きさのディスプレイを選択できるようになると思います。
矢部:Sunの大きなディスプレイで,ウィンドウを4つくらい並べてみると98の貧弱な画面は見たくなくなりますよね。今後,ウィンドウ環境が中心になってくると,98にも,大きなディスプレイをという選択は,当然,出てくるべきです.:同じことは,ビジネスユーザーのほうは,もっと強く持ってくるでしょうね。
兵藤:そういう意味では,98もワークステーションに太刀打ちできるものが主流にならないといけない.

矢部氏はだめだ「しかし,テキストVRAMで漢字を表示するメリットはあったのかな?という気もしますが.」OSとかの仕事をしているから末端のユーザの思いが分からない。当時ユーザに訴えるには8bit機とは違うところだ。それは漢字表示の速度だった。8086では実現できないのでテキストVRAMを使った。
兵藤氏は良く分かっている。「いや、だって,エディタとかワープロとかを作るほうから見れば,やっぱり必要だと思いますよ。速度が全然違ってくる.」
日笠氏の「いまの98のディスプレイじゃね。漢字が16ドット表示でしょ。640×400ドットの画面ですからね。ちょっと悲しい。ハイレゾだと満足感は段違いですよ.もっとも,ハイレゾでも1画面に表示できる文字数は同じだけど.」も同感だった。しかしながら、知人で同じ思いをする人は少なかった。皆16ドット表示を受け入れていた。なんだろうな。この感覚の違い。
80386CPUが普通になるとき初めて変わる
――: さきほどからマシンのパワーにかかわる話が少しずつ出てきてますが,80386ということですよね。
日笠:386を使うメリットは,まず高速なこと.16bitデータの処理では80286とほぼ同じなのですが,当然のことながら32bitで処理すれば速いにきまっている.それから,プロテクトモードでは1セグメントが4Gbytesまでとれる.あと忘れてはならないのが仮想86モードでしょうね。
兵藤:去年あたりから386の仮想86モードを使って,EMSやバンクメモリのエミュレーションをやるソフトなども出てきていますね。これはノーウェイトの内部増設メモリで実現できるので,拡張スロットのメモリボードに比べてずっと速いし,スロットも食わない.
――: いま286マシンを買おうか386にしようかと迷っているユーザーも多いと思うのですが,286マシンは安いですからね. 兵藤:98なら何でもいい,というなら別ですが。いま買い換えるなら絶対386にすべきだと思います.
矢部:よくいわれるように,現在のところ286も386も「速い86」に過ぎないわけですよ。でも,ソフトを作る側からすれば,OS/2やPM用のアプリケーションを作れば機種依存しないわけですから,どんなマシンでも動くものが作れるわけですよね。つまり、市場を日本に限定する必要がなくなるわけです.その辺を考えると,やはり,今後は,386マシンのほうが有利ではないでしょうか.世界中に広がりつつある386マシンをターゲットにしたアプリケーションが増えることは十分に予想できます.
――: 現在のOS/2は,286を前提としているわけですよね。
矢部:OS/2も本命は386用だと思います。アメリカでは,間もなくOS/2の386対応バージョンが出てきます。386の後ろに486も見えてますけど,アプリケーションから見れば,386と486の差はまったくと言っていいほどないんですよ.まずソフトウェア開発キットが登場して,その製品版,日本語版というふうに考えると,我々がいろいろとアプリケーションを選べるようになってくるのに2年…,'93年には見えているでしょう.
日笠:あと,386の仮想86モードを使う環境として,WIN386(MS-Windows/386,もしくは今後の386対応のWindows)にも期待できますね.ウィンドウの中で従来のMS-DOSのアプリケーションが動いちゃうわけだから.ウィンドウの数だけ8086を積んだマシンとして使えますね。
矢部:ただ,WIN386だと結局86だから.
――: WIN386だと,386のネイティブな性能を生かせない?
日笠:仮想86だと結局はリニアにとれるメモリが1Mbytesだから,極端な話,1Mbytesを超える配列は宣言できないということでしょ。その辺で,OS/2にPMというセットとMS-DOSにWIN386というセットが差別化されてくるわけです.というかPMのほうは特定用途向けの業務用で、いまの普通のユーザーはWIN386のほうに行くんじゃないかと.
兵藤:ハードを直接触ってるソフトも,そのままWIN386の上で動くんですか?
日笠:危ないというか,I/Oいじったり,割り込みベクタとっちゃうようなアプリケーションでも結構よく動きます.シリアル通信には弱いですけど….
矢部:そういうのは,普通のMS-Windowsじゃできないですよね.WIN386ならいまのMS-DOSを延長しつつWindowsも利用できると.
――: WIN386の提供する世界が,現在の個人ユーザーをいちばん幸せにする世界だということですね。
日笠:ただし,OS/2にしろ,そのWIN386にしろ,実行するにはかなりのメモリとディスク容量が必要ですよね。メモリが8Mbytesくらいが標準になってくれないと.WIN386のほうは,4Mbytesくらいかな.Windows系とPMの操作性は共通化されるようですから、結局ユーザーはハードウェアにかけるコストで選ぶようになると思いますよ。
――: そこまでくるとマシンに依存しない環境なわけですから,マシンを選ぶのではなくて,マシンパワーを選ぶという形になるということですか.
日笠:そう思いますね。もっともWIN386上なら他のハードウェアに依存しているソフトが動くかといえばそれはだめですけど。
兵藤:とはいっても,Windowsがすべてではありませんから。ゲームもやりたいし.
矢部:さきほど出た話ですけど,ディスプレイなどの表示系を何とかしないと98 も安穏とはしていられないですね.
兵藤:それでようやくH98が出てきたと.
日笠:いまのところ,ハイレゾのディスプレイが付いて中身はPS/2のIBM 5530Zあたりは、面白いですよね。価格も安いですし.
――: ここまでの話をまとめると,WindowsでもOS/2でも大きな動きはないが,386が普通になったときをポイントにして変わってくるということのようですね。'92年頃には386の価格が286の価格と逆転するという予測もあるといわれています。
矢部:さきほどの386対応のOS/2の普及時期とほぼ同じです.

この特集記事もここにきてようやくまともになってきた。アスキーのOS/2推しとかNESAにおもねた記事とは違う。部外者の発言が未来予測ができている。アスキーは未来予測ができていなかった。
10年でオモチャが事務機になった,こんどの10年ではどうなる
――: ハードやOSについては,形がある程度見えてくるわけですが,もっと全体的な展望みたいなところはどうですか.
矢部:現在の98は,ビジネスというかデータ処理のためのマシンという性格ですよね。これからどういう方向を指向していくのかですね。
日笠:ゲームやるには色は出ないし,音も出ない。家で98持っている人は,何やってんでしょうね。
矢部:やっぱりDOSの文化というか,ワープロなどの文字ベースの処理でしょうね。
日笠:パソコン通信している人もいるけど,まだ少ない.
矢部:WindowsやPMがちゃんとすれば,使う側,つまり買う側にとっては,どのマシンであろうが関係なくなってきますよね。極端なこと言えば,98であろうがMacintoshであろうが関係なくなると思うんですよ.結局,ソフトを作るのはハードメーカーじゃなくて,ソフトハウスなんだから,操作性などに問題がないのなら,市場が大きいとか,ソフトが載せやすいマシンがいろんな方向に展開していくんでしょうね。
日笠:たとえば,ホームコンピュータとか,マルチメディアとかありますけど,そこに現在の98が関係しているとは思いにくいんですよ.Macintoshなどは,ナレッジナビゲータのような形で将来のビジョンを示してくれていますけど,日電は,何もビジョンを示していないんじゃないかと.とりあえず求められるマシンをパワフルに開発しているのは分かりますけど….日本でリーダーシップをとっているメーカーなんだから,少しはビジョンを見せてほしいですよね。
――: 我々ユーザーはバラバラにいろんなこと言っていると思うのですが,メーカーが夢を形として語ってもいいんですよね。
兵藤:ホームコンピュータというのなら,10万円以下で,3.5インチFDDと1Mbytes程度のメモリを持っていて,色も音も豊かで,しかも家庭用テレビにつなげられる。ちょうどAmigaのようなマシンが何で出てこないのでしょうか?TVゲーム機から一歩も進んでいない.
日笠:本格的なマルチメディアというのが,いろいろ言われていますけど、何とかなるのは今世紀末というレンジで見ると,まだ何ともいえませんが.
――: それは,もはや現在のパソコンとはまったく別の製品でかもしれませんね。
矢部:もともと,我々にとって10年くらい前のマイコンやパソコンはオモチャだったわけですよ.それが,いつのまにか事務機器になっている.これからの10年で,こんどはどんなものになるかということでしょうか.無責任な言い方をすれば、いまのパソコンが,この10年でどう変化すべきか、非常に興味がわきますね。いずれにしても,単なる事務機ではすまないでしょうね.
日笠:また,オモチャになってほしいなという部分もありますね。機械いじり的な楽しさじゃなくて,もっと別なものですけど。そのためには,音や絵が出るとか喋るとかというのは最低限の条件として,いろんな通信メディアとの関係もあるでしょう.98が示せば,いまでもどうにかなる部分はあるかもしれません。 ――:
そういう部分でも思い切って引っ張ってほしいですね.

DOS/Vの成功を除くと、他は10年後の2000年も大して変化なかった。OSはOS/2が消えWindows2000とWindowsMeだった。CPUは486だった。ゲーム機も任天堂のスーパーファミコンがやっと出たところだった。PentiumもWindows xpもプレステもセガサターンも無かった。
ASCII1990(03)c21写真_W520.jpg

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:パソコン・インターネット

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。